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周防監督 インタビュー

Tuesday, June 26th 2007

それでもボクはやってない』 DVDリリース記念!周防正行監督に、インタビューさせて頂きました。




周防正行


1956年 東京都生まれ。立教大学文学部仏文科卒業。

大学在学中に、高橋伴明監督の助監督として、キャリアをスタート。

1984年 『変態家族 兄貴の嫁さん』で監督デビュー。

1989年 『ファンシイダンス』では、修行僧たちの青春を
コミカルなタッチで描き、注目を集める。

1992年 学生相撲を題材にした、『シコふんじゃった。』が、
キネマ旬報誌ベストワン、日本アカデミー賞最優秀作品賞を獲得。

1996年 ボールルームダンスブームを巻き起こした大ヒット作
Shall we ダンス?』は、第20回日本アカデミー賞13部門を独占受賞するなど、日本映画の各映画賞を総なめにした。

同作は、全世界で公開され、全米での日本映画興行記録を更新するなど、
世界的な成功を収めた作品となった。

また2004年には、リチャード・ギア主演による、ハリウッドリメイク版も製作された。






Q 監督にとって、本当のエンタテインメントというのは、どういうものでしょうか?


難しいなあ。結構、何でもエンタテインメントにしちゃうかな。たぶん、例えば僕が作った今までの映画だって、ある人から観たらつまらないと思うんですよ。 それは、きっと期待するものがあって、何かの期待を持っていた人は、その期待と違うように映画が展開したら、裏切られるんですよ。 だから、今回の映画だって、もしかしたら、役所さんの素晴らしい弁護ぶりが観られるんだろう、 ヒーローとしての弁護士が観られるんだろうという期待感で観た人は、もしかしたら、がっかりするかもしれないですよね。 映画ってたぶん、いろんな人がいろんな期待を持って観に来るから、それを満たせてあげられるかどうかで、 エンタテインメントのつもりで作っても、それがエンタテインメントになるか、ならないかは、分からないと思うんです。

僕は、わりに昔からそうだったんですけど、つまらない映画も、たのしむ方法を身につけてる。何でつまらないかを分析するだけで、 僕には、エンタテインメントになるんですよ。そういう意味では、映画そのものは全て、エンタテインメントかもしれないですね。 僕は、野球も好きなんですけど、大好きなスワローズがこのところ、負け続けてますよね。負け続けてる時には、負け続けているなりの見方をして、見てるんですよ。という風に、僕にとっては、視点をいろいろ持つことで、エンタテインメント化してるような気がしますね。 ある人にとっては、ジャン・リュック・ゴダールも、エンタテインメントになってると思うんですよ。 作り手となった僕が、何をエンタテインメントとして、提出するかというと、たぶんね、驚きなんですよ。 それだけは、どの映画にもたぶん。 社交ダンスを熱心にやっている人は、そんなに驚かないかもしれないけど、やってない人には、こういう世界だったんだって、驚きがある。 学生相撲だって、あんなひょろひょろなやせた男の子がやってるなんて、思わないでしょ?

少なくとも、僕は、驚きや知的好奇心だけは、満たすものを作ってるんだろうなって思いますね。 やっぱり、僕にとってのエンタテインメントは、 知らないことを見せてくれるということなのかもしれないですね。



Q 映画の上映後、男性と女性の反応は、違いましたか?


それがね、意外だったんだけど、違わなかったの。女性も、被告人側、加瀬くん側からこの映画を観るんだっていうのが、逆に驚きだったんです。 この映画を女性がどう観るかっていうのが、作る時に、実は一番心配だったの。女性が被害者として、 毎日電車で嫌な目にあってるかもしれない。そういう人がこの映画を観た時に、 この映画自体に、反感を持つんじゃないかっていうことがあったので。 だけど、女性までもが、加瀬くんの立場で観ていて、自分のこととして、恐ろしい裁判だ、と思うのが、 僕にとっても、発見でしたね。だから、男性と女性の違いをあまり感じたことがないですね。 女の人も逆に、同じ風に考えるんだって、驚きの方が強いですね。



Q 上映後の質問で、訊かれて、驚いたことはありましたか?


それでもボクはやってない』っていうのは、「それでも地球が回ってる」って言った、ガリレオから来たんですよね?って、あたかも当然でしょ?みたいに言われて。「ああ、そうか!」って思って、「これからは、そういう風に答えるようにします。」って、言ったぐらいで。 タイトルの謎解きを、お客さんに教えてもらって。僕はそんな意識はなかったんですけど。 だけど、すごく本質的な、美しいタイトルの説明だなあって思って。それが、一番驚きました。



Q ちなみに、当初のタイトル予定は、何だったんですか?


ちょうどシナリオを書いてる時に、「セカチュー」とか「いまあい」とか、「そうか、大ヒット映画は略すわけね」って思って、「それボクで行こう」って。略しやすいっていう、タイトルでした。それボク?みたいなことも言えるかなって思って。



Q 監督自らが、たくさん地方キャンペーンを回られて、お話されていますが、 それはそれだけ、この作品に手ごたえを感じたということなのか、それとも、裁判について知って欲しいという気持ちが強かったからなのでしょうか?


いろいろあるんですけど。やっぱり裁判を知って欲しかったんです。この映画を作った時に、たとえヒットしなくっても、スタッフだけにでも、日本の刑事裁判のことを深く知ってもらえれば、それだけでも広がると思ったんです。だから、役者さんにもスタッフにも、撮影現場で話したことって、この映画そのものじゃなくて、刑事裁判についての話が一番多かったんですよ。もちろん、役者さんから、そのシチュエーションでいろんな質問があったら、答えるということと、プラス、なぜそうなっているかっていうことの背景を含めて、本当にいっぱい説明したんで、刑事裁判談義しかしてなかったです、撮影現場で。それは本当に、僕自身が、刑事裁判について信じられなかったから、その信じられない現状を一人でも多くの人に知ってもらいたかった。

でも、こんなにキャンペーンをするのは、知らなかったんですよ。 『Shall we ダンス?』から11年ぶりなんですけど、あの時は、東京と大阪ぐらいしか行ってないんです。 当時は、「東京で発信すれば、地方キャンペーンすることないですよ」、って言われました。 僕は、自分の映画を多くの人に観てもらいたくて、そのキャンペーンが有効だと思えば、やりますから、『Shall we ダンス?』の時は、自分の意思でやらなかったわけではない。

だけどね、今回撮影後に、映画監督がこんなに忙しいのかと思うくらい、キャンペーンを回って、取材もいっぱい受けて、全部原稿直しもして。「今ね、地方回ると、回っただけ数字上がりますから」、っていう言葉を信じて。でも、回るからには、本当に多くの人に、この映画について、きちんと伝えたかったんです。なおかつ、伝えながら、感想が本当に具体的に返ってくるんですよ。「おもしろかったです」とか、「すてきでした」とか、そういうんじゃなくて、もっと内容に具体的に関わったものなの。 僕自身が驚いて作ったいろんなシーンについて、具体的に訊いてくるので、おもしろくてしょうがなかった。こんなにみんな、一生懸命映画観てくれてるんだって。改めて、映画の力を感じました。たのしかったです。

公開されてから回った時は、確かに、観客動員数も多かったですけど、リピーターも多いなと思って。今日で3回目です、なんて方もいらっしゃいました。 だけど、もうちょっとチャンスがあったら、僕もっと回れましたよ。 なにしろ、シナリオをプロデューサーに持って行った時に、「これは、監督の講演つきの上映しかないですね」 って、言われたくらいの映画だったので、僕にとっては本当に、徹底的に最後まで、裁判について話をするのがとても重要なことだったので、おもしろい経験もしたし、宣伝活動でもあり、自分の映画に対して、具体的な声が聞くことができたので、そこがすごくおもしろかったです。





監督の、最新作について、
詳しい特集は、こちら→それでもボクはやってない


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