【連載】ハルカトミユキ (vol.2)

2013年3月11日 (月)


ハルカトミユキ




こんにちは、ハルカトミユキのハルカです。
1st e.p.の楽曲解説、読んでいただけたでしょうか。
第2回目の今回は、2nd e.p.『真夜中の言葉は青い毒になり、鈍る世界にヒヤリと刺さる。』
について解説させていただきます。
またしても長いタイトルですが、こちらも五七五七七で読んでください。

1st の白く淡い光に対して、こちらは青い闇。閉ざされた真夜中のイメージです。
しかし、果たして希望とは光なのか、絶望とは闇なのか。
そういう疑問を、この2枚の作品のタイトルに込めました。
光に満ちた世界の中に、ぽっかりと口を開けた恐ろしい絶望や、終わりのない真っ暗闇の中で静かに息づいている希望、そんなものがあるんじゃないか、むしろそれが真実なのではないか、そう思っています。
だからこそ、”夜明けを告げるのは虚言者”で、”私達は真夜中に言葉を紡ぐ”という表現をしました。

それでは曲ごとの解説へ。


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真夜中の言葉は青い毒になり、鈍る世界にヒヤリと刺さる。
『真夜中の言葉は青い毒になり、鈍る世界にヒヤリと刺さる。』
  • 01. ドライアイス
  • 02. ニュートンの林檎
  • 03. POOL
  • 04. グッドモーニング、グッドナイト
  • 05. 未成年




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「ドライアイスは、冷たすぎて触ると火傷するよ。」と幼い頃に聞いたとき、とても衝撃的だったのを覚えています。冷たくて火傷する?
今はそのことがよくわかります。実際ドライアイスに手をつけたわけではなく、生きていく中での実感として。

どこにも出口がないような絶望に陥ったとき、気持ちも体もボロボロに成り果ててしまったとき、一体どうしたらいいんだろう。そしてそれを傍から見ている立場だったとしたら、 一体何ができるんだろう。そんな中で書いたのがこの曲です。
どんな希望の言葉も、安っぽく中身のない綺麗事のようで、ただただ唸るようにして泣いたとき、喉の奥から絞り出てきた言葉が「ただ生きていて」という願いでした。
それはなまぬるい希望ではない、ドライアイスのように極限まで凍りついて初めて生まれる熱、焼け付くように熱い命の熱だと感じました。
それこそが最後に私達が見つけられる、闇の中の本当の希望なのではないかと。




私は度々、曲と歌詞を別々に書いて、後でパチっとはめ合わせるという作り方をします。
これはまさにそのように作った曲です。
曲の原型をアレンジャーさんが作り、それを聴いてメロディーと歌詞を当てはめたのですが、歌詞はその3〜4ヶ月前にただの散文詩として書いて寝かせていたものでした。

この歌詞のインスピレーションの元は、自殺した高校生のニュースです。
「この子は、何に負けたのだろう?」と考えたとき、たった一つ間違えのない答えは、「重力」でした。林檎も人間も、宙に浮かべばもれなく落ちる。
権力、圧力、色んな力があるけれど、たった一つ抗えないのは重力。権力や圧力には気持ち次第で抗えるだろう。だから勝てないお前が悪いんだ、弱い奴が悪いんだ。
落ちていく人を上から見下ろす(物理的にも立場的にも)人々の、そんな声が聞こえました。そうやって片付けて本当の原因を探るのを拒否するのだろうなと。

サウンドはストレートなギターリフが印象的な分、普通のロックチューンにしてしまうのは物足りないと思い、もともとあった原型を2人でぶち壊しにかかりました。鍵盤のフレーズはリズムも音階も、全く予測不可能な動きをしています。




歴史の古い曲です。バンド編成でライブを始める前から、二人でもよく演奏していました。
今回はアレンジも新しくし、私たち自身もこの曲の新たな顔を発見した感覚です。

意識の遥か下の方を流れるような水の音で始まり、ピアノとギターのユニゾンが聴こえると、別の世界に足を踏み入れたような気がします。
ピアノの音は生のグランドピアノの音を加工したものです。
その重みに対して、Bメロではキラキラしたエレピの音を少し深く加工して儚さを出しています。基本的に、プリセットのままでは使わない主義(ミユキ談)だそうです。
セクションごとの場面展開を意識し、光が射して視界が開けるサビへ向かうため、それまでは全ての楽器が水面下を漂うようなアレンジにしました。

AメロBメロで散々勝手な事を並べ立てた挙句、サビでは「いいだろういいだろう」とそれだけを繰り返す。
感情の内で、白か黒か言い表せない部分の不安定さと、その移ろいやすさ。同時に、それが心の中にはどうしようもなく確かに存在するということ。
そういうものを書きたかった。




本当にダメな人ですね。(笑)
個人的には、太宰治の「人間失格」を読んだときの感覚を思い出します。
幻滅でも失望でもなく、妙に安心してしまったこと。
この歌を書くことで、あんな風に安心したかったような、自分を肯定してあげたかったような、そういう気がします。

シンプルなようで実は音にこだわっていて、アナログシンセを使っています。いわゆるステージ上で使う細長いキーボードではなく、でっかい立方体に大量のツマミが付いている不思議な形状のもの。このツマミをいじって粗雑さのある独自の音を作り、モジュレーションで揺れを出しました。
上物サウンドを極限まで削り、歌、アコギ、オルガンシンセ、シンセベースと音数は少ないながら、実はこのe.p.のキーになる楽曲だと思っています。

目の前の人に10言えることがあったら、言えないことは100くらいある。それは普通なのかもしれないけど、そうは振り払えない罪悪感を書かずにはいられなかった、歌。




もう忘れたと思っていたことが、あるときふと心に浮かんできて、胸を掻きむしりたくなるように苦しい事があります。
これは、小屋の中で黙っているウサギの目を見つめた、あの頃の苦しさに似ている。幼心に「間違っていてもどうにもできないことがあるんだ」と悟った苦しさでした。
タイムカプセルを開けてしまったような、痛いほどの鮮やかさで蘇る感覚を、切り取って焼き付けるようにこの曲を書きました。
期待と諦めがぐるぐると繰り返すように、サビで渦巻くエレキギターの音。その奥で淡々と、無垢に鳴り続けるアコースティックギター。間奏では何かが壊れていく様子を、エレピを歪ませシーケンサーを利用して表現しました。
無邪気な残酷性。光に満ちた絶望。日常の中の暴力。ただ守りたかった、という想い。何かと引き換えに生き殺しにしてきた全て。に、弔いを。



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静寂の中の轟音、轟音の中の静寂、を感じ取って歌っていたいと常に思っています。希望は必ずしも希望の形をしていないし、絶望は絶望の形をしていない。表面に現れていないものこそ、想像していたい。
どうかわかりやすいものだけを見ないように、どうかわかりにくいものだけをも、見ないように。

それではまた次回。ハルカトミユキのハルカでした。







次回はインタビューを3月13日(水)にUP予定です。



new e.p.


 ハルカトミユキ  『真夜中の言葉は青い毒になり、鈍る世界にヒヤリと刺さる。』
3月13日発売

収録楽曲

  • 01. ドライアイス
  • 02. ニュートンの林檎
  • 03. POOL
  • 04. グッドモーニング、グッドナイト
  • 05. 未成年


【HMV オリジナル特典】

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※特典の有無は商品詳細ページでご確認下さい

商品レビュー

デビュー前より「封じられた世代の鳴らす心の叫び」「ゾクゾクした」「アイドル時代へのカウンターカルチャーが始まった」等、注目を浴びている新時代フォーク・ロックユニット=ハルカトミユキ。音専各誌で賞賛。各所で話題となっているハルカトミユキの2nd e.pが遂にリリース。





時代を引き裂くリリック、 透き通る声、 中毒性のある美メロ。 ゾクゾクする。 2012年終盤に突如現れた、新生フォーク・ロックユニット=ハルカトミユキ。 フォーク×オルタナ×グランジ×ニューウェーブ!? ハルカトミユキの音楽ジャンルをひとつでは語れない。 詩人・ハルカ(23歳 Vocal/Guitar)と奇人・ミユキ(23歳 keyboard/Chorus)のデュオ=ハルカ トミユキ。1989年生まれの二人が立教大学の音楽サークルで知り合い、唯 一「同じ匂いがする」とひかれあった二人。森田童子、銀杏BOYZ、ニルバーナを同時期に聴いて いた「言わない」世代が静かに奏でるロックミュージック。
2012年11月14日、「虚言者が夜明けを告げる。僕達が、いつまでも黙っていると思うな。」(H+M Records)でデビュー。iTunesが選出する2013年ブレイクが期待新人アーティスト「newARTIST2013」にも選ばれる。2013年3月13日、2nd e.p.「真夜中の言葉は青い毒になり、鈍る世界にヒヤリと刺さる。」(H+M Records)を発売。

ハルカトミユキ official site