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「TAO」 第2回 :ゲスト→都築響一 3 

Thursday, February 26th 2009

---  そうですね。


都築:ねえ。それがだって、終わったら終わりなんだから。それよりも、今売れ線のやつが売れなくなった時のことを考えてやる方が"経営戦略"としては、正しいと思うよね。だって、今売れ線のやつはさ、別にHMVの雑誌とかWEBじゃなくたって、他だって見れるんだからさ(笑)。


---  ですよねえ(笑)。


都築:ねえ(笑)。HMVの人がさ、特別すごいインタビューを引き出せるとは思えないわけよ(笑)、こう言っちゃったらあれだけど・・・(笑)。アーティストが「HMVにだけは、本音を話します」みたいなことはないわけじゃない。


---  ないと思います(笑)。


都築:でしょ?(笑)。僕がアーティストでもないもん、それは(笑)。だからさ、それかギャラがさあ、もう・・・超高いとかさ。HMVのインタビューでね、私生活を暴露したら1千万もらえるとかさ、そういうんだったら言うんでしょうけど・・・そうじゃないんだから、それは無理よ。だからさ、今売れ線の記事をぺろっと作って、「わかりやすくしろ」って言うのは、要するに企画会議で、「これが売れてる」「今みんなこういう記事を書いてるから、これで行きましょうよ」っていうやり方と一緒。

だから、自分にアイデアのない人達は、"マーケティングの数字"っていうものを信頼するわけだよね。自分にアイデアがない分、"数字"に頼るわけだよね。でもそれは・・・数字はどこから出て来るかっていうと、"既にあるもの"からしか出て来ないっていうね。だから、それを頼るっていうことはさ、既にあるものの"コピー"でしかないっていうことだよね。それはもう、宿命的にそうなんだからさ。そっから離れないと、オリジナリティーって言うのは出て来ないと思うし、オリジナリティーがないもの同士で勝負してたら、"スケールメリット"しかないんだよね。同じような記事をたくさん読める、たくさん安く読める媒体に絶対敵わない。

だから今、普通のどんな雑誌も、R25とかそういうのに敵わないわけよ。だって、タダなんだから。でも、中身似たようなもんなわけじゃない(笑)。だから、それだったら別に、「買わなくたって、これタダで読んでた方がいいじゃん」って話しに当然なるよね。だからそこから・・・例えば、ご飯屋さんとかおしゃれなお店とかの記事を出すのにさ、同じことやってたらさ、R25に敵わない・・・「じゃあ、500円、1000円払っても買ってくれる雑誌を作るにはどうしたらいいか?」っていうとねえ、そういうところがやらないものをやるしかないわけよね。だから、同じなんじゃない、たぶん。


---  すごくもう・・・自分のことのように・・・(笑)。


都築:(笑)。いやだから、自分のことのように思ってくれるってことはたぶん、みんなが同じ作り方なんだよ。同じ・・・業界は違っても、大差ないんだよ、やってることは。


---  ・・・やっぱり、インタビューってすごく特殊な空間で、都築さんの場合は、3回くらいお会いしていて、今日こうやって改めてお話しさせて頂いてますけど、だいたい初めての方とお話しをして、初対面の方にそんなにいろんなお話しをして下さらないと思うんですよね。


都築:うん、しないよね、普通ね。


---  そういう環境を自分なりに理解しているつもりの上で、作られた作品なりのお話しをするわけですけど、自分の中でも"ルール"があって・・・。本当に好きな方とかお話ししたい方じゃないと、一切やらないって決めてるんですよね。


都築:それは正しい。すごく正しいんじゃないの?でもまあ、僕もインタビューが仕事なわけだよね。で、いろいろやるんですけど、やっぱさ、インタビューはだいたい初対面の人と1回会ってさ、「どれだけ引き出せるかの1対1の勝負」みたいな・・・っていうのは嘘(笑)っていう風に、僕は思うわけ。自分のやり方を考えると、そんなの出来っこないね。

だから、おもしろいのはさ、1回のインタビューで、完璧にいろいろ引き出そうってあんまり思うとね、失敗するんだよね。だから、僕もそれは自分でやって来て学んだことなんだけど、おもしろければ何回でも会えばいいんだよ。で、やっぱり、インタビューされて、まあいろいろ聞かれて、「はいはい」って終わるけど、例えばたまにさ・・・何か、食いついて来る奴っているわけよ。終わってまたすぐ連絡があって、「ここんとこだけもうちょっと聞きたいんですけど・・・」っていう人がたまにいるよね。で、そういう人のことは信頼出来るよね、やっぱりね。本当に答えたい気持ちがあればさ、嫌がらないと思うよ。だからさ、「そんな風にちゃんと聞いてくれてるんだ」っていう風に思うじゃない。

だからね、「おもしろければ、何回でも会いに行くんだ」って思えば、気は楽になると思うし、そういうのを受け入れない相手っていうのは逆に、大したことないよ(笑)。まあ、スケジュールとかで難しいのはしょうがないけどね、何度も何度もこれから・・・例えば1回の記事は、それで締め切りがあってだめかもしれないけど、「またやる」とかさ。「また取り上げさせて下さい」みたいなことをどんどん話してるとね、よくなって来るんじゃない?

だって、そう、スナックの記事作ってるのだってさ、いきなり行ってないからね。だいたいね、特にスナックなんかさこう、別にお金が絡んでるわけじゃないし、いきなり初対面で人生語ってくんないわけじゃん?


---  そうですね。


都築:ね。だからね、だいたいあくまでね、3回ぐらいは行くね、何も言わないで。で、ボトルも入れ(笑)、それなりにお金も時間も使い・・・ママさんとしてもちょっとね、断りづらい雰囲気を作っておいてから、「いや・・・実は・・・」みたいな感じで(笑)。「写真撮らしてもらっていい?」みたいな感じに持っていくっていうさ。で、終わった後も何回か行く・・・みたいな。そういう風にしないとなんないわけだよね。だからこう・・・一期一会みたいなのはさあ・・・あんまり、当てはまらないケースが多いっていう感じがするよね。 でもまあね、いろいろ言ってもさ、"媒体"を持ってるんだからさ、今さ。いる間は・・・どうせずっといるわけじゃないでしょうから(笑)。


---  (笑)。


都築:いる間にさ、"おもちゃ"だと思って、"与えられたおもちゃ"だと思って、使えるだけ使った方がいいよ。で、その期限が切れたら捨てればいいんだもん。まあ、自分が捨てられるんですけど(笑)、捨てたと思えばいいんだよ、そんなの。


---  そうですね。どんどん外に出て行こうと思います(笑)。


都築:いいんじゃなーい(笑)。でもさ、たぶん使い方が下手だと思うんだよね、HMVの人もね。だから例えばこうさあ、「売れる記事を作れ」って言うのはわかるよ。たぶんそういうことみんな言うだろうなって思うけど、そしたらさ、それなりのモチベーションを付けてあげなきゃ。そしたら、その記事によって、こんだけ店内のセールスが上がったら、それをボーナスとして、そのパーセンテージをもらうとかさ、そしたらがんばるでしょ?(笑)。


---  がんばっちゃいますね(笑)。


都築:でしょ?(笑)。ほら、やっぱり。売れない・・・知らないアーティストの作っても、売れっ子アーティストの作っても給料一緒じゃ、やんないよ、そんなのね。だから使い方だよ、それもね。


---  そうですね。だいたいあの・・・何か前例がないとか、「自分がやりたい」でやってるので、だいたい否定から入るんですよ(笑)。「そんなのやって、何になるんだ」って感じなんですけど・・・。


都築:嫌だあ、最低(笑)。ひどいね(笑)。だって、WEBでしょ?これ。


---  ええ。


都築:WEBなんて別にさあ、いいじゃん何だって!別にこう・・・そのページ読まなきゃいいだけだからさ。いくら作ったって、金が変わるわけじゃないでしょ・・・制作費変わんないわけじゃない、大してね。「印刷費が・・・」っていう紙媒体とは違うんだからさ。そりゃあさ、「売れ線の記事載せろ」っていうのはわかるけど、売れ線の記事1本でねえ、地味なアーティストの話しが10本あったって、別に制作コスト一緒なわけじゃない。巨大なサーバーにそのためにしなきゃいけないとかってわけじゃないんだからさ。「何でそんなに厳しいの?」って感じだよね?


---  うーん・・・(笑)。「店舗がどんどん売れない状況になってる」・・・っていうのが大きいかもしれないですね。先ほどのお話しじゃないですけど、広告にお金を払ってくれた会社がいい会社みたいな(笑)。


都築:ああ・・・もう、雑誌と一緒だね。


---  ええ。でもそれは、どのメディアにも言えることだと思うんですけど、テレビもそうですし・・・。みんな画一的で、やったらやったでやりっぱなしな上に、横一線に並んでて。都築さんはいろいろそうやって取材をされている中で、別に奇をてらおうとしてやっているわけじゃないじゃないですか?


都築:そうだよね。


---  だけど、そういう風に誤解されるっていうこともありますし・・・。


都築:あるよね。だけど、そういう・・・例えばじゃあ、雑誌はものすごいつまんないんだけど、みんな。でも、おもしろいのもあるわけよね?もう走りっぱなしの前衛の・・・雑誌とか実は、いろいろあるわけじゃない?それと同じように、音楽業界にもそれはあるわけだよ。例えばさ、こないだ・・・ここ2〜3週間くらいずっと、"東京右半分"っていう特集をMONOマガジンのために作っててさ、「上野・浅草・北千住へんが今熱い!」っていうような話しをさ、してたわけよ(笑)。


---  へえええ(笑)。


都築:でさ、浅草とかさ、すっごいいいレコード屋とかあるんだよね。それはね、若い店主がやっていて、演歌系なんだけど、演歌系だけじゃなくて、ラウンジ系とかもあるんだけど、もう、めちゃくちゃセンスいいわけよ。でさ、しかも2階には演芸場とかも持っていて、ライブもやるし・・・それで何か、特設コーナーとかもすごいいい品揃えなんだよね、セレクションが。「あ、いいな」とかって思うんだよね、素晴らしく・・・でさ、そういう店はさ、可能なわけじゃない。で、ミュージシャンでももちろん可能なわけだしさ。だからこう・・・HMVっていうのは大企業なわけよね、CD販売業界においては、もちろん。だけど、そういうぐったり来た時はやっぱりさ、ちっちゃくてがんばってるとこに行くとやる気になるじゃない。


---  そうですね(笑)。


都築:でしょう?(笑)。だからこう・・・渋谷らへんの輸入CD屋でおもしろいなって思ったことは、僕はあんまりないんだよね。結局もう、どんどん狭いとこ狭いとこ行くしかないわけだからさ、どれだけ見つけにくいレアものを置くか・・・っていうしかないわけだからさ。レアになればなるほどさ、それは狭くなって行くわけよね、少ない人達が高値を付けていくっていう。じゃあ、そうじゃないやり方をしてるっていうところがおもしろいわけじゃない?だから、そういう店とかをうろちょろしてたりすると、気合い入るよ(笑)。


---  気合いが・・・(笑)。


都築:うん。あとさあ・・・あっちはライブハウスとかもあるわけよね、結構さ。でね、ハードコア専門のCDショップ兼ギャラリーっていうのがね、浅草のそれも稲荷町にあるわけよ。


---  へえー、浅草すごいですね。


都築:すごいのよ。今ね、上野、浅草、すっごいおもしろい。それでさあ、もう「デスメタルとブラックメタルしかない・・・っていうのは、どう違うんですか?」みたいに聞くと(笑)、「すごい違うんですよ!」って言うんだけど、「聞いてもわからん・・・」っていう、その違いが(笑)。「ブラックメタルのライブがちょうど今日、蔵前であるんですけど・・・」って言うから、「行く行く行く」って行ったら、やっぱりさ、蔵前のすっごい住宅街の地下みたいなとこにライブハウスがあって、ブラックメタルのバンドだけがさ、5〜6組出てさ、「わあああ」とかってやってるわけよ(笑)。で、もう満杯みたいなさ。全員真っ黒、全員タトゥーみたいな感じで、すごいいい奴らがね、メタルだからさ(笑)、実直ないい子達なんだけど。それでこう、「何でこんなところにCD屋でギャラリーやんの?」っていう話しなんだけど、やっぱあの辺はね、仏壇屋のエリアなんだよね、日本一大っきな。仏壇とか位牌とか、そんなのしか売ってないけど、ばーって。で、なんかちょっと、イメージもあれだし、ちょっと安いわけだよ、家賃が。で、なかなかみんなが行かないとこだし、都心なのにね。だからまず、家賃が安い。


---  家賃、安いんですね。


都築:うん、安い、安い。他に比べるとちょっとね。「周り、仏壇とか位牌でしょ?もうねえ、デスメタルにはぴったりなんですよ」って。「なるほどー」ってさ(笑)。


---  そっかあ(笑)。


都築:「うちらは全然、こういうのむしろばっちりなんですよね」って(笑)。「そうかー」って言うんでさあ。だから、そういうおもしろいことやってる子達は、たくさんいるわけだよね。だからさあ、もうやったもん勝ちなんですから、そういうのはね。腐ってる・・・嫌なことあった場合は、そういうとこ行ったらいいんじゃないの?


---  そうですね。


都築:そう、で、そのうち「自分でやる」と。


---  自分でやるの・・・でもちょっと、何年後になるかちょっとわかんないんですけど・・・(笑)。


都築:何年とか・・・だって何年もさあ、待つ気力あんの?そのうち疲れちゃうよ、そんなの。で、そのうち上司になるんだよ?そうすると、もっと上、もっと上司から、「セールスがよくない」とかっていう感じになって、誰かにそうやって、同じこと言うようになるんだよ?


---  そんな風になるのは嫌です・・・(笑)。


都築:嫌でしょ?(笑)。そういう前例をたくさん見てるわけでしょ?今ね。そうなっちゃった人達を。今ね、長澤さんにそうやって文句言ってるおっさん達も、昔は同じことを言われていたと思うわけよ、たぶん。「お前さ、好きなことだけじゃないんだよ」って言うさ。だから、一緒なんだよ、それはさ。だから、今は軽症なんだけど、病気としては。重症患者を見てるわけじゃない?(笑)。


---  ええ(笑)。


都築:だからさ、そこをどう回避するかっていうことも考えた方がいいかもしんないよね。でも、嫌だったら自分でやっちゃえばいいじゃん。


---  今、いろいろ・・・自分で取材をしたりして、それを形にすることにすごく、悦びを覚えているところがあって。本当はすごく素晴らしいものなのに、「宣伝されてないから知らない」っていう、埋もれてるものを広めたいといいますか・・・。取材に関しては、とりあえず自分が行くしかなくて、どう転ぶかも全くわかんないんですけど、でもやっぱり、「何か気になる」っていうのは・・・。


都築:そうだよ、何かあんだよ。


---  「何かある」んですよね。


都築:だからこう、いろいろみんな、好きなことがはっきりしていて、テイストがね、ちゃんとしている人ほどまあだいたい、壁にぶつかるに決まってるわけよね、それはね。他と違うことをやるってことはさ、「みんなの賛同を得れない」ってことなんだから、要するにね?それはもう、しょうがない・・・宿命なんだからさ。だからさ、そういう時にはやっぱり、さらに自分を押し上げてくれるのは、同じことをやってる人を見つけるってことだよ。同じことやって苦労して、でもハッピーな人を見つければ、「自分も出来る」って、ね。






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