--- 7月17、18日渋谷のDUOで、「オール・シッティング」と「オール・スタンディング」の2daysライヴを行うわけなんですが。
菊地 そう。そこでちょっと実験してみたんですよね(笑)。張ってみたんですよ(笑)。
--- 自ずとファッションに違いも・・・。
菊地 シッティングの人は、もう見慣れたヒトっていうか。ドレスダウン・シッティングっていうのは、すでにカタチになってるんで。ぶっちゃけ、こんなのお家事情になりますけど(笑)、シッティングの方は、キップがほぼ売り切れてるのに対して、スタンディングは、多分戸惑いが出てるんでしょうね、ほとんど売れてないんで(笑)。どうしていいか分かんないと思うんですよ。何着てどうすればいいかっていうことが。
スーツで行ったら、1曲目でぐしょぐしょになるじゃない。7月にさ、どんなに冷房効いてたって。スタンディングってことは、すぐ脇に人がいるわけだから。かといって、Tシャツで行っていいの?っていうのもあるんだろうし。日本人の良い所とも悪い所とも言えるんだけど、全員Tシャツでいいって言ってあげれば、Tシャツで来ると思うんだけど、黙ってるからまだ。すると、オレTシャツで行って、前の方にスーツがいたらヤダなっていうさ(笑)。スーツの人だって、オレせっかくスーツで来たのに、後ろにTシャツがいたらヤダって思うはずなんですよ(笑)。だから、そこが調整とれてないおかげで、チケットが伸び悩んでいるんで(笑)。
--- 着て行く物が分からなくて、チケットが余ってるってすごい事ですよね(笑)。
菊地 そうね(笑)。ロックのコンサートみたいだよね。まぁ・・・本当は何でもいいってなっちゃって。J-Popみたいに、何だっていいぞと。それが一番マーケット広くとってるわけだから。何だっていいにしちゃえば、いいんでしょうけど。ただ、オールスタンディングってことは、何だっていいっていうことじゃなくて、「踊る」ってことが含まれちゃってるから。踊れない人もいっぱいいると思うんだよね、ジャズ・ファンで。踊るの恥ずかしいとかさ(笑)、当たり前だけど。ジャズ喫茶スタイルでこう、軽くリズムとりたいのに、立っちゃったらできないですからね。踊ったことない人に踊れっていうのは、酷ですからね。
問題になっているのは、踊る気満々だけど、どの格好で行くかってことになっちゃってると。踊れない人が、「スタンディングだったら行かないわ」っていうのは判断早いし、動かないですから。・・・だから、まぁ、みんなで考えようっていうね(笑)。ていうか、「レイヴの格好でいいですよ」って一言言っちゃえばいいんですけどね。近日中に言おうと思ってたんですけど(笑)。
--- 例えば、菊地さんだったらどういった格好で?
菊地 例えば、アコースティック・ジャズのライヴに行くとして。ダンス志向のね、ガンガンにモーダルで踊れて、クラブでやると。で、夏だと。ボクだったらスーツ着て行くけど。ボクは、結構そういうことに金や負荷がかかることに抵抗のない人間なんで。例えば、着替え持ってってね。踊り狂っちゃって、駅で着替えたって全然問題ない人ですから、そうしますけど。誰もがっていうわけには、ね。
ボクだったら、スーツ2着持って行くかもしれないですね。で、着替えて。汗かいちゃった髪だけは、しょうがないんだけど、その後飲みに行ったりできるから。
あとは、夏のフォーマルもあるもんね。それこそ半ズボンで、ポロシャツで。よく言うのは、『真夏の夜のジャズ』って映画あるじゃない?割り合い何でもそうだけど、「古典が全て」っていうところがあって。あの映画って、すごい客席が映るんだけど、どんな人が観てるのかっていう。何食ってるとかさ、すごい勉強になるんだけど。何の雑誌読んでるとかさ。
あれは、58年だから、来るべき60年代っていう時代に、すでにカジュアル・ダウンしている人もいるの。だけど、フォーマルの人もいて。午前中の部では、こんなツバのでっかい帽子被って、「甘い生活」みたいなドレスアップした女の人がいるかと思えば(笑)、夜は、Tシャツにハンチングの黒人がいたりするんですよ、逆に。まぁ、全員オシャレですけどね。だから、あれの涼しそうな格好を参考にすればっていう(笑)。言っていけば、そりゃあ色々あるんですよね(笑)。
夜になるにつれ涼しいのに、夜に向けて半ズボンが増えてって。多分、それは、夜の開放的な気分ってことなんだろうけど。昼日中で、人目がある時は、日傘差して、もうシャンゼリゼみたいな人がたくさんいて。昼の方が、ドレスアップ率高いんですよ。だから、あの映画は、いい映画だから、演奏も勿論だけど客席を映すシーンがいいんで、よく観てくださいよって常にアナウンスしているんですよ。
--- ファッションの面も含めて参考に、と。
菊地 ただね、やっぱり密室でタコ踊りしてる映画じゃないんで。踊っている人もいるのよ。チコ・ハミルトンのバンドで軽く踊る人がいるんだけど。アニタ・オデイとか踊ってるんだけど・・・外だし、涼しげじゃないですか?(笑) だから、密室でタコ踊りは前例がないんで。Youtube時代だから、色んなものが観れるからねぇ。まぁ、立ったり座ったりが、簡単にできればいいんですけどね。
--- その2daysライヴに先がけ、Dub Sextetの2枚目のアルバム『Dub Orbits』がリリースされるのですが、こちらのアートワークを、宇川直弘さんが手掛けていますよね。
菊地 意味合いとしては、ジャズのジャケットをやったことがない人がやるという感じですかね。一言で言うと。
--- 宇川さんとは、以前に対談をされて、すごい盛り上がったようですね。
菊地 宇川くんは誰とも盛り上がるんですよ(笑)。対談は、1年前ですけど、つい先ごろ出たんですよ。まぁ、天才ですよね。大冒険ですけどね。いくらでも渋くジャズっぽく作ることはできるんですが、それはボクの仕事じゃないだろうってことで。ハーフ・エレクトロのアコースティック・ジャズ・アルバムで、宇川くんがジャケットやるってことの方が、自分の仕事だっていうようなところでしょうか。
--- 常に、そういうちょっとしたギャップみたいなものを取り入れるという・・・
菊地 そうですね。ボクは、半分は完全にコンサバティヴで、半分は完全にアヴァンギャルドじゃないと気が済まないっていう。全アバンギャルドみたいなのはイヤなんですよ。完全なコンサバにもなり切れないですし。そういうバランスですよね。
カニエとファレル、
つまり東海岸の中堅・若手を中心に、
ブラック・ミュージックとパリ・モードは、
長らくディヴァイスされていましたけど、また戻るんだと。
--- ここでまた、お話を『M / D マイルス・デューイ・デイヴィスV世研究』に移させていただきたいのですが。高村是州さん、大谷能生さんとの鼎談で、高村さんが「ヒップホップ・ファッションを最後に、90年代以降、現在に至るまで、コンセプトからスタイルが生まれるということがありません・・・(中略)・・・ここ15年くらいは過去のスタイルやアイテムを解体/再構築したスタイル・リミックスが主流になっています。」とおっしゃているのですが、菊地さんご自身は、今後、音楽とモードの関係はどうなっていくと予想されていたりしますか?
菊地 ボクは、そこまで目配せして全ジャンルの音楽を聴いていないし、服飾も、ファッション・ショーは観ますけど、売れ行きとかまでは判らないっていうのがあって。ファッション・ショーも、仕事で観てるのは、パリ、ミラノだけなんで。ニューヨーク、ロンドンは、趣味の範囲で好きなものしか観てないんですよ。パリ、ミラノは、仕事だからつぶさに観なきゃいけないんだけど。
デパートも好きだから、行きますけど・・・例えば、女性誌の赤文字系とか読まないしさ。だから、全部見てるわけじゃないんで、統括的に音楽全体、服飾全体を語るってことは、到底無理なんですが。すごく局小的な動きで言えば、それこそ『服は何故音楽を必要とするのか?』にも書いてあるんだけど、ブラック・ミュージックとパリ・モードは今年・・・この本っていうのはね、ブラック・ミュージックとパリ・モードがやがてくっ付くよっていう本なんですよ、簡単に言うと。
--- パリコレ期間中、様々なブランドにカニエ・ウエストが現れて。
菊地 うん、そうです。カニエとファレル、つまり東海岸の中堅・若手を中心に、ブラック・ミュージックとパリ・モードは、長らくディヴァイスされていましたけど、また戻るんだと。服飾史的に言うと・・・ブラック・カルチャー史的に言ってもいいけど、もう、フードの時代が終わっちゃうっていうね。フードの時代が終わった後に、ブラック・カルチャーが、どんなウェアリングになるかっていうのを考えた時に、とりあえず今のところは、シャネルやヴィトンに縋ってるカタチなのね。
CHANELやLOUIE VUITTONもブラック・カルチャーの要素がちょっと欲しいんですよ。でね、今慶應大学でやってる講義が、まさにその講義なんですよ。『M / D 』と、『服は何故〜』を併せたものをね。
ファレルとVUITTON、カニエと何とかって、あるわけですよね。その間の緩衝材に入ってるのが、NIGOさんと村上(隆)さんなの。NIGOさん、村上さんっていうと、すごいお金持ちの成功者っていうイメージしかないかもしれないですけど(笑)、要するに、「ジャパニメーション・カルチャー」ですよね。オタク、マンガ、フィギュアっていうのを触媒に、パリとニューヨークのブラック・ミュージックがくっ付き始めてるわけね。そういう意味で、日本人が結構重要な役回りをしているっていう。ここでの役回りは、子供っぽいっていうことなんですよね。で、オタクだっていうね。
ブラック・ミュージックとパリコレっていうのは、どっちも20世紀のもので。19世紀にパリコレはなかったし、北米の黒人音楽もなかったよね。アフリカ大陸のトライバルな音楽は0世紀からあったとは思いますけど(笑)。どっちも、ここ100年の文化で、言ってみれば、パリ万博以後なんですよね。
で、どっちもかなり大人っぽいと思うんですよ。20世紀っていうのは、人間を子供っぽくした世紀で。レコードと映画によってね。それまでは、オペラだったんで。それが、レコード、テレビ、映画、ラジオってなって、どんどん家で一人でできるようになって、パソコンってなって、ブログ、携帯ってなっていく中で、この2つには、社交性というか、人との接触があるっていうね。
黒人音楽っていうのは、アフリカのダンスから、スウィング・ジャズ、ビバップ、ヒップホップに至るまで、「バトル」が前提になっているし。要するに、バトルしていく、戦うんだっていうね。人種差別が原点になっているところもあるし。あと、パリ・モードっていうのは、社交の場があって。「あの人のネックレスはダサい」とかさ、直接言わないけど思ってるとかさ、そういうのはすごく大人っぽい関係じゃないですか(笑)。牽制してパーティーに来てるけど。
だから、パリ・モード、つまりファッション・ショーの世界と、ブラック・ミュージックの現場っていうのは、ものすごく大人っぽいの、そういう意味では。あとはみんな子供っぽくなっちゃったよね。北米のものは、みんな子供っぽくなっちゃったし、ロックは、永遠にキッズだし。
その2つが、ちょっと疲れたんでしょうね、大人でいることに。やっぱり、息抜き的なところで、ヒップホップだとNIGOさんだとかさ、そういうのがうれしいわけよ(笑)、アニメとかさ。それをきっかけに、中詰材のようにしてくっ付いてきてるっていうのが今の状況なんですよ。