マイルス・デイビスの米コロンビア期の24タイトルを収録!
高品質Blu-spec CD2でお贈りするコレクション・ボックス!!
9月11日、10月9日の2期にわたってBlu-spec CD2でリリースされる「レガシー・レコーディング・シリーズ ジャズ名盤100」。そこにラインナップされているマイルス・デイビスの名盤全24タイトルをセットにした豪華28枚組ボックスセットが完全限定生産にて発売! さらに封入特典としてマイルスのモノクロ写真を使用したポストカード7枚セットが付いてきます!
コロンビア移籍第1弾となる『ラウンド・アバウト・ミッドナイト』から、モード奏法を完成させた不朽の名盤『カインド・オブ・ブルー』、黄金のクインテットによるアコースティック・ジャズの最高到達点『ネフェルティティ』、ファンクやロックへの回答とも言えるエレクトリック期の傑作『イン・ア・サイレント・ウェイ』、『ビッチェズ・ブリュー』、『オン・ザ・コーナー』、6年の沈黙を破りカムバックを遂げた『ザ・マン・ウィズ・ザ・ホーン』などなど、厳選に厳選を重ねた全24タイトル。 ハードバップ、モード、エレクトリックと、時代と共に鮮やかに変化を遂げていく唯一無二のマイルス・ミュージック、その真髄を高品質Blu-spec CD2でご堪能下さい!

完全限定生産!! コロンビア時代のマイルス名盤24タイトルをボックス化!

Miles Davis Collection Box:マイルス・デイビス 名盤コレクション・ボックス
「Legacy Recordings シリーズ ジャズ名盤100」でリリースするマイルス・デイビスの名盤24タイトルをBOX化。Columbia時代のマイルスの名盤をまとめ買いする絶好のチャンス!もちろん全タイトル大好評の高品質Blu-spec CD2仕様。1CD×20タイトル/2CD×4タイトルを豪華BOXに収納。さらに封入特典としてマイルス・デイビスのモノクロ写真を使用したポストカード7枚セット付き。* 収録曲・解説などは、「Legacy Recordings シリーズ ジャズ名盤100」と同内容になります。
オリ特付きます!! ソニー・ジャズ名盤100選
不滅の名盤・偉大なる音楽遺産を未来へ繋いでいく「レガシー・レコーディング・シリーズ」ジャズ編がスタート。高品質CD「Blu-spec CD2」仕様。オリジナル特典は、先着でミニチュア・ジャケット・ノート(W120mm×H120mm×T2mm)を期毎に2種類ランダム配布! 9/11発売分は、 マイルス・デイビス『Kind Of Blue』、 アン・バートン『Blue Burton』。 10/9発売分は、 マイルス・デイビス『Bitches Brew』、 ウェイン・ショーター『Native Dancer』。 表4にあしらった裏ジャケも勿論オリジナル・デザインに忠実です!
 アーティスト・レコメンド付き ボックス格納24タイトルはこちら!
「Legacy Recordings シリーズ ジャズ名盤100」としてもラインナップされているマイルス・デイビス コロンビア期の名盤24タイトルをご紹介。
またこちらでは、その「21世紀に受け継がれるべき遺産」を肥やしとしながら、現在〜未来のミュージック・シーンを背負って立つ精鋭プレイヤー、クリエイターたちによるマイルス・レコメンドも併せて掲載中!
けものの青羊さん、アンブローズ・アキンムシーレのレコメンド・コメントを追加しました。 (10/2 UP!)
レコメンドは、今後もコメント到着次第随時アップいたします。おたのしみに!
 「'Round About Midnight」 (+4) (1957)
1955年10月27日、1956年6月5日、9月10日録音
マイルス伝説の開花を告げるコロムビア移籍第1弾。ミュート・トランペット奏法の極致というべきタイトル曲(セロニアス・モンク作)を筆頭に、「Bye Bye Blackbird」、「Dear Old Stockholm」など、すべてが歴史に刻まれる名演。まだ無名に近かったジョン・コルトレーンやレッド・ガーランドなど錚々たるメンバーの才能が開花する瞬間を、いち早く捉えたレコーディングとしても計り知れない価値を持つ。何よりもこの作品を特徴付けたのは、マイルスのミュ−ト・トランペットの音色。のちに「卵の殻の上を歩く男」と称されたマイルスのリリシズムが詰まった演奏は、時が経つに連れてさらに輝きを増してゆく。
Miles Davis (tp) / John Coltrane (ts) / Red Garland (p) / Paul Chambers (b) / Philly Joe Jones (ds)
 「Miles Ahead」 (+4) (1957)
1957年5月6日、10日、23日、27日録音
“ジャズの帝王”マイルス・デイヴィスと、“音の魔術師”ギル・エヴァンス。40年代からの盟友ふたりが初めて本格的に繰り広げたコラボレーション・アルバム。マイルスはフリューゲルホーン(トランペットよりも、まろやかな音が出る大型の楽器)に専念し、ギルはホルンやクラリネットなども導入した特別編成のオーケストラを率いて幻想的なバックグラウンドを提供。このコラボレーションに関しては、マイルス自身生前は口を閉ざしていたが、当時のコロンビアとの契約が「ビッグバンドのプロジェクトを叶えてくれるから」という条件の下結ばれた経緯を踏まえれば、本作は当然ながらマイルスが第一にやりたかったことの成就を体現している。
Miles Davis (flh) / Bernie Glow, Ernie Royal, Louis Mucci, Taft Jordan, John Carisi (tp) / Frank Rehak, Jimmy Cleveland, Joe Bennett (tb) / Tom Mitchell (btb) / Willie Ruff, Tony Miranda (frh) / Bill Barber (tuba) / Lee Konitz (as) / Danny Bank (b-cl) / Romeo Penque, Sid Cooper (fl,cl) / Paul Chambers (b) / Art Taylor (ds) / Gil Evans (arr,cond)
 「Milestones」 (+3) (1958)
1958年2月4日、3月4日録音
ブルーノート盤『Somethin' Else』で共演を果たしたアルト・サックス奏者キャノンボール・アダレイを抜擢してさらに音の厚みを増したセクステットによる録音。ジョン・コルトレーン、レッド・ガーランドも急成長を示し、マイルスのトランペットも絶好調。非の打ち所のない大迫力のサウンドが全編にわたって繰り広げられる。タイトル曲は、現代ジャズの原点のひとつともいえるモード・ジャズの幕開けを告げた金字塔。親しみやすいテーマ・メロディ、音数を極限までそぎ落としたマイルスのプレイが痛快。本作品を契機に不朽の名作『Kind Of Blue』への模索の旅が始まった。
Miles Davis (tp) / Cannonball Adderley (as) / John Coltrane (ts) / Red Garland (p) / Paul Chambers (b) / Philly Joe Jones (ds)
Seiho ビートメイカー / DJ / VJ
小学生の僕は父のCDラックからこのアルバムを手にとった。
こんな夢をみた。トランペットが思い通りに吹けて嬉しかった。それは、やけに傲慢な態度のあの馬鹿上司を威嚇するように。それは、ねちゃっとした下品な口紅が色っぽいダイナーのウェイトレスとセックスするように。(スクランブルエッグをオレンジジュースで流し込んだ後に)
でも、全部夢でした。
(Seiho)
『ABSTRAKTSEX』
ビートメイカー/DJ/VJと媒体の垣根を越え表現をし続けるマルチ・アーティスト、Seiho。全国のクラブシーンを駆け巡り日本人では初となる「SonarSound Tokyo2012」、「2013」へ2年連続出演を果たすなど、ビートメイカー/DJ/VJと媒体の垣根を越え表現をし続けるマルチ・アーティスト、Seiho。最新作は、緻密で精巧なプロダクションによって、エクスペリメンタルとポップの融合を完成させており、バックボーンのジャズをベースにトラップ、ポスト・ダブズテップ、チルウェイヴ、インディR&Bなどを想起させつつも、リズム、メロディ、どれをとってもまさに「Seiho」としかいいようがないオリジナリティ溢れた作品に仕上がっている。
 「1958 Miles」 (+2) (1958)
1958年5月26日、1955年10月27日録音
スタンダード・ナンバーを中心に、それまで散在していた1958年録音の音源を集めた日本企画のコンピレーション・アルバム。「On Green Dolphin Street」、「Love For Sale」、「星影のステラ」など極上のメロディが、マイルスのミュート・トランペットによって最高峰のジャズに生まれ変わっている。傑作『Kind Of Blue』と同じ顔ぶれということで、ビル・エヴァンス、ジョン・コルトレーンらのプレイも存分にフィーチャー。ジャケットデザインは、池田満寿夫によるもの。
Miles Davis (tp) / Cannonball Adderley (as) / John Coltrane (ts) / Bill Evans (p) / Paul Chambers (b) / Jimmy Cobb (ds)
 「Porgy And Bess」 (+2)
(1959)
1958年7月22日、29日、8月4日、8月18日録音
有名ミュージカル「ポーギーとベス」で紹介されたのナンバー(ジョージ・ガーシュイン作曲)を、マイルス・デイヴィスとギル・エヴァンスの黄金コンビが鮮やかに再創造。マイルスによる独特なスパニッシュ・スケールの採用と、中音域を省いたギルのアレンジがこの音世界の創出にとって大きな力を発揮し、結果発売されるやたちまちベストセラーを記録した。「Summertime」、「Gone」、「I Loves You, Porgy」など、どれもが伝説の名にふさわしい演奏。
Miles Davis (tp,flh) / Ernie Royal, Bernie Glow, Johnny Coles, Louis Mucci (tp) / Dick Hixon (btb) / Frank Rehak, Jimmy Cleveland, Joe Bennett (tb) / Willie Ruff, Julius Watkins, Gunther Schuller (frh) / Bill Barber (tuba) / Phil Bodner, Romeo Penque (woodwinds) / Cannonball Adderley (as) / Danny Bank (b-cl) / Paul Chambers (b) / Jimmy Cobb, Philly Joe Jones (ds) / Gil Evans (arr,cond)

「Kind Of Blue」 (+1) (1959)
1959年3月2日、4月6日録音
マイルス・デイヴィスが残した数多くの作品群の中でも最も多くのファンの支持を得、また音楽的にも最も大きい影響を与えた20世紀音楽が残した金字塔の一枚。ジョン・コルトレーン、ビル・エヴァンスといった60年代のジャズをリードする若者を擁したこのクインテットが持った緊張感と音楽的な多くのイノヴェーションは、21世紀になっても色褪せることはない。1959年という”時代の狭間”において、マイルスは次の時代への一手を考えあぐんでいた。モード手法による中央突破という方法にするか、グループ・プログレッションへと一気に突き進むのか、マイルスが選んだ道はその両方だった。マイルス自身が「失敗」と感じたのは、実はエヴァンスやコルトレーンが、この作品によって「次の一手に」気が付いてしまったから、というのは穿った見方だろうか? 実際、エヴァンスはマイルスから離れ、ヨーロッパ・ツアーまでは付き合ったものの、コルトレーンも遂にはマイルスの厚い殻を食い破って「ジャイアント・ステップス」を歩み出す。そして、チェンバースは時代に取り残されることになる。巷間言われるように、1959年こそがジャズにとって最も重要な分岐点であったのは間違いないようだ。
Miles Davis (tp) / Cannonball Adderley (as) / Paul Chambers (b) / Jimmy Cobb (ds) John Coltrane (ts) / Bill Evans (p) / Wynton Kelly (p on M-2)
タブゾンビ SOIL&“PIMP” SESSIONS
だからなんなんだ。So what いかにもマイルスが謂いそうな台詞だ。 KIND OF BLUE、これは自分の人生の中で1番聴き込んでいるアルバムだ。今でも色あせないこのアルバムはマイルスが弱冠33歳の作品である。
マイルスはいわゆるトランぺッターではない。この頃トランペットのスタープレイヤーは沢山存在した。リーモーガン、フレディーハバード、クリフォードブラウン、彼らは皆トランペットをトランペットらしく吹くのであるが、マイルスはそうではない。なにが違うのであろうか?
マイルスはトランペットの技術としては申し分ないテクニックをもっているのだが、それを表現に用いたりはしない。彼にとって、高い音が出る、指が早く動くといったことはどうでもよく、多くは語らず必要な事だけを語り、シンプルに美しく仕上げるのだ。だから、マイルスを聴く時はトランぺッターとして聴くのではなく、一人の芸術家マイルスデイビスとして聴いてしまうのだ。
偉大な芸術家は多くを語らない。空間を創造することにより、そこに聴き手の想像力を最大限に生む事を知っているからだ。マイルスの音と音との空間に宇宙が存在する。無限の想像力をかき立てる。
カインドオブブルーは深い青。
(タブゾンビ)
『"X" Chronicle of SOIL&”PIMP”SESSIONS』
2013年で現メンバーの6人が揃ってから10周年を迎える日本を代表するジャズバンド、SOIL&”PIMP”SESSIONSが、キャリア初となるベスト盤をリリース。過去10年間のディスコグラフィーの中から、「SUFFOCATION」、「マシロケ」などのシングル曲やライヴでおなじみの「Fantastic Planet」(TOYOTA『ハリアー』CMソング)、Maia Hirasawa をフィーチャーした「MOVIN' feat. Maia Hirasawa」などのバンドを代表するオリジナル楽曲を、クロニクル的に完全網羅。さらに書き下ろしの新曲「Are You Ready?」を加えた全18トラックを収録。初回限定盤は、椎名林檎×SOIL&”PIMP”SESSIONS「カリソメ乙女(DEATH JAZZ ver.)」など、アーティストとのコラボレーション作品やコンピレーション企画へ参加した際の音源を1枚にコンパイルしたボーナスディスク付きのCD2枚組仕様。
 「Sketches of Spain」 (+3) (1960)
1959年11月15,20日、1960年3月10,11日録音
マイルス&ギル、黄金コンビのコラボレーション第3弾は、このコンビによる最も有名なアルバムとなった。テーマはスペイン。作曲家ホアキン・ロドリーゴがクラシック・ギターのために書いた管弦楽「アランフェス協奏曲」は、本作で採り上げられたことによって多くのリスナーやミュージシャンに広まることとなった。ドラマティックなメロディ、そして哀愁と熱情に満ちたオーケストラ・サウンド。マイルスのトランペットとギルのアレンジが描く、ジャンルを超えた音楽の美学がここにある。
Miles Davis (tp,flh) / Bernie Glow, Louis Mucci, Johnny Coles, Ernie Royal, Taft Jordan (tp) / Dick Hixon, Frank Rehak (tb) / John Barrows, James Buffington, Earl Chapin, Tony Miranda, Joe Singer (frh) / Albert Block, Eddie Caine (fl) / Harold Feldman (cl,fl,oboe) / Danny Bank (b-cl) / Jimmy McAllister, Bill Barber (tb) / Jack Knitzer (bassoon) / Romeo Penque (oboe) / Janet Putnam (harp) / Paul Chambers (b) / Jimmy Cobb (ds) / Elvin Jones, Jose Mangual (per) / Gil Evans (arr,cond)
 「Someday My Prince Will Come」 (+2) (1961)
1961年5月7日,1961年5月20,21日録音
本作はある意味でマイルスにとっての”小休止時代”に制作された一枚であり、本来のマイルス作品群からすればやや本流から外れる扱いを受けることもしばしばだが、ディズニーアニメ「白雪姫」の人気曲「いつか王子様が」を筆頭に、どこまでもメロディアスなサウンドが繰り広げられるこのラヴリーさはやはり格別なるもの。選曲の妙も光る。また、ウィントン・ケリーの好助演、ハンク・モブレーの抜擢はもちろんのこと、コルトレーンとマイルス最後の共演を収めた作品としても計り知れない価値がある。ジャケットには当時のマイルス夫人フランシス・テイラーが登場。
Miles Davis (tp) / Hank Mobley (ts) / John Coltrane (ts on M-1,5) / Wynton Kelly (p) / Paul Chambers (b) / Jimmy Cobb (ds) / Philly Joe Jones (ds on M-7)

「My Funny Valentine」 (1965)
1964年2月12日録音
1964年、ニューヨークはフィルハーモニック・ホールで行なわれた伝説のコンサートから、リリカルなナンバーを中心に収録。
息詰まるような緊張感の中、「My Funny Valentine」や「Stella by Starlight」といった50年代からの人気レパートリーが装いも新たに繰り広げられる。闇を切り裂くようなマイルスのトランペット、瑞々しさに溢れたハービー・ハンコックのピアノ。かつて、ジャズ喫茶で針が落とされた「My Funny Valentine」冒頭のハンコックの和音一つで、席にいるジャズ・ファンの頭がガクッと垂れたのを何度目撃したか。これぞ、ジャズ・バラードの極致にして、史上最も静かで切ないライヴアルバムの一枚。
Miles Davis (tp) / George Coleman (ts) / Herbie Hancock (p) / Ron Carter (b) / Tony Williams (ds)
TOKU ジャズ・シンガー / フリューゲルホーン・プレイヤー
今まで何度聞いたかなあ・・・間違いなく何百という回数を聴いてきたこのアルバムからは、聴く度にたくさんの刺激を受けるし、毎回必ず発見がある。
マイルス・デイヴィス。
この世に最高の音楽を残したアーティストのひとり。ジャズの帝王っていわれた人だけど、僕にとったら音楽の帝王だな。そして、僕がジャズを始めるキッカケになった人でもある。僕の父親が大のマイルス・ファンで、小学校の時にマイルスのコンサートに連れて行ってもらったことがある。その時は子供の僕にはうるさいだけで(なんと失礼な!)、感動とは程遠い記憶が残っているんだけど、サッカー少年だった僕が中学生でブラスバンド部に入りコルネットを吹き始めたのは、間違いなくあの時のコンサートの影響だと今にして思う。
さらに、高校生になってコルネットを吹くのをやめ、他の楽器に手を染めながらも大学生になってジャズを始めるようになりトランペットを吹くようになったのもマイルスが原因。とにもかくにも、最高の喜びを僕に与えてくれて感謝してもしきれない存在なのです。
さて、アルバムに戻ろう。
1964年のこのライヴ・アルバムは、数あるマイルスのライヴの中でも際立ったものだと思う。ジャズ界最高のクインテットと称される、サックスにウェイン・ショーターが加入する直前の、サックスがジョージ・コールマンによるクインテット。この頃はレパートリーもスタンダードが多いゆえ、マイルスがいかにスタンダードに新しい息を吹き込んでいたかがよく伝わってくる。
張りつめた空気の中で、全てがマイルスを中心に進んでいく。ハービー・ハンコック、ロン・カーター、トニー・ウィリアムズ、この3人のリズム・セクションはとにかく強力だ。強力というのは、音楽をとにかくよく知っているということ。もちろん、マイルスの指示によるものもあると思うけど、音楽に対する深い洞察力と瞬間の判断力には他の誰もかなわない揺るぎないものがある。
冒頭の「My Funny Valentine」、ハービーのイントロからマイルスがメロディを紡ぎ始めると、すべて定められているかのようなタイミングでロンが弾き始め、トニーが色付けを始める。決められているわけではないのにそう思うのは、パーフェクトを越えてもう自然な域に入ってるからなのかな。それだけ、「強力」なメンバー達。そして、そのうちに大きな物語が始まったような感覚に陥る。そう、みんなで絵を書き始めるように。そして、それはとても美しい!! バラードをこの遅さのテンポでプレイし始めたのもマイルスが最初。スペースができると、自信がなければそれを埋める方向に行きがちだけど、マイルスはそのスペースを楽しみ、そのスペースにイマジネーションを与える。マイルスが何か話せば、それにメンバーが答える。マイルスが音でハーモニーの示唆をすれば、それを聞いているメンバーがそのハーモニーで答える。コミュニケーションの、またはブルースの、音楽の基本。ライヴはずっとそんなふうに進んでいく。時に強く、時に優しく、それに敏感に反応するリズム・セクション。そして、マイルスの「歌」は激しく僕の心を打つ。ああ、至福だ・・・
「Stella By Starlight」、僕がこのアルバムで一番好きなトラック。マイルスが愛してやまなかったバラードのプレイ。なんと言っても、1分50秒あたりでマイルスのフレーズが切れた瞬間観客のひとりが叫ぶところ、僕はこの人の気持ちが痛いほどわかる! だって、目の前でこんな演奏繰り広げられたら叫びたくもなるよ! (一説には叫び声の主はディジー・ガレスピーだったっていう話もあるけどホントらしい)いかに、マイルスがロマンチックな人だったかも、この曲のメロディの取り方でよくわかる。最初のテーマが終わると客席から拍手が。もう圧倒されているんだね。そして、ジョージ・コールマンの後のハービーのソロ、ベースのロンと二人になるんだけど、なんと美しいことか! 一瞬先のハーモニーをどうするか、二人で聞き合い、話し合いながら音を紡いで行く、この瞬間も大好き。マイルスがメロディと共に戻って来る、もう涙が止まらなくなる。そして「All Blues」へとなだれこむ。もうたまらない! バラード「I Thought About You」でアルバムは幕を閉じる。
生身の人間同士にしかできない、生きた音楽がここにある。ありがとう、マイルス。
(TOKU)
『Dream A Dream』
東日本大震災の惨禍の中、来日中のシンディ・ローパーと共に音楽の力で日本中に応援を届けたTOKU。そこから感じてきた思いを胸に、本作では男女の愛を超えた、大きなグローバルな意味での「愛」(地球への愛、子供への愛、共生への愛 など)の歌を集めたアルバムをレコーディング。「Heal the World」、「Imagine」、「What a Wonderful World」など屈指のピースフル・ソングに加え、日本のヒップ・ホップ・シーンのアイコン ZEEBRAをフィーチャリングした「Music is the Key 〜未来への鍵 featuring ZEEBRA」、オルケスタ・デ・ラ・ルスのメンバーでグラミー賞ノミネート歴もある世界的ピアニスト/プロデューサー 塩谷哲をプロデュースに迎えた「君へのファンファーレ」、「星の夜」など、TOKUの音楽を聴いて救われ、希望を持てる内容になっている。
類家心平 ジャズ・トランペッター
ジャズミュージシャンは自身の演奏技術の向上の為にフェイバリットミュージシャンのアドリブをコピーしたりする。Milesのコピーは非常に難しいというか不可能に近い。オタマジャクシを真似るのは容易いが、あの音に含まれる情報量は到底真似出来るものではない。
感情が音に露骨に乗っかってくる。空間を支配し時間の流れをコントロールする不思議なトーン。人の真似をすることはミュージシャンにとって単なる通過点に過ぎないのだが、Milesの世界観に影響されないミュージシャンはいないのではないだろうか。
『My Funny Valentine』というライヴ盤には非常にお世話になったが、未だに聴く度に感動せずにはいられない。初めて聴いたのは親父が持っていたレコードだったと思う。人は音楽を聴いて本当に感極まると叫ぶのだということも容易に共感できた。ライヴでこんな演奏ができたら死んでもいいだろう。
(類家心平)
『4AM』
自身のバンド以外にも、菊地成孔ダブ・セクステットやアニメ「坂道のアポロン」サウンドトラックにも参加するなど、活躍の場を大きく広げているトランペッター、類家心平のソロ3rdアルバムは、最高音質DSDによるライヴ・レコーディング。4人編成だったShinpei Ruike 4 Piece Bandにギタリストを入れることで、70年代マイルス・バンドを彷彿とさせるロック的要素満載のエネルギッシュなバンド・サウンドへと展開。ジャズ〜ロック〜クロスオーバーな音楽ファンに是非体感して欲しい一枚。

Ambrose Akinmusire ジャズ・トランペッター
マイルスのアルバムから、1枚だけ選ぶなんてすごく難しいよ・・・でもあえて選ぶとしたら『My Funny Valentine』になるかな。
フィル・ハーモニック・ホールでのライヴで、『Four & More』と同じ日の音源なんだけど、こっちは、オーディエンスのエネルギーを元にバンドが演奏している感じがあって、特に好きなんだ。ハービーのピアノもいいしね。しかもジョージ・コールマンの音をライヴで聴けるのは当時珍しかったんじゃないかな。
僕にとってマイルスは、「CHANGE(変化)」なんだ。アーティストは常に自分自身と向き合って、自己評価をしながら、絶えず良い方向に変化しようとする。マイルスはまさにそうだった。ビバップから、1959年の『Kind of Blue』、つまりモードになって、そこからハービーやトニーらと素晴らしいクインテットを作り上げ、さらにエレクトリックへと向かう。常にマイルスは、8年、10年ぐらいのスパンで変化していった。
偉大なアーティストはみんなそう。前のアルバムから次のアルバムにかけての変化は、どれもが意味を成しているんだ。正直な音楽を作ることはアーティストの使命だけど、良い方向に変化することは重要だし、それが時間軸に反映する。そういう意味で、マイルスは僕にとっての初めての“ミュージシャン”だったんだ。
(アンブローズ・アキンムシーレ)
『When The Heart Emerges Glistening』
テレンス・ブランチャード、クインシー・ジョーンズ、ハーブ・アルパート、ロイ・ハーグローヴらが審査に当たった2007年度「セロニアス・モンク国際ジャズ・コンペティション」で優勝、さらに同年の「カーマイン・カルーソー国際ジャズ・トランペット・ソロ・コンペティション」でも優勝し、一躍ジャズ界の注目の的となったトランペッター/コンポーザー/アレンジャー、アンブローズ・アキンムシーレのブルーノート・デビュー・アルバム。共同プロデュース(2曲でピアノ参加)をジェイソン・モラン、バックには、ジェラルド・クレイトン(p)、ウォルター・スミスV世(ts)、ジャスティン・ブラウン(ds)ら同世代の若手メンバーが名を連ねている。
 「Four & More」 (1966)
1964年2月12日録音
前掲『My Funny Valentine』と同じく1964年2月12日ニューヨーク・フィルハーモニック・ホールで行なわれた伝説のコンサートから、こちらはアップテンポの曲ばかりを厳選した第2弾。当時18歳のトニー・ウィリアムスが打ち出す変幻自在の神懸かり的なリズムに煽られ、全ソリストが完全燃焼。「So What」、「Walkin'」、「Four」、「Seven Steps To Heaven」などの定番ナンバーが、過激かつ美麗に進化した。
Miles Davis (tp) / George Coleman (ts) / Herbie Hancock (p) / Ron Carter (b) / Tony Williams (ds)
 「Miles In Berlin」 (+1) (1965)
1964年9月25日録音
初の日本公演後の1964年9月にメンバーチェンジを行なったマイルス・バンド。新加入したウェイン・ショーターはマイルスが懇願して、ジャズ・メッセンジャーズ退団を待つほどの逸材だった。そのショーターは御眼鏡どおりバンドのサウンドカラーを決定する優れた作品と演奏を提供し、60年後半のジャズシーンのキーパーソンへと成長した。本作は、そうしたバンドのヨーロッパ楽旅におけるベルリン・ジャズ祭でのお披露目公演を捉えた、「フリーブローイング時代」の最後を飾った傑作。
Miles Davis (tp) / Wayne Shorter (ts) / Herbie Hancock (p) / Ron Carter (b) / Tony Williams (ds)
村上基 在日ファンク / Gentle Forest Jazz Band
マイルスの音楽は何度聴いても初心に返ることができ、尚且つ新たな発見やアイディアを僕にくれる。
中でも『Four & More』は沢山のアイディアに溢れていて、とても挑戦的でスリリングなプレイが終始続いている。「マイルス=Kind of Blue」という人にとっては、まるでプレイスタイルが違うのでなかなか受け入れにくいアルバムかもしれないが、とりあえずフレーズがどうこうとかは置いといて、プレイヤー同士の音での会話、そしてそれぞれが生み出すその音のパッションを聴いてほしい。まるで全員が、危険を顧みずに崖を全力疾走しているような演奏である。
それもただただ勢いに任せるのではなく、とても繊細で、守りに入る演奏ではなく常に攻めの姿勢でいて、そして演奏している全員がその極限な状態にいないと成立しない世界である。この精神は僕にとって音楽をやる原点であって、常に挑戦的で全力で攻めの姿勢で音楽を作っていきたいと思っている。
もちろん即興演奏の場だけでなくどんなジャンル、どんなスタイルの音楽でも思い切って全力で音を生み出していきたい。そう思えるアルバムだ。
(村上基)
『はじめての在日ファンク・アワー LIVE in SHIBUYA』
今や俳優・タレントとしても八面六臂の活動を繰り広げ、国民諸君へ痛烈なキャラクターを浸透させた、ハマケンこと浜野謙太率いる在日ファンク。2013年1月、バンド史上最大の規模である東京SHIBUYA-AX にて行われた、在日ファンクによる入魂のエンターテイメントショー、「在日ファンク・アワー2013」の魅力を余すところなく、DVDとCDでギュギュっとパッケージした豪華2枚組仕様。在日ファンクの歴史・思想・懊悩をつまびらかにする、メンバーへのディープ・インタビューも織り交ぜ、見ごたえたっぷりの映像をお届け!
 「E.S.P.」 (1965)
1965年1月20日,21,22日録音
マイルス、ウェイン・ショーター、ハービー・ハンコック、ロン・カーター、トニー・ウィリアムス。ジャズの流れを変革した“60年代黄金クインテット”、記念すべき初のスタジオ録音。レパートリーを刷新し、全曲をメンバーの書き下ろしで構成。新たな高みを目指す5人の鮮烈なプレイに耳も心も奪われる。また、実験的な要素とスタジオ・アルバムとしての完成度を両立させた稀有な作品として、モダンから、エレクトリック、そして、フリージャズ系のファンまでを納得させた。アグレッシヴな「Agitation」、ファンキーな「Eighty-One」、ミステリアスな「Little One」と、バラエティに富んだ曲想が揃っているのも大きな魅力。ここでも勿論ショーターがサウンド・ディレクションの核となっている。
Miles Davis (tp) / Wayne Shorter (ts) / Herbie Hancock (p) / Ron Carter (b) / Tony Williams (ds)
 「Miles Smiles」 (1967)
1966年10月24,25日録音
ウェイン・ショーターを音楽的な主柱に据えて新しい活動を進めていったマイルスの60年代黄金クインテットによる、1年8ヶ月ぶりのスタジオ・レコーディング。蓄えていたパワーを一気に噴出させたかのような、パワフルかつアグレッシヴな音作りが炸裂。「フットプリンツ」、「フリーダム・ジャズ・ダンス」などは、このアルバムの演奏でスタンダード・ナンバーの仲間入りを果たした。この時期のスタジオ作品と実際の演奏の間にかなりの差異があったのは、ライヴ盤『Live At The Plugged Nickel』などでも明らか。テオ・マセロの政策に乗りながらもマイルスは少しづつ新しい世界を作り上げていった。
Miles Davis (tp) / Wayne Shorter (ts) / Herbie Hancock (p) / Ron Carter (b) / Tony Williams (ds)
青羊 けもの
高田馬場の地下に、ジャズを覚えたての者から、有名なプレイヤーまで受け入れてくれるお店がある。そこでよく私が耳にしたのが、マイルスの『Nefertiti』だ。
こんな絶妙なバランスってあるだろうか、と思ってしまう。例えるなら、「美しい低空飛行」といった感じだろうか。iPhoneに入っているこのアルバムを聴きながら外を歩くと、脚が2、3cmぐらい浮いたような感覚にさせられる。
アルバムタイトルにもなっている「Nefertiti」では、若きウェイン・ショーターの一発目にまず、ノックアウトされてしまう。この第一声はほんとうにズルい。他にも、印象的な曲ばかりが揃っていて、どの曲もイントロで完璧に掴まれてしまう。
中でも「Pinocchio」には心をくすぐられ、映画「勝手にしやがれ」でジーン・セバーグが「ニューヨーク・ヘラルド・トリビューン!」と叫びながらシャンゼリゼ通りを通り過ぎていくワンシーンを思わず想像してしまう。
(青羊)
けもの 『LE KEMONO INTOXIQUE』
2004年にジャズ・ヴォーカリストとしてキャリアをスタートした青羊(あめ)が、2010年に自身のソロユニット/アートアクティビティとして立ち上げた「けもの」。菊地成孔のプロデュースによって鮮烈なリプレゼンテーションを飾った1stフル・アルバム。菊地がプロデューサーとしてサックス、ヴォーカル、作詞、トラックメイキング、カヴァー選曲、スタイリング、アートワーク(カメラマン兼)まで行うのは初の試み。禍々しさと呑気、ハイスキルと幼稚、呪いと笑いが悠々と混在する、世代感やカルチャージャンル感を越えた、新鮮な作品に仕上がっている。
 「Sorcerer」 (+2) (1967)
1967年5月16,17,24日、1962年8月21日録音
この時期マイルスは「グループ・サウンド・エクスプレッション」を押し進めながらも、実際にはサウンド・プロデューサーの座を(7曲中4曲を書き下ろした)ウェイン・ショーターに明け渡していたという風評があるが、ハービー・ハンコックの自由なアプローチやロン・カーターのピークを記録した当意即妙のリアクションを見せるプレイも含めて、サウンド全体のスケッチはやはりマイルスが描き、作品も含めた「色合い」に関してのデザイニングをショーターが行なったと捉えるのが妥当なところだろう。ハンコックのややフリーな演奏と、若きトニー・ウィリアムスのシンバル・レガートひとつで見事なまでに色彩を描き出す妙技、そして、御大マイルスが吹いてみせる繊細且つ力強い演奏は出色の一言に尽きる。モダンジャズの既存フォーマットを少しづつハミ出そうとするマイルスのコンセプトを各自が体現する、ジャズ史上稀有なグループの姿がここにある。
Miles Davis (tp) / Wayne Shorter (ts) / Herbie Hancock (p) / Ron Carter (b) / Tony Williams (ds)
 「Nefertiti」 (+4) (1967)
1967年6月7,22日、7月19日録音
「ジャズ=アドリブ」という概念に揺さぶりをかけた、冒頭アンニュイなウェイン・ショーターのテーマが響くと、思わぬ睡眠作用を引き起こされそうになるのは数多ジャズファン共通の経験かもしれない。が、黄金のクインテットによる四部作の最後を飾る本作は、マイルスがアコースティック・ジャズで表現しようとした最高到達点であり、臨界点であり、それはこの時代における最後の傑作ということにもなる。ここでの演奏には今にも”殻”を食い破って飛び出しそうなマイルス以下5人の勢いと心持ちが伝わってくる。ハービー・ハンコック作「Riot」、トニー・ウィリアムス作「Hand Jive」など、クインテットの尽きない魅力をあらゆる角度から照らし出している。
Miles Davis (tp) / Wayne Shorter (ts) / Herbie Hancock (p) / Ron Carter (b) / Tony Williams (ds)
 「In A Silent Way」 (1969)
1969年2月18日録音
1969年2月に録音されたこの作品によって本格的なエレクトリック・マイルスの時代が始まった。前年の旧メンバーの退団劇によって余儀なくされたバンドの再編過程において、チック・コリア、ジョー・ザヴィヌル、ハービー・ハンコックという次代を担う3人をここに揃えることができたマイルスは、その若き才能と共に時代の音を作り上げていった。ロンドンのロニー・スコッツ・クラブでスカウトしたジョン・マクラフリン(g)のプレイを聴くと、80年代以降マイルスがギター奏者にハーモニーでの役割を与えたのとは異なり、ヨーロッパ出自のマクラフリンの突出したソリストとしての感覚に惚れ込み、抜擢に踏み切ったことがよく解る。ショーターのソプラノ・プレイからはウェザー・リポートにおけるサウンドの萌芽が聴き取れる。また、「In A Silent Way / It's About That Time」は日本における「牧歌的ジャズ」という言葉の源泉となった演奏でもあり、90年代以降はアンビエント・ミュージックやミニマル・ミュージックの先駆として再評価も高まった。名プロデューサー、テオ・マセロの編集手腕にも脱帽。
Miles Davis (tp) / Wayne Shorter (ss) / John McLaughlin (el-g) / Chick Corea (el-p) / Herbie Hancock (el-p) / Joe Zawinul (org) / Dave Holland (b) / Tony Williams (ds)
佐藤元彦 L.E.D.
個人的にも直接的な影響を受けた思い入れの強い作品というとこで『In A Silent Way』に1票いたします。
この作品はマイルスが伝統的な意味でのジャズというフォーマットを捨てアコースティックからエレクトリック期へ変化していく過渡期に位置し、世もまさに60'sから70'sへ移り変わらんと音楽だけでなくあらゆるアートがうねり輝き革新されゆくときに作られたもの。その頃のエネルギー、時代の空気感というものが今、改めて聴いてもビンビン伝わってきます!
新しもの好きの負けず嫌いで切れ者なミーハーである(笑)マイルスが、その”おいしい”空気を見逃すはずもなく、そこにきっかけを見いだしつつも、誰よりも先を行ってやろうと気合い入れてるときのセッションで、本人も、参加した蒼々たるメンバーも向う方向を手探りながらも”新しいなにか”を創りだしている感じが音にも表れています。
コードを1つに絞った中で作られたそのサウンドは、アブストラクトなものでアンビエントやミニマル、テクノにも通じるドローンの手法やトータスやHIMなど初期ポストロックなどにも通ずる要素に溢れています。そしてマイルスが曲を作る上でソロやメロディーではなく全体のサウンドそのものに重きを置いていたのが伺い知れます。僕自身、その視点に音楽人の端くれとしてとても影響を受けました。
あとアルバムタイトル曲「In A Silent Way」の作曲クレジットが、実は後に同じくあらゆるジャンルに影響を残したWeather Reportを結成するジョー・ザヴィヌルのもので、この直後にだされるあの『Bitches Brew』とWeather Reportのファーストの類似性を聴き比べるのもおもしろいです。
難しいことはさておくと、単純に寝る前や読書のBGMにも至極最高でリラクシン効果も抜群とあらゆる魅力に溢れたとにもかくにも大好きな名盤です!
(佐藤元彦)
『in motion』
2年振りとなる3枚目のフルアルバム。本作はゲストボーカルにSalyu、作詞にはタナカカツキを迎え、L.E.D.×Salyu×タナカカツキというこの三者でしか生まれないであろう壮大なスケールを描いた新曲「空水になる feat.Salyu」を収録。そして無二のスタイルを確立する、孤高の詩人、志人を迎えた「賽の河原〜八俣遠呂智の落とし子と鬼八の祟り〜」では、歪でファンタジーなトラックの世界観と、まるで日本神話のような文学的リリックを変幻自在のフロウで畳み掛けた圧巻の超大作。

「Bitches Brew」 (+1) (1970)
1969年8月19〜21日録音
かのウッドストック・フェスティヴァル開催期間と同じ1969年8月19日から21日にかけてニューヨークのコロムビア Bスタジオに召集されたメンバーたちは、マイルスがここで告げた時代への”決別宣言”をどう捉えたのだろうか。1967年のコルトレーンの死から約2年、混迷のポスト・コルトレーン時代は早くも収束に向かい、この後の「ウェザー・リポート、サークル経由リターン・トゥー・フォーエヴァー」と急速に形作られていく70年代の姿がここにある。後年、このセッションはコンプリートな形で発売されたが、本盤は、オリジナル・イシューに未発表となる1970年1月録音の「Feio」が追加収録されたものとなる。『Miles In The Sky』あたりから模索されてきたマイルス・ミュージックの新しい方向性がまるで華が開くかのように一気に表出したこの作品は、マイルスが様々な時代を刻んできた中でまさに白眉と言っていい独自性と時代性を包含している。ゆえにいつの世もジャズ史に燦然と輝いている。
Miles Davis (tp) / Wayne Shorter (ss) / Bennie Maupin (b-cl) / Joe Zawinul (el-p) / Chick Corea (el-p) / Larry Young (el-p) / John McLaughlin (el-g) / Dave Holland (b) / Harvey Brooks (el-b) / Lenny White (ds-left) / Jack DeJohnette (ds-right) / Don Alias (congas,ds-left) / Billy Cobham (ds-left) / Juma Santos (shaker,congas) / Airto Moreira (per,cuica)
HIDETAKE TAKAYAMA 作曲家 / トラックメイカー
20代前半、藤沢でやっていたジャムバンドのギタリストにこれを聴けって教えてもらったのが、Bitches Brew。
当時は生意気にもJAMとは尺が長くて退屈なもので、もっと計画的でクールな音楽がやりたいなぁと思っていた頃。僕にはマイルスの音の経験と知識が足りないせいか、このトランペットがどれだけ素晴らしいかは当時も今もまだ正直わからない。けれど、マイルスが集めたこのバンドの、一点に向かう空気やノイズ、ただならぬざわざわ感、月夜に吠える狼のような圧倒的な『野生』にショックを受けて、とても感激した。
交響曲のような壮大な構成、ネットリとしたバスクラリネットがだす雰囲気は或いは吹奏楽のようでもあり、刻まれるエイトビートはダンスミュージック、ファンク、ロックのようでもあるこの1969年のセッション。色々な思いと時代が絡み合った音は生々しくありながら、ダイナミクスやサウンドはスタイリッシュでどこか都会的にも聴こえた。「Pharaoh's Dance」、「Bitches Brew」を経たあとの、突き抜ける「Spanish Key」。エレピのキメからのジョン・マクラフリンのギターソロが最高すぎて、夜中に一人で叫んでしまうよ。
(HIDETAKE TAKAYAMA)
『Asterism』
全てを超越する一大叙事詩の前に、もはやジャンルの壁は1mm たりともない! 日本が世界に誇る鬼才 HIDETAKE TAKAYAMAが放つ待望の2ndアルバムは、HIP HOP&SOUL〜JAZZ〜CLASSIC〜ELECTRONICA〜現代音楽までをも縦横無尽に飛び回る世界最高峰の革命盤。PV「Express feat. Silla(mum)」には文化庁メディア芸術祭や3DCG AWARDS、SIGGRAPH ASIA Animation Theater などの権威あるコンテストで優秀賞を総ナメにしたamazarashi のCG PVを数多く手掛けるTRANSISTOR STUDIO の森江康太氏が総指揮。
 「Tribute To Jack Johnson」 (1971)
1970年2月18、4月7日録音
若い頃に警官からの暴行を受けたからだろうか、マイルスは自宅ビルにジムを設置してボクシングの練習に余念がなかったと聞くが、そうしたことを度外視しても、60年代初頭に活躍した伝説の黒人ボクサー、ジャック・ジョンソンのドキュメンタリー映画のために制作されるサウンドトラックは、マイルスにとってまさに飛びつくに相応しい題材だっただろう。マイルスが残した数々のセッションから決定的瞬間をプロデューサーのテオ・マセロが厳選し、組曲風の作品にまとめあげている。ジャック・ジョンソンを鼓舞するが如く打ち続けるトニー・ウィリアムスのドラミングと、マクラフリンの肉を切り裂くようなギターのカッティングが印象的で、マイルスのソロも短いフレーズを断続的に埋め込んでいく手法でテンションを持続させようとしている。「Yesternow」の後半部では、暴力的とまで表された黒人ギタリスト、ソニー・シャーロックがマクラフリンともにフィーチャーされている。自然発生的な録音だったという「Right Off」での演奏は極めて感覚的であり、ここに、ジャズを超え、ファンク、そしてジミヘンを射程距離に捉えたマイルスを見ることができる。
Miles Davis (tp) / Steve Grossman (ss) / John McLaughlin (el-g) / Herbie Hancock (org) / Michael Henderson (el-b) / Billy Cobham (ds) / Bennie Maupin (b-cl) / Sonny Sharrock (el-g) / Chick Corea (el-p) / Dave Holland (el-b) / Jack DeJohnette (ds)
 「On The Corner」 (1972)
1972年6月1,6日、7月7日録音
様々な国のリズムのテープを取り寄せてアパートの空間に流し続けているマイルスの姿が想像できたとき、初めてこの作品の言わんとしていることが朧ろげながらも見えてくるだろうか。マイルス・バンドにおけるマイケル・ヘンダーソン音楽監督時代の始まりを告げた作品としても印象的な本作は、マイルスが黒人を中心とするストリート・ミュージックの原点に立ち返って、再びダンスミュージックとしてのジャズを意識させたアルバム。特に耳に残るのはタブラのリズムとシタール的なギター・サウンド。複雑なリズムが波を重ねるように“引き合い足し合って”不思議な効果を上げていくポリリズム絵巻。オスティナートでグイグイ押しまくるヘンダーソンのベースラインにしても、重ねられたリズムいかんによっては多様なグルーヴを創出させる、至極相対的な役割を果たしている。発売から40年もの時を経た現在でも、世界中のDJやクラブ・ミュージック・クリエイター、ヘッズたちから賞賛を浴びる、まるで21世紀に聴かれるために生まれてきたかのような重要作。
Miles Davis (el-tp) / Dave Liebman (ss) / Carlos Garnett (ss,ts) / Chick Corea (el-p) / Herbie Hancock (el-p,synth) / Harold I. Williams (org,synth) / Lonnie Liston Smith (org) / David Creamer, John McLaughlin (el-g) / Michael Henderson (el-b) / Collin Walcott, Khalil Balakrishna (el-sitar) / Bennie Maupin (b-cl) / Badal Roy (tabla) / Jack DeJohnette, Billy Cobham, Al Foster (ds) / Jabali Billy Hart (ds, bongos) / James "Mtume" Foreman, Don Alias (per) / Paul Buckmaster (cello,arr)
 「Get Up With It」 (1974)
1970年5月19日、1972年3月9日、9月6日、12月8日、1973年9月17日、1974年6月19or20日、10月7日録音
活動停止前に発表された最後のスタジオ・レコーディング集。1974年5月24日のデューク・エリントンが天に召された直後の雰囲気を今に伝える「He Loved Him Madly」は、ジャズの世界をクラシックに匹敵するまでのレベルへ高めようと長年腐心してきたデュークに対するマイルスからの敬愛の念をストレートに表現したレクイエム。当時マイルスが志向し始めていたポリリズムとポリ・サウンドによるオーケストレイションの実現は、この後のマイルスの健康悪化によって断たれるが、ここではエムトゥーメ、ビリー・プレストンといった、この時期キー・タレントとしてマイルスが認識していたミュージシャンたちが次々に曲名として登場しているのが実に興味深い。演奏は、後年の考察によって多くの録音月日が類推されているが、しかし何より、この作品はデュークに捧げられ、マイルスの数多い作品中最も荘重で悲しみに満ちたものであるということに尽きるだろう。
Miles Davis (tp,organ) / Dave Liebman (alto flute,fl) / Sonny Fortune (fl) / Steve Grossman, John Stubblefield, Carlos Garnett (ss) / Keith Jarrett, Cedric Lawson (el-p) / Herbie Hancock (cl) / Pete Cosey, Reggie Lucas, Dominique Gaumont, John McLaughlin, Cornell Dupree (el-g) / Michael Henderson (el-b) / Al Foster, Billy Cobham, Bernard Purdie (ds) / James Mtume, Airto Moreira (per) / Khalil Balakrishna (el-sitar) / Badal Roy (tabla) / Lester Chambers (harmonica)
 「Agharta」 (1975)
1975年2月1日録音
3度目の来日公演となる1975年2月1日大阪フェスティヴァル・ホールで録音された本作品は、マイルスの70年代におけるポリリズム探求のひとつの回答であり、明らかにデューク・エリントンの企図したオーケストレイションによるジャズの地位向上という壮大な試みを継承しようと意識的に動き出した一瞬を捉えたライヴでもある。ここでは、デューク同然にバンドがマイルスの“楽器”となり、会場全体を次第に覆っていく。ピート・コージーとレジー・ルーカスの禍々しいツイン・ギターはまさにその象徴でもあるだろうか。鳴り続けるエムトゥーメのパーカッションも、まるでジャズを背負って立つマイルスを追い立ているかのようだ。ジャケット・デザインは横尾忠則によるもの。
Miles Davis (tp,org) / Pete Cosey (el-g,per,synth) / Sonny Fortune (as,fl,ss) / Al Foster (ds) / Reggie Lucas (el-g) / Michael Henderson (b) / James Mtume (congas,per,rhythm box,water drum)
 「Pangaea」 (1976)
1975年2月1日録音
同じく1975年2月1日の大阪フェスティヴァル・ホールでの「夜の部」を完全収録したライヴ盤。打ち続けられるエムトゥーメのパーカッションとアル・フォスターのドラムス、ピート・コージーとレジー・ルーカスのツイン・ギターが作り出す不思議な空間、マイケル・ヘンダーソンのベースが心臓のように音楽の鼓動を送り続け、マイルスのワウワウ・ペットが音の臨界点に向かって上昇を続け、まるでブラックホールのように、全てのエネルギーを吸い込みながら肥大化する。いわゆる「アガ・パン・バンド」による最高のパフォーマンス。
Miles Davis (tp,org) / Pete Cosey (el-g,per,synth) / Sonny Fortune (as,fl,ss) / Al Foster (ds) / Reggie Lucas (el-g) / Michael Henderson (b) / James Mtume (congas,per,rhythm box,water drum)
 「The Man With The Horn」 (1981)
1980年5月1日〜6月、1981年1月、3月、5月6日録音
約6年の沈黙を破って復活した帝王マイルスの力強いブロウイングが衝撃的。アル・フォスター以外はメンバーを一新。若手中心のラインナップへと大転換。マーカス・ミラーやマイク・スターンらの才能を見抜くマイルスの慧眼もさることながら、かなりのプレッシャーとも言えるマイルスのリクエストに見事に応えてみせたマーカスの”できる男”ぶりも天晴れ。新たな挑戦をスタートさせたマイルス・ミュージックの先見性、そしてあらゆるシーンへの影響力が窺えるマジカルなアルバム。ファンク・バンド、プレジャーにも在籍していたランディ・ホールらをシンガーで起用したタイトル曲の煮え切らないブラコン感が妙に愛おしい。
Miles Davis (tp) / Bill Evans (ss) / Barry Finnerty, Mike Stern (g) / Marcus Miller, Felton Crews (b) / Al Foster (ds) / Sammy Figueroa (per) / Robert Irving V (synth,p) / Randy Hall (synth,g,celeste,moog synth,vo on M-5) / Vincent Wilburn (ds)
 「You're Under Arrest」 (1985)
1984年1月26日、9月22日、12月26,27日、1985年1月録音
「Time After Time」と「Human Nature」こそが、リズムやモード、さらには音の臨界点の探求の据えにたどり着いたマイルスなりのひとつの答えだったのだろうか? メロディこそがジャズの魅力だとでも言うように燦然と輝くこの2曲、さらにはスティングをゲスト招聘するといった話題づくりにも抜かりなく、その存在感を大いにアピールした本作は、マイルスが再び”対若者”という観点でのポップミュージックに挑戦しようとした一枚なのかもしれない。後期マイルスの代表曲で、今やスタンダード・ナンバーと化した「Jean Pierre」も収録。
Miles Davis (tp,synth,voice) / John McLaughlin, John Scofield (g) / Bob Berg (ss,ts) / Al Foster, Vince Wilburn (ds) / Robert Irving V (synth,celesta,org,clavinet) / Darryl Jones (b) / Steve Thorton (per,spanish vo) / Sting (french policeman's voice) / Marek Olko (polish voice) / James Prindiville, aka "J.R." (handcuffs)
その他のマイルス・デイヴィス リリース情報
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