トップ > 音楽CD・DVD > ニュース > クラシック > 「ベルリン・フィル・ラウンジ」第64号:ベルリン・フィルの2012/13年シーズンが開幕!

「ベルリン・フィル・ラウンジ」第64号:ベルリン・フィルの2012/13年シーズンが開幕!

2012年8月24日 (金)

ドイツ銀行 ベルリン・フィル
ベルリン・フィル&HMV提携サイト
 ベルリン・フィル関係ニュース

ベルリン・フィルの2012/13年シーズンが開幕!オープニング・コンサートは無料中継!
 8月24日に、ベルリンの2012/13年シーズンが開幕します。2013年は、ルトスワフスキとブリテンの生誕100周年に当たりますが、ベルリン・フィルでは、両者の代表作である「交響曲第3番」と「戦争レクイエム」を演奏する予定です。オープニングでは、「交響曲第3番」が、サー・サイモン・ラトルの指揮で取り上げられます。またイェフィム・ブロンフマンの独奏により、ブラームスの「ピアノ協奏曲第2番」が演奏されます。この演奏会は、ドイツ銀行のウェブサイト上で無料中継されますので、ぜひご覧ください(「これからのDCH中継」を参照)。
 今シーズンも、コンサート形式のオペラ(《ボギーとベス》、《魔笛》)、レイト・ナイト・シリーズ、アーティスト・イン・レジデンスなど、多彩なプログラムが用意されています。アーティスト・イン・レジデンスは、先期までのピアニスト・イン・レジデンスに替わるもの。ギリシャ出身のヴァイオリニスト、レオニダス・カヴァコスがその任を務めます。その他、客演指揮者・ソリストには、ハイティンク、ヤンソンス、アバド、ドゥダメル、F・P・ツィンマーマン、ポリーニ、ツィメルマン、ムター、ラン・ラン等が登場する予定です。
 これらの演奏会のほとんどが、デジタル・コンサートホールで中継されます。プログラムの詳細は、以下のリンクをご覧ください。

シーズン全体の中継リストはこちらから

在ベルリン・オーケストラのサッカー選手権で、ベルリン・フィル・チームが優勝!

 ベルリンでは、毎年市内のオーケストラ団員によるサッカー・チームの選手権が行なわれていますが、6月に行なわれた今年の大会で、ベルリン・フィルのチームが優勝しました。参加チームは、コーミッシェ・オーパー管、ベルリン・ドイツ・オペラ管、C・P・E・バッハ・ギムナジウム管、ベルリン・フィル、ベルリン・シュターツカペレ、ベルリン放送響、ベルリン・ドイツ響、ベルリン・コンツェルトハウス管の8つ。ベルリン・フィルは、昨年の優勝者であり、今年は連続優勝を飾ったことになります。
 大きな活躍を見せたのは、キーパーのジーモン・レスラー(パーカッション)、および得点の旗手となったアンドレアス・オッテンザーマー(ソロ・クラリネット)です。以下メンバーは、グンナース・ウパクニエクス(コントラバス)、ニコラウス・レーミッシュ(チェロ)、フィリップ・ボーネン(第2ヴァイオリン)、トマーシュ・ヤムニク(オーケストラ・アカデミー生)、モール・ビロン(ファゴット)、ヴィーラント・ヴェルツェル(ティンパニー)、ホアキン・リケルメ・ガルシア(ヴィオラ)、オラフ・オット(トロンボーン)でした(写真:© Stephan Stahnke)。

オーケストラ・サッカー選手権のFacebookページ

 最新のDCHアーカイブ映像

俊英ネゼ=セガンの《ダフニスとクロエ》
2012年6月16日

【演奏曲目】
ベリオ:《セクエンツァIXa》
チャイコフスキー:幻想曲《ロメオとジュリエット》
ラヴェル:バレエ《ダフニスとクロエ》全曲
クラリネット:ヴァルター・ザイファルト
ベルリン放送合唱団(合唱指揮:ミヒャエル・グレーザー)
指揮:ヤニック・ネゼ=セガン

 ヤニック・ネゼ=セガンは、若手指揮者のなかでも、現在国際的に最も注目されている才能のひとりです。ベルリン・フィルには、2010年10月にデビュー。早くも2回目の登場を果たしましたが、今回は《ダフニスとクロエ》全曲に挑戦しています。フランス系カナダ人である彼に相応しいプログラムと言えるでしょう。チャイコフスキーのロマンティックな《ロメオとジュリエット》にも、彼ならではの色彩感覚が現われています。

この演奏会をDCHで聴く!

ネルソンスのチャイコフスキー「第5」!
2012年6月24日

【演奏曲目】
マーラー:《子供の魔法の角笛》抜粋
チャイコフスキー:交響曲第5番ホ短調

バリトン:マティアス・ゲルネ
指揮:アンドリス・ネルソンス

 当演奏会は、当初小澤征爾の指揮で予定されていましたが、彼のキャンセルを受けて、若手スターのアンドリス・ネルソンスが登場しています。チャイコフスキー「第5」は、すでにバーミンガム市響とも録音しているレパートリー。マーラー《子供の魔法の角笛》のソロは、マティアス・ゲルネです。近年円熟を深めている彼の歌唱をお楽しみください。

この演奏会をDCHで聴く!

 これからのDCH演奏会

シーズン開幕演奏会は、ラトル指揮のルトスワフスキ。ドイツ銀行サイトで無料中継します!
日本時間2012年8月25日(土)午前2時

【演奏曲目】
ブラームス:ピアノ協奏曲第2番変ロ長調
ルトスワフスキ:交響曲第3番

ピアノ:イェフィム・ブロンフマン
指揮:サー・サイモン・ラトル

 2012/13年シーズン開幕演奏会のプログラムは、サー・サイモン・ラトルの指揮によるブラームス「ピアノ協奏曲第2番」とルトスワフスキ「交響曲第3番」です。前者のソリストは、ベルリン・フィルでもおなじみのイェフィム・ブロンフマン。豪快なヴィルトゥオーゾとして知られる彼ですが、繊細で叙情性に溢れた表現にも長けた名手と言えます。その両方の要素が問われるブラームスでの名演に期待が掛かります。
 一方ルトスワフスキの「交響曲第3番」は、作曲家の生誕100周年(2013年)を視野に置いてのもの。20世紀ポーランド音楽を代表する古典ですが、ラトルが特に力を入れている曲でもあります。ショルティ指揮シカゴ響により1983年に初演されて以来、彼の作品のなかでも最も頻繫に演奏されています。
 なおこの演奏会は、ドイツ銀行のウェブサイト上で無料中継されます。

生中継:日本時間2012年8月25日(土)午前2時

この演奏会をドイツ銀行のウェブサイトで無料視聴する
この演奏会をDCHで聴く!

メッツマッハーのアメリカ・プロ!
日本時間2012年9月9日(日)午前3時

【演奏曲目】
ガーシュウィン:キューバ序曲
アイヴズ:ピアノ、管弦楽、混声合唱のための交響曲第4番
アンタイル:ジャズ交響曲(1955年版)
バーンスタイン:《ウェストサイド・ストーリー》よりシンフォニック・ダンス

ピアノ:ピエール=ロラン・エマール
指揮:インゴ・メッツマッハー


 日本でもおなじみのインゴ・メッツマッハーが、久々にベルリン・フィルに客演します。今回のプログラムは、アメリカ音楽。これは同時期に開催されるベルリン・ムジーク・フェストのテーマが、アメリカ音楽となっているためです。メッツマッハーと言えば、現代音楽での活躍が知られていますが、ここではそのテイストも取り入れ、20世紀の音楽が取り上げられています。アイヴズのソロは、名手ピエール=ロラン・エマールが担当します。

生中継:日本時間2012年9月9日(日)午前3時

この演奏会をDCHで聴く!

第1回ナイト・コンサートは、エマールによるアイヴズ
日本時間2012年9月9日(日)午前5時30分

【演奏曲目】
アイヴズ:ピアノソナタ第2番《マサチューセッツ州コンコード 1840-60年》

ピアノ:ピエール=ロラン・エマール

 レイト・ナイト・シリーズの第1弾は、ピエール=ロラン・エマールによるアイヴズのピアノ・ソロ作品です。同日、メッツマッハーとの共演で「交響曲第4番」の独奏を務めた後、「ピアノ・ソナタ第2番」を演奏。「コンコード・ソナタ」として知られるこの作品では、鍵盤を板で押すトーン・クラスターの技法や、ベートーヴェンの「運命交響曲」の引用が、聴き手の耳を奪います。

生中継:日本時間2012年9月9日(日)午前5時30分

この演奏会をDCHで聴く!

 アーティスト・インタビュー

ニコラ・ルイゾッティ&エマニュエル・パユ(後半)
「プロコフィエフにとってロシアに帰ってくることは、ロシア魂とコミュニズムという二義的な意味を持っていました」
聞き手:エマニュエル・パユ
2011年12月23日

【演奏曲目】
ドビュッシー:フルート・ソロのための《シランクス》
プーランク:グロリア
ベリオ:《セクエンツァI》
プロコフィエフ:交響曲第5番

ソプラノ:リアー・クロチェット
フルート:エマニュエル・パユ
指揮:ニコラ・ルイゾッティ

 ニコラ・ルイゾッティのインタビュー後半は、実際にはエマニュエル・パユのインタビューとなっています。彼は、ドビュッシーとベリオのフルート作品でソロを担当しているため、ソリストとして語ってる次第です。興味深いのは、ベリオの記譜法の問題でしょう。かのオーレル・ニコレでさえ楽譜の読み方に戸惑ったというエピソードは、《セクェンツァI》が極めてモダンであったことを伝えています。

エマニュエル・パユ 「このプログラムの4人の作曲家については、私は非常に強いつながりを持っています。それは単に私がここでソロを吹くから、というだけではありません。ドビュッシーの《シランクス》は、楽器の機能および素材が改善され、フルート作品の新しいブームが起こるきっかけとなったものです。またベリオの《セクェンツァI》は、戦後最初のフルートのための現代作品と呼ぶことができます。またプロコフィエフとプーランクのソナタは、20世紀の最も重要なフルート・ソナタでしょう。この2曲は、発表直後から大きな成功を収め、どのソナタよりも数多く演奏されているのです。プーランクのソナタは、ひょっとするとラヴェルの《ボレロ》と同じくらい演奏されているかもしれない。《カルメン》を除けば、最も演奏頻度の高いフランス音楽なのです。
 このプログラムで面白いのは、全体が20世紀の音楽史のアーチとなっている点です。1913年作曲のドビュッシーで始まり、1956年作曲のベリオで終わっています。その間にあるのがプロコフィエフですが、彼は交響曲第5番を第2次世界大戦中に作曲しました。プロコフィエフは長い間外国、特にフランスで暮らしましたが、その後に共産主義のロシアへと帰ってきました。どうしても帰って来たかったから、帰ってきたのです。彼はロシアで、ロシア人に囲まれて過ごすことを望んでいたのです。しかし一方では、共産党からショスタコーヴィチと同じような批判を受けました。その意味で、ロシアに帰ってくることは、ロシア魂とコミュニズムという二義的な意味を持っていたわけです」

ニコラ・ルイゾッティ 「プロコフィエフは、交響曲第5番を自分で指揮して初演しています。彼は当時、戦争が彼の人生にとって最も辛い時代ではなく、その後さらに厳しい状況が来ることを知りませんでした。彼は1947年にジターノフ批判を受けるわけですが、それは予想が付くことではなかったのです。スヴャトスラフ・リヒターが交響曲第5番の初演を聴いていますが、この時はナチスがモスクワに侵攻していて、コンサートでプロコフィエフが指揮を始めようとすると、爆撃の音が聞こえたそうです。その時のプロコフィエフの音楽的エネルギー、神々しさは例えようもないものだったと言います」

パユ 「一方ベリオの作品は、1956〜57年に書かれ、セヴェリーノ・ガッゼローニにより初演されました。その後、オーレル・ニコレも録音しています。彼は私の先生だったのですが、フルトヴェングラーとカラヤン時代のベルリン・フィルで演奏していました。彼がこの曲を録音した時のベリオとの書簡を、アーカイブで見つけることができました。それには1966年10月14日日付けがありますが、楽譜の読み方が問題になっています。つまり、ベリオはまったく新しい方法で記譜をしたんですね。普通楽譜は、リズムによって時間を計っているわけですが、ここでは、実際の時間の流れ自体が記譜されています。つまり、コンピューターで見るタイムラインのように、楽譜が書かれているんですね。音符の間の距離が短ければ短いほど、音価は短くなります。離れている距離が長ければ、長い音になるわけです。
 この記譜の仕方は、今でもきちんと理解されていないようです。我々が中国語にツアーに行った時、北京の人に“これはどうやって読むのですか”と聞かれました。もちろん中国語では書いてありませんけれど…(笑)。それはともかく、ニコレの質問に対して、ベリオは普通の記譜のような縦線やリズムを書いて、読めるようにしてあります。それから何年も経ち、ベリオは《セクェンツァ》全体を完成しましたが、この第1曲を改訂して出版しています。そこでは彼は、何と普通の記譜法に戻して、一般の人が読めるようにしているのです。間違って読まれるのが嫌だったのですね」

ルイゾッティ 「私は残念ながらベリオ本人にお会いしたことがありません。作品では、《トゥーランドット》の完成版を勉強しました。まだ指揮する機会がなくて、残念なのですが…」

パユ 「《トゥーランドット》のフィナーレは、どう思いますか?」

ルイゾッティ 「アルファーノとトスカニーニの版では、メッセージは非常に明解ですよね。情熱的で、愛の賛歌という感じです。人類皆兄弟というか、ハッピーエンドというか(苦笑)。ところがベリオの版では、愛する2人の未来がどうなるのか、分からない。ピアニッシモの終わり方です。これは心理的にはおそらく正しい結末でしょうね。しかし正しい、正しくないという議論は、なかなか難しいです」

この演奏会をDCHで聴く!

 ドイツ発最新音楽ニュース

本コーナーでは、ドイツおよび欧米の音楽シーンから、最新の情報をお届けします。

ネルソンスがバーミンガム市響との契約を延長
 アンドリス・ネルソンスが、バーミンガム市響との契約を2014/15年シーズンまで延長した。現在の契約は2013/14年までであり、延長は1年のみとなる。しかしオケでは、今後再延長の可能性もあるとしている。
 なおネルソンスは、2016年のバイロイト音楽祭の《パルジファル》新演出を指揮することになっている。演出には、挑発的な作品で知られる造形芸術家のジョナサン・ミーズが当たるという(映像は今年2月の定期演奏会のもの)。

ビシュコフが、BBC響の首席客演指揮者に
 セミヨン・ビシュコフが、BBC響の首席客演指揮者に就任することが決定した。これに当たりオーケストラでは、彼に「ギュンター・ヴァント・コンダクティング・チェア」というポジションを与えている。ヴァントは、同響で30年間にわたって首席指揮者を務めており、タイトルはこれに因んだもの。具体的な客演回数等については、現在のところ発表されていない。

ドレスデン国立歌劇場のインテンダントが急死
 ドレスデン国立歌劇場のインテンダント、ウルリケ・ヘスラー氏が、7月30日に死去した。享年57歳。氏は、2010年にドレスデン国立歌劇場のポストに着任したが、今年春に癌を発病していることが分かり、治療を受けていた。
 ヘスラー氏は、バイエルン国立歌劇場の広報部門長を25年以上にわたって務め、総監督不在だった2009/10年シーズンには、インテンダント代理の任にあった。ドレスデンでは、クリスティアン・ティーレマンのドレスデン・シュターツカペレ首席指揮者就任に尽力している。

ネゼ・セガンがドイツ・グラモフォンと契約
 カナダの若手指揮者ヤニック・ネゼ=セガンが、ドイツ・グラモフォンと長期契約を結んだ。DGのプレスリリースによると、モーツァルトの7大オペラの録音が予定され、今夏その第1弾として《ドン・ジョヴァンニ》がリリースされる。これは同レーベルでは、60〜70年代のベームによる録音以来の試みである。
 その他にも彼が首席指揮者を務めるロッテルダム・フィルとの《悲愴》、およびヨーロッパ室内管とのシューマンの交響曲集、協奏曲集が予定されている。


次号の「ベルリン・フィル・ラウンジ」は、2012年9月14日(金)発行を予定しています。

©2012 Berlin Phil Media GmbH, all rights reserved.


DCHアーカイヴ検索