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「ベルリン・フィル・ラウンジ」第75号:第1回イースター音楽祭inバーデン・バーデン(1) ベルリン・フィル・ラウンジへ戻る

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2013年4月5日 (金)

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バーデン・バーデン祝祭劇場ベルリン・フィル・イースター音楽祭特集
 今年の3月23日より4月1日まで、バーデン・バーデン祝祭劇場でベルリン・フィルの第1回イースター音楽祭が開催されました。昨年まではザルツブルクで行われていたこのフェスティヴァル、今年はサー・サイモン・ラトルによる《魔笛》、シンフォニー・コンサート3プログラム(らラトル指揮のマーラー《復活》ほか)、15回の室内楽演奏会、室内オペラ、子供向きオペラという多彩な演目が展開されました。今号から2号にわたって、その模様をお届けします。
 今回は、音楽祭のスタート前のラトルおよび団員の抱負を語ったヴィデオ、そして音楽祭期間中に正規採用が決まった新メンバーの映像をご紹介させていただきます(写真:© Andrea Kremper)。

ヴィデオ1:サー・サイモン・ラトルと団員の音楽祭への抱負
 バーデン・バーデンは、多くの団員にとって未知の存在でした。それゆえ、それぞれがこの町を新しく体験しています。ここでは、メンバーの町の印象、そして第1回音楽祭への抱負をお届けします。
 バーデン・バーデンは、ドイツ・バーデン=ヴュルテンベルク州(州都シュトゥットガルト)の中都市。カールスルーエの近郊に位置し、昔から温泉リゾートとして栄えてきました。ドイツで最も億万長者が多い町として知られ、リッチな雰囲気の漂う環境です。バーデン・バーデン祝祭劇場は、1998年に開場した比較的新しい劇場で、ドイツ最大の2500人の収容人数を誇ります。近年はドイツ有数のホールとして定着し、華麗な公演を行っています。ホールは通年で営業しており、それ自体としてはフェスティヴァルではありません。ベルリン・フィルのイースター音楽祭は、復活祭期間の特別枠ということになります。

フィリップ・ボーネン(第2ヴァイオリン)「バーデン・バーデンには、2、3日前に着きました。もうリハーサルが始まっています。今日は天気もいいですし、町もとても素敵です。エキサイティングですね。これからどんな展開になるのか、楽しみです。リハーサルももうすぐ始まるので、これで失礼!」

サー・サイモン・ラトル「ここでは、非常にたくさん演奏する機会があります。単に4公演オペラをやるだけでなく、3プログラム4公演のシンフォニー・コンサートがありますし、さらに非常に多くの室内楽演奏会、室内オペラ、子供のためのオペラの上演があります。120人を越えるすべての団員が、最低1回は室内楽の演奏会に出るのですから、その数は想像がつくでしょう。我々の目的は、バーデン・バーデンを音楽で一杯にすることです。ここに来るときに祝祭劇場側が言ってくれたのは、“何でも好きなこと、これまでやりたかったことをやってください。とにかく始めてみましょう”というものだったのです」

クリスティアン・シュターデルマン(第2ヴァイオリン首席)「私は《魔笛》で弾くことになっているので、登板回数がとても多いです。町のことはまだ全然分かりません。アパートをオーバーシュタインブルク(近郊)に借りているのですが、そことホールとの行き来だけです。でも、最初のフリーの日に、町を見ることを楽しみにしています。お天気は、ちょっとぐずぐずしていて、ザルツブルクよりも良くなったとは言えませんが、これから変わるかもしれないので、期待してます(笑)」

アルブレヒト・マイヤー(ソロ・オーボエ)「私は21年もザルツブルクに行ったので、バーデン・バーデンに移ったのはちょっと微妙な気持ちですね。浮気しているみたいです。でも最初の日、妻と一緒に車で町に入ってきたら、色々なところに“ベルリン・フィルの皆さん、我が家にようこそ!”とポスターが出ていて、とても嬉しく思いました。誰もが非常に良くしてくださっています。ザルツブルクについては、ちょっと後ろ髪を引かれるところもあるのですが、バーデン・バーデンについては、これ以上のスタートは望めない、というくらい素晴らしいです。ラッキーだと思います」

ラトル「我々は、新しいフェスティヴァルを創造するというたいへんなチャンスをいただきました。しかし同時に、皆が神経質になっています。というのは、ザルツブルクが非常に大きな伝統を持っていたからです。あの町の何が良くて、何が駄目なのか、誰もがよくよく分かっていました。新しい場所に来たら、そうした安心感はありません。しかし、多くの団員が私のところに来て言うんです。“町の人がとっても親切だね。びっくりした!”」

ダニエーレ・ダミアーノ(ソロ・ファゴット)「町の人がこんなに歓迎してくれるとは思ってもみませんでした。ポスターがそこらじゅうに出ています。これは新しい経験です」

垂幕:アウフ・ヴィーダーヘーレン(「また演奏を聴くことができて、嬉しいです!」アウフ・ヴィーダーゼーエン=“またお会いしましょう”のもじり)

ラファエル・ヘーガー(パーカッション)「町が気に入ってます。旗が色々なところに出ていて、とてもいいですね」

ラトル「この町は我々のオーケストラの”我が家“になるでしょう。我々の歴史の一部となるのです。バーデン・バーデンの人々は、我々を家族の一員だと思ってくれるに違いありません。我々の側からもそうです」

ヴィデオ2:正規採用が決まった新メンバーたち
 今年の音楽祭期間中には、試用期間にあった団員の採用投票(ベルリン・フィル団員による)が行われ、グンナース・ウパトニクス、スタニスラフ・パヤク(コントラバス)、ルイス・フェリペ・コエッリョ(第1ヴァイオリン)の3人がパスしました。ここでは、サラ・ウィリス(ホルン)による3人のインタビューをお届けします。

サラ・ウィリス(ホルン)「バーデン・バーデンから、最新ニュースをお届けします。たいへんエキサイティングな報せです。というのは、この3人の男の子たちのベルリン・フィル正式入団が決定したのです。ベルリン・フィルには、最初の採用試験の後、2年間試用期間(ドイツ語で言うところのプローベヤール)があります。オーケストラのメンバーが投票して、正式に採用するかを決めるのですが、今週、バーデン・バーデンでその投票がありました。この3人は、それに見事合格したのです。グンナース、ルイス、スタニスラフ、おめでとう!グンナース、気分はどうですか」

グンナース・ウパトニクス(コントラバス)「最高です。世界中のコントラバシストにとって、夢だと思います。夢が現実になりました」

ウィリス「あなたはラトヴィアの出身ですが、すでに色々なオーケストラで演奏していたのですよね」

グンナース「私は21歳でラトヴィア国立交響楽団の首席バス奏者になりました。確かにラトヴィアでは最高のポジションですが、自分の先生と話して、“外国のより良いオーケストラにチャレンジしてみては?”ということになったのです。ベルリン・フィルは、私にとって最初の大きなオーディションでした」

ウィリス「ルイスは、もうすでにオーケストラに数年以上所属していますね。というのは、学生としてベルリン・フィルのオーケストラ・アカデミーに参加していたからです」

ルイス・フェリペ・コエッリョ(第1ヴァイオリン)「私はアカデミーに2007年に入団しました。それからずっとここで弾いています(笑)。アカデミーが終わった後に契約を貰い、今に至ってようやく正規団員採用です」

ウィリス「試験採用と正規採用では気分が違いますよね」

コエッリョ「試用期間では、ちょっとナーヴァスになりますよね。皆がちゃんと弾けるているか監視するわけですから。でも私のことは皆よく分かっているし、そんなにひどくということはないです(笑)」

ウィリス「皆があなたのことを知っているのは、利点でしたか、それとも難しかったですか」

コエッリョ「私の場合は、利点だったと思います」

ウィリス「あなたはブラジル出身ですが、どうしてベルリンに来たんですか」

コエッリョ「私はサンパウロの出身で、16歳の時にベルリンに来ました。ハンス・アイスラー音楽院で勉強したのです。でもベルリン・フィルが昔サンパウロに来たときに演奏会を体験して、それで絶対にベルリンに来よう、と思いました」

ウィリス「スタニスラフもアカデミーの出身ですが、あなたにとっても利点だったでしょうね」

スタニスラフ・パヤク(コントラバス)「最初にリハーサルに参加した時は、本当にショックでした。面白かったのは、最初にベルリン・フィルで弾いたのは、マーラーの《復活》だったんです。そして、試用期間の最後に弾いたのは、バーデン・バーデンでの《復活》でした。ですから、正規団員になる前に最初に弾いた曲と最後に弾いた曲が同じだったのです」

ウィリス「それはすごい!」

パヤク「一種の運命だったのではないかと思っています」

ウィリス「あなたはポーランドの出身ですが、ベルリンに来たのはなぜですか」

パヤク「私はルイス・フェリペと同じように、ハンス・アイスラー音楽院で勉強していました。それから、バンベルク交響楽団の首席コントラバスになりましたが、やっぱりベルリン・フィルにチャレンジしたいと思いまして…」

ウィリス「今週、投票があったわけですが、私自身が試用期間をパスした時のことを思い出しました。まったく同じシチュエーションで、ザルツブルクで投票がありました。とっても不安でしたが、あなたたちはどう感じましたか」

コエッリョ「投票の時、私は携帯がうまく受信できないところにいまして、受信できるところを探して行ったり来たりしていました(笑)。そしてやっと連絡が来て、安心しました」

ウパトニスク「最初、同僚から“おめでとう”とメッセージがありましたが、本当に受かったのかよく分からない書き方で、動揺していました。しばらくすると、他の同僚からも連絡が来て、よかった!という感じです」

ウィリス「あなたたちは、一緒にパーティーをしたということですが、何をしたんですか」

パヤク「もう酔っ払って、何をしたか覚えてません(笑)」

ウィリス「あなたたちがパスして、とても嬉しいです。これから、一緒にずっと演奏できますね。おめでとう!」


 最新のDCHアーカイブ映像

超名演!風雲児ネルソンスのショスタコーヴィチ「第6」
2013年3月8日

【演奏曲目】
モーツァルト:交響曲第33番
ワーグナー:《タンホイザー》序曲
ショスタコーヴィチ:交響曲第6番

指揮:アンドリス・ネルソンス


 ヨーロッパで大人気のアンドリス・ネルソンスが、今シーズン2回目の登場を果たしました。すでに常連のポジションを獲得した彼は、次代の指揮界を担う存在でしょう。バーミンガム市響とのCDも存在しますが、ベルリン・フィルでは、パワフルな演奏を展開。ショスタコーヴィチの「交響曲第6番」、《タンホイザー》序曲は、「まさにベルリン・フィル」と呼びたくなる圧倒的な名演となっています。過去数ヵ月の演奏のなかでも、トップレベルに数えられるものです!


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 これからのDCH演奏会

ラトル初挑戦の《魔笛》は、カラヤンばりの豪華キャスト
日本時間2013年4月8日(月)午前1時

【演奏曲目】
モーツァルト:《魔笛》全曲(演奏会形式)

ザラストロ:ディミトリー・イヴァシュシェンコ
夜の女王:アナ・ドゥルヴォスキ
タミーノ:パヴォル・ブレスリク
パミーナ:ケイト・ロイヤル
パパゲーノ:ミヒャエル・ナジー
弁者:ジョゼ・ファン・ダム
第1の侍女:アニック・マシス
第2の侍女:マグダレーナ・コジェナー
第3の侍女:ナタリー・シュトゥッツマン
パパゲーナ:チェン・ライス

ベルリン放送合唱団(合唱指揮:サイモン・ハルシー)
指揮:サー・サイモン・ラトル


 バーデン・バーデン祝祭劇場で上演されたラトルの《魔笛》が、ベルリン・フィルハーモニーでコンサート形式で上演されます。ラトルがこの作品を指揮するのは、今回が初めて。キャストは、3人の侍女が当代きっての名歌手ばかりという、カラヤンの全曲盤を思わせる豪華さです。弁者にジョゼ・ファン・ダムが登場するあたりにも、ラトルのこだわりが感じられます。
 中継は、通常と異なる午前1時スタートですので、ご注意ください。

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ブンデスユーゲント管の客演は、東洋プロ!
日本時間2013年4月9日(火)午前3時

【演奏曲目】
コスクン:フレーム・ドラムの試演
サイグン:儀式的ダンス
オハナ:《奇跡の書》
デ・ファリャ:《恋は魔術師》より抜粋
モーツァルト:《後宮からの逃走》序曲(特殊編曲ヴァージョン)
ラヴェル:《ボレロ》

フレーム・ドラム:ムラト・コスクン
ブンデスユーゲント管弦楽団
指揮:ハワード・グリフィス


 ブンデスユーゲント管のこの演奏会では、東洋と西洋の出会いが実現されます。トルコ人作曲家アハメド・アドナン・サイグンや、モロッコ出身のフランス人作曲家モーリス・オハナの作品が紹介され、モーツァルトの《後宮からの逃走》序曲は、トルコの楽器を用いた特殊ヴァージョンで演奏されます。ひと味違ったコンサートを、ぜひお楽しみください。

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パーヴォ・ヤルヴィが13年ぶりにベルリン・フィルに登場!
日本時間2013年4月14日(日)午前3時

【演奏曲目】
ベートーヴェン:交響曲第1番ハ長調
ヒンデミット:ヴァイオリン協奏曲
シベリウス:交響曲第5番変ホ長調

ヴァイオリン:フランク・ペーター・ツィンマーマン
指揮:パーヴォ・ヤルヴィ


 日本でも大人気のパーヴォ・ヤルヴィが、何と13年ぶりにベルリン・フィルに登場します。今回のプログラムは、かなりひねったものとなっていますが、ベートーヴェンがしっかりと入っている点がミソと言えるでしょう。彼にとっては、ベルリン・フィルでの今後を占う重要な機会となるに違いありません。注目!

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ラトルのレイト・ナイトは、ヒンデミットの「冗談音楽」
日本時間2013年4月14日(日)午前5時30分

【演奏曲目】
ヒンデミット:朝7時に湯治場で二流のオーケストラによって初見で演奏された《さまよえるオランダ人》序曲(弦楽四重奏のための)
室内音楽第3番
ルトスワフスキ:13の弦楽独奏のための前奏曲とフーガ

チェロ:マルティン・レール
指揮:サー・サイモン・ラトル


 ラトル指揮による大好評のレイト・ナイト・シリーズ。今回はヒンデミットが大きな役割を演じます。「朝7時に湯治場で二流のオーケストラによって初見で演奏された《さまよえるオランダ人》序曲」は、モーツァルトの「音楽の冗談」の20世紀版。「湯治場」というのは、日本語ではいまひとつピンと来ない言葉ですが、今風に言えば「観光地のカフェで演奏するいい加減な楽隊」といったところ。奇妙奇天烈な「演奏」に、ヒンデミットの才気が光ります。録音の少ない作品ですので、ぜひお見逃しなく!

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 ドイツ発最新音楽ニュース

本コーナーでは、ドイツおよび欧米の音楽シーンから、最新の情報をお届けします。

ウィーン国立歌劇場の《パルジファル》でご難!
 3月にウィーン国立歌劇場で上演された《パルジファル》で、トラブルが連発している。3月28日の初日では、当初主役にヨナス・カウフマンの出演が予定されていたが、リハーサルの段階で病気によるキャンセルが発表された。クリストファー・ヴェントリスを代役に迎えた初日は、一応無事に公演終了したが、第2回公演では指揮のフランツ・ヴェルザー=メストが第1幕指揮中にぎっくり腰を起こした。休憩時間中には、さらに呼吸困難に陥り、第2幕からはコレペティトールが指揮する事態に。その上、この晩パルジファルを歌ったクリスティアン・エルスナーは、暗がりで転倒し、腕に怪我を負ったという。
 ヴェルザー=メストは、昨年12月に今年のザルツブルク音楽祭の《コジ・ファン・トゥッテ》を、「短期間に複数回演奏することはできない」という理由でキャンセルしていた。しかし今回のウィーンでの公演では、《ヴォツェック》と《パルジファル》を各2回ずつ指揮するというハード・スケジュールであった。

ヨーロッパ諸国内でのフライトにおける楽器機内持ち込みが法制化
 ヨーロッパ委員会(EC)では、将来楽器の飛行機機内持ち込みを、法制化する方向だという。これまで音楽家は、楽器を機内に持ち込む場合、実際の搭乗まで本当に持ち込めるのかが分からない、という状況だった。ヨーロッパ委員会では、こうした状況を改めるべく、2014年から新しい法律を導入。これによると、航空会社は、前もって公表されたガイドラインか、運航の安全の理由によってしか、楽器の機内持ち込みを拒否できなくなる。
 国際音楽家連盟では、この決定を歓迎し、今後恣意的な持込拒否が起こらないことを期待している。

クリスティアン・ヤルヴィがグスタート音楽祭の首席指揮者に
 昨年よりMDR交響楽団の首席指揮者を務めているクリスティアン・ヤルヴィが、スイスのグスタート音楽祭の首席指揮者に就任することになった。発表によると、ヤルヴィは2年ごとに音楽祭の専属オーケストラと演奏会を行い、さらにツアーも実施するという。


次号の「ベルリン・フィル・ラウンジ」は、2013年4月19日(金)発行を予定しています。

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