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「ベルリン・フィル・ラウンジ」第78号:ティーレマン、ヴェルディを語る(前半) ベルリン・フィル・ラウンジへ戻る

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2013年5月24日 (金)

ドイツ銀行 ベルリン・フィル
ベルリン・フィル&HMV提携サイト
 ベルリン・フィル関係ニュース

2014年バーデン・バーデン・イースター音楽祭の予定が発表
ベルリン・フィルの第2回バーデン・バーデン・イースター音楽祭の予定が発表されました。フェスティヴァルの中心となるのは、サー・サイモン・ラトル指揮の《マノン・レスコー》新演出。この舞台は、サー・リチャード・アイルにより演出され、メトロポリタン・オペラでも上演される予定です。題名役は、オランダのソプラノ、エヴァ・マリア・ヴェストブレークが歌います。
 コンサートでは、アンネ・ゾフィー・ムター、ソル・ガベッタ、イェフィム・ブロンフマン等のスター・ソリストが登場。またラトルは、バッハの《ヨハネ受難曲》をピーター・セラーズの演出で上演します。またシンフォニー・コンサートでは、ズービン・メータがR・シュトラウスの《英雄の生涯》を指揮する予定です。加えて、ベルリン・フィルの団員による室内楽演奏会、教育プロジェクト等も行われます。

バーデン・バーデン・イースター音楽祭のプログラム詳細はこちらから

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ヤンソンスのキャンセルを受けて、ファン・ズヴェーデンがデビュー
2013年5月10日

【演奏曲目】
バルトーク:オーケストラのための協奏曲
ブラームス:交響曲第1番

指揮:ヤープ・ファン・ズヴェーデン


 この演奏会は、当初マリス・ヤンソンスの指揮で予定されていましたが、彼が健康上の理由でキャンセルとなり、代役としてヤープ・ファン・ズヴェーデンが登場することになりました。これは、ファン・ズヴェーデンにとってベルリン・フィル・デビューとなります。
 曲目は、当初のバルトーク「弦楽器、打楽器、チェレスタのための音楽」から、同じ作曲家の「オーケストラのための協奏曲」に変更されました。ブラームスの「交響曲第1番」は、予定通り演奏されています。

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恒例のアバドの客演は、《真夏の夜の夢》と幻想交響曲
2013年5月19日

【演奏曲目】
メンデルスゾーン:《真夏の夜の夢》抜粋
ベルリオーズ:幻想交響曲

ソプラノ:デボラ・ヨーク
メゾソプラノ:ステラ・ドゥフェクシス
バイエルン放送合唱団女声団員(合唱指揮:コンスタニア・グルツィ)
指揮:クラウディオ・アバド


 クラウディオ・アバドは、毎年5月にベルリン・フィルへ客演する際、音楽監督時代に指揮した経験のある曲と、これまで取り上げたことのない「新しい」作品とのカップリングを好みます。今回の公演におけるメンデルスゾーンの劇付随音楽《真夏の夜の夢》とベルリオーズの幻想交響曲も、その例にもれません(後者はベルリン・フィルとは初めて)。
 1832年、この2人の作曲家はローマで初めて対面しました。ベルリオーズはメンデルスゾーンの才能に驚嘆しましたが、メンデルスゾーンの方はベルリオーズのエキセントリックなふるまいに戸惑いを隠せませんでした。当時作曲されたばかりの幻想交響曲の終楽章〈魔女の夜宴の夢〉について、メンデルスゾーンは「ぞっとするような痴態と激しさ。愚にもつかないつぶやきや叫び、金切り声に満ちている」とその異質な印象を記しています。
 メンデルスゾーンは、自らが理想とするロマン派の音楽を弱冠17歳で書いていました。それがシェークスピアの戯曲を題材にした《真夏の夜の夢》の序曲で、オベロンとティターニアが支配する妖精世界の雰囲気をものの見事に表現しています。1843年、プロイセン王フリードリヒ・ヴィルヘルム4世の命により、新たに書かれた12曲の劇付随音楽がポツダムの新宮殿で初演されました。同じ年、ベルリオーズはライプツィヒで幻想交響曲を指揮し、この2人の作曲家は再会を果たします。最初のよそよそしさから彼らは徐々に心を打ち解け、最後はお互いの指揮棒を交換したのでした。

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 これからのDCH演奏会

ベルリン・フィル ストラディヴァリ・ソロイスツの演奏会が急遽中継決定
日本時間2013年5月25日(土)23時

【演奏曲目】
タリス、バーバー、バッハ、モーツァルトの作品

ベルリン・フィルハーモニック・ストラディヴァリ・ソロイスツ


 アントニオ・ストラディヴァリは、今日に至るまでもっとも著名な弦楽器の制作者として知られています。北イタリアのクレモナで工房を営んだ彼は、そのヴァイオリンの響きによって1つの神話となりました。ストラディヴァリは使用する木の強度やニスの種類などにおいてさまざまな実験を繰り返し、その結果生まれた音色は、世界中の音楽家やコレクターを魅了し続けています。
 今回のファミリー・コンサートでは、ベルリン・フィルハーモニック・ストラディヴァリ・ソロイスツが、マシュー・ハンターの司会のもと、世界最大級ともいえるストラディヴァリウスのコレクションの音色を披露します。演目はタリス、バーバー、バッハ、モーツァルト。一方では、ヴァイオリン制作者ジャニーヌ・ヴィルトハーゲのワークショップにより、ベルリンの高校生が仕上げた楽器を使って同じ演目を奏でます。それにより興味深い比較もできるでしょう。どうぞご期待ください。
 ライブ中継は、ご覧になりやすい23時開始となっています。

生中継:2013年5月25日(土)日本時間23時

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ブロムシュテットのベートーヴェンとニールセン
日本時間2013年5月26日(日)午前3時

【演奏曲目】
ベートーヴェン:交響曲第4番
ニールセン:交響曲第5番

指揮:ヘルベルト・ブロムシュテット


 近年ベルリン・フィルへの客演が増えているヘルベルト・ブロムシュテット指揮の演奏会です。1806年に書かれたベートーヴェンの交響曲第4番は、第3番と第5番という2つの巨大な作品の影に隠れがちで、今日に至るまで演奏頻度も稀な部類に入ります。しかし、それは残念なことです。この第4番では、第3番《エロイカ》で獲得した音楽的成果がしっかりと受け継がれ、またドラマチックな第5番《運命》とは反したリラックスした明るい音が奏でられます。第4番を作曲当時のベートーヴェンについて、同時代の人はこう形容しています。「冗談をよく言い、陽気で快活。生きる喜びに溢れ、機知に富み、辛辣な調子も稀ではない」。この楽聖の別の側面を知るのにふさわしい作品と言えるかもしれません。
 メインの演目はデンマークの作曲家、カール・ニールセンの交響曲第5番。後期ロマン派と現代の間に位置する時代に、極めて個性的な道を歩んだニールセンは、1891年から1925年までの間に6つの交響曲を作曲しました。中でも、多彩な打楽器が用いられるこの交響曲第5番は傑作の呼び声が高い作品です。ブロムシュテットはこれまで2度に渡ってニールセンの交響曲全集を録音し、この作曲家の作品解釈ではスタンダードともいえる評価を確立しているだけに、ベルリン・フィルとの共演でも名演が期待されます。

生中継:2013年5月26日(日)日本時間午前3時

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ラトルの「ブル7」。今秋の来日公演と同じプログラム
日本時間2013年6月1日(土)午前3時

【演奏曲目】
ブーレーズ:《ノタシオン》抜粋
ブルックナー:交響曲第7番

指揮:サー・サイモン・ラトル


 ラトルがブーレーズとブルックナーという、彼らしいコンビネーションのプログラムを指揮します。今秋の来日公演では、これと同じプログラムが演奏される予定です。
 ブルックナーの交響曲は、近年ラトルが徐々に力を入れているレパートリーで、これまで第4番《ロマンティック》、第9番が演奏・録音されています。後者は第4楽章完成版という彼らしいヴァージョンの選択でしたが、今回は版の問題は少ない作品ゆえ、オーソドックスな演奏が期待されます。ちなみに、前回彼がこの曲をベルリン・フィルと演奏したのは、2007年です。

生中継:2013年6月1日(土)日本時間午前3時

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 アーティスト・インタビュー

クリスティアン・ティーレマン(前半)
「反宗教的な発言をしていても、私はヴェルディが非キリスト教的だったとは思いません」
聞き手:エファ=マリア・トマジ(ベルリン・フィル、ヴァイオリン奏者)

【演奏曲目】
ヴェルディ:聖歌四篇
バレエ音楽(《マクベス》、《ドン・カルロス》、《オテロ》)

指揮:クリスティアン・ティーレマン


 今号から2回にわたり、クリスティアン・ティーレマンのインタビューをお送りします。テーマは、ヴェルディ。彼は、昨年12月にベルリン・フィルでオール・ヴェルディのプログラムを指揮しています。
 ティーレマンというと、ドイツもののスペシャリストという印象がありますが、オペラのコレペティトールとして活動を始めただけあって、イタリア・オペラも得意とし、イタリア語もきわめて流暢に話します。ここでは、そのティーレマンの意外な側面を知ることができます。

エファ=マリア・トマジ 「ティーレマンさんは、ピアノ、オルガン、ヴィオラを演奏されますが、歌の経験はおありですか。ベルリン・フィルでも、ブラームスの《ドイツ・レクイエム》やR・シュトラウスの歌曲・オペラなど、歌もののプログラムをたくさん取り上げていらっしゃいます」

クリスティアン・ティーレマン 「もともと歌は大好きでした。私自身は声はありませんが、歌手が好きですし、歌曲のレパートリーも勉強しました。プロとして活躍し始めたのもオペラですが、それは歌が好きだったからです。
 おっしゃる通り、ベルリン・フィルでは歌のプログラムを多くやっています。しかしフィルハーモニーという環境は、実は難しい。というのは、歌を聴かせるために作られたホールではないので、オケが響きすぎるのです。今回も聖歌四篇では、オケの音量をコントロールする必要があります。ffと書いてある場所でも、実際にそう弾いてはいけない。それは我々指揮者が、オペラの現場で学ぶことです。聖歌四篇は、非常に特別な作品だと思います。この曲は、終わった後に拍手するべきではない。それほど心の奥底に響くものがあります。もちろんコンサートなので、拍手しないわけにも行きませんが(笑)。
 このプログラムは、前半がヴェルディの宗教的作品、後半が劇場的(バレエ)作品という構成になっていますが、実は15年ほど前にローマ・サンタチェチーリア音楽院管でやっています。私自身のアイディアではなくて、同オケのインテンダントだったブルーノ・カーリのものでした。しかし今回プログラムを組むとき、当時どのバレエ作品を指揮したのか、思い出せませんでした。《マクベス》は入っていたのですが、楽譜を手に入れるのが難しかったことを記憶しています。
 ここで面白いのは、前半と後半でまったく別のヴェルディが聴けることです。彼がどのようなスタイルの変遷を経験したのかが、よく分かります。またバレエ音楽では、音楽的内容もたいへん多様です。エレジー風だったり、マニエリスティックだったり、力強かったり、壮麗だったり…」

トマジ 「ティーレマンさんはリハーサルで、聖歌四篇を指揮棒なしで振っていらっしゃいました。オーケストラと合唱を指揮するのでは、違いがありますか」

ティーレマン 「よく観察していらっしゃいましたね。その通りです。合唱とオケとでは、音の作り方が違います。指揮棒で突きまわすのは、変な言い方ですが正確すぎるのです。手で指揮した方が、響きをうまく引き出すことができます。もちろん合唱にもリズム、拍子が必要です。しかしそこで求められるのは、ガチガチのリズムではないのです。手で指揮した方が、響きの質を感じ取りやすいと同時に、造形しやすいのです。《ドイツ・レクイエム》をやった時も、そうしました。
 いずれにしても、私は最近、指揮中にあまり大げさな動きをしないように努めています。もちろん後半のバレエ音楽では、音楽が強いテンペラメントを要求するため、激しく動きます。しかしそれを必要としない曲では、むしろ動きを切り詰めようと考えています。聖歌四篇では、集中した雰囲気を生み出し、じっくりと抑えた所作で振った方が、内容が出てくるのです」

トマジ 「この作品はとても面白いですね。アカペラの個所は、まるでパレストリーナのようですが、逆にオペラ作曲家の顔が見え隠れする場面もある」

ティーレマン 「その通りです。ヴェルディは、宗教作品を書くとなると、突然古い伝統に立ち戻るのです。ところが同時に、劇的なもの、オペラ的なものもちらりと顔を見せる。それは交響曲の作曲家のアプローチではなく、オペラ作曲家のそれなのです」

トマジ 「ヴェルディは無神論者だったそうですね」

ティーレマン 「彼は教会に対して非常に批判的でした。しかし自分のお墓には、テ・デウムの一節を彫らせています。表面的には、反宗教的な発言をしていても、音楽はそうではない。私は彼が非キリスト教的だったとは思いません。あのミゼレレ・ノストリ(テ・デウムの最後の部分)は、神を信じていない人が書けるものではない。そこには彼の本心が表れています。
 ヴェルディは、楽譜に“あまりルバートを使わないで、ストレートに”と指示しています。非常に深い感情が溢れているのですが、それは静謐さ、率直さとして表れていなければならないのです」

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 ドイツ発最新音楽ニュース

本コーナーでは、ドイツおよび欧米の音楽シーンから、最新の情報をお届けします。

ダニエレ・ガッティがフランス国立管との契約を延長
 ダニエレ・ガッティが、フランス国立管との契約を、2016年まで延長した。彼は2008年より現職にあり、現在の契約は、今期までのものであった。
 両者は2014年にはチャイコフスキーの交響曲のツィクルスを上演するほか、オーケストラの創立80年を記念して、ストラヴィンスキー《エディプス王》の演奏会形式上演を行う。

チェチーリア・バルトリがザルツブルク精霊降臨祭音楽祭との契約を延長
 2011年よりザルツブルク精霊降臨祭音楽祭の芸術監督を務めるチェチーリア・バルトリの契約が、2016年まで延長されることになった。初年度には7600人だった観客動員数は、昨年は10500人、今年は13500人となり、これまでの最高に達している。
 今年の音楽祭では、バルトリ主演による《ノルマ》の舞台上演が行われた。来年のフェスティヴァルでは、ロッシーニがテーマとなるという。

アンドリス・ネルソンスがボストン響の首席指揮者に
 アンドリス・ネルソンスが、ボストン響の首席指揮者に就任することになった。スタートは、2014/15年シーズンで、契約年数は5年。33歳のネルソンスは、この100年間にボストン響首席指揮者のポストに就いた最年少の指揮者だという。
 地元のプレスでは、リッカルド・シャイー、ダニエレ・ガッティの名前も候補として挙がっていた。

サイモン・ハルシーがベルリン放送合唱団のポストを2016で離任
 ベルリン放送合唱団の指揮者サイモン・ハルシーが、2016年の契約満了と共に、同ポストを退任することを発表した。ハルシーは、2003年以来同合唱団の合唱指揮者を務めている。本人は「ベルリン放送合唱団は、新しい刺激を必要としている。私は故郷のバーミンガムに戻り、そこで活動したい」と語っている。

次号の「ベルリン・フィル・ラウンジ」は、2013年5月23日(木)発行を予定しています。

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