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2013年4月19日 (金)

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 ベルリン・フィル関係ニュース

バーデン・バーデン祝祭劇場ベルリン・フィル・イースター音楽祭特集
 今年の3月23日より4月1日まで、バーデン・バーデン祝祭劇場でベルリン・フィルの第1回イースター音楽祭が開催されました。昨年まではザルツブルクで行われていたこのフェスティヴァル、今年はサー・サイモン・ラトルによる《魔笛》、シンフォニー・コンサート3プログラム(ラトル指揮のマーラー《復活》、ブルックナー「交響曲第9番」、アンドリス・ネルソンス指揮マクシム・ヴェンゲーロフ独奏のブラームス「ヴァイオリン協奏曲」ほか)、市内の様々な会場における15回の室内楽演奏会、室内オペラ、子供向きオペラという多彩な演目が展開されました。
 フェスティヴァル全体では、計30回以上の公演が行われ、のべ3万人の聴衆が演奏を聴いています。ホールの座席占有率は、平均で97パーセントに達しました。
 特集の第2回では、《魔笛》のゲネプロの模様をレポートいたします。演出はロバート・カーセンが担当しましたが、彼や装置家のマイケル・レヴィン他がプロダクションについて語っています。映像では、《魔笛》の舞台や演奏も観ることができます。また、音楽祭終了時に団員の意見を総括するビデオもご用意しました。室内楽演奏会の演奏が聴けるのも注目です。

ヴィデオ1:《魔笛》ゲネプロ。R・カーセンが演出について語る
 この映像では、演出家のロバート・カーセン、装置家のマイケル・レヴィン、小道具係のアンドリュー・マーフィーが、《魔笛》制作の舞台裏を紹介しています。司会を務めるのは、ベルリン・フィル、ホルン奏者のサラ・ウィリス。デジタル・コンサートホールでもすでに「看板娘」となった彼女の、愛嬌あるコメントも新鮮です。

サラ・ウィリス(司会・ホルン奏者)「(ホールの前で)私たちはすでにバーデン・バーデンで数日を過ごしていますが、今日は《魔笛》のゲネプロです。プロダクションの関係者に、お話を聞こうと思います」

(暗転)

ウィリス「マイケル・レヴィンをご紹介します。彼は《魔笛》の装置を担当しています。今日は、元々の舞台のモデルを持ってきていただきました。あなたはすでに3つの異なった《魔笛》の舞台を作っているそうですが、今回は以前とはどのような違いがありますか」

マイケル・レヴィン(装置家)「それは共演する演出家によっての差ですね。この舞台は、ロバート・カーセンとの協議のなかで生まれてきたものです」

ウィリス「モデルでは、何が表現されているのでしょう」

レヴィン「この舞台装置では、上の世界と下の世界を表現する、ということがポイントとなっています。《魔笛》という作品では、この上下が対置されています。ここではその差を表現しているのですが、とりわけ第2幕では、死の世界が意識されています」

ウィリス「プレミエでは、安心して音楽に身をゆだねることができますか」

レヴィン「それは大丈夫です。その時点では、成功するかしないかは、他の人の手に掛かっているので(笑)。ここのチームはとてもいい感じですね。もちろんパリ・オペラ座のような巨大なチームではありませんが、非常に熱心で、いい舞台を作ろうという気持ちがあります」

(暗転)

ウィリス「(舞台上で)ゲネプロの直前です。皆が準備しています。私の手にはほら、魔法の笛が。でもこれ、本物でちゃんと吹けるのかしら。どうやって持っていいかも分からないのだけれど…。私にはむしろ魔法の角笛が必要です(笑)。でも、舞台の上から見ると、祝祭劇場は大きいですね。すごい大きさです(収容人数は2400人)。
 これは舞台の上からピットを見た映像です。このように非常に開いたピットで、結構歌手がピットのなかに落ちてしまわないか、と思うくらいなのですが、同時にオケが舞台の一部であるという一体感があります。ピットの前の壁は、そのまま花道になっていて、歌手は前まで歩いてきます。お客さんもピットのなかを見れるようになっていて、音楽がすべての中心であることが分かります」

(暗転)

ウィリス「(舞台裏:第1幕冒頭の蛇を手にして)これは、舞台で見るよりもずっと大きいですね。怖いです(笑)」

アンドリュー・マーフィー(小道具係)「これは最初出来てきた時は、もっと色が薄かったんです。それで、もう一度色を手で塗りなおしました」

ウィリス「思ったよりずっと重いですね(笑)」

マーフィー「(コンセントの付いたタバコを手にして)これはパパゲーナが吸うタバコです。でも電気製なんです。だから、コンセントでチャージするようになってます(笑)」

ウィリス「(骸骨を指差しながら)これは本物の骨ですか」

マーフィー「いやいや、本物ではないです。そう見えるだけですね。標本を作るための素材でできています。こうして色をつけて、人間が死んで風化した感じに作ってあります。汚くなるので、このテーブルの上にいつも置くようにしています」

(暗転)

ウィリス「(カーセンとの対話)今日はお越しいただいてありがとうございました。サー・サイモン・ラトルは、《魔笛》は難しい作品で、“演奏するのは墓穴を掘るようなもの”と言っています。実際、彼はこの作品を指揮するのを避けてきたのだそうです。演出家にとってもそうですか」

ロバート・カーセン(演出家)「そうですね。たいへん難しいと思います。“墓穴を掘る”というのはいい表現で、この作品には“死”ないし”死ぬ“という言葉が60回以上も出てくるのです。それはともかく、指揮するのも演出するのも難しい。というのは全体にとても断片的で、様々な側面があり、同時にシンプルだからです。シンプルなものというのは、非常に扱いづらいのです。展開のテンポを作りながら、シンプルであるというのは難しい」

ウィリス「バーデン・バーデンは仕事しやすかったですか」

カーセン「(にやりとしながら)本当の意見が聞きたいですか(爆笑)。いや、とてもよかったです。もちろん色々とたいへんなことは多かったです。というのは、登場人物が多いんです。18人もいるんですよ。でもそれがうまく行けば、《魔笛》はどんなオペラよりも素晴らしい結果を出せる作品だと思います」

ウィリス「この《魔笛》を観なければならない理由はなんですか(笑)」

カーセン「現在望みうる最高のキャストが揃っていること。最高の指揮者が指揮すること。素晴らしい合唱…」

ウィリス「そして世界最高の演出家!」

カーセン「それは私は言ってませんよ(苦笑)」

(暗転)

カーセン「(ゲネプロの開始。カーセンが、招待された聴衆に挨拶する)皆さん、これはゲネプロといって、普通の上演のように中断なしで上演が行われます。オケにとっても、歌手にとっても、技術の人にとっても、チェックをする最後の機会です。でも、お客さんもその一部です。《魔笛》では、“(フリーメーソンの)秘密を知る人々”という言葉が出てきますが、あなた方もこの上演の“秘密”を知る立場になります。というわけで、どうぞよろしく!」

ヴィデオ2:フェスティヴァル総括
 この映像では、すべての公演を終えたベルリン・フィルのメンバーが、フェスティヴァルの印象について語っています。《魔笛》最終公演舞台裏の光景、演奏、カーテンコールの様子も楽しめますが、団員の素顔が見られる点も魅力でしょう。

(《魔笛》の舞台)

ラウレンティウス・ディンカ(第1ヴァイオリン)「バーデン・バーデン万歳、ですね。とっても良かったです。来年も楽しみにしています」

シュテファン・シュルツェ(第2ヴァイオリン)「素晴らしい選択だったと思います。皆、非常に歓迎してくれて、我々がここで演奏するのを本当に望んでくれているんだと実感しました。環境そのものもとても美しいですし、同時に数多くの室内楽の演奏会をすることができました」

スタンリー・ドッズ(第2ヴァイオリン)「単に素晴らしいというだけでなく、オーケストラの全容が分かる内容になっていました」

(室内楽演奏会や室内オペラの上演が行われた会場が次々と映し出される。弦楽四重奏《死と乙女》の演奏)

ミヒャエル・ハーゼル(フルート)「芸術的に、とても成功でした。オペラは大評判でしたし、室内楽演奏会、オーケストラ演奏会は、全部売切れでした。お客さんもとても喜んでいました。最高です」

アマデウス・ホイトリング(第2ヴァイオリン「バーデン・バーデンはとっても良かったです。ほとんどザルツブルク以上でした。お客さんも素晴らしかった」

マルティン・ハインツェ(コントラバス)「最初のフェスティヴァルだったので、どうなるかドキドキでしたが、私は素敵な町と人々にとても感激しました」

(《魔笛》最終公演の舞台裏)

ドッズ「バーデン・バーデンに来れば、ベルリン・フィルの世界にどっぷり、という感じですね」

クシシュトフ・ポロネク(第1ヴァイオリン)「来年がとても楽しみです。皆さんとても親切で、町の人にしても、聴衆にしても、劇場のチームしても実に素晴らしかった」

シュルツェ「とても感激しています。来年来るのが楽しみです」

ルイス・フェリペ・コエッリョ(第1ヴァイオリン)「次が楽しみです。2014年ですよね?」

ティンカ「また、お会いしましょう!」

(町中に掲げられた“また会いましょう”のポスター。《魔笛》第1幕からAuf Wiesersehenと歌われる個所)

ドイツ・グラモフォンとの協業100周年。読者による投票キャンペーン!
 ベルリン・フィルとドイツ・グラモフォンのパートナーシップは、2013年で百周年を迎えます。これを期に同社では、50枚のCDからなる記念エディションを発売。
 その内容は、世界の音楽ファンの投票によって決定されます。ドイツ・グラモフォンのウェブサイトにある250のタイトルのなかから、ベスト録音と思われるものを選び、オンライン投票(最高20タイトルまで)。参加者には、もれなくDCHの48時間チケットがプレゼントされます。さらに参加者のなかから2名様1組を、抽選で今年8月末のベルリン・フィル・シーズン開幕演奏会にご招待いたします(渡航費・宿泊費込み)。
 参加方法:ドイツ・グラモフォンの特設サイト(日本語あり) に記載されている250の作品、50人の作曲家、50人の指揮者より、優れていると思われるものを最高20タイトルまで挙げてください。うち20タイトルをエントリーした方には、シーズン開幕演奏会プレゼントの参加権が与えられます。締切りは、2013年5月6日。たくさんのご応募をお待ちしています。

応募はこちらから

 最新のDCHアーカイブ映像

ラトル初挑戦の《魔笛》は、カラヤンばりの豪華キャスト
2013年4月10日

【演奏曲目】
モーツァルト:《魔笛》全曲(演奏会形式)

ザラストロ:ディミトリー・イヴァシュシェンコ
夜の女王:アナ・ドゥルヴォスキ
タミーノ:パヴォル・ブレスリク
パミーナ:ケイト・ロイヤル
パパゲーノ:ミヒャエル・ナジー
弁者:ジョゼ・ファン・ダム
第1の侍女:アニック・マシス
第2の侍女:マグダレーナ・コジェナー
第3の侍女:ナタリー・シュトゥッツマン
パパゲーナ:チェン・ライス

ベルリン放送合唱団(合唱指揮:サイモン・ハルシー)
指揮:サー・サイモン・ラトル


 バーデン・バーデン祝祭劇場で上演されたラトルの《魔笛》が、ベルリン・フィルハーモニーでコンサート形式で上演されました。ラトルがこの作品を指揮するのは、今回が初めて。キャストは、3人の侍女が当代きっての名歌手ばかりという、カラヤンの全曲盤を思わせる豪華さです。弁者にジョゼ・ファン・ダムが登場するあたりにも、ラトルのこだわりが感じられます。
 ラトルにとっては、これまでチャレンジするのを躊躇っていたというほどの作品。バーデン・バーデンでの4公演を終え、さらにベルリンで練り上げた演奏をぜひお楽しみください。

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ブンデスユーゲント管の客演は、東洋プロ!
2013年4月8日

【演奏曲目】
コスクン:フレーム・ドラムの試演
サイグン:儀式的ダンス
オハナ:《奇跡の書》
デ・ファリャ:《恋は魔術師》より抜粋
モーツァルト:《後宮からの逃走》序曲(特殊編曲ヴァージョン)
ラヴェル:《ボレロ》

フレーム・ドラム:ムラト・コスクン
ブンデスユーゲント管弦楽団
指揮:ハワード・グリフィス


 ブンデスユーゲント管のこの演奏会では、東洋と西洋の出会いが実現されました。トルコ人作曲家アハメド・アドナン・サイグンや、モロッコ出身のフランス人作曲家モーリス・オハナの作品が紹介され、モーツァルトの《後宮からの逃走》序曲は、トルコの楽器を用いた特殊ヴァージョンで演奏されています。ひと味違ったコンサートを、ぜひお楽しみください。

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パーヴォ・ヤルヴィが13年ぶりにベルリン・フィルに登場!
2013年4月13日

【演奏曲目】
ベートーヴェン:交響曲第1番ハ長調
ヒンデミット:ヴァイオリン協奏曲
シベリウス:交響曲第5番変ホ長調

ヴァイオリン:フランク・ペーター・ツィンマーマン
指揮:パーヴォ・ヤルヴィ


 日本でも大人気のパーヴォ・ヤルヴィが、何と13年ぶりにベルリン・フィルに登場しました。今回のプログラムは、かなりひねったものとなっていますが、ベートーヴェンがしっかりと入っている点がミソと言えるでしょう。注目!
 フランク・ペーター・ツィンマーマンが引くヒンデミットのヴァイオリン協奏曲も隠れた名曲です。ツィンマーマンは同作品をすでに60回近く演奏しているそうで、この曲のスペシャリストと言えます。

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ラトルのレイト・ナイトは、ヒンデミットの「冗談音楽」
2013年4月13日

【演奏曲目】
ヒンデミット:朝7時に湯治場で二流のオーケストラによって初見で演奏された《さまよえるオランダ人》序曲(弦楽四重奏のための)
室内音楽第3番
ルトスワフスキ:13の弦楽独奏のための前奏曲とフーガ

チェロ:マルティン・レール
指揮:サー・サイモン・ラトル


 ラトル指揮による大好評のレイト・ナイト・シリーズ。今回はヒンデミットが大きな役割を演じています。「朝7時に湯治場で二流のオーケストラによって初見で演奏された《さまよえるオランダ人》序曲」は、モーツァルトの「音楽の冗談」の20世紀版。「湯治場」というのは、日本語ではいまひとつピンと来ない言葉ですが、今風に言えば「観光地のカフェで演奏するいい加減な楽隊」といったところ。奇妙奇天烈な「演奏」に、ヒンデミットの才気が光ります。録音の少ない作品ですので、ぜひお見逃しなく。

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 これからのDCH演奏会

アーティスト・イン・レジデンスのカヴァコスがデュティユーを演奏。ラトルの《田園》!
日本時間2013年4月21日(日)午前3時

【演奏曲目】
ルトスワフスキ:オーボエ、ハープ、弦楽合奏のための二重協奏曲
デュティユー:ヴァイオリン協奏曲
ベートーヴェン:交響曲第6番《田園》

オーボエ:ジョナサン・ケリー
ハープ:マリー=ピエール・ラングラメ
ヴァイオリン:レオニダス・カヴァコス
指揮:サー・サイモン・ラトル


 ベートーヴェンは、交響曲第6番《田園》について「絵を描くというよりも感情の表出」であると語っています。まだ絶対音楽と標題音楽との間に厳密な違いなどなかった時代にです。ラトルは、この交響曲をかねてから得意としており、今回も名演奏が期待できるでしょう。
 プログラムの前半では、ルトスワフスキのオーボエ、ハープ、弦楽合奏のための二重協奏曲が、デュティユーのヴァイオリン協奏曲《夢の樹》と並べて演奏されます。ルトスワフスキでは、ベルリン・フィルのメンバーであるジョナサン・ケリーとマリー=ピエール・ラングラメが、デュティユーではアーティスト・イン・レジデンスのレオニダス・カヴァコスが独奏を務めます。

生中継:2013年4月21日(日)日本時間午前3時

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青少年プロジェクト10周年記念公演は、ラトル指揮のストラヴィンスキーとブリテン!
日本時間2013年4月22日(月)午前1時

【演奏曲目】
ストラヴィンスキー:《春の祭典》(ガレス・グリン編曲による管楽器と打楽器のための短縮版)
ブリテン:子どものための歌劇《ノアの洪水》

合唱指揮:サイモン・ハルシー
演出:ヤスミナ・ハドツィアメトヴィッチ
アマチュア・オケ指導:アンドレアス・ヴィットマン(ストラヴィンスキー)
アマチュア・オケ指導:ラファエル・ヘーガー(ブリテン)
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
指揮:サー・サイモン・ラトル


 4月21日、ベルリン・フィルは教育プログラムの10周年を祝います。そのハイライトとなるのがラトル指揮によるコンサートです。最初にベルリンの子どもたちで構成されるアマチュア・オーケストラによって、ストラヴィンスキーの《春の祭典》(ガレス・グリン編曲による短縮版)が演奏されますが、それは2003年の第1回ダンス・プロジェクトがこの作品だったからに他なりません(後に、映画『ベルリン・フィルと子どもたち』で世界的に知られるようになったのは、ご存知の通りです)。
 後半は、旧約聖書の有名な物語を題材にしたブリテンの子どものための歌劇《ノアの洪水》が上演されます。高校生のオーケストラに加え、ベルリン大聖堂及びベルリン・ドイツ・オペラの児童合唱団のソリスト、またサイモン・ハルシーの指導のもとで学んだベルリンの300人の小学生たち、さらに聴衆もコラールに加わっての大規模な舞台となります。教育プログラム10周年のお祝いに、どうぞご参加ください。

生中継:2013年4月22日(月)日本時間午前1時

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ラトルのティペット《われらの時代の子》!
日本時間2013年4月28日(日)午前3時

【演奏曲目】
ディーン:《ソクラテスの最後の日々》世界初演
ティペット:オラトリオ《われらの時代の子》
独唱:ケイト・ロイヤル、サラ・ コノリー、マシュー・ポレンザーニ、サー・ジョン・トムリンソン
ベルリン放送合唱団(合唱指揮:サイモン・ハルシー)
指揮:サー・サイモン・ラトル


 オーストラリア生まれのブレット・ディーンは、1985年から1999年までベルリン・フィルのヴィオラ奏者として活躍しました。当時から編曲や即興演奏の活動を通して、作曲家としての自己を見出した彼は、ユネスコの作曲賞を受賞したクラリネット協奏曲《アリエルの音楽》やバレエ《One of a Kind》などで国際的な名声を獲得するようになります。
 これらの成功により、ディーンは2000年に作曲家として独立しましたが、ベルリン・フィルとの関係はその後も続いています。ベルリン・フィルの委嘱により書かれた《コマロフの墜落》に続き、今回はベルリン放送合唱団、ロサンゼルス・フィルハーモニック、メルボルン交響楽団による共同委嘱作品《ソクラテスの最後の日々》が初演されます。
 後半のプログラムは、英国人作曲家マイケル・ティペットのオラトリオ《われらの時代の子》。1938年、17歳のヘルシェル・グリュンシュパンがパリでナチスの外交官を射殺したことが、ナチス・ドイツに反ユダヤ主義暴動(いわゆる「水晶の夜」)を引き起こしました。ティペットは、この事件をきっかけとして、独裁や人種主義に抵抗するべく当作品を書き上げています。バッハやヘンデルのオラトリオの影響を受けた《われらの時代の子》は1944年に初演され、ティペットの代表作となりました。今日ティペットは、エルガーやブリテンと並んで、20世紀のもっとも重要な英国人作曲家の一人と評価されています。ラトルの指揮と豪華なソリストによる共演にどうぞご期待ください。

生中継:2013年4月28日(日)日本時間午前3時

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 ドイツ発最新音楽ニュース

本コーナーでは、ドイツおよび欧米の音楽シーンから、最新の情報をお届けします。

《ジークフリート》の主役が公演日を勘違い。代役テノールが劇的なデビュー
 4月7日、ベルリン国立歌劇場のバレンボイム指揮《ジークフリート》の公演で、題名役のテノール、ランス・ライアンが劇場に出頭しない、という事態が発生した。これは本人と管理部門との間で公演日に誤解があったためだが、劇場側は急遽代役を探す羽目に。幸運にも、数日後の《神々のたそがれ》で同劇場にデビューすることになっていたアンドレアス・シャーガー(写真)が、開演15分前に出演を承諾した。演出補佐がライアンの衣装をまとって演じ、シャーガーは舞台袖から至難なことで知られる《ジークフリート》の第1幕を見事に歌い、聴衆から盛大なブラヴォーを獲得した。なおライアンは、開演から約2時間後に劇場にたどり着き、第2幕以降を歌っている。

DGがアルヒーフ・レーベルを復興
 ここ数年、活動が下火となっていたドイツ・グラモフォン傘下のレーベル「アルヒーフ・プロドゥクツィオーン」が、新装スタートすることになった。中心となるのは、スペインの指揮者パブロ・ヘラス=カサドで、ファリネッリをテーマとしたアルバムの他、《オルフェオとエウリディーチェ》の全曲盤を録音する。また、ルネ・ヤーコプス指揮のヘンデルのオペラの録音も予定されているという。
 同時に、過去のベスト録音を集めた55枚組のボックスを発売。また2014年には、モンテヴェルディ合唱団の創立50周年を祝うCDをリリースする。

次号の「ベルリン・フィル・ラウンジ」は、2013年5月9日(木)発行を予定しています。

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