-わかりました(笑)。ではまたアルバムを聴いた感想からお聞きしたいのですが、このアルバムはメロディーが素晴らしく、それがthe samosの肝でもあると思うのですが、ダンスミュージックとロックをクロスオーヴァーさせて表現する上でメロディーに注力していったという、そこへのこだわりがもしあるのならば教えてください。
Shigeo:「さっきのコラージュの話じゃないですけど、色々なものを繋いでいく糸の役目をメロディーが果たしてると僕は思います。ビートとか、ダンスというものと、端的に言えばロックっていうものを歌で繋ぐっていう。それがひとつと、あとは歌モノが好きだったっていうね、単純に(笑)。テクノでも歌がのってる物あるじゃないですか。意外とそういうものに魅かれていくんですよ。ずっと歌が入ってないMIXに歌モノがポっと入っていた時に、やっぱりそこを軸に聴いてしまう自分がいて。そういうものに歌が乗っかっているというのがホントに根っから好きなんだなって」
-こだわり、という点ではどうですか
Shigeo:「こだわり…。好きだから以外には…。でもこだわりかぁ…。難しいっすね(笑)」
Ohishi:「あれじゃないですか?蕎麦粉となんかの“つなぎ”みたいな。分離しちゃうところを、つなぎの割合? 曲によって7:3なのか」
Shigeo:「あー、割蕎的解釈ね」
Ohishi:「つなぎなんだけど、なくちゃいけないもの…。うーん、なんだろうな? よくわかんなくなってきた(笑)」
Shigeo:「そ整合性があるようにこだわっているというか。“これとこれって分離しちゃうものだよね?”っていうのを1個にして、それが何かと何かを併せたものだという事がわからないようにしているのがこだわりかもしれない。それでいいですかね?(笑」
-はい、大丈夫です! ありがとうございます。では話はがらっと変わりますが、2000年代に入りニュー・ウェイヴやニュー・レイヴなど、80年代、90年代のダンスカルチャーの勃興がUKを中心として注目を浴びていますが、そのような欧米のシーンに対して意識的かつ影響を受けた部分というところはありますか?
Shigeo:「ニュー・ウェイブは常に心の中にあるというか。ニュー・ウェイヴっていうのはもともと“あったものじゃないもの”として、出てきた時にはきっとマイノリティだったと思うんですよ。その辺りは意識というか、影響はものすごく受けていると思います。ニュー・レイヴに対しては意識は…ニュー・レイヴ系と言われている人達の中に好きな人はいますが、意識は別にしていないというか。うーん…、ちょっと実態がわからない気はします…。ニュー・レイブに関しては、ファッション性が高いっていうのが僕の認識なんですけど、その辺は面白いと思いますね。単に音楽をやってるわけじゃなくて、ファッション的な打ち出しが観に来てる人達にもあったり、やってる人達にもあるっていうのは、すごく共感できる部分です」
-なるほど、確かにthe samosのライブを観てファッション的な打ち出しもあるな、と思っていたんですけど、やはりそういう影響はあったんですね。では今度はShigeoさんのヴォーカリゼイションについてお聞きしたいのですが、どこかアメリカのオルタナティブなバンド、90年代のペイヴメントなどの先人達が築き上げてきた浮遊感があって、ロックのカタルシスを強引に表現するものとは一線を画した感覚を受けるのですが、そのような音楽からの影響もあるのでしょうか?
Shigeo:「僕は意外と、歌唱能力とか声そのものが突出して良いわけじゃないヴォーカリストが好きだったりするんですよ。それこそ元々ギターリストが(ヴォーカルが)いなくなったからって歌わざるを得なくなったNew Orderにもすごくロマンを感じるし、後はDinosaur Jr.のジェイ・マスシスとかFlaming Lipsのウェイン・コインとか、ニュアンス勝負で技術を押し切っちゃてる人が好きで、自分もそこまで行けたらいいなって思っています」
-なるほど。では次にお聞きしたい点なのですが、UKの90年代初頭のストーン・ローゼスが成し遂げたセカンド・サマー・オブ・ラヴの喧噪や、アシッド・ハウスというテクノ&ハウスミュージックの潮流をロック・バンドとして鳴らし得た空気に似通った空気感をthe samosから感じるのですが、この頃の音楽シーンからの影響はあるのでしょうか?
Shigeo:「影響はあると思います。Stone Rosesとか大好きです。で、基本的にまだ僕は90年代が青春というか、こういったもののファースト・インパクトから抜け出てない気がします。だから結局そこに戻って行っちゃうというか。それ以上の衝撃を最近は受けないですし。まあ結局、雛が最初に見たものを親と思うみたいな、それに似た状態というか、最初に受けたインパクトがその後の表現の出発点になっているという部分では、影響受けまくり、というか」
-影響受けまくりですか。じゃあこの頃、Stone Rosesもそうですけど他にもOrbitalとかPrimalとか、その辺りも好きでしたか?
Ohishi:「そうですね。好きというか、もう僕が聴き始めた頃には当たり前のものとしてあったので。だからそういう融合が新しいという次元ではなくて」
Shigeo:「こういうもんだっていうね」
Ohishi:「そう、そういうもんだと思って聴いているので、そこが出てくるのは必然というか、うん、当たり前のように好きだし。ロックとダンスの違和感がない、というか」
Shigeo:「それとして聴いてたって感じだよね」
Ohishi:「うん。ロックはこうあるべき、テクノはこうあるべきというのが無いところで育っているので、今、the samosがそれをやっているのはすごく必然的ですね。Kraftwerkがテクノの全てだとも思わないし、Beatlesがロックの全てだとも思わないですね」
-実はthe samosを最初に聴いた時に何故かイギリスの情景が頭に浮かんだんですが、これで理由がよくわかりました。ではまた話は変わりますが、the samosはアートの面も含め全ての音楽活動において、コンセプチャルな活動を推し進めていると感じるのですが、そういった表現はthe samosを成り立たせる上で欠かせないものなのでしょうか?
Shigeo:「そうですね。トータリティーの部分で、自分達で監修するっていうのは凄く理にかなっている事だと思ってやっています。アートワークにしても自分達の推したいファッションやライブのスタイルにしても、それを自らで提示出来るという事は、自分達にとって良いことというか、すごくリアリティがある事なので。はい、欠かせないものです」
-わかりました。ではここから質問ががらっと変わりますが、the samosが共鳴出来るバンドなどがいたら教えてもらえますか?
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Beastie Boys |
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Underworld |
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TV On The Radio |
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Trentemoller |
Shigeo:「共鳴するというとNew Orderとか。後は…」
Ohishi:「うーん…Beastie Boys」
Shigeo:「New OrderとBeastie Boysって全然訳わかんないね(笑)」
-(笑)確かに大分違う感じがしますけどね(笑)。じゃあthe samosを創り上げるのに欠かせなかった影響を受けたアーティストまたは音楽があれば教えてもらえますか?
Shigeo:「やっぱりイアン・ブラウン(Stone Roses)と…」
Ohishi:「Beastie Boysと…Underworldですかね」
-ではもしよろしければ今一番のお気に入りアーティストがいたら3つ挙げて頂けますか?
Shigeo:「TV On The Radio」
Ohishi:「うん」
Shigeo:「Trentemoller」
-あともうひとつ…。
Shigeo:「Beastie Boys(一同爆笑)。Beastie Boys、一杯出てくんなぁ(笑)。」
-(笑)。敢えて入れときますか?(笑)
Shigeo:「新しいアルバムは聴いてないんですけど、もうわりと不変的に“あ、Beastie Boysね”みたいな(笑)」
-みたいな(笑)
Shigeo:「the samosもBeastie Boysっぽいよね? ライブとか特に そんなことないか?(笑)」
Ohishi:「いや、音としてじゃなくってっていう…ところじゃないですかね。Beastie Boys 精神」
-なるほどBeastie Boys精神、ですね。
Shigeo:「TV On The Radio, Trentemoller, Beastie Boys。よく解らないけど、 “なんか無茶しそうだなぁ〜”って感じで…(笑)」
-いや、いいじゃないですかー。面白いです!(笑)。じゃあ、そんな無茶しそうな感じのthe samosですが(笑)、今後はどのような活動を行っていく予定なのか、どのような活動を続けていきたいと思っていますか?
Shigeo:「まず自分達でBlackbudgetというレーベルをやっているんですが、そのレーベルの運営をしながら活動していきたいと思っています。色々なアーティストが所属している中で今、the samosが一番核なのですが、春にthe samosを含めたコンピレーションを企画しています。後は、今セカンドのアルバムを準備しているので、2008年に2ndアルバムを出す予定です。後はこの10月くらいからライブを始めていて、今、いろんなスタイルでやっているので、それも続けていければ。で、来年ツアーをしたいなと思っています」
-では最後にHMV ONLINEを御覧のみなさんにひとことお願い致します。
Shigeo:「じゃあ代表して。どちらの順番でもいいんですが、まずライブに来て頂いて、その後で音源を聴いてもらうというシフトと、音源を聴いてからライブに来てもらうというシフト、そのどちらかでやってもらえると“あ、音源とライブ、アレンジが違う”っていうのが体感出来て面白いと思うので是非試してみて下さい。」
-ちなみに、そのどちらかのシフトを試す事が出来る今後のライブの予定は?
Shigeo:「まず12月8日にSHIBUYA BOXXで」
Raymond:「スペースシャーワー列伝です」
M.I.T.:「後は12月23日ですね」
Shigeo:「WOMB(渋谷)の4Fで、Cross MountainというイベントでDJスタイルでやります。」
M.I.T.:「それはまたBOXXとは全然違う形でやると思うんで」
Shigeo:「BOXXの方は普通にライブスタイルでやって、WOMBの方は、まだ決めてないんですけどDJ+MCスタイルみたいな。それBeastie Boys(笑)。そういうスタイルでやろうと今は思ってます。で、12月31日25時から(1月1日1時)からageHa(新木場)の特設会場、Factory Floorで」
M.I.T.:「後は1月19日がSHIBUYA O-nest」
-会場が多岐にわたっていて、どれも違った感じのライブになりそうですね。
Shigeo:「そうなんです。やってる方としても毎回違う場所なんで飽きなくて。まあ、“普段主にどこでやってるの?”って聞かれた時に困るっていうのはあるんですけど(笑)」
M.I.T.:「うーん…とか言ってね(笑)」
Shigeo:「色々って(笑)」
-でもそれこそ「ノールール」じゃないですけど、どこでライブをやるかもあまりこだわらないというか…?
Shigeo:「レジスタンスはどこでやるかわからないからレジスタンスなんで。レジスタンスです(笑)」
-ですよね。わかりました。今日はありがとうございました!
