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「TAO」 第2回 :ゲスト→都築響一 4 

Friday, March 6th 2009

都築:そのさ、こないだの話しじゃないけどさ、演歌の人達を取材してて、今別のね、新しいWEBマガジンを来月からやる予定なんだけど、それの取材を今進めてて。それは、"インディーズ演歌"の人達っていうのを今取材してるわけよ。


---  またちょっと違うんですか?


都築:さらに格下だよ(笑)。


---  (笑)。


都築:だって、演歌の世界でも"インディーズ"っつうものがあるわけ。


---  そうなんですね、初めて知りました。


都築:でしょ?"P盤"って言うんだよね、プライベート盤のPなんだけどさあ(笑)。


---  へえええ(笑)。


都築:要するにさ、自分達でお金出して、プレスして、で、それを手売りで売るとか、それから・・・形だけは一応、レコード会社から出してもらうんだけど、全部買い取りとかさ(笑)。そういう怖ろしい世界。まあ普通のロックやなんかのインディーズと基本は一緒なんだけど、ケタ違いなのは"お金"なんだよ。

要するにさ、例えば、僕なり長澤さんなりがまあ、HIPHOPのユニットでも何でも作って、「一応CD、1枚出してみようかな」って言ったらさ、自分達でスタジオ入って録音してね、MACでちょちょいってやって、自分家のパソコンでプレスすればたぶん、2〜30万もあれば出来んじゃないかっていう費用だと思うんだよね。だけど、演歌の場合さ、シングルCD今作ってそうやって出すのにたぶんね、一番安くて300万くらいかかるんだよ。


---  ああ・・・本当に桁違いですね。


都築:うん、500万とかさ。1000万とかかかるケースも少なくないよ。それはね、例えば、作曲家の先生、作詞家の先生、編曲家の先生・・・ミュージシャンとかもう、すんごいいろいろ、どんどんどんどんかかっていくわけよ。で、「ポスター何枚作ったからいくら」みたいな。で、それを全部買い取らされてっていうことは、もう全部売れても一銭にもならないんだよね。

だから例えばさ、今、カラオケに(楽曲が)入らないとだめじゃない?普通はカラオケに入ったら、"楽曲使用料"っていうのは入ってくるはずなんだけど、入らないケースっていうのがあるわけよ。要するに、カラオケ会社に「僕の曲を入れて下さい」と。そのかわりね、「ギャラはいりませんから」っていうんで入れてもらうケースとかもあるわけだよね。

でも、そうやってでも、歌ってもらわないと、全くセールスにならないわけよね。だからそんなもんさ、毎年1枚とか出せるわけないわけじゃない?1枚作ったシングルCDを抱えて、全国行脚して、5年間くらいかけて売って、その間に貯めたお金で次を出す・・・みたいな。涙・・・みたいなさ(笑)、そんな奴らがすっごいたくさんいるわけよ。

で、先週もそういう若手の演歌歌手、新人つったって、もうみんな歳なんだけど、そういう人達が4人ぐらいで、赤坂の小っちゃなレストランみたいなのを借りて、「ライブをやります」っていうんで、見に行ってさ。もう、感動!(笑)・・・感動はしないんだけど、「すごいなあ」って思ったりするっていうさ。

そういう、もうロックどころじゃない、底辺・・・っていうか、ロッカーのスピリットを持ってる、でも歌ってんのはめちゃ古臭い歌っていうさ。そこがすごいおもしろいなって思うね。レコード会社のバックアップすら全くないところね。でも、ロックや何かのインディーズは、HMVでも何でも扱える、もうネットワークがあるじゃん。でもさ、演歌は扱ってもらえないわけじゃない、インディーズなんかね。演歌専門のレコード屋さんでも、「ウチは"P盤"は扱いません」っていうとこって多いのね、めんどくさいし。そんなの全然売れないしさ、もちろん。返品のがめんどくさいみたいな。「取りに来てくれない人もいますし」みたいな感じで。

だから、売るとこさえほとんどないんだよね。だからね、めちゃくちゃ厳しい状況だよね。だって、ロックバンドがインディーズのつったってさ、作ってさ、ライブで手売りだけで、何千枚も売ってる奴らなんかいないわけじゃない。だいたいどっか何かね、ディスクユニオンとかで売ってもらったりとかさ、そういうことになってくるわけじゃない?だから、そういうことすら出来ない・・・だけど、音楽やりたいっていう人達は「一体どうしたらいいのか?」っていうのを見ちゃうと、文句言えなくなるっていうさ。だから、「こういう人に比べて、わたしは文句言えない」っていうのを作っておくといいよ、1個(笑)。そうするとね、生きる希望が沸いてくるよ(笑)。


---  (笑)。日々いろいろ想いながら働いてるんですけど、こうやって外に出て、お話しをさせて頂いたりするとやっぱり、元気が出るし、タイミングを見て、自分でももっと、やってみようと思います。


都築:辞めたいんなら、すぐ辞めた方がいいよ、やっぱり。


---  すぐ・・・(笑)。


都築:なるべく・・・たぶん、人は逆のこと言うだろうけど、なるべく我慢はしない方がいいよ。だからさ、これがトレーニングだと思える間はやればいいんだけどさ。ノウハウを学ぶためみたいなさ。だけど、もう学んだでしょ?(笑)、たぶん、2年もいたら。


---  うーん・・・多少は・・・?(笑)。


都築:あとさ、やっぱ、「コネクションを作るためにずっといるんだ」って言う人もいるけど、それは間違いだから。コネクションなんかいらないんだからさ。本当にやる気があればさ、初対面でも会ってくれる人は会ってくれるし、コネクションがないと会えないような人はやる必要ないんだよね。いくらたくさん知り合いが出来たってさ、友達付き合いだけで、「一緒に仕事がんばろう」じゃないんだったらさ、0からリセットしてやった方がいいよ。だからさ、「これ以上ここにいて、学ぶことがないな」って、見切った瞬間に離れた方がいいんじゃないの?(笑)。


---  そうですね(笑)。


都築:まあね、いていい時は、いればいいんだけどさ。"媒体"はちゃんとあるわけだし、これ使って好きなことがある程度だけでも出来る時は、それをやってさ。でもそれで載せ切れないってなったらさ、自分でブログでも作ってやるとかさ、雑誌作ったりさ。自分でコピー機とかで雑誌作ればいいじゃん。で、自分で売ると・・・。


---  手売りとかで・・・。


都築:手売りだよ。あのねえ、えーっとね、島袋(道浩)くんっていうアーティストがベルリンに住んでるんだけど、沖縄出身のコンセプチュアルの・・・コンセプチュアルなんだけど、ユーモアがあっておもしろい奴がいるのね。で、そいつの展覧会がワタリウム(美術館)で、今やってるわけ(2008年12月12日(金)から2009年3月15日(日)まで開催!)。彼とは昔から知り合いで、こないだね、ひさしぶりに会ってご飯食べてさ、「最近どうよ?」っていう話しになったのね。そしたらさ、(個展に)RICOHか何かの協賛を得たと・・・でね、「最近のコピー機はすごいよ」って話しになって、とにかくまあ、こう・・・「30ページないし60ページの雑誌を作りたいな」と思ったと、その展覧会のためにね。いいカタログじゃなくて、簡単なやつをさ。でもう、「とにかくばーって(写真を)スキャンさせる」と。そうするとね、「全部両面印刷でががががーって出てきて、製本までしてくれて、ペロって出てくる機械があるんだよ」って。「えー!」って。「それはすごいね」ってさ。「そしたらもう、出版社いらないじゃん」「そうなんだよね」って。

で、その写真集を売ろうと思ったんだけど、ただ売るんじゃおもしろくない・・・おもしろくないってこともないんだけど、「街にみんなに出て欲しい」と展覧会場で・・・ということでって言うんで、(写真集を)2冊作って、1冊はワタリウム(美術館)の近くにある、"八百屋"じゃないと買えない・・・(笑)。


---  へえええー(笑)。画期的ですね。


都築:でしょ?(笑)。で、もう1冊はワタリウム(美術館)の側のね、「ベルコモ(ンズ)の前にいつも立ってる、ビッグイシューを売ってるおやじからしか買えないっていうのにしてんだよね」って(笑)。


---  おもしろいですね(笑)。


都築:そうなの。で、「それは鋭い」っていう話しになって。「そうかあ」「ビッグイシューの奴らに売ってもらえばいいんだよな」って。「それで、手間賃・・・パーセンテージ上げれば彼らも喜ぶわけじゃん」って言うんでさ。「人助けにもなるし」みたいな話しで、「ほほう」って。そうやってみんな、「やむを得ず外に出て行くっていうのは、いいことだよね」って言うんで、「出来んだよ、何でも」みたいな話しになってさ。「そうかあ」って言うさ。「これは教えられました」っていう話しだったんだけど・・・だから、大丈夫なんだよ。やる気さえあれば、何でも出来んだよ、そんなの。だからこう・・・いいじゃん、HMVでやりたい・・・出来ることをやりつつ、出来ないことは自分でやって行けばいいじゃん、どんどん。


---  そうですね。やっと気持ちが上向きになってきたんで・・・(笑)。


都築:本当?(笑)。


---  ええ(笑)。


都築:そしたらそれを「タコシェ」とか"コミケ"で売ればいいんだよ、ねえ。


---  そうですよね。


都築:うん。


---  自分の頭にあるものをちゃんと形にして出して行きたいと思ってます。


都築:だってさ、音楽関係のメディアのことをやりたいんでしょ?要するに。


---  ・・・どんなジャンルであれなんですけど、"作品"に惚れてしまったら、その"作品"を作られた、表現されている"人"に興味があるんです。最近すごく、インタビューをさせて頂くことに悦びを感じていて。一般的な宣伝用のインタビューとかじゃなくて、雑談をいっぱい・・・お話しして頂きたいなと思ってまして。それをそのまま記事にしたいんですよね、カットすることなく。相手の方の口調まで全部、忠実に再現したいんです。それを載せられるのがやっぱり、WEBだなって思っているので。その可能性を使いつつ、お話しをお聞きしたい方とお会いしながら、やって行きたいなって思ってるんですけど。


都築:だって例えばさ、じゃあ長澤さんがそうやって、インタビューされる立場になったと思ってみ?それでさ、他にもインタビューの人が来ると。で、こっちでは、普通の雑誌の人が来ましたと、新聞とか。で、こっちではわけわかんないWEBの人が来ましたと。それでまあ、「どっちにいろいろ話してあげようかな」っていう時があるわけじゃない?まあ、どっちにも全部、話しゃいいんだけどさ(笑)。まあ、時間もないし・・・みたいな。そういう時に、じゃあ自分は、他の雑誌か何かのインタビュアー、インタビューとは「違う対応を取ってあげようかな」って思わせるものっていうのが何かないとだめでしょ?やっぱり。


---  そうですね。


都築:そうすると、それを考えた方がいいよね。だから、例えばさ、1時間話したのがすごく小っちゃい記事になっちゃうのか・・・でもとにかく、「何万字でもいいから全部やります」みたいなのがいいのか。何か自分がインタビューされる側になった時に、「こいつには違う対応をしてやるぞ」って思わせるものを持てるようになるといいよね、"媒体"としてね。


---  そうですね。


都築:じゃないと、一緒になっちゃうからね。でもさ、いろいろあるけどさ、浅草のその渋いCD屋とか行ってみてよ。そこね、"音のヨーロー堂"って言うの。


---  "音のヨーロー堂"・・・。


都築:うん。浅草の駅のすぐ側でね、そこは自分の"WEBサイト"を持ってるから。何か、すごい鋭いよ。最近見たCD屋でベスト!みたいな感じよ。ってそういうのもあるし、まあ、他の店もあるんだけどさ、ライブハウスとかいろいろあるしさ、普段あんまり行かない街に行くのもたのしいよね。


---  まずは、浅草方面行ってみますね。この間"第1回したまちコメディ映画祭"っていうのが"浅草公会堂"であって、それに遊びに行って来たんですけど、そのお店は知らなかったので・・・。


都築:すごいそういうのって何かさ・・・何個かあたっていろいろ見たりしてると、気合い入るじゃん。「まずい・・・こんなことやってる場合じゃない」みたいなさ(笑)。そうなってくるとたのしいよ。






主な出版アイテムは↓

I Love 秘宝館
デザイン豚よ木に登れ
現代美術場外乱闘 秘宝館 House Of Erotica アスペクトlightboxシリーズ
Happy Victims: 着倒れ方丈記
イメクラ
刑務所良品
ラブホテル: Satellite Of Love
Roadside Japan: 珍日本紀行 東日本編
Roadside Japan: 珍日本紀行 西日本編
TOKYO STYLE
ローカル
精子宮: 鳥羽国際秘宝館・SF未来館のすべて

  左から:『I Love 秘宝館』、『デザイン豚よ木に登れ』、『現代美術場外乱闘』、『秘宝館 House Of Erotica アスペクトlightboxシリーズ』、 『Boro』、『Happy Victims: 着倒れ方丈記』、『イメクラ』、『刑務所良品』、『ラブホテル: Satellite Of Love』、『Roadside Japan: 珍日本紀行 東日本編』、『Roadside Japan: 珍日本紀行 西日本編』、『TOKYO STYLE』、『ローカル』、『精子宮: 鳥羽国際秘宝館・SF未来館のすべて』


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