「TAO」 第2回 :ゲスト→都築響一 5
Thursday, March 12th 2009
--- 都築さんは、"本を作る"っていうことが"天職"だって、どこかの媒体で発言されてましたけど・・・。都築:まあそれは、一番やりたいことっていうわけでもないんですけど、本当は。だから、やらされてることっていうかね。もうさ、まあ偶然そういうスキルがあるので、今。で、それを作んないとなくなっちゃうものが本当にたくさんあるので、やむを得ず作ってるって感じよね。のんびり暮らしたいんですけど、本当は(笑)。年金とかもらって。でも、年金まだまだだし、何か本当、あったかいところでのんびり暮らしてるのが一番なんだけど、まあ、作らざるを得ないから作ってるって感じだよね。
ものすごい本が売れてるわけでもないしね、のんびり印税生活出来るわけでもないしさ。いい評判ばっかりでもないし、企画はほとんど通んないし・・・大変なことはあるの、実は、ニコニコしてても(笑)。でも、文句を言わないようにしてんのはやっぱり、自分より過酷な環境でがんばってる人達を見てるからなわけね。だからこう・・・例えばさ、売れない演歌歌手の取材とかをするとしてさ、本当はね、そこまで演歌に興味があるわけじゃないんだよ、僕としては。もっと利己的な目的があって、それはこう、挫けそうになる自分への渇を入れるためのにやってるわけだよね。
「こういう人達もがんばってんだから、自分も何かやんなきゃ」っていう"防波堤"をたくさん作りたいわけだよね。それが演歌だったり、売れないアーティストだったり、なんだっていいんだけど・・・売れない本作ってる人だって、そういう人達をたくさん知ってるとね、自分だけ「ギャラが安い」とか文句言ってるわけにはいかないっていう感じになるじゃない?だから、自分がそういう風に挫けがちになるから、そういうことを防ぐためにいろいろ、取材してる部分も結構あるなって思うよ。
--- そうですか。
都築:そう、自分では。それはもう完全に、利己的なことなんだけど。でも、そういうのがないとさあ。そりゃあねえ、楽じゃないけど、同じ仕事したら、2桁くらいギャラが違うコマーシャルの方に行きたくなるよ、そりゃあねえ(笑)。
--- そうですね(笑)。都築さんは、本でされていたことを今WEBの方でも少しずつされてますけど、完全に移行ではないですけど、WEBの方でもやろうと思ったのは・・・。
都築:雑誌で好きなことがどんどん出来なくなって来てるからね。だってさ、おもしろい雑誌ないじゃない?今。自分でお金出して買うような雑誌ないわけだし、どんどんつまんなくなってきて、僕は・・・本当は雑誌の方でやりたいんだよ?たくさんのページを取って好きなことをやりたいんだけど、そういうことをやらしてもらえなくなってるから。で、それに文句言ってるだけでもしょうがないので、やむを得ず、WEBでやってるっていう方が強いよね。本当は、雑誌の方がいいんだけどさ。でもね、そこにあるんだったらまず、WEBでやればいいかなっていう感じ?だからまあ別に、新しいテクノロジーがとか、そういうことはあんまり考えてないの。あるもんでやるっていう感じ。
--- その手段として?
都築:そう。あとやっぱりね、出版業界自体が動いてるからさ、今だんだんね。例えば今小説だってさ、ケータイ配信してくるようになってきてるわけじゃない?で、例えば音楽業界だってそうなわけじゃない。「ダウンロードされながら生き延びてくには・・・」ってことを考えざるを得ないわけでしょ?今までみたいに作って売るっていうだけじゃないっていうさ。
でも、出版業界の方が遅れてんだけど、頭はすっごく。それでもだんだん、そうなってかなきゃいけない・・・例えば僕がね、「毎週更新のWEBで記事を作んなきゃいけない」ってことはそんだけ締め切りがあるってことだよ。だから、その後本を作るために、やってるってこともあるわけね。それが月1回の雑誌を作る・・・記事を作るっていうのとはもう、数倍スピードが違うわけじゃない?だから、早く原稿が溜まるんだよね。
それで、その原稿がWEBだろうが雑誌だろうが、結果が出ればさ、取材もしやすいわけよね。「来週、こういう風に出せます」って先方にも言えるわけじゃん。ただ、「いつかは本にしたくて」っていうので取材するのっていうのとは、相手の印象もずいぶん違うしさ。そういうこともあってさ。そういうことのために、WEB雑誌で仕事してるってことも、今すごいあるよねえ。
--- 毎回取材されたものに関しては、起しから構成も都築さんが?
都築:いや、そんなことない。一緒にやってる編集者が今は何人かいるので、その担当の人達に文字起しとかもしてもらう。じゃないとちょっと、出来ないねえ。
--- そうですよね・・・(笑)。
都築:長いんだもん、だってえ(笑)。
--- (笑)。あのスナック連載は、その回によって長さは違うと思うんですけど、どれくらいお話ししてあのボリュームになってるんですか?
都築:うーん、今出てる"マカロニ"の時は、一緒に担当編集者が行って、テレコを持って行って、あれってさ、結構何時間でも録れるじゃない?けど・・・途中で電池が切れた(笑)。
--- (笑)。
都築:だから、3時間ぐらいはかかってるね、だいたいね。でも、いきなり行ってじゃないからね。何回か飲みに行った後の3時間だからさ。そう簡単にベストなお話しは引き出せないよね、やっぱり。
--- すっごい労力かかりますよね。
都築:かかるよお(笑)。めちゃくちゃかかるよお、お金もかかるしっていうね。でも、あのスナックのに関してはギャラは超安いんだけど、その代わり、飲み代は全部、出版社が持つっていうことにしてあるので(笑)、それで出来るっていう。「じゃなきゃやってらんない、毎週なんて」っていう感じ(笑)。
--- ・・・でも、都築さんは本当に、いろんなところに足を運ばれてますよね。
都築:だってさ、そっちの方がたのしくない?だってこう、デスクワーク・・・やっぱり、就職しなかった1つの大きなものとしては、上になるとどんどん、デスクワークになっちゃうんだよね。副編集長、編集長になってったら、現場の取材じゃなくて、取材する若者達を動かすっていう仕事になっちゃうじゃない。で、上がってきたものを見るっていう。そんなのおもしろくないよね。こういう仕事で一番おもしろいのは、"現場"にいることなわけじゃない?だからさ、「それを失いたくない」っていうだけなわけであってさ。だってね、それですごいいいお金をもらえるならともかくさ、時給に直したらマックのバイトの方がいいでしょ?みたいな感じの仕事だったらさ、おもしろくなきゃつまんない・・・やる必要ないじゃない。
--- そうですね。今、現場に足を運んでる人が少ない気がするんですけど・・・。
都築:まあねえ。どうなんだろう・・・だからまず、WEBで見ちゃうじゃない?だからそれは問題だよね。WEBで見れるってことは、誰かがそれをやってるってことだからさ。それをなぞるだけのことになっちゃうわけじゃない?だから、WEBに出てこないものをやらないとだめだよねえ。
--- 都築さんのお名前を検索でかけても、都築さんが今までに出版されて来た本やお仕事の一覧が出てこないんですけど・・・あれって、あえてされてるんですか?
都築:いや、そんなことないよ。
--- 本当ですか?
都築:検索が、でしょ?
--- ええ。あえて、全部・・・過去のお仕事なり、今何で連載中とかっていうものをまとめるページ、オフィシャルページみたいなものを作られないのかなあと・・・。
都築:うん、作ってない。本当はね、ちゃんとしたWEBマガジンを作りたいんだけど・・・っていうか、ブログみたいなきちんとしたのをやりたいんだけど、やってる暇がないっていうだけでさ。
--- 今回、この企画で都築さんにお話しを伺う際に、昔から現在に至るまでのプロフィールのようなものを記載したいなって思ってるんですけど、なくて・・・(笑)。
都築:普通あるよね(笑)。でも、ないでしょ?
--- ええ(笑)。都築さんの原稿が今何に掲載されていて、何が連載中なのかっていうのがすっごく点在してるんですよね・・・。
都築:うん、そうなの。でもね、それは別に意図的にやってるわけじゃないんだよ(笑)。やってないわけじゃないんですけど、例えば普通、小説家とかは、だいたい1つの出版社と仕事するんだよね。「この人は"新潮社"」みたいなさ。そういうのはわかりやすいわけじゃん、漫画家でも。でも僕の場合はさ、媒体が大きい会社もあれば、小さい会社もある。だから、わかりにくいと思うんですけど。でも、そういう風にしたいんだよね。いろんなとこと仕事したいの。そっちの方がおもしろいし、リスクも避けられるのよね、そっちの方が。
「1つと喧嘩しても他がある」っていう風にしとかないと、こういう仕事はだめなんだよ。じゃないとねえ、自分の企画が通らない時とかさ、何かトラブルだってあるじゃん。「これ直したいんですけど・・・」って言っても、「絶対嫌だよ」みたいな時にね、そことしか付き合ってなかったらさ、「折れるしかない」っていうこともあるわけじゃない?でも、「じゃあいいよ、これ出さないで他から出すから」って言えたら、強いわけじゃない。フリーの人っていうのは、そういうリスクを回避する手段を持ってた方がいいよね。だから、なるべくいろんなところと仕事するようにした方がいいよ、フリーで仕事するとしたら。
--- そうですね。いろいろ勉強になります(笑)。
都築:本当に・・・じゃないと、お金払う方が強いから、当然。
--- あえて、全部の情報を出されないのかなって思ってたんですよね(笑)。
都築:それはそんなことないよ(笑)。
--- 都築さんとワンダーJAPANさんとHMVで一緒にさせて頂いたイベントの時に、小島独観さんが今までいろいろな珍スポットとかを実際に取材されて、ご自身のHP、珍寺大道場で紹介されていますよね?で、「そこのスポットの住所を載せないのがすごくいい」って、イベントの時に都築さんがおっしゃってましたよね?あれは、自分で情報を得ようとするその行為というか・・・「簡単に知ろうと思うな」っていうようなことをお話しされていて、それにつながるところがあってなのかなって思ったところも少しあって・・・(笑)。
都築:違うの(笑)。
--- 深読みですか?(笑)。
都築:そんなえらそうな話しじゃないの。ただ出来てないってことだけなの。いや本当、いつもやらなきゃいけないなって思ってるんだけど。だって、いろんな雑誌に書いてるわけだし、「来週こういうの出ます」みたいなのを・・・。
--- わたしも結構、知らないことがたくさんあって・・・(笑)。
都築:でしょー。やりたい気持ちはもう、すんごいあるんですけど。だから、家に1人ぐらい若いスタッフがいたら、毎日更新してくれて、ちょこちょこやってくれる人がいれば、いつでもやりたいんですけど、何かこう・・・そこまでなかなか行かないわけよ、1人でやってるからさ。でもね、本当にそのうち、WEBマガジンをやろうと今いろいろ考えてることがあるので、何かちゃんと、出来るかも。
--- 「着倒れ方丈記」と「BORO」もわたし、本屋さんで知って、「ああ、都築さん、新刊出てる!」と思って・・・(笑)。
都築:そうなんだよねえ。本当は自分のブログで発表したりすればいいことなんだけどさあ、やってらんないわけよね、それも。
--- きっと、「都築さんの新しい本が出た」って本屋さんに行って知る方、たくさんいらっしゃると思うんですよね(笑)。
都築:そうなんですよ。本当は、メルマ(ガ)でもすればいいことなんだけどさ。だって今さ、ほとんど毎晩、スナック巡りしてるんだもん(笑)。それどころじゃないんだよね。でもね、何かやんないとね。前はね、「簡単にブログとか作りたくないな」って気持ちもあったのね。何かさ、つまんないのばっかりじゃない?(笑)。
でもさ、演歌の仕事をし出してから、ちょっと反省したんだよね。売れない演歌歌手達・・・若いのも、おっさんもいるんだけど、全員ブログ持ってるわけよ。「まだCD出してません」っていう子でさえやってるわけ。で、全員毎日更新してんだよね、必ず。もう、どんなことでも。全部ケータイからやってんだけどさ、例えばずーっとキャンペーンで日本中廻ってる子達がいてさ、もう何でもいいんだけど毎日必ずさ、「今日はサービスエリアでこういうの食べました。いつもご飯の話しばっかりですいませーん」みたいなさ(笑)。そういう・・・本当何でもいいんだけど、やっぱりこう、何か必ず毎日発信してんだよね。
そうじゃないと、ファンはついて来ないんだよねえ。本人達は、すごい大変な作業だと思うんだけどさ、酔っ払い相手にスナックでキャンペーンしてさ、その後ビジネスホテルでさ、ベッドに倒れたいのに、シュシュシュって書くみたいなさ(笑)。おっそろしい仕事だと思うわけなんですけど、「絶対やる」と。だから、そういうのを見てると、ちょっと考え直し・・・みたいな(笑)。「だめだなあ」とかって思うよね、自分でね。
--- わたしも、自分のHPとかちゃんと作って、書こうかなって思ってます。インタビューの裏話しとかも載せたりして。あとは、誰かに見られるっていう客観性も、もう少し身に付けたいっていうのもありますし。手帳に書くような日記じゃないので・・・。
都築:それはあるよねえ。でも、そうしないとだめだよね、やっぱり。
--- 自分の感情ばっかり書いても・・・っていうのがありますよね。
都築:そうだよ。
--- 何をして、何を食べて・・・みたいな、一方的な報告のブログって多いじゃないですか?
都築:そういうのを本当は、出す必要ないわけじゃん?でもさ、いろんな人と会ったり、いろんなことを見知る立場にいるわけだから、それはどんどんやった方がいいよ。
--- ネットから何か、新しくつながりとか・・・自分なりですけど。
都築:そうだよ。でも、やるならすんごいたくさんやった方がいいよ。もう、インタビュー裏話とか「こういう人と会っておもしろかったです。その後ご飯行っちゃって、わあ・・・」とかって言うんじゃなくて、もうすんごい長いとかさ(笑)。本編より充実みたいな・・・メイキングみたいなやつ?そういうのを目指すといいんじゃないの?じゃないと何かねえ。
--- 一言日記みたいな感じになっちゃいますもんね。
都築:そうそう、そうなんだよね。それはだいたい、おもしろくないじゃん。でもわかんない、長澤さんファンっていうのがたくさんいてさ(笑)。
--- そんなことないですよ(笑)。
都築:そういう人達に向けてのねえ、日々のメッセージでもいいのかもしれないけどさ(笑)。でも何かさあ、もう一歩先の何かをやって欲しい感じはあるよねえ。
主な出版アイテムは↓
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
|---|
左から:『I Love 秘宝館』、『デザイン豚よ木に登れ』、『現代美術場外乱闘』、『秘宝館 House Of Erotica アスペクトlightboxシリーズ』、 『Boro』、『Happy Victims: 着倒れ方丈記』、『イメクラ』、『刑務所良品』、『ラブホテル: Satellite Of Love』、『Roadside Japan: 珍日本紀行 東日本編』、『Roadside Japan: 珍日本紀行 西日本編』、『TOKYO STYLE』、『ローカル』、『精子宮: 鳥羽国際秘宝館・SF未来館のすべて』













