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追憶のエヴァンス、新三角関係にて

Thursday, June 30th 2011


Further Explorations



Further Explorations: ビル・エヴァンスに捧ぐ
 
 Chick Corea / Eddie Gomez / Paul Motian
Further Explorations: ビル・エヴァンスに捧ぐ
 ユニバーサル インターナショナル UCCJ3027 2011年7月13日発売 

 現代ジャズ・ピアノの巨匠チック・コリアが敬愛するビル・エヴァンスに捧げて、2010年5月にニューヨークのブルーノートにて開催したライヴからベスト・テイクを収録した2枚組。共演のエディ・ゴメスとポール・モチアンは、いずれもビル・エヴァンス・トリオの歴代メンバーとしてジャズ・ファンにはあまりにも有名。しかも、このふたりの共演はこのときが初めてということでも話題を呼び、2週間行われたライヴは全セットがソールドアウトになった。ビル・エヴァンスの愛奏曲に加え、なんとエヴァンスの未発表オリジナル曲「ソングNo.1」を収録。日本先行発売

チック・コリア (p) / エディ・ゴメス (b) / ポール・モチアン (ds)
2010年5月、ニューヨーク、ブルーノートにてライヴ録音




ディスク 1
  • 1. ペリズ・スコープ Peri's Scope
  • 2. グロリアズ・ステップ Gloria's Step
  • 3. ゼイ・セイ・ザット・フォーリング・ラヴ・イズ・ワンダフル They Say That Falling In Love Is Wonderful
  • 4. 不思議の国のアリス Alice in Wonderland
  • 5. ソング No.1 (ビル・エヴァンス未発表オリジナル曲) Song No.1
  • 6. ダイアン Diane
  • 7. オフ・ザ・カフ Off the Cuff
  • 8. ローリー Laurie
  • 9. ビル・エヴァンス Bill Evans
  • 10. リトル・ルーティー・トゥーティー Little Rootie Tootie


ディスク 2
  • 1. ホット・ハウス Hot House
  • 2. モード VI Mode VI
  • 3. アナザー・タンゴ Another Tango
  • 4. ターン・アウト・ザ・スターズ Turn Out the Stars
  • 5. ラプソディ Rhapsody
  • 6. ヴェリー・アーリー Very Early
  • 7. バット・ビューティフル -パート1 But Beautiful -Part 1
  • 8. バット・ビューティフル -パート2 But Beautiful -Part 2
  • 9. プッチーニズ・ウォーク Puccini's Walk



ファーザー・エクスプロレーションズ


1960年にニューヨークで出会って以来、私はエディ・ゴメスとこれまでずっと音楽をクリエイトしてきた。初めて一緒に演奏したときから、私は彼の音楽に家族のような親しみを感じてきたのである。彼がビル・エヴァンスと歴史に残る共演をしていたときも、そしてそのあとも、私は何度もビルと彼の間で築かれた関係のエッセンスともいうべきものに触れることができた。そしてそれが私を触発し、トリオでのより深い演奏を追求させることにつながった。

ポール・モチアンのことを知ったのは、スコット・ラファロが参加していた伝説的なビル・エヴァンス・トリオを熱心に聴いていたときのことだ。そのトリオで、ポールは実に重要な役割を果たしていた。それと彼の直感的で個性的な演奏は、1970年代にキース・ジャレットが結成していたバンドでいつも私の好奇心をとらえて離さなかった。

私自身の音楽遍歴において、ビル・エヴァンスが果たしたピアノ芸術における驚くべき貢献は、いまも自分にとって重要な試金石のひとつになっている。

創造性のやりとり、本物の音楽に対する探求心、そして新たな発見。これら3つの要素が、何年にもわたって持ち続けてきた私のアイデアにひとつの結果をもたらした──エディとポールと一緒に新しいトリオ・ミュージックを創造することでなにかを追求したい、という思いを。

このトリオは、昔もいまもビル・エヴァンスおよび彼の人生と音楽にそれぞれの形でかかわっている。3つの異なる要素。それらが触媒となって、私たち3人が音楽的な成長を遂げた街、ニューヨークの「ブルーノート」で冒険的な2週間を一緒に過ごしたのである。

90分におよぶ24回のセットから曲を選ぶのは決して簡単な作業でなかった。2週間にわたって演奏することで、私たちの音楽は発展し、気持ちにも変化が生じたからだ。しかし、私はこの音楽をみなさんと共有できることに大きな幸せを感じている。

── チック・コリア、2011年5月4日





「エヴァンス・トリビュート」からはじまる
チック、ゴメス、モチアンの新・三角関係


 「没後30年」という節目の年を迎え、ビル・エヴァンスの様々な企画がひとしきり盛り上がった2010年。ニューヨークのブルーノートでは、5月4日から16日までの二週にわたりチック・コリア(p)、エディ・ゴメス(b)、ポール・モチアン(ds)のトリオによる「Further Explorations of Bill Evans」と題された、文字通りのエヴァンスのスペシャル・トリビュート・ライヴが行なわれた。チケットは瞬く間に完売になったという全12公演。各日 1st、2nd ショウが用意され、計24ステージで250曲以上の演奏が披露された。

 エヴァンスのオリジナル、愛奏曲はもとより、チック、ゴメス、モチアンのレパートリー、さらにはエリントン、モンクのナンバーなども披露され、『Further Explorations』には、そんな膨大な量の音源からチック自身が選りすぐった19曲が収められているわけだが、「Waltz for Debby」、「Nardis」、「How Deep is the Ocean」、「Night and Day」といった比較的知名度の高い曲がはずされている。しかしここにこそ、チックにとっての今回の「Further Explorations」プロジェクトへの強いこだわりが見え隠れしているように思えてならない。一般的なメディア先導型のトリビュートにはしたくないという意思の表れ。それは、ゴメス、モチアンという比類なき、そしてエヴァンスの志を最も身近で理解し合ったリズム・セクションとの ”ピアノトリオの可能性のさらなる探求” であり、単にエヴァンス愛奏曲をなぞるのではなく、そこから新たに派生する何かに創造性を見出していくということではないだろうか。両者とのトリオ共演の熱望。ここにまずはすべてのアイデアの源流があったのだ。



Further Explorations Trio



 エヴァンス所縁の曲以外にも、エリントンモンクバドマイルスのオリジナル/愛奏曲を同一線上に並べながら、それぞれに敬意を払う。今回CDに収録された「Little Rootie Tootie」をはじめ、「Sophisticated Lady」、「Reflections」、「Pannonica」、「Straight, No Chaser」、「Oblivion」、「On Green Dolphin Street」、さらにはエヴァンスがしっかり絡んでいる「All Blues」などがステージで演奏されたというのはとても興味深いことだ。エヴァンス・トリオの屋台骨を支えた名士たちとのトリオ共演そのものをたのしむことに、チックにとっての大きな意義があったのだろう。かつてエヴァンス本人に採譜して贈ったという「Bill Evans」、エヴァンスの未発表オリジナル曲を親族の所蔵テープからチック自ら採譜し、言わば新しい息吹を与えた(あるいは擬似共演とでも呼ぼうか) 「Song #1」。通り一遍のトリビュートにありがちな ”好きなだけで何となく有名曲をカヴァーしてみました” という具合の悪さから大きく乖離するという意味では、この2曲もキーファクターとなるだろう。どちらもエヴァンスの残像や残り香を感じながら、そのイメージを自己に取り入れ昇華し、創出したチックの純然たるオリジナル・パフォーマンスだとすれば、これほどまでに自然な流れで分娩されたトリビュートというものが他にあるだろうか? また同時に胸がすくほどピュアでたっぷりな三人のエヴァンス愛を感じさせてもらった。

Eddie Gomez 在籍時(上) / Paul Motian 在籍時(下)
 チックが長年共演を望んでいた二人の老快リズム・エース、エディ・ゴメス、ポール・モチアンともに現在も精力的な活動を続けており、それぞれ今年に入って『Live In Italy』『Windmills of Your Mind』というリーダー・アルバムを発表しているのはご存知のところだろう。特に、80歳を超えたモチアンのここ何年かにおける絶倫ぶりは目を見張るものがある。リー・コニッツブラッド・メルドーチャリー・ヘイデンといった現代ジャズ君主がそろい踏んだ2009年のバードランド・ライヴ『Live At Birdland』アウグスト・ピロッダ(p)+ゲイリー・ピーコック(b)との『No Comment』、さらには、エンリコ・ラヴァなどの重鎮から、ヤコブ・ダイネセンサミュエル・ブレイザーといった若手プレイヤーまでに至る幅広い作品へのサイドメン参加など、昨今まさに枯れることを知らない八面六臂の活躍ぶり。今回の「Further Explorations」プロジェクトでも、「Mode VI」、「The Last Call」(CD未収録)、「Drum Music」(CD未収録)といったモチアンの手持ち曲がセットリストに組み込まれており、老いてなお深化し続けるゴト師の手並みに心躍らされ、酔いしれる。「スコット・ラファロ在籍時のエヴァンス・トリオや、その後のキース・ジャレット・グループ時代においてもモチアンのプレイに魅了されてきた」と語るチックの半世紀越しのラヴ・コールが遂に成就したことを思うと、それだけでも胸がいっぱいになる。

 また、「ラファロの最高の後継者」と称され、10余年にわたりエヴァンス・トリオのレギュラー・ベーシストを務め、その昔実際にチックにエヴァンスを紹介したゴメス。チックとの付き合い自体はこちらもおよそ半世紀と長いものの、トリオ・フォーマットでのレコーディングとなるとそう数は多くない。「Chick Corea Five Trios Series」と題された日本独自企画シリーズの中の『From Miles』(2006年1月14日 N.Y. ヒルトン・ボール・ルームにおけるマイルスをテーマにしたライヴ録音。ドラムはジャック・デジョネット)、『The Boston Three Party』(2006年4月録音。ドラムはアイアート・モレイラ)、このあたりにとどまってしまうのではないだろうか。後者では「Waltz For Debby」を演っていたりもするがアルバム中の存在感はかなり薄い・・・。ちなみに、どちらも単品CDは現在廃盤となり、5枚組のボックス・セット『Five Trio Box』で聴くことができる。そうしたこともあり、ゴメスが純粋なピアノトリオ編成でチックと共演するという点においてはかなりポイントが高い。さらに歴代エヴァンス・トリオのリズムを掌りながらも、在籍時期が異なったためにこれまでに共演経験のなかったゴメスとモチアンの顔合わせが実現したことも密かなる事件と言えるだろう。



Eddie Gomez / Paul Motian



 なによりチックは、ごく最近でも自身のソロ・ピアノやフリーダム・バンドをはじめ、ミロスラフ・ヴィトウス(b)、ロイ・ヘインズ(ds)とのリユニオン・トリオ、クリスチャン・マクブライド(b)とブライアン・ブレイドとのニュー・トリオ、またはゲイリー・バートンステファーノ・ボラーニとの各デュオなど、様々な活動形態を持ちながらその都度自己の音楽表現を徹底的に突き詰めているピアニストだ。古くからエレクトリック・マイルス・グループアンソニー・ブラクストンをオルグしたザ・サークル、そしてリターン・トゥ・フォーエヴァー、エレクトリック・バンド/アコースティック・バンド、オリジンと、時代時代で革新的な音楽を創り続けてきた。そんな探究心や実験精神旺盛なチックがピアノトリオの可能性を求めていくことに腐心した『Further Explorations』プロジェクト。そこに「ビル・エヴァンスへのオマージュ」とするだけの一過性の味気なさはない。むしろ現役続行中の、しかも日ごと深化していくゴメスとモチアンを引き合わせつつ形成された新鮮なトライアングル、その巧妙な三角関係のおもしろさをあらためて探求しようとするチックの熱意やひたむきさに思わずこうべを垂れる。エヴァンスの尽きぬ講釈から脱け出したいときに聴きたくなる最良のエヴァンス・トリビュートとでも言えば健全妥当か? チック・コリア、その野心家ぶりにもただただひれ伏すだけ。






『Waltz For Debby』 録音50周年を記念して
企画盤、ボックス・セットいろいろ


PIANIST 〜Waltz For Bill Evans
 
 Various
PIANIST 〜Waltz For Bill Evans
 ユニバーサル インターナショナル UCCJ2087 

 ジャズ・ピアノの金字塔であり、あらゆる名盤の中で最高の人気を誇るビル・エヴァンスのアルバム『Waltz For Debby』。その録音50周年を祝って、各アーティストがエヴァンスゆかりのナンバーを録音。チック・コリア&上原ひろみの1曲を除き、全曲がこのアルバムだけでしか聴けない新録音または未発表ナンバー。しかも日本人アーティストだけではなく、チック・コリアも参加。




Riverside & Milestone Albums 1956-1963
 
 Bill Evans
Riverside & Milestone Albums 1956-1963
 Universal 5331206 2011年7月1日発売 

 永遠の名盤『Waltz For Debby』の録音50周年目を記念し、ビル・エヴァンスが1956年から63年にかけて Riverside、Milestone レーベルからリリースした名盤15枚をまとめたボックス・セット。




Complete Riverside Recordings
 
 Bill Evans
Complete Riverside Recordings
 Riverside 1800182 2011年7月1日発売 

 名盤『Waltz For Debby』が今年録音50周年目を迎えるビル・エヴァンス。1956〜63年にかけてRiverside レーベルに吹き込んだ20ものレコーディング・セッションを12枚のCDに完全収録したボックス。1961年、伝説のヴィレッジ・ヴァンガードでのセッションも収録。ソロから、キャノンボール・アダレイ、フレディ・ハバード、フィリー・ジョー・ジョーンズ、ジム・ホール、パーシー・ヒース、ポール・チェンバース、ロン・カーター、ズート・シムズらとのセッションまで、最も重要な時期のエヴァンスがここに纏められている。







  • エヴァンス名盤SACD〜SHM〜仕様

    エヴァンス名盤SACD〜SHM〜仕様

    『Waltz For Debby』をはじめ、ビル・エヴァンスの名盤5タイトルが、更なる高音質を追求したSACD〜SHM仕様〜でリリース・・・

  • 名盤SHM-CD 150タイトルがお買い得

    名盤SHM-CD 150タイトルがお買い得

    ユニバーサルから、ジャズ、ヴォーカル、フュージョンのセールス上位順150タイトルをSHM-CD仕様1800円(2枚組3000円)でリリース。チック、RTF、エヴァンス作品も多数・・・・・・

  • ジャズ定盤入門 - ビル・エヴァンス

    ジャズ定盤入門 - ビル・エヴァンス

    ビル・エヴァンスと聞いて連想するのは、画家で言えばルノワール、クラシックの作曲家で言えばモーツァルトである・・・・・・

  • 裏RTF!! ゲッツの72年モントルー祭

    裏RTF!! ゲッツの72年モントルー祭

    テナー巨人スタン・ゲッツが、RTF結成直後のチック・コリア、スタンリー・クラークに加え、トニー・ウィリアムスを迎えて行なった1972年モントルー祭の記録。遂に公式映像化・・・・・・

  • タニア・マリア&エディ・ゴメス秀逸デュオ

    タニア・マリアとエディ・ゴメス 秀逸デュオ

    パンチの効いたソウルフルな歌声が魅力のタニアですが、ジャズ・ベースの重鎮との共演による本作は一転してしっとりと深く気だるい大人の味わい・・・・・・

  • 【訃報】 ポール・モチアン

    【訃報】 ポール・モチアン

    エヴァンス、キースのサイドメンとしてその名を馳せ、またECM、JMT、Winter&Winterなどに数多くのリーダー録音を残してきた名ドラマー、ポール・モチアンが、骨髄異形成症候群のため22日ニューヨークの病院で亡くなられました。謹んでご冥福をお祈りいたします・・・・・・






 「ビル・エヴァンス・トリビュート」の佳盤をいくつかご紹介。記憶にあたらしいところでは、昨年リリースされた、フランスのピアニスト、マニュエル・ロッシュマン『Touch Of Your Lips: Tribute To Bill Evans』が挙げられるだろうか。冒頭に「マッシュのテーマ」を持ってきているところからしてひと味ちがう。エヴァンス曲または所縁の曲のほかに、自らのコンポジションを織り込みながら、特に後期から晩年に至るエヴァンス・トリオの世界にアプローチしている。

 晩年のエヴァンス・トリオのリズムを支えたマーク・ジョンソンの奥方でもあるピアニスト/シンガー、イリアーヌ・イリアス『Something For You』(2007年)も、演奏、企画構想すべてにおいて凡百トリビュートとは一線を画したエヴァンス愛に満ちた1枚。エヴァンスが死の数週間前に構想段階のものとして吹き込んでいたカセット・テープ。それを所有していたマークはイリアーヌにカセットを手渡し、未発表楽曲の「Something For You」と「Evanesque」がイリアーヌの演奏によって陽の目を見た。「Something For You」に関しては、そのカセット・テープを序奏に配した、つまりエヴァンス本人の演奏が入ったヴァージョンも収録されている。スコット・ラファロの愛器であったストリング・ベースを2曲でマークがプレイしているのもトピックのひとつだろう。

 かなり定石どおりと言うか、オーソドックスなカヴァー選曲とオリジナル・コンポーズを交えてオマージュを捧げるのは、所謂「エヴァンス派」ピアニストに属するであろう名手フレッド・ハーシュの1990年録音作『Evanescence -Tribute To Bill Evans』。タイトルも直球で「エヴァンスのエッセンス」。トリオ演奏を基本としながら、ゲイリー・バートン(vib)やトゥーツ・シールマンス(harmonica)が数曲に加わる。またマーク・ジョンソンが4曲でベースを弾くなど、実際にエヴァンスと知己があったプレイヤーの参加も作品に花を添えている。主役のエレガントで耽美なタッチにもしっかりとエヴァンスを彷彿させるものがある。ユニークなところでは、イタリアのベース奏者リカルド・フィオラヴァンティ・トリオのピアノレス&ドラムレスによるエヴァンス集、その名も『Bill Evans Project』。ヴィブラフォンを配した欧州ジャズならではの静謐で耽美な響き。主役の圧巻のベース・ソロや名手ベボ・フェラの繊細なギターの調べも申し分ない。同じくイタリアはナポリのベース奏者ルイジ・ルベルティによる2009年録音『Dedicated To Bill Evans』も、「Maxine」、「We Will Meet Again」といったなかなか珍しいレパートリーを取り上げ、独自のアレンジを施した興味深い内容となっている。

 ヴォーカル・トリビュートでは、『Waltz For Debby』(1964年)の共演でよく知られるスウェーデンの歌姫モニカ・ゼタールンドのエヴァンス愛奏曲集『Bill Remembered -Tribute To Bill Evans』が有名だろう。エヴァンスとの共演盤が生涯で最もお気に入りのアルバムだったというモニカは、そのヒットを足がかりにして北欧を代表するシンガーへと羽ばたいていく。当時のことを想い起こしながら1999年から2000年にかけて自宅のリビングルームで録音された本作だが、残念ながらこれが彼女の遺作となってしまった。また、スペインのピアニスト、ジョーン・ディアズのトリオをバックに、女性シンガー、シルヴィア・ペレス・クルースが唄う『We Sing Bill Evans』、英ロンドンの女性シンガー、ネット・ロビンソンが同地の重鎮ピアニスト、マイケル・ギャリックのカルテットをバックに、エヴァンス、さらにはギャリックの愛奏曲までを唄い込んだ 『Remembered Time』なども素晴らしい出来なのでオススメしたい。

 ほか、実際にエヴァンスと公私で親睦があり、師とも仰いでいたピアニスト、リッチー・バイラークが、1981年にピアノトリオで吹き込んだ 『Elegy for Bill Evans』メトロでの活動などフュージョン畑で人気のピアニスト、ミッチェル・フォアマンが、エディ・ゴメス(b)、ジャック・デジョネット(ds)という伝説のモントルー公演を支えたリズム隊と1992年に吹き込んだ 『Now And Then - Tribute to Bill Evans』、マルチ奏者ギル・ゴールドスタインがピアノに専念し、ジョン・パティトゥーチ(b)、アル・フォスター(ds)という最高のリズム・セクションを従えて2000年に録音した 『Time Remembered - Tribute to Bill Evans』など、現在残念ながら廃盤となっている作品の中にも良質なトリビュートがかなりある。



Touch Of Your Lips: Tribute To Bill Evans
Manuel Rocheman
「Touch of Your Lips」

 
Something For You
Eliane Elias
「Something For You」

 
Evanescence -Tribute To Bill Evans
Fred Hersch
「Evanescence」

 
Bill Evans Project
Riccardo Fioravanti
「Bill Evans Project」

 
Dedicated To Bill Evans
Luigi Ruberti
「Dedicated To Bill Evans」

Bill Remembered -Tribute To Bill Evans
Monica Zetterlund
「Bill Remembered」
 
We Sing Bill Evans
Joan Diaz
「We Sing Bill Evans」
 
Remembered Time
Nette Robinson
/ Michael Garrick
「Remembered Time」
 
Elegy For Bill Evans
Richie Beirach
「Elegy For Bill Evans」
(廃盤)
 
Now And Then - Tribute to Bill Evans
Mitchel Forman
「Now And Then」
(廃盤)



 
エヴァンス入門


 巷で名盤と呼ばれる作品も多く、ジャズの繊細でエレガントなイメージをそれなりの程度で引き受けるピアニストでもあるからして、しょっぱなから「聴き込みたい!」と意気込まずに「お酒片手になんとなくジャズ・ピアノをゆったりポロロンと・・・」という雰囲気重視に徹すれば、ビル・エヴァンス「入門」の場合どれを聴いてもまず間違いはないはず。細かい注文なんかはきっと聴き込んだ後から付いてくることだろう。ただしひとつのガイドラインとして、「リバーサイド四部作」と呼ばれる4枚のアルバムからトライしてみる方は相当数いらっしゃるようで、エヴァンスというよりはここからジャズ自体に入っていくというパターンも多いのではないだろうか、ということで「リバーサイド四部作」を紹介したい。そして、もうひとつのガイドラインとしては、今回リリースされる『Further Explorations: ビル・エヴァンスに捧ぐ』の中に収録されている曲で気に入ったもののオリジナルを片っ端から潰していくというやり方。ということは、まずはタイトルに引用されている『Explorations』(1961年)から入ってみるのが手っ取り早いのかもしれない。「四部作」の中では最も地味とされているが、「滋味」と表裏一体の世界。スコット・ラファロ(b)、ポール・モチアン(ds)との三者のインタープレイ、音のさぐり合いなどにおいては最もおもしろいものが味わえるのではないだろうか。


Explorations
「Explorations」


 同じく「四部作」から、1961年6月25日にN.Y.のジャズ・クラブ「ヴィレッジ・ヴァンガード」で行なったライヴを収録した『Waltz For Debby』(1961年)。愛らしい曲調のタイトル曲はこのライヴ・ヴァージョンが特に親しみやすく、その後現在に至るまで多くのジャズ・ミュージシャンによってカヴァーされているというのもとっつきやすさのポイントになるかもしれない。美しいそのジャケットだけを飾り置く、それもそれで正しいと思う。


Waltz For Debby
「Waltz For Debby」


 『Further Explorations』のオープニングを飾る当時のエヴァンスのガールフレンドの名を冠した「Peri's Scope」が収録されている1枚としてもおなじみの『Portrait in Jazz』(1959年)。収録曲の有名度からも「四部作」のうちで最も人気が高く、誰が言ったか「60年代以降のピアノトリオの基盤となる概念を抽出した歴史的な作品」。同年8月にサイドメンとして録音に参加したマイルス・デイヴィス『Kind of Blue』。この作品で新たに持ち込まれた「モード・ジャズ」と呼ばれる演奏手法の中心的役割を担っていたのが実はエヴァンスだと言われており、ここでは「Blue In Green」も再演されている。アドリブの多彩さに心惹かれる革新的な演奏は、チック・コリアキース・ジャレットハービー・ハンコックらその後登場する多くのコンテンポラリー・ジャズ・ピアニストにとってのひとつの指標となった。「四部作」最後は、前出の『Waltz For Debby』と同じ日のライヴ録音『Sunday At The Village Vanguard』(1961年)。 こちらは『Waltz 〜』と”ニコイチ”で持っておいて何ら損のない作品。「Gloria's Step」、「不思議の国のアリス」も聴くことができる。


Portrait in Jazz
「Portrait in Jazz」


Sunday At The Village Vanguard
「Sunday At The Village Vanguard」


 生々しい楽器のタッチや聴衆の興奮といったライヴの臨場感を味わいたい方は、まずはこの2作品が適当ではないだろうか。上掲のヴィレッジ・ヴァンガード実況録音盤はスモール・クラブ・ギグならではの”息づかい” や ”ざわめき” がたのしめるが、こちらはもう少し会場のキャパが大きくなったまさに「ジャズ・コンサート」と呼ぶに相応しい格調高いシチュエーションでの演奏録。方や市民会館クラスの中規模ホールにおける『Bill Evans At Town Hall Vol.1』(1966年)、方やスイスのモントルー・ジャズ・フェスティヴァルで大観衆を前にした『Bill Evans At the Montreux Jazz Festival』(1968年)。スコット・ラファロを不慮の事故で亡くし、しばらくピアノを弾く気になれなかったエヴァンスが、チャック・イスラエルの派手さはないものの温もりと躍動感のあるベースに出会い悦びにくれる前者。ハイライトは亡き父に捧げたソロ・ピアノのメドレーだろうか。若きエディ・ゴメス(b)、ジャック・デジョネット(ds)らが溌剌としたプレイでエヴァンスをガンガン刺激する後者では、激しいトリオの拮抗がこれでもかと味わえる。通称「お城のエヴァンス」。レマン湖とシオン城を写したそのジャケットも人気だ。異なる会場のタイプ、異なるトリオによるライヴだが、どちらも円熟期に差しかかろうとしていたエヴァンスのピアノに魅了されることは間違いないだろう。


Bill Evans At Town Hall
「At Town Hall」


Bill Evans At The Montreux Jazz Festival
「At The Montreux Jazz Festival」


 エヴァンスの死後にリリースされた、”ラスト・トリオ”による1979年11月26日パリのレスパス・カルダン公演を収録したライヴ盤『Paris Concert』第2集マーク・ジョンソン(b)とジョー・ラバーベラ(ds)を擁したこのトリオのコンビネーションは「オリジナル・トリオにも匹敵する素晴らしさ」と称えられているが、まさに三者の組んず解れつによって生み出されたダイナミックなグルーヴに終始圧倒される。「入門」として打ってつけではないかもしれないが、ピアノトリオ・サウンドの妙味を味わいたい方には「何度も聴く込むこと」を前提にオススメしたい1枚。「Laurie」、「Nardis」を聴いてほしい。


Paris Concert Edition Two
「Paris Concert Edition Two」


 こちらもジャケットがあまりにも有名な1枚かもしれない。『Undercurrent』(1966年)「ギターとのデュオ」という難題に挑んだエヴァンスとジム・ホール(g)の高度な次元での協調楽。各楽器の性質を鑑みて「非和声音の衝突を意図的に回避」する両者の技量・センスの高さは未来永劫語り継がれていくとてつもないレベル。とは言え、そんな理論どーのこーのを抜きにした次元でも十分味わえる緊張感と侘び寂びがそこには確かに存在する。ジャズのデュオ作品としても超が付くほどの一級品。4年後の続編『Intermodulation』(1970年)では、前作にはなかった甘さとせつなさが両者を優しく包み込んでいる。「Turn Out the Stars」も絶品。




Undercurrent
「Undercurrent」


Intermodulation
「Intermodulation」


 「美女ジャケ」の最高峰としても知られる『Moon Beams』(1962年)は、先述の2代目ベーシスト、チャック・イスラエルドン・フリードマンのもとを離れエヴァンス・トリオに加入した最初の録音作品で、Riverside レーベルへの最後の吹き込みともなる。『Explorations』『Waltz For Debby』以上に、所謂エヴァンスを形容して「リリカル」とする所以にもなった1枚と言えるだろうか。ひたすら美しく味わい深く物悲しいミディアム、スローが並んでいる。先代に較べ控えめなイスラエルのベースは、出しゃばることも不足することもなく、トリオ・サウンドにおける低音弦楽器の ”ちょうどよさ” を静かな語り口で教えてくれる。恋に恋する、繊細でロマンチックな貴方へ。


Moon Beams
「Moon Beams」


 ヒゲのエヴァンス。つまり後期の作品からご紹介。スワンプ・ロックの隠れ名盤か何かと見間違えてしまいそうなジャケットの『Since We Met』(1974年)では、そのヒゲ面三人衆のムサ苦しさとは裏腹の透き通るような美しさを誇るバラードに胸をかきむしられる。1974年1月のヴィレッジ・ヴァンガードでのライヴ録音となり、良くも悪くも『Waltz For Debby』『Sunday At The Village Vanguard』との比較は避けられないが、渋みと甘さを兼ね備えているという点で、こちらの方が聴き応えがあるといった声も少なくない。また、本作の収録を最後にドラマーのマーティ・モレルがトリオを去り、その後釜としてエリオット・ジグムンドが加入することとなる。そうした意味でも、5年にわたるゴメス=モレルを擁したトリオの集大成ライヴと捉えることもできるだろう。ミシェル・ルグラン作の表題曲を冠した『I Will Say Goodbye』(1977年/発表は1980年)は、Fantasyへの最後の吹き込みとなったアルバム(同年Warnerへ移籍)。ゴメス=ジグムンド体制となったこの時期のエヴァンス・トリオにとっての70年代初めてのスタジオ・レコーディングということで、各自力の入りようは格別といったところだろうか。特にエヴァンスのピアノには活力がある。録音技術の進歩もあるのだろうが、とにかくきらきらと光る美しさやまぶしさに全体が満ちているのだが・・・。本作発表後の80年9月15日にエヴァンスは、肝硬変と出血性潰瘍による失血性ショック死でこの世を去った。


Since We Met
「Since We Met」


I Will Say Goodbye
「I Will Say Goodbye」


 文字で追い、そのイメージを膨らませるエヴァンスもまたオツ。日本におけるマイルス研究の第一人者としてもよく知られる中山康樹氏によるエヴァンス本『ビル・エヴァンスを知る名盤50選』。「50枚のアルバムを手がかりにその音楽と人生の変遷を克明に迫る」というキャッチ・コピーどおり、多角的な視点のエヴァンス考察が新鮮で、ぐいぐいと読み手を惹き込む。同じく中山氏による『ビル・エヴァンスについてのいくつかの事柄』改訂版と併せてエヴァンス入門の書としてオススメしたい1冊。


ビル・エヴァンスを知る名盤50選
中山康樹・著
「ビル・エヴァンスを知る名盤50選」


ビル・エヴァンスについてのいくつかの事柄 改訂版
中山康樹・著
「ビル・エヴァンスについての
いくつかの事柄 改訂版」


 小玉ユキ作の青春ジャズ漫画『坂道のアポロン』もエヴァンス・ファンにはすっかりおなじみだろう。主人公である高校生ピアニストの西見薫が徐々にジャズに魅せられていく様子を、60年代長崎の田舎町を舞台にして描いたストーリー。「友情」や「恋愛」といった学園モノにはお約束の要素がたっぷり絡む所謂「少女マンガ」系に分類される作風ではあるので、ジャズ喫茶世代のオジサマにとってはなかなか食指が伸びがたいところもあるかと思うが、繊細さと凶暴さを持ち合わせる薫のエヴァンスぶり(見た目も色白眼鏡)をはじめ、どこかブレイキーやチェットを思わせるキャラ立ちの登場人物など見所盛りだくさん。ひとたび読みはじめてハマってしまったジャズ・ファンも多い。2009年には『坂道のアポロン オリジナル・サウンドトラック』CDも発売され、そこにはビル・エヴァンス&ジム・ホールの「My Funny Valentine」が収録されている。


坂道のアポロン 単行本一覧へ
小玉ユキ・作
「坂道のアポロン」



From Bill Evans With Love
 
 Bill Evans
From Bill Evans With Love
 ユニバーサル UCCU1322 
 『Waltz For Debby』録音50周年記念。エヴァンスのRiverside在籍時のナンバーからメロディアスで聴きやすいナンバーばかりを選曲した2011年最新ベスト。人気曲「Waltz For Debby」は、ソロ・ピアノ、トリオ、ヴォーカル(モニカ・ゼタールンド)の3ヴァージョンを収録。



 
Everybody Digs Bill Evans
 
 Bill Evans
Everybody Digs Bill Evans
 Not Now Music NOT2CD299 
 エヴァンスの記念すべき初リーダー・アルバムとなる『New Jazz Conceptions』と、歴史に残るソロ名演「Peace Piece」を所収の2作目『Everybody Digs Bill Evans』をデジタル・リマスターでカップリング収録した徳用盤。その低価格がウケてか否か、現在エヴァンス関連アイテムの中でも最も人気の1枚。


Waltz For Debby (5CD)
 
 Bill Evans
Waltz For Debby
 Lata LATA620 
 没後30年を迎えた2010年にリリースされたエヴァンスのお買い得な5枚組ボックス・セット。入門用に最適の内容。自身のリーダー作に加えて、チャールズ・ミンガス、キャノンボール・アダレイ、マイルス・デイヴィス、ハル・マクシック作品などサイドメン参加楽曲も多数収録。


 
Everlasting Bill Evans All Time Best
 
 Bill Evans
Everlasting Bill Evans All Time Best
 ユニバーサル / TOWER PROZ1001 
 エヴァンス没後30周年日本独自企画盤。初期Riverside時代、円熟期のVerve、Fantasy時代、晩年のWarner Bros. 時代まで、「Waltz For Debby」をはじめ人気の高い22曲を収録した究極のベスト。こちらも入門用に打ってつけ。



Sesjun Radio Shows
 
 Bill Evans
Sesjun Radio Shows
 T2 PRCD2011005 
 オランダのラジオ放送「TROS SESJUN SHOW」に出演した際のエヴァンスのライブ・セッションを2枚組で収録。ディスク1の前半5曲は、1973年のエディ・ゴメス(b)とのデュオ演奏。後半5曲は、75年のエディ・ゴメス(b)、エリオット・ジグモンド(ds)とのトリオ演奏。ディスク2は、79年のマーク・ジョンソン(b)、ジョー・ラバーベラ(ds)との最終トリオでの出演で、ゲストにトゥーツ・シールマンス(harmonica)が迎えられている。


 
Very Last Performance
 
 Bill Evans
Very Last Performance
 Domino Records DOMINO891208 
 1980年9月10日、ニューヨークのファット・チューズデイで行なわれたエヴァンス・トリオのライヴ。このライブの翌日に体調を崩し、4日後の9月15日に他界。最後までピアノを弾くことに拘りつづけたエヴァンスの鬼気迫る演奏を含め、資料的にも価値の高い、文字通りのラスト・パフォーマンス発掘音源。




1965 London Concerts
 
 Bill Evans
1965 London Concerts
 Disconforme 1374702 
 BBC番組用に撮影された、1965年3月19日ロンドンにおけるエヴァンス・トリオのライヴ映像。チャック・イスラエル(b)、ラリー・バンカー(ds)を迎えた中期トリオによるパフォーマンス。「Waltz For Debby」、「Nardis」、「My Foolish Heart」などおなじみのナンバーを披露。


 
Last Trio Live '80
 
 Bill Evans
Last Trio Live '80
 バップ VPXR71087 
 1980年8月9日、ノルウェイのモルデにて収録されたエヴァンス・トリオのライヴ。この後 9月15日にこの世を去ることになるエヴァンスの現存する最後のライヴ映像。既発のDVDはTV放送用音源の4曲のみのヴァージョンだったが、Blu-ray化に際して当日演奏された全ての演目が完全収録されている。


Portrait of Bill Evans
 
 V.A.
Portrait of Bill Evans
 ビクターエンタテインメント VICJ61624 
 イリアーヌ、デイヴ・グルーシン、ハービー・ハンコック、ボブ・ジェームス、ブラッド・メルドーという世代の異なる5人のピアニストが、エヴァンスの愛奏の10曲を2曲ずつ演奏するトリビュート・アルバム。おなじみの作品が、各人の意匠を凝らしたアレンジによって新しい感動を呼び起こす作品に仕上げられている。


 
Memories of Bill Evans
 
 V.A.
Memories of Bill Evans
 ビクターエンタテインメント VICJ61625 
 塩谷哲の若々しいアコースティック・ピアノにはじまって、ベテラン 山下洋輔、益田幹夫、今やプロデューサーとして名を成した笹路正徳、独自の道を行く佐山雅弘、そして、美形ピアニスト、国府、木住野の二人と様々な形でエヴァンスへの想いを集約したトリビュート・アルバム。収録されている13曲はいづれもエヴァンス・スタンダード。


Live In Italy
 
 Eddie Gomez
Live In Italy
 Tuscia In Jazz Live TIJLIVE1002 
 エディ・ゴメスが、ピアノにダド・モロニを迎えた2010年のトリオ・ライヴ盤。エヴァンスとは異なるスタイルを持つものの、ゴメスのベースと息を合わせて見事な演奏を聴かせてくれるモロニ。「How Deep Is The Ocean」などエヴァンスゆかりの楽曲はもちろん、メンバー3人の合作によるジャム・セッション的なフィーリングの「Blues Out Of The Closet」などにも注目。




 
Forever
 
 Eddie Gomez / Cesarius Alvim
Forever
 Plus Loin Music PL4529 
 70年代にはベーシストとしてその名を馳せたフランスのセザリウス・アルヴィンがピアニストとしてゴメスと組んだ、ドラムレスのデュオ作品。エヴァンスのあの世界を彷彿とさせてやまないリリシズム。加えて、この丁寧に弾き綴られる中音部のソフトで端正なピアノ、そして美しく凛としたソロ・フレーズのコントラストの美しさ。オープニングのショーター楽曲やスタンダードに加え、それぞれのオリジナル・コンポジションも秀逸。以前にも共演経験があったという両者が音数も控えめに、じっくりと語り合う1枚。


Windmills Of Your Mind
 
 Paul Motian
Windmills Of Your Mind
 BOMBA BOM25011 
 ポール・モチアンが、旧知のビル・フリゼール(g)、トーマス・モーガン(b)とのトリオに加えて、8曲でチャーリー・ヘイデンの娘でもある女性シンガー、ペトラ・ヘイデンを迎え制作した最新スタジオ録音。オリジナルにブロードウェイ・ヒッツなどを交えたレパートリーで、愛らしくナチュラルな風合いのペトラの唄声とモチアン御大の的確なドラミングが絶妙にマッチ。独特な空間を作り出すフリーゼルの手練れたギターも◎。



 
Bill Evans
 
 Paul Motian
Bill Evans
 Winter & Winter 9101662 
 モチアン、ビル・フリゼール(g)、ジョー・ロヴァーノ(ss)というおなじみのトリオに、エヴァンス・トリオ最後のベーシスト、マーク・ジョンソン(b)が加わったカルテット編成による2003年のエヴァンス曲集。「Turn Out The Stars」、「Time Remembered」、「Re:Person I knew」などエヴァンス所縁のナンバーを中心としながらも、フリゼールが空間を作り上げ、ロヴァーノが歌う、完全に独自の世界が築き上げられている。こちらは新装ジャケの2009年リイシュー盤。


Chaconne A Son Gout
 
 Chuck Israels / Axel Hagen
Chaconne A Son Gout
 Blue Jack Jazz BJJR049 
 1961年から66年にかけてエヴァンス・トリオを支えたベーシスト、チャック・イスラエルが、ドイツのギタリスト、アクセル・ヘイゲンを交えたピアノレス・ワンホーン・カルテットで吹き込んだアルバム。クラシックの作曲家が好んで用いる「シャコンヌ」の形態を、リーダー自らの低音に絡めて、ジャジーにブルージーに生かした自作タイトル曲「自分好みのシャコンヌ」でも落ち着いた伸びやかなプレーを堪能。味わい深いスインギーな演奏が沁みる1枚。


 
Re: Person I Knew  A Tribute To Scott Lafaro
 
 Phil Palombi
Re:Person I Knew A Tribute To Scott Lafaro
 Leg Oat GT068 
 2011年は、スコット・ラファロが非業の死を遂げてからちょうど50年。そんな節目の年に、Tri-fiでの活躍などでおなじみのN.Y. ベーシスト、フィル・パロンビによって捧げられたラファロ・トリビュート作。ピアノには在りし日のラファロをよく知るドン・フリードマン、ドラムには、70年代後期のエヴァンス・トリオを支えたエリオット・ジグムンドというピアノトリオを中心に、ドラムとのデュオ演奏、ベース・ソロを自在に展開している。ラファロの愛器プレスコットベースを用いての録音。


Time Will Tell
 
 Per Danielsson
Time Will Tell
 Random Act Records RAR1006CD 
 エディ・ゴメスとのコンビで5年にわたりエヴァンス・トリオを支えていたマーティ・モレルがドラマーとして参加している、スウェーデン出身の人気ピアニスト、ペール・ダニエルソンのトリオ新録。モレル作曲による「Song For Bill」は、短いながらも聴き手をしっかりと濡れさせる美しいバラード。ほか、「In Your Own Sweet Way」、「Here's That Rainy Day」など思わずニヤリとさせられてしまうナンバーもあり。


 
Little Drummer Boy
 
 Joe & Pat La Barbera
Little Drummer Boy
 Five Stars Records FSY513 
 エヴァンス最終トリオのドラマーとしても知られるジョー・ラ・バーベラが、実兄のテナー・サックス奏者パット・ラ・バーベラと吹き込んだ、初めてとなる日本制作のリーダー・アルバム。ビル・カンリフ(p)、マティアス・スベンソン(b)ら腕利きが顔を揃えたカルテット録音。