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「ベルリン・フィル・ラウンジ」第111号:バーデン=バーデン・イースター音楽祭が開催 ベルリン・フィル・ラウンジへ戻る

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2015年3月27日 (金)

ベルリン・フィル&HMV提携サイト
 ベルリン・フィル関係ニュース

バーデン=バーデン・イースター音楽祭が開催
 3月27日から4月6日にかけて、ベルリン・フィルのバーデン=バーデン・イースター音楽祭が行われます。2013年にザルツブルクから移転したこのフェスティヴァルも、今年で3年目。
 今年のオペラ公演《ばらの騎士》では、ベルリン・フィルが初めてこのオペラに取り組みます。サー・サイモン・ラトルの指揮のもと、アニヤ・ハルテロス(元帥夫人)、マグダレーナ・コジェナー(オクタヴィアン)、アンナ・プロハスカ(ゾフィー)、ピーター・ローズ(オックス男爵)という一流キャストが勢揃い。また、演出は往年の名メゾ、ブリギッテ・ファスベンダーが担当します。ファスベンダーは、「20世紀最大のオクタヴィアン」(ラトル談)だっただけでなく、90年代からはオペラ演出家として幅広く活躍しています(3月27・30日、4月2・6日)。
 ベルリン・フィルは、この他コンサート3プログラムを演奏。ラトル指揮の《ファウストのごう罰》は、ジョイス・ディドナート(マルグリート)、チャールズ・カストロノーヴォ(ファウスト)、リュドヴィク・テジエ(メフィストフェレス)という豪華な配役です(3月29日、4月5日)。またベルナルド・ハイティンク指揮のコンサートでは、ベートーヴェンの「ヴァイオリン協奏曲」と《田園》が演奏されます(ソロ:イザベル・ファウスト。3月28日)。またリッカルド・シャイー指揮の演奏会では、マルタ・アルゲリッチがシューマンの「ピアノ協奏曲」を演奏します(4月4日)。
 この他にも、ベルリン・フィル団員による16回の室内楽演奏会、青少年プログラムが開催され、期間中は町中に音楽が溢れます(会場は市内の美術館や教会等)。未来のオペラ歌手、演出家のためのワークショップも開かれ、その終了公演《小さなばらの騎士》も行われる予定です(写真:© Monika Rittershaus)。

バーデン=バーデン・イースター音楽祭についてのページ
ベルリン・フィルの公式ツアー・ブログ(フォト・ギャラリー)

実証実験:4月11日、ラトル指揮ベルリン・フィルの演奏会が、DSD5.6MHzでハイレゾ配信
 ハイレゾ(ハイレゾリューション・オーディオ)は、クラシック界のみならず、一般でも大きな話題を呼んでいますが、その一形式であるDSD5.6MHzによるライブ・ストリーミングの実証実験が、4月5の東京・春・音楽祭、11日のベルリン・フィルの演奏会で行われることになりました。
 実験を実施するのは、ソニー、KORG、Saidera Paradiso、IIJの日本企業4社。DSD5.6MHzとは、CDの128倍のサンプリング周波数を持つ録音形式で、大量のデータを必要とするため、これまでストリーミングは困難とされていました。今回の公開実証実験では、これを実現するために、上記4社が技術を提供し合います。当ライブ・ストリーミングは、無償のプレイヤーを特設サイトよりダウンロードし、DAC(デジタル・アナログ変換機)に接続することで、一般の方にもお楽しみいただけます。
 ストリームされるのは、@4月5日(11:00〜20:00)に東京・春・音楽祭2015で行われる「東京春祭マラソン・コンサート vol.5 《古典派》〜楽都ウィーンの音楽家たち」と、A日本時間12日02:00よりベルリン・フィルハーモニーで行われるサー・サイモン・ラトル指揮ベルリン・フィルの演奏会「ベルリオーズ《ファウストの劫罰》」です。

ベルリン・フィル演奏会ストリーミング情報:
演奏曲目:ベルリオーズ《ファウストの劫罰》全曲
ベルリン放送合唱団(合唱指揮:サイモン・ハルシー)
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
指揮サー・サイモン・ラトル
独唱:チャールズ・カストロノーヴォ(ファウスト)、ジョイス・ディドナート(マルグリート)
リュドヴィク・テジエ(メフィストフェレス)、フローリアン・ベッシュ(ブランデル)
配信日時:ドイツ時間 2015年4月11日(土曜日) 19:00〜(終了予定:21:40)
日本時間 2015年4月12日(日曜日) 2:00〜(終了予定:4:40)

なお、ライブ配信後には、4月19日までオンデマンド配信が行われます。ストリーミング受信方法等の詳細は、特設サイト「DSD Live Streaming」( http://dsd.st/ )をご覧ください(写真:3月11日、ベルリン・フィルハーモニーでのテスト・セッションの模様© ソニー、IIJ、KORG、Saidera Paradiso)。

※DSD5.6MHzストリーミングを聴くためには、所定のDAC(デジタル・アナログ・コンバーター)と、特設サイトにアップされている再 生ソフト(無料ダウンロード可)をご準備いただく必要があります。当日はアクセスが混み合う可能性があるため、事前にソフトをダウンロード し、インストールすることをお奨めします。

DSDライブ・ストリーミング特設サイト

 最新のDCHアーカイブ映像

ラニクルズのフランス・プロ
2015年3月12日

【演奏曲目】
メシアン:讃歌
ドビュッシー:《選ばれし乙女》
デュリュフレ:レクイエム
独唱:マルティーナ・ヴェルシェンバッハ、ケリー・オコーナー、ノエル・ブーリー
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
指揮:ドナルド・ラニクルズ

 ベルリン・ドイツ・オペラの音楽監督を務めるドナルド・ラニクルズが客演しました。2003年以来、ベルリン・フィルの指揮台に定期的に立ってきたラニクルズは、これまでブリテン、ベルリオーズ、ブラームスのレクイエムなどで優れた解釈を聴かせてきました。今回のメインの演目は、20世紀フランスの作曲家であり、著名なオルガニストだったモーリス・デュリュフレのレクイエム。デュリュフレの代表作であるこの曲の特徴はグレゴリオ聖歌からの引用が多く見られることで、作曲家はそれを繊細な響きで包み込みました。古風でありながら、清らかで慰めに満ちたこの音楽は、グレゴリオ聖歌のみならず、フランス印象派の伝統にも根ざしていることは明らかです。
 当コンサートの幕開けを飾るのは、デュリュフレの同時代人であるオリヴィエ・メシアンの初期の管弦楽作品「賛歌」。デュリュフレ同様、メシアンもオルガニストであり、教会やミサ、信仰心といったものが彼の作品に強い影響を及ぼしました。この「賛歌」は荘厳な性格を持ち、色彩の豊かさと密度の濃い響きで際立っています。もう1曲は、ドビュッシーのやはり初期作品、《選ばれし乙女》。ロセッティの詩によるこのカンタータは、ワーグナーの影響下にありながらも、ドビュッシーの作曲の独創性がすでに顔をのぞかせています。フランスを代表する3人の作曲家の個性豊かな音楽を、サイモン・ハルシー率いるベルリン放送合唱団の共演でお楽しみください。

ラニクルズの演奏会をDCHで聴く

カラヤンとロストロポーヴィチの夢の共演《ドン・キホーテ》
1975年1月収録

【演奏曲目】
R・シュトラウス:《ドン・キホーテ》

チェロ:ムスティスラフ・ロストロポーヴィチ
ヴィオラ:ウルリヒ・コッホ
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
指揮:ヘルベルト・フォン・カラヤン


 ヘルベルト・フォン・カラヤンは、リヒャルト・シュトラウスを指揮者としても作曲家としても尊敬していました。《ドン・キホーテ》は、1939年に初めてアーヘンで指揮しています。この時ソロを演奏したのは、シュトラウス自身が1933年の録音の際に起用したエンリーコ・マイナルディでした。これ以降50年間にわたって、《ドン・キホーテ》はカラヤンのレパートリーであり続けました。マイナルディ、トルテリエ、フルニエ、ロストロポーヴィチ、マといったソリストの顔ぶれは、錚々たるものです。晩年には、ブラジル出身のチェリスト、アントニオ・メネセスと共演し、1976年には、ベルリン・フィルのソロ・チェロ奏者オトマール・ボルヴィツキと演奏しています。
 カラヤンがシュトラウスの交響詩で特に好んだのは、終結部でした。「すべてが素晴しいと思いますが、特に好きなのは、《ドン・キホーテ》のエピローグです。彼はそこで言います。”私は戦い、間違いも犯した。しかし、人生を自分を思うままに謳歌した。そして今…”この個所には、本当に心を打たれます」
 カラヤンがこの作品に特別なつながりを持っていたことは、彼が「(首席指揮者としての)お別れ演奏会」でたびたび《ドン・キホーテ》を取り上げたことにも現れているでしょう。例えば1964年のウィーンでの演奏会、そして1986年のフルトヴェングラーの生誕100周年の演奏会です。
 ムスティスラフ・ロストロポーヴィチ(1927–2007)は、カラヤンと良好な関係を築いていました。カラヤンは、本映像のリハーサルでの思い出を、次のように語っています。「ロストロポーヴィチは、ソロの最初の個所を、非常に遅く、また唸るような音で弾きだしました。私は驚いて、”スラヴァ、どうしたの?”と聞きました。すると彼は、”いや、大丈夫。ただ、この馬はちょっと年寄りなので、乗りこなすのに苦労しているのさ”と言ったのでした!」

カラヤンとロストロポーヴィチの《ドン・キホーテ》をDCHで聴く

カラヤンの序曲集
1975年1月収録

【演奏曲目】
ベートーヴェン:《コリオラン》序曲
《エグモント》序曲
ウェーバー:《魔弾の射手》序曲
ロッシーニ:《ウィリアム・テル》序曲
ワーグナー:《タンホイザー》序曲

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
指揮:ヘルベルト・フォン・カラヤン

 1975年1月に収録されたこの映像は、カラヤンとベルリン・フィルが遺した中でも特に感銘深い記録の一つに数えられます。1967年にザルツブルク・イースター音楽祭が創設されるまで、ベルリン・フィルがオーケストラピットで演奏する経験は皆無でしたが、その後の21年間でワーグナー、ヴェルディ、ベートーヴェン、シュトラウス、プッチーニの19のオペラをカラヤンの指揮と演出のもとで演奏しています。本質的に「劇場の人」だったカラヤンが、ここでは5つの代表的な劇場音楽を選び、見事な指揮ぶりを披露しています。
 ロッシーニのオペラ《ウィリアム・テル》を、カラヤンは歌劇場で指揮することはありませんでしたが、4つの部分から成る交響詩風の序曲は生涯に渡って愛奏しました。すでに1928年、彼はウィーンの音楽アカデミーの卒業試験でこの曲を取り上げています。その際、カラヤンは冒頭のチェロのパッセージに特に注意を払い、トランペット奏者には、有名な終結部のリズムを正確に演奏できるようあえて個別に吹かせたと言われています。
 ワーグナーの《タンホイザー》は、カラヤンが歌劇場で何度も指揮したものの、全曲録音を遺さなかった作品です。ここでは、内側から燃え上がるような充実した演奏を聴くことができます。長年カラヤンを間近で見続けたある奏者は、このように回想しています。「コンサートでの彼は、信じられないような力と緊張感を放っていました。彼の筋肉はそれだけ緊張していたため、解決困難な左手の痛みとしばしば闘っていました。しかし、彼は一旦指揮台に立つと、そんなことはまるで意に介さなかったのです」

カラヤンの序曲集をDCHで聴く

カラヤンの《ラインの黄金》
1973/78年収録

【演奏曲目】
ワーグナー:《ラインの黄金》

ヴォータン:トーマス・ステュワート
フリッカ:ブリギッテ・ファスベンダー
ローゲ:ペーター・シュライヤー

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
指揮:ヘルベルト・フォン・カラヤン

 ヘルベルト・フォン・カラヤンは当代随一のワーグナー指揮者でもありました。叙情性と力強さを兼ね備え、「ドイツ的な」ワーグナー演奏の伝統よりはトスカニーニやクレメンス・クラウスらを手本にした、対位法的な書法を明確に聴き取らせる演奏スタイルで高い評価を受けました。
 カラヤンは《ニーベルングの指環》のツィクルスを生涯に4回指揮しています。アーヘン(1937年)、バイロイト(1951年)、ウイーン(1959年)、そして彼自身が設立したザルツブルク・イースター音楽祭において(1967年から70年)です。「ザルツブルクには祝祭劇場というワーグナーの上演にふさわしい舞台がある」と助言を受けていたカラヤンは、理想の音楽を実現するために手兵のベルリン・フィルを起用しました。
 1973年の《ラインの黄金》の再演は、ザルツブルクの《指環》を映像に遺したいというカラヤンの願いもあって実現したものです。アメリカ人のリリック・バリトンのトマス・ステュアートがヴォータンを、ブリギッテ・ファスベンダーがフリッカを歌い、1968年のプレミエでローゲを歌ったゲルハルト・シュトルツェは、ここではミーメ役を演じました。新しいローゲは、ワーグナーの録音での出演は稀少なペーター・シュライアーが担っています。
 サウンドトラックは1973年に録音されましたが、映像収録は1978年までずれ込み、その頃には《指環》の全曲収録は財政的に行き詰まっていました。ワーグナーの録音を数多く遺したカラヤンですが、映像は残念ながらこの《ラインの黄金》のみに留まっています。

カラヤンの《ラインの黄金》をDCHで聴く

早稲田大学交響楽団のベルリン公演を期間限定無料映像で!
2015年3月7日

【演奏曲目】
リヒャルト・シュトラウス:《ツァラトゥストラはこう語った》
《ドン・ファン》、《サロメ》より7つのヴェールの踊り
石井眞木:《モノ・プリズム》

和太鼓:林英哲&英哲風雲の会
早稲田大学交響楽団
指揮:田中雅彦


 早稲田大学交響楽団がベルリン・フィルハーモニーに客演します。1913年に創設されたこの楽団は、音楽学部を持たない早稲田大学の学生のみで構成されているにも関わらず、その卓越した表現力と合奏力により、今日では世界屈指の学生オーケストラの一つに数えられます。1970年代半ばから早稲田大学交響楽団とベルリン・フィルとは交流があり、ベルリン・フィルのチェリストだったルドルフ・ヴァインスハイマーが橋渡し役となって、友好関係が育まれてきました。1979年、カラヤンが早稲田大学から名誉博士号を贈呈された際、カラヤン自らが公開リハーサルで早稲田大学交響楽団を指揮し、最近では2013年にサー・サイモン・ラトルがベルリン・フィルと来日した際、やはりリハーサルで同楽団を指揮しています。
 今回のベルリン公演は、ドイツ、オーストリア、フランスの13都市を巡る第14回海外公演「ヨーロッパツアー2015」の一環として行われたもの。長年このオーケストラを指導してきた田中雅彦の指揮により、R・シュトラウスの交響詩《ツァラトゥストラはこう語った》、《ドン・ファン》など難易度の高い管弦楽作品を演奏するほか、石井眞木作曲の日本太鼓とオーケストラのための《モノ・プリズム》を林英哲&英哲風雲の会と共演しています。デジタル・コンサートホールには2009年、12年に続き3度目の登場となり、過去2回の演奏会ではいずれも大きな成功を収めました。

早稲田大学交響楽団の演奏会をDCHで聴く

 アーティスト・インタビュー

イザベル・ファウスト
「今回演奏するカデンツァは、すべての音がベートーヴェンのものだと言えます」
リハーサル映像付き
2015年3月6日

【演奏曲目】
ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲
交響曲第6番ヘ長調《田園》

ヴァイオリン:イザベル・ファウスト
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
指揮:ベルナルド・ハイティンク


 3月初旬の演奏会でベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲を弾いたイザベル・ファウストのインタビューとリハーサル光景をお届けします。この演奏会でのカデンツァには、ベートーヴェンがこの作品をピアノ協奏曲に編曲した際に書いたティンパニ付きのオリジナルを、クリスティアン・テツラフがヴァイオリン用に編曲したヴァージョンが使われています。インタビュー映像では、ファウストとベルリン・フィルのティンパニ奏者ヴィーラント・ヴェルツェルがリハーサルし、対話する様子がご覧いただけます。
 ファウストの「感じのいい」雰囲気もさることながら、近年ティンパニ奏者として格段の成熟を遂げたヴェルツェルの朴訥とした語りにも魅せられます。

〈リハーサル〉
ヴィーラント・ヴェルツェル 「(バチを1本試し叩きしながら)ああ、このバチだ。もう1本は折ってしまった」

イザベル・ファウスト 「本当に?」

ヴェルツェル 「君も、きっと過去に弓を折ったことがあるでしょう?」

ファウスト 「1回、折ったことがあります」

ヴェルツェル 「“これが一番お気に入りのバチ”っていうのが、折れてしまうものなんです。直すか、フェルトを巻きなおすかしないと…」

ファウスト 「自分で巻くんですか?私も弓の毛を自分で張るんだけれど」

ヴェルツェル 「自分ではやりませんが、たまに巻き直します。毛羽立ってきてしまうから。(もう一度叩いて)これ、もうひと組欲しい!」

〈インタビュー〉
ファウスト 「今回演奏するカデンツァは、すべての音がベートーヴェンだと言えます。これは彼がこの曲のピアノ協奏曲版を書いた時に作曲したものです。一番素晴しいのは、それまで1回も出てこなかった行進曲風のテーマが出てくること。そして、ティンパニが突然登場することです」

〈リハーサル〉
ヴェルツェル 「君はどこから入る?」

ファウスト 「ちょっと前の三連譜のところから」

ヴェルツェル 「その後のテンポは?」

ファウスト 「あなたが今やった通りでちょうどいいです」

〈インタビュー〉
ヴェルツェル 「ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲にたくさんのカデンツァがあることは知っていました。ティンパニ付きのものもある、と聞いていましたが、実際に演奏するのは初めてです。新鮮ですね。テンポの変化があり、突然まったく性格の違う楽想が出てきます。ソロ・ヴァイオリンとティンパニの対話です。
 ベートーヴェンは、一般的な意味でも、ティンパニをとても大切にしていました。交響曲では、非常に力強い、強烈な役割を振り当てられていて、重要なのです。
 カデンツァにティンパニが入ってくることは、論理的帰結という気がします。というのは、この作品自体が、ティンパニのソロで始まるからです。こういった始まり自体が、独創的で、他にない開始の仕方だと思います」

ファウスト 「この開始には、とても素敵な伝説があります。ベートーヴェンが夜、ベッドに横になっていたら、隣のアパートの誰かが壁をくりかえし5回ずつ叩いたのだそうです。彼は当時、難聴になりかけていたので、その音がはっきり聴こえたことがとても嬉しくて、その音を当時構想していたヴァイオリン協奏曲のモチーフにした、といいます。
 このティンパニーのモチーフは、第1楽章の全体でずっと使われています。ティンパニとの関連、つまりリズム的な意味だけではなく、ヴァイオリンの叙情的なパッセージにも出てくるのです。音楽の半分がこのモチーフで出来ていると言っても過言ではないでしょう。実のところ作品は、それ以外のところでは初演のヴァイオリニスト、フランツ・クレメントの弾き方に合わせて書かれています。しかしベートーヴェンは、ほかのところではこのティンパニの要素を出し切っているのです」

ヴェルツェル 「でも、初演時のティンパニ奏者の名前は何て言うのかな?(笑)」

ファウスト 「ハハハ(笑)」

ヴェルツェル 「この演奏会は、とても楽しみでした。素晴しい共演者ふたりと、素晴しいオーケストラと、一緒に演奏できるわけですから。このカデンツァにも初めて挑戦するわけで、その意味でも楽しみにしていました。ティンパニは、どのような状況で演奏するかで、楽器を調整する必要があります。ある指揮者は大編成のベートーヴェンを好み、ある指揮者は小編成のベートーヴェンを好みます。今回は、その中間と言ったところです。その編成で一番バランスのよい楽器を選びます。
 《田園》とヴァイオリン協奏曲の間でも、違うティンパニーを使います。ヴァイオリン協奏曲では、より小さくてスマートな楽器にしました。というのは大きいものだと、カデンツァなどで、ソロより音量が大きくなって、そちらが聴こえなくなるからです。小さい楽器は、音量が全体にコンパクトなので、音を抑えたい時に、ミュートしないで済みます。古い時代のティンパニは、現代のものよりもずっと小さなものでした」

〈リハーサル〉
ファウスト 「ここのリタルダンドは、もうちょっと時間をくれる?私よりちょっとだけ遅く始めてくれないかしら?今は、私が弾き始めたらすぐにスタートするでしょう?それをちょっと遅く入って…」

〈インタビュー〉
ヴェルツェル 「カデンツァで、ヴァイオリンとティンパニが一緒に弾くように書かれているところは、インターアクションが必要だと考えています。我々ふたりが対話を楽しんで、自由にやっていい、そうするべきだという意図のもとに書かれているでしょう。その時の雰囲気で、お互いにボールを投げ合い、反応しながら演奏するのです」

ファウスト 「まさに室内楽ですね。もちろん距離が離れているので、簡単ではないのですが、それを楽しむのがこのカデンツァの意味です」

ヴェルツェル 「ティンパニの室内楽なんて、ジョークみたいだね。(手を合わせて)ベートーヴェン様、ありがとう!」

ファウスト 「あら、私は一度、パーカッションとヴァイオリンだけという室内楽の演奏会をしたことがありますよ」

ヴェルツェル 「えっ!何で僕を呼んでくれなかったの?」

ファウスト 「それについては、後で相談しましょう!(笑)」

ファウストの演奏会をDCHで観る

 ドイツ発最新音楽ニュース

本コーナーでは、ドイツおよび欧米の音楽シーンから、最新の情報をお届けします。

ドレスデン・シュターツカペレの来シーズン予定が発表
 クリスティアン・ティーレマンが首席指揮者を務めるドレスデン・シュターツカペレの2015/16年シーズンの予定が発表された。それによるとティーレマンは、12プロの定期演奏会の4プロに登場するほか、3プロの特別演奏会、およびザルツブルク・イースター音楽祭で指揮する。特筆に値するのは、アンネ・ゾフィー・ムター、リン・ハレル、イェフィム・ブロンフマンとのベートーヴェン「三重協奏曲」、ラン・ランとのジルベスター・コンサート、R・シュトラウス《アルプス交響曲》初演100周年演奏会である。
 カペル・コンポーザー(コンポーザー・イン・レジデンス)は、ジェルジー・クルターク、カペル・ヴィルトゥオーゾ(アーティスト・イン・レジデンス)は、イェフィム・ブロンフマンが務める。客演指揮者の顔ぶれは、チョン・ミョンフン、ドナルド・ラニクルズ、ロビン・ティチアーティ、アラン・ギルバート、アンドリス・ネルソンス、ラインハルト・ゲーベル、マンフレート・ホーネック、ダニエーレ・ガッティ、ヘルベルト・ブロムシュテット。(写真:© Matthias Creutziger)。

ラングレがシンシナティ響の契約を延長
 ルイ・ラングレが、シンシナティ響の首席指揮者契約を2020年まで延長した。ラングレは、2013年に同ポストに就任。カメラータ・ザルツブルク、モーストリー・モーツァルト・フェスティヴァルの首席指揮者・音楽監督も務めており、後者は2017年まで延長している。

次号の「ベルリン・フィル・ラウンジ」は、2015年4月10日(金)発行を予定しています。

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