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ウーター・ヘメル来日記念インタビュー★

2007年12月5日 (水)


 ジャズ・シーンに颯爽と現れた「ポップ・ジャズ」の超新星シンガー☆
  ウーター・ヘメル  スペシャル・インタビュー  1/2
 

Wouter Hamel

 

 Jazzanova主宰の<Sonar Kollektiv>より、歌心溢れる名作の数々をリリースしてきたBenny Singsプロデュースの元、颯爽とシーンに登場したオランダの新星Wouter Hamel。

耳の早いリスナーの間では、日本盤がリリースされる前から注目を集めていた彼が、この度、デビュー・アルバム「Hamel」の日本盤リリースに伴いプロモーション来日しました!

日毎寒さを増す一方、彼が来日してからの天気は常に晴れ!という、そんな晴れ男(?)なWouter Hamelに、HMVがインタビューを行って参りました!長旅に加えて連日取材をこなし、疲れているのにも関わらず、終始、ジャケットの通りの甘いマスクを絶やす事なく、柔和な姿勢でこちらの質問に答えてくれました。最後までどうぞご高覧下さいませ。

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(テキスト構成:





Wouter HamelWouter Hamel / Hamel



曲目: Details / Cheap Chardonnay / Just What I Need / Fantastic / Breezy / Ride That Sunbeam / A Distant Melody / Nothing's Any Good / Interpretation Of Love / Don't Ask / Would You / Useless Fraud


 

-来日は今回が初めてですか?

「そう、はじめてだよ」

-日本の印象はどうですか?

「とにかく楽しい街だね!今回はスケジュールが詰まっているから、あまり色んな所に行けないのが残念なんだけど・・・あっ、別にインタビューとかの取材のせいだっていうわけじゃないよ(笑)!そうだね、次の来日は2月なんだけど、時間があったらもっと東京を探索してみたいし、京都にも行ってみたいね」

-京都は良い街ですよ。時間があったら是非行ってみて下さいね

「東京は凄く時間の流れが早い印象があるけど、京都はその逆でとてもゆったりとした街っていうイメージがあるんだ。オールド・ジャパン、昔の日本の建造物とかも沢山残っているんでしょ?京都でゆったりとした時間の流れを感じてみたいね」


-では、まずはあなたのここまでの足どりをお聞きしたいのですが。幼い頃の音楽環境はどのようなものでしたか?

「僕の母がAndrew Sistersのようなヴォーカル・コーラスのグループが好きでよく聴いていたから、僕も小さい頃はそういう音楽をよく聴いて、母と一緒にハモりながら歌ってたりしてたよ。その後は意外かもしれないけどMadonnaNirvanaSmashing PumpkinsJeff Buckleyなんかをよく聴いて、ティーンエイジの頃はよく居る若者の様に、歪んだ音のギターを弾いたりもしてたね」

-2005年にオランダのジャズ・ヴォーカリスト・コンペで優勝し、世界的に有名なノース・シー・ジャズ・フェスティバルへ参加となるわけですが、この頃はまだすぐにデビュー出来るという状況ではなかったのでしょうか?

「そういう経緯もあったんだけど、その頃はまだ全然そういう状況ではなかったね。まだアーティストとしての自分のスタイルも確立されてなかったし・・・その後、自分でバンドを組んでライブをしたり、プロモーション活動をしたりと地道に活動していたんだけど、2006年にこのアルバムのプロデューサー、Benny Singsと出会ったのが大きな転機となったんだ」

-このノース・シー・ジャズ・フェスティバルですが、やはりオランダの音楽シーンの活性化という点においても大きな意味合いを持っているのでしょうか?

「そうだね。Sly StoneMarcus Miller等の大御所から、僕達みたいな新人まで幅広く出演しているから、僕達みたいな新人にとってはとても勉強になることが多く、名誉な事なんだ。新たな才能の育成という点にとっても、とても大きな意味のあるフェスティバルだね」

-プロデューサーであるBenny Singsと出会うきっかけはなんだったのですか?

「今回のアルバムを発売している<dox records>のオーナーのBart Suerが、僕のライブを見に来てくれた事があって、その時に歌声に魅力を感じてくれたんだ。だけど、楽曲面においてはまだまだ勉強が必要だ、という事で、その点を色々と学んで欲しいというのも含めてBenny Singsを紹介してくれたんだ。それから2人で楽曲を作り始めて、僕も次第に自分のスタイルというものを確立していったんだ」

-彼の様なクロスオーバーなスタイルと共感する点は多いですか?

「彼は元々ヒップ・ホップのバック・グラウンドを持っていて、僕のバック・グラウンドはジャズと、そこはそれぞれ異なるんだけど、メロディーを大切にする音楽というか、誰もがすぐに口ずさめるような音楽、つまりポップ・ミュージックだね。その点においては、お互いがとても高い意識を持って共感出来ているんだ。偶然にも同い年で誕生日が1ヶ月しか違わないという事もあるし、寝る間も惜しんで作業するワーカホリックな性格も同じ。僕がこうしたい、彼がこうしたい、というお互いの意見や主張も凄く尊重し合っているし、これまでに喧嘩をした事もないよ。とても良いパートナーだね」

-あなたのバック・グラウンドのパーセンテージを多く占めているジャズですが、ジャズとその他の音楽に違いがあるとしたらなんでしょうか?ジャズならではの魅力とは・・・。
 

「実は、僕の音楽はオランダでは殆どの人がジャズと思っていないんだけど・・・ジャズはポップと違って音楽構成が凄く複雑だったりって事かな。コードも沢山使うし、インプロもする。人によってジャズの定義は異なるから難しいけど・・・そうだね、例えて言うならポップなBritney Spearsを身近という意味合いでトヨタカーとすると、Ella FitzgeraldSarah Vaughanはリムジンみたいな感じかな(笑)。 あ、これは決してトヨタカーをバカにしているわけじゃないよ!(笑) つまり、ジャズは凄くゴージャズでリッチな感じ。そういうところに魅力があると思うな」

-今回のアルバムに収録された楽曲ですが、これらは新たに書き下ろしたものが殆どなのでしょうか?

-確かリリースまで2年かかったんですよね?
Wouter Hamel

「『Fantastic』と『Would you』以外は、このアルバムに向けてBennyと新たに制作した楽曲だよ。Bennyとの初めての打ち合わせの時に「曲を書いて持ってきてくれ」って言われたんだ。宿題みたいにね(笑)。 で、その時10曲作って持っていったんだけど、殆どがボツになっちゃったんだ。でもその中の『Fantastic』に関しては“これはいい曲だね”って事で残って、最終的にアルバムにも収録されたんだ。『Would you』は、とあるジャズのコンペティションで披露する為に書いた楽曲なんだ。残念ながらこのコンペティションでは、何か賞を貰えるっていう結果には至らなかったんだけどね(笑)」

-「Don't Ask」と「Breezy」が、このアルバムの中で一際ポップなナンバーですが、この2曲をリード・トラックに持ってきたのは何か意図するものや特別なコンセプトがあったのですか?

「これに関しては、プロモーションやマーケティングの担当者、レコード会社の皆が色々と協議してやってくれたから、彼らを尊重して僕は特に口を挟んだりはしていないんだ。まぁ『Useless Fraud』の様なチョット暗い感じの曲をリードにするわけにもいかないしね(笑)。やっぱり、この2曲はとてもポップなナンバーだから、 リード・トラックになったのは自然な流れだと思うよ」

   -「Don't Ask」も「Breezy」も、非常にストリート感溢れる軽やかなPVに仕上がっていますね。これはあなたのアイデアですか?  

「ビデオのディレクターが自分達のアイデアをとても大事にしてくれてね。実は、『Breezy』のPVに出てくる人達は、僕の友達なんだよ。彼等や、隣に居るdox recordsのLindaさんからも、沢山意見をしてもらって出来上がったんだ。『Don't ask』 も同じく自分達のアイデアで、パソコンの画面に人の顔が出てくるじゃない?あれはYoutubeを通じて有名になったシンガー達で、そういう映像も今の時代らしくて面白いかなって思いながらやってみたんだ。周りがみんな友達だから自然体で撮影出来たし、結果的にとても良いビデオが出来たよ!」

  -このアルバムにはジャズをはじめ、色んな要素が詰まっていると思いますが、あえて一言、もしくはシンプルにこのアルバムを表現するとしたら?

「う〜ん、難しいね・・・『Hamel』!いや・・・“ジャズ・ポップ”、もしくは逆で“ポップ・ジャズ”かなぁ・・・(笑)」

-楽曲が非常にストーリー性に富んでいて、メロディーを大事にしている感を覚えますが、作曲/編曲方法についてのスタイルをお聞かせ下さい。

「編曲はBennyと色々相談しながらだね。作曲に関しては、まだちゃんと曲を書き始めてから1年半ぐらいだから確立されていない部分も多いんだけど、1つのパターンはハッキリしているね。それは、僕の場合はまず詞があって、その詞の持っているリズムを考え、それからそこにメロディーをつけていく、っていうことかな。例えばさっき話しにも出てきた『Useless Fraud』なんだけど、これは歌詞は随分前に出来ていたんだけど、メロディーが出来ないまましばらく経っていたんだ。それから友達との約束なんかがあったりして、でもあと5分でメロディーを作ってBennyに聴かせなきゃ!っていう状況で焦って作ったんだ(笑)。でも既に詞は出来ていたから、そんな状況でもすんなりメロディーが出てきたんだ。だから僕の場合の作曲方法は、まず詞があって、詞ありき、っていう感じだね」

-その詞の内容ですが、切なかったり、ロマンチックなラヴ・ソングが多いですが、インスピレーションはどういうところから受けているのでしょうか?

「もちろん、日常生活やこれまでの恋愛経験が詞に反映されている部分はとても多いんだけど、僕は言葉が持つ意味自体にとても興味を持っているから、読書をよくしているんだ。普段は第一言語のオランダ語を話しているけど、詞を書く時は英語だから、英語で書かれた本はとても沢山読んでいるよ。その中から、言葉の表現方法を学ぶことも多いね」

-「Just What I Need」ではChet BakerやDean Martinのようなソフトなヴォーカルを披露していますね。この辺りのアーティストはやはりあなたにとって特別な存在でしょうか?

「この曲はBennyのライブの時のサウンド・エンジニアでもあるDean Tippetが作った曲なんだけど、元々はテンポが早くて明るめの曲だったんだ。それをもっとムードのあるソフトな感じにしたくて、最終的にアレンジを加えたりしてこういう楽曲に仕上がったんだ。曲自体もいいし、僕も凄く親しみをもっている曲だよ。とにかく、Chet BakerDean Martinも僕が凄く好きなアーティストだから、そう言ってもらえるととても嬉しいね。ありがとう!」

-「Details」、「A Distant Melody」で効果的に取り入れられているビッグバンド・サウンドはプログラミングですか?懐かしさがありつつも、新しい感じもする、良いスウィング感ですよね。

「Bennyの曲作りの過程にサンプリングは必要不可欠だから、自然と沢山使う事になるんだけど、Benjamin Hermanが参加している曲以外で聴けるホーンのサウンドは、ほぼプログラミング/サンプリングだね。でも、例えばKanye Westみたいに、というと語弊があるかもしれないけど…、単純にサンプルを切って貼り付けてループさせて一曲出来ました、みたいな形で曲を作るのは嫌だから、サンプル自体に色々と手を加えてオリジナリティを持たせたりしてから、楽曲の一部として組み込んだりしているんだ。良いスウィング感が出てるって言ってくれるのも、そんな風に手間を掛けて作ったっていう成果の表れかな(笑)」



―続く―
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