「ケーゲルの《ポーギーとベス》は超強烈」
Monday, March 10th 2008
連載 許光俊の言いたい放題 第139回
「ケーゲルの《ポーギーとベス》は超強烈」
今発売されている『一個人』(KKベストセラーズ)という雑誌で、私は珍しく「不滅の名盤ザ・ベスト100」などというページに参加している。
実は私は「名盤」という呼称が大嫌いである。その理由については『クラシック名盤バトル』(洋泉社新書)の序文で述べたが、もう本当に大嫌いなのである。ついでに言うと、何のデリカシーもなく「名盤」という言葉を使う人間も嫌いである。
そして「ベスト100」という言い方も猛烈に嫌いである。芸術においてランクや順番になど何の意味もない。私個人が「これは私が今まで聴いた中でも特に忘れられない5つ」などと言うならともかく、どの程度の審美眼があるかも疑わしい数人の意見を総合し、点を足して何の意味がある?
というわけで、このような企画の仕事は普段なら絶対に受けない。しかし、何事にもタイミングというか、偶然というものがつきまとう。たまたまこの原稿依頼が来る前々日、私は授業の打ち上げで学生約20人と飲み屋に行って、けっこう散財していたのだ。
そんなとき、大学あてにやってきた依頼のファックス・・・。「モーツァルトもベートーヴェンも金のための仕事をしているわけだし、ま、いいか」と私も引き受けることにしたのである。われながら、モーツァルトやベートーヴェンを引き合いに出して納得するところが哀れだと思うが、これ以上愚痴というか言い訳を続けると週刊「文春」の「ツチヤの口車」(土屋賢二)みたいになるから止めておこう。
蛇足ながら、悪銭身に付かず。それからまもなく、私はまた学生数人を連れて焼肉屋に行き、再び散財したのであった。あ、悪銭などと言っては、出版社に申し訳ありませんね。誤りがてら宣伝するわけではないが、この雑誌、680円フルカラーなので、自分で買うのもいいけど、病院の待合室に置いておくといいと思います。
ちなみに、これまた余談ながら、学生にどれくらいごちそうするかは、教員にとっては場合によっては研究以上の大問題、永遠に解けない難問と言ってもよいくらいだが、これについてはそのうち本にでも書こうと思う。

冗談はさておき、近々、ヘルベルト・ケーゲルが若い頃に録音したCDが何枚も出る(ドリームライフ)。ズバリ、最高のお薦めはガーシュイン「ポーギーとベス」だ。東独のガーシュイン演奏というと、クルト・マズアとゲヴァントハウス管弦楽団による冴えない演奏を思い出す人もいるかもしれない。かつて私が制作者から聞いたところによると、あのマズア盤は、あえてまったくアメリカンでない、ある種ダサい音楽を記録したくて録音されたのだという。何とも意地悪なように思えるが、東ドイツに残っていたいにしえの感性を保存しておきたかったらしいのだ。
ケーゲルはあの生ぬるい演奏とはまさに正反対である。というより、実はひそかにガーシュイン好きの私がチェックした限りでも他に類を見ない異常ハイテンション演奏なのである。冒頭からして、眩しい太陽の光が直接目を射るかのようなものすごいエネルギー感に圧倒される。この指揮者が録音した「カルミナ・ブラーナ」(強烈なほう)、あるいは「カルメン」を想像すればよい。壮年期のケーゲルならではの弦楽器が空気を切り裂くような、まるで現代音楽のような開始である。この最初の数秒だけで悶絶できる。
その後一転、真夜中のような不気味さ、寂しさが漂い出す。暗い部分、感傷的な部分がマーラーみたいに濃く、ニュアンスの豊かさが並でない。硬軟極度のコントラストを持つ演奏なのである。
「ポーギー」組曲をこんなに超真剣、超シリアス、超熱狂的に指揮した人もいないだろう。畏怖、畏敬すら覚えさせられ、これに比べれば他の「ポーギー」演奏はすべてお気楽な遊びのようにしか思えなくなる。これでこそ「ポーギー」が「スラム街の『ロミオとジュリエット』」と呼ばれることに納得がいくのである。15分ばかりの曲だが、満腹感を与えられる。この1曲が聴けただけでも、今回のシリーズは価値があった。
他ではすばらしい緊張感と充実を示すベートーヴェンの「レオノーレ」序曲第2番、きりりと引き締まったハイドンの交響曲第4番がことのほか印象的だった。後者は昨今の遊戯的ハイドン演奏の対極にあり、超辛口だ。
(きょみつとし 音楽評論家、慶応大学教授)
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German Traditional Conductors Vol.10
Mussorgsky, Modest (1839-1881)
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Orff, Carl (1895-1982)
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