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【第1回】 はじめてのジャズ 高平哲郎さん

2007年11月19日 (月)


第1回
「60年代のジャズ喫茶でよく耳にしたものを」

高平哲郎
まずは、入門者向けとなる13枚を選んでいただいたわけですが。

「ボクのアタマん中ではさ、大体60年代にジャズ喫茶でたくさんかかっていたっていう事は、おしなべてファンが多かっただろうと思うからね。そんなに文句は来ないでしょ(笑)。だって、いきなりコレが素晴らしいぜって何か聴かしたって、後の説明できないもん(笑)。」

というのが各盤の大きな選考理由。

「ジャズの本とか見ちゃったら、アレも入れなきゃコレも入れなきゃってなって。例えばCliffod BrownとMax Roachのアルバムとかを入れなきゃならなくなるだろうし。」

と、ガイドブック等を一切開かずに過去の記憶を辿りながらセレクト。

「60年代にジャズが好きになって、それで、植草甚一さんの評論とかが好きになって聴き始めた中で、何となく(現在の自分に)残ったジャズ。
今でも自分で聴いてるジャズ。」


リアルタイムで耳にして体に染み込んだアルバムを選んでいただいた、まさに高平さん「太鼓判」の13枚となるわけです。当時の思い出と共に名盤達との「出会い」も語っていただきました。

Sonny Rollins 『Saxophone Colossus』   Sonny Rollins 『Saxophone Colossus』(Prestige)

ロリンズは一昨年、最終公演だかで日本に来た時に、なんでコイツが来てるんだろう?っていう連中がいっぱいいたけど。

このアルバムにも入っている「St. Thomas」って曲はみんな知っててね。

ホントは『ヴィレッジ・ヴァンガードの夜』っていうBlue Note盤の方が、迫力があってスゴイから、それにしようかと思ったんだけど。

まぁ、コレは日本では1番売れたし、よく聴かれていたアルバムだからね。

あと、コレに入っている「モリタート」ってのはさ、元々「三文オペラ」の中の曲で、それが「Mack The Knife」(その「モリタート」に歌詞を付けて歌ったもの)なんだよね。結局、同じ曲なんだよ。



「St. Thomas」が視聴できます♪

Thelonious Monk『Solo Monk』(+9)   Thelonious Monk 『Solo Monk』(+9) (CBS)

モンクって不協和音の天才みたいな人でさ。
有名な曲には「Round About Midnight」や
「Blue Monk」なんかがあるんだけど。

エノケンやディック峰も演った「Dinah」とか「Ruby, My Dear」がコレには入ってるんだよね。

CBS盤だと『Underground』もジャケがものすごく素晴らしくてね。
植草(甚一)さんも大好きだったんだよ。

個人的に1番好きなのは『Misterioso』なんだけどね。

「Ruby,My Dear」が視聴できます♪

Sonny Clark『Cool Struttin'』   Sonny Clark 『Cool Struttin'』(Blue Note)

これが素晴らしいのはやっぱりジャケットなんだよね。
地下室にある窓から女性の足を覗いてるって構図で。                                                     
でも本当(原盤LP)は
(ジャケット全体のトーンが)グレーなんだよ!                            
ちょっと色彩も違うしさぁ!

コレも本当にジャズ喫茶で年中かかっていたよ。

でも、もう少し選び方が変わったら、
このアルバムは入らないかもしれないけどね。                              


「Cool Struttin'」が視聴できます♪

Curtis Fuller『Bluesette』   Curtis Fuller 『Bluesette』(Savoy)

この何だか分からないジャケットも素晴らしいしさ。

とにかく有名なのが「Five Spot After Dark」。

80年代にアリナミンのCFで有名になっちゃったの。
アリナミンは、Dave Brubeckの「Take Five」まで使ってたんだよ。                




Miles Davis『Bags Groove』  Miles Davis 『Bags Groove』(Prestige)

コレはとにかくメンバーが凄いんだよ。
マイルス、ソニー・ロリンズ、MJQのミルト・ジャクソン。
それから、モンクにホレス・シルヴァー。

「Bags Groove」は日本人も含めて
色んなミュージシャンに演奏された曲だよな。

コレもジャズ喫茶でよくかかっていた。                                                                                           


「Bags Groove」が視聴できます♪

Max Roach『We Insist!』   Max Roach 『We Insist!』(Candid)

アフリカで生まれた人間の「オレ達は主張する」っていうのを、
カミさんのアビー・リンカーンが歌うんだけど。

...でも、大人になってくるとつまんないもの聴いちゃったなって思うんで、
あんまり好きじゃないんだけどね、今でも(笑)。

ホントはさぁ、コレと同じ頃に出た『Brother Speak Brother』
の方が出来がいいんだけど、コレも物凄く流行ってた。
やっぱりジャズ喫茶で年中かかってたんだ。

で、コレを皆頭抱えて神妙に聴いてね。
黒人の哀しみを共有したりしたんじゃないの?
オレはしなかったけどね、全然(笑)。                                                                                            


Charles Mingus『Clown』   Charles Mingus 『Clown』(Atlantic)


ここで挙げたAtlantic盤はね、アタマの「Haitian Fight Song」が
物凄く良いんだよね。

ミンガスには、『Mingus Presents Mingus』
っていうCandid盤の最高傑作があって、
そこに「フォーバス知事の寓話(Fables For Faubus)」
っていう人種差別問題を扱った曲があるんだけど、
それもすごくイイんだな。

『We Insist!』もそうだけど、
高校生の頃にオリジナル盤で買った時は、すごく嬉しかったね。                                                                             


「Haitian Fight Song」が視聴できます♪

Art Blakey『Moanin'』   Art Blakey 『Moanin'』(Blue Note)

ブレイキーと言えば、「Moanin'」、「チュニジアの夜」、「Blues March」で、
この3曲が入っている『サンジェルマンのジャズ・メッセンジャーズ』が日本でも一番よく売れて、よく聴かれたんだよね。

パリで物凄くモダン・ジャズが流行って、
そこからトリフォーだとか、ゴダールだとか、ヌーベルバーグの連中が
みんなモダン・ジャズを好きになるっていう時期があったんだけど。

この『Moanin'』は、その前にブルーノートから出たもの。

恐らく、日本でモダン・ジャズっていうのが最初に根付くきっかけとなったのがこのアート・ブレイキーとジャズ・メッセンジャーズで。
昭和20年代の終わり頃だったかなぁ。
「黒い旋風」とか「ファンキー族」とか呼ばれてね。

そういう意味でもコレは外せない1枚。


Moanin'

Cannonball Adderley『Somethin' Else』Cannonball Adderley
『Somethin' Else』
(Blue Note)

「枯葉」っていう有名な曲があるんだけど、
サム・ジョーンズのベースが入って、
そこからマイルスがミュートを付けたトランペットで「枯葉よ〜♪」と吹くわけ。

リーダーはキャノンボール・アダレイで、
弟のナット・アダレイは、有名な「Work Song」のヒトね。

他にアダレイでは、
『In San Francisco』の「Spontaneous Combustion」とか、
ジョー・ザビヌルって電子楽器を使ったピアニストとの「Mercy、Mercy」とか、物凄くいいのがあるんだよね。


「Autumn Leaves」が視聴できます♪

Bill Evans / Jim Hall『Undercurrent』  Bill Evans / Jim Hall
『Undercurrent』
(United Artists)

このヒトには『Portrait In Jazz』とか、
『Sunday At The Village Vanguard』とか、
『Waltz For Debby』とか、
色々いいのがあるんだけど、
コレはジャケットが好きなんだよね。

植草さんもこのジャケットは大好きだって言ってたのを思い出したんだよね。              
ジム・ホールっていうギタリストと共演しているんだけど、
「My Funny Valentine」とか、
ミュージカルの曲で「Darn That Dream」とか、
とにかく良い曲が色々入ってるんだよ。



「My Funny Valentine」が視聴できます♪

Miles Davis 『Kind Of Blue』  Miles Davis 『Kind Of Blue』(CBS)

マイルスは何を選ぶかっていうのが非常に難しくてねェ...。

『Four & More -Live In Concert』っていうライヴ盤がとにかく凄くて、
コレしかない!って感じなんだけど。

「So What」や「All Blues」を演っているということで、
このアルバムも嫌いじゃないんで、コレにしました。

あと、ギル・エヴァンスっていう凄いアレンジャーと一緒に演った
『ポギーとベス』なんかも素晴らしいんだよね。                                                                            



「So What」が視聴できます♪

Bud Powell 『Scene Changes』   Bud Powell 『Scene Changes』(Blue Note)

バド・パウエルに捧げるコンサートっていうのが、
何年か前にカーネギー・ホールであって、
日本からも山下(洋輔)さんが行ってたけど。

1番ジャズ喫茶で話題になったのは、
「クレオパトラの夢(Cleopatra's Dream)」。

ちょうどビ・バップからモダン・ジャズへの移行期の作品...って、
細く説明すると、あんまり詳しくないことがバレちゃうから言わないけど(笑)。                                       



「Cleopatra's Dream」が視聴できます♪

John Coltrane / Johnny Hartman 『John Coltrane And Johnny Hartman』  John Coltrane / Johnny Hartman
『John Coltrane And Johnny Hartman』 
(Impulse)

コルトレーンをどれにすべきかというのもあって、
『My Favorite Things』と迷ったんだけど。

で、まぁ1枚だけヴォーカル作品も入れようということで、
コレを選んだんだけど。

ジョニー・ハートマンがヴォーカルで、
「They Say It's Wonderful」なんて素晴らしいんだよね。

コルトレーンの同じImpulse盤では、
『Ballad』っていう素晴らしいアルバムもあります。                                                                             



「They Say It's Wonderful」が視聴できます♪


> 第2回へ続きます
> 第3回「山下さん、タモリさんのジャズ筆下ろし特選」



・「はじめてのジャズ」とは?

中州産業大学&ほぼ日刊イトイ新聞 presents 『はじめてのJazz 2』


糸井重里が編集長を務める「ほぼ日刊イトイ新聞」が、ジャズ・ピアニストの山下洋輔タモリを講師に招き、ジャズに興味はあるんだけれど、その「入り口」が見つからなかったり、どうしても敷居の高さを感じて二の足を踏んでしまう、そんな人達に向けておくるジャズ・イントロダクション企画。それが『はじめてのジャズ』。2005年3月に行われた生演奏と解説、さらにはQ&Aコーナーなどを交えてのイベントは、700人に及ぶ客席からの感嘆の声、笑い声、鳴り止まぬ拍手の渦に終始包まれる盛り上がりを見せました。

その大成功のイベントの構成を担当したのが、高平哲郎さん。コピーライターから、創刊当時の『宝島』編集員などを経て、その後、構成作家、スーパー・バイザー、作詞家など様々な肩書きでTV、音楽、映画、演劇などが最も活気のあった時代の文化・流行を生み出してきた高平さん。
そんな高平さんの「お眼鏡にかなった」、ジャズ入門編に相応しい「はじめてのジャズ」ディスク・セレクション。

当時のLP購入時の思い出や懐かしきジャズ喫茶四方山話を交え、「こんな感じのなかなか選べないよ(笑)。」と自讃しつつも、「比較的メロディの良いものばかりだから、入りやすいと思うよ。」といった気配りも忘れない高平さん。
「モダン・ジャズっていう匂いだけで纏めた方がいいかなって思ってこの辺にしたんだ。」

ここに挙げた13枚が、あなたにとってのジャズの「おたのしみ」の最高の入り口になっていただければ幸いです。


  

今回、高平哲郎さんにお聞きしたおすすめCD取材のようすは、「ほぼ日」サイトでも「ほぼ日」バージョンとして掲載されていますので、そちらもお楽しみください!

> 「ほぼ日 はじめてのJAZZプロローグ」第10回 ジャズのCDがいっぱいあるところ

> 高平哲郎さんインタビューはこちら


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