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【インタビュー】 noon の秋ボッサ

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2012年10月18日 (木)



 包みこむような歌声で、リスナーの心と日常に寄り添うジャズ・ヴォーカリストnoon。そんな彼女にとって初のボサノヴァ・アルバムが誕生。『Natural』というタイトルそのままに、等身大の彼女の今がコラージュされている作品は“JOY感”に溢れ微笑みをもたらします。大人のナチュラル感が漂うnoonさんに、ボサノヴァとの出会いや本作に込めた想いを伺いました。


取材・文:鄭 美和



心地よさイコール聴きやすさであって音楽の大切な核になるわけですが、実はその水面下では全身で一生懸命水を掻いているという (笑)。特に今回はポルトガル語の歌が5曲あり、難しさは格別でした。


-- 本作『Natural』をきっかけに、noon×ボサノヴァをぜひシリーズ作品化して欲しい!と願うファンも多いと思います。希望と可能性に満ちた前向きな作品ですね。

嬉しいです!ボサノヴァという音楽へ近づく初めの一歩といえる作品になりました。これまでの作品で“フォーク”や“ノスタルジック”というテーマを表現してきましたが、本作では“サウダージ(郷愁)”というボサノヴァの感情世界を表現しました。といっても、センチメンタル過ぎず、どこかカラっとした爽快感やポップな仕感じが、まさにタイトルどうり“ナチュラル”な自分らしいなって思います。


-- 時に単調に聴こえるボサノヴァですが、実はnoonさんのような豊かな声量や表現力があって成立する、複雑で奥行きのある音楽であることを本作で実感しました

ボサノヴァというと、多くの方がもの静かでフラットなメロディーをイメージされますよね。私にとっても、ボサノヴァはカフェなどで“いつのまにか聴こえてきる心地よい音楽”という位置づけでした。心地よさイコール聴きやすさであって音楽の大切な核になるわけですが、実はその水面下では全身で一生懸命水を掻いているという (笑)。

特に今回はポルトガル語の歌が5曲あり、難しさは格別でした。ポルトガル語って、一音一音がパンっと風を切るような強いアタックがあり、瞬発力が要される言語なんです。鼻母音という独特のルールがあり、そこを意識し過ぎると全体的に鼻にかかって歌が変わってしまうので、本当に苦心しましたね。ポルトガル語の先生とレイラ・ピニェイロさんのライブをご一緒したのですが、レイラさんの滑舌を目の当たりにして言葉自体がエキササイズと実感しました。ものすごい表情筋を使うので、小顔効果を期待してるところです(笑)。


-- ジャズとの違いは?

ジャズは、メロディーを崩すことに醍醐味があるけれど、ボサノヴァはメロディーそのものにあるノリやリズムに自分がいかにハマれるかが試される……。近寄れば近寄るほど意外な発見があり、その奥深さに魅せられています。


-- 小野リサさん等のアルバムを手がける村田陽一さんや、日本のボサノヴァ・ギターの第一人者である中村善朗さん等、プロデュース陣営の豪華な顔ぶれも話題です。

豊かなご縁に感謝の想いでいっぱいです。これまでも、ジャズ・ミュージシャンたちとスタンダードをボッサテイストで録ったことがありますが、日本のボサノヴァ界のヴェテランの方々との製作は、発想も音の捉え方も近いようで別次元。それぞれの世界に違う音楽のポケットがあることを改めて実感しました。いつもは、アルバム制作のレコーディング本番の直前にリハーサルを設けるのですが、今回は予め打ち込みの演奏に合わせての歌入れをする機会を村田さんが設けて下さり、そのワンクッションが精神的安定剤になりました。

選曲のセンスにも驚かされましたね。M1に持ってきたユーミンさんの「やさしさに包まれたなら」は、クラリネットのハーモニーから入るオープニングが意外性があって気に入っています。M2の「イパネマの娘」など、一聴しただけでは一瞬何の曲かわからないアレンジなど、曲をドレスアップさせる村田さんマジックが素晴らしかったです。

ブラジルに住んでいらした経緯もあり、シンガーでもある中村さんにはデビュー前からご縁を頂いていますが、発音など具体的なアドバイスや、表現の足し方と抜き方を教えて頂きました。ご一緒するだけで自分自身もアガれる、存在自体がパワースポットのような方です。


-- 声量の豊かさに耳を持ってかれます。特にM9「アカーゾ」で魅せる、高音域での声の透明感には驚きが!

「アカーゾ」は、今回絶対歌いたい楽曲でした。アカペラで歌っている時はそんな感じなかったのですが、音と一緒に歌うと本当に難しい!でも感情をストレートに出すドラマティックな曲の展開は日本の歌謡曲や民謡にも通じる世界観で、そこが私にとっても共感ポケットでした。普段自分が歌うのとは違う高いキーを歌うことで、ハマるときれいに入る場所、タイミングがあるんだという新しい発見がありました。


-- noonさんが歌うバート・バカラックの楽曲はファンからもリクエストが多いですが、本作ではM8「I Say a Little Prayer(小さな願い)」に挑戦。難曲ならではのやりがいや発見はありましたか?

「ひとつのメロディーにどれだけ歌詞が詰め込まれてるの?!」ブレスする暇の少ない忙しい曲で、ともすると“ガッツ”系になっちゃう(笑)。それは私らしくないので、バカラック楽曲の美しさを損なわないしっとりしたアレンジに。大人っぽい仕上がりが気に入っています。 


-- 今年のバート・バカラック来日公演では、楽屋でご本人と会えた感動をブログに綴られていますね。

微笑みを絶やさない方で、私にも話しかけて下さって。「この小さな身体の方からたくさんの名曲が生まれたんだ」と感慨深かったですね。ピアノの演奏も歌声も涙が出るほど素晴らしかった。「想い」が伝わってくるんですよね。曲を作ったご自身なので、その世界観を一番理解されている……。だからこそピアノにも歌にも無駄が無い。“必要な音だけが持つ力強さ”を体感しました。


-- “必要な音だけが持つ力強さ”は、まさにボサノヴァの軸と感じられます。

本当にそうですよね。それと“精神力の広がり”が感じられる曲が多いのもボサノヴァの魅力です。ラストに入れたミルトン・ナシメントの「トラヴェシア」はまさにその象徴かなって。サウダージな曲想はまた、アジアの民謡とも通じる懐かしさもあります。そんな感覚も大切に、低音域から高音域まで一音一音が美しく響くように歌いました。


-- 実際にnoonさんにお会いすると、言葉や雰囲気から前向きな姿勢やオープンな親近感が感じられて、魅力に映ります。

「前向きだね」ってよく言われます(笑)。でも、後ろ向きより絶対いいと信じているので、「もっと自分を高めたい」という前向きな貪欲さは持ち続けていたいですね。それと、この2,3年、人に対する食わず嫌いを止めたことが自分にとって心境の大きな変化かな。初対面で緊張するのは相変わらずなのですが、その人なりの良さ、素敵な魅力を探すようにしたら、どんどん人と会うことが楽しくなってきて。前以上に出会いを大切にするようになりました。


-- これから始まる「noon tour〜Natural」では、全国のファンとの出会いが待ってますね!

広島や愛知など、今年初めて行かせて頂いた場所もまた回れるので今から楽しみです。本当に、豊かな出会いや交流は心の財産です。
今までイメージしていたボサノヴァとは違う発見やちょっとした私の成長を見て、聴いて、感じて頂けるライブができたら、と。ボサノヴァに合う衣装など、楽しくイメージトレーニングしているところです。


-- 最後に、『Natural』 のリリースとライブを楽しみにしているファンへのメッセージをお願いします。

等身大、今の私ならではのボサノヴァを表現しました。ソファに寝転びながら、まどろみながら、構えることなく、心地いいと思える時間帯に聴いて頂けたら嬉しいです。ポップで可愛らしい世界観のライブにも、ぜひ遊びに来て下さい。一瞬でも爽やかなブラジルの風を感じていただけたら幸せです。


noon 『ナチュラル』

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瑞々しく伸びやかな歌声が魅力のジャズ・シンガー、noonの初のボサノヴァ・アルバム。
ボサノヴァ・スタンダード〜ジャズ・スタンドード〜J-POPまでナチュラルな歌声で綴ったオーガニックな魅力溢れるボサノヴァ・アルバム。
小野リサ等のアルバムを手掛けた村田陽一がプロデュースするほか、日本のボアノヴァ・ギターの第一人者である中村善郎らが参加する。


パ−ソネル

noon(vo)
フェビアン・レザ・パネ(p)中島徹(p)中村善郎(g)助川太郎(g, cavaquinho)馬場孝喜(g)コモブチキイチロウ(b, el-b)佐藤慎一(b)加納樹麻(ds)岡部洋一(perc)村田陽一(tb)スティーブ・サックス(fl)山根公男(cl, b-cl)

収録曲

  • 01. やさしさに包まれたなら (Yumi Arai)
  • 02. イパネマの娘 / The Girl From Ipanema
      (Antonio Carlos Jobim – Vinicius De Moraes)
  • 03. シェガ・ヂ・サウダーヂ / Chega De Saudade
      (Antonio Carlos Jobim – Vinicius De Moraes)
  • 04. ダニー・ボーイ / Danny Boy (Traditional)
  • 05. アイ・フォール・イン・ラヴ・トゥー・イージリー / I Fall in Love Too Easily
      (Jule Styne – Sammy Cahn)
  • 06. デサフィナード / Desafinado (Antonio Carlos Jobim – Newton Mendonca)
  • 07. おいしい水 / Água De Beber (Antonio Carlos Jobim – Vinicius De Moraes)
  • 08. 小さな願い/ I Say a Little Prayer (Burt Bacharach – Hal David)
  • 09. アカーゾ / Acaso (Ivan Lins – Abel Silva)
  • 10. イッツ・オンリー・ア・ペイパー・ムーン / It’s Only a Paper Moon
      (Harold Arlen – E Y Harburg – Billy Rose)
  • 11. いそしぎ / The Shadow of Your Smile
      (Johnny Mandel – Paul Francis Webster)
  • 12. トラヴェシア/ Travessia (Milton Nascimento – Fernando Brant)

  noon プロフィール

noon
大阪府生まれ。ルーツは韓国。中学生の時に、TV-CMから流れていたハリー・コニックJr.の歌に魅せられジャズに興味を持つようになる。 2003年10月、アルバム『better than anything』でデビュー。2004年1月には、新人としては異例の、全国ブルーノートを中心としたソロ・ツアーも成功させた。デビュー・アルバムが韓国でもリリースされプロモーションで韓国を訪れる。2004年1月からはトヨタホームのTV-CM に「Close to you」の歌唱が起用される。その楽曲が収録されているセカンド・アルバム『my fairy tale』は2004年12月に日韓同時発売された。2005年4月より(2011年6月まで)、ZIP FM(名古屋)『TIME MACHINE CAFE』にレギュラー出演。2006年2月8日には3枚目となるアルバム「Smilin’」をリリースし、音楽誌<アドリブ>のその年のベスト・レコードを受賞する。2006年11月8日に西脇辰弥氏をプロデューサーに迎えたクリスマスミニアルバム「Holy Wishes」をリリース。2007年3月21日にはトランペッターのLeroy Jonesをプロデューサーに迎えニューオーリンズでレコーディングした「WALK WITH THEE IN NEW ORLEANS」をリリースする。2007年11月7日 初のベストアルバム「FOR YOU - noon's best」をリリース。2008年「フォーク」をテーマに笹路正徳氏をプロデューサーに迎えた『ホーム・カミング』をリリースし、2009年には人気絵本作家コロボックル氏のイラストを配したジャケットでポップスのカヴァーアルバム『Songbook』をリリース。2011年「ノスタルジック」をテーマに制作した『ワンス・アポン・ア・タイム』をリリースする。柔らかで、みずみずしい感性と、伸びやかな歌声は、独自の存在として高く評価されるジャズ・ヴォーカリスト。


[関連リンク]
  noon official web site


noon 今後のライヴ・スケジュール

『noon tour 〜Natural〜 2012/2013』 

■ 12/27(木)熊本/ぺいあのPLUS
■ 12/28(金)長崎/Ohana Cafe
■ 1/10(木)東京/STB 139
■ 1/11(金)愛知/NAGOYA Blue Note
■ 1/30(水)大阪/Billboard Live Osaka
■ 1/31(木)広島/LiveJuke
■ 2/1(金)福岡/Gate's 7
■ and more...

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