HMVインタビュー: アフリカ・ハイテック

2011年5月17日 (火)

interview

Africa Hitech

様々な要素を呑み込んだヘヴィーなベースライン・サウンドを鳴らす、AFRICA HITECHの1stアルバムのリリースを記念して、マークプリチャーズとスティーヴ・スペイセックのお二人に伺いました。

Africa Hitechにコンセプトはないんだ。常に変化する進化系のプロジェクトだね。


--- アフリカ・ハイテックとしての初のアルバム、完成おめでとうございます!今のお気持ちはいかがですか?

マーク・プリチャード: とても良い気分だよ。アルバムを完成させてから数カ月経つけど、自分でちゃんと評価するには少し時間がかかるからね。今までずっと制作に関わってきて、その音楽をずっと聴いて慣れてしまっているからね。作品を仕上げたばかりだと、他の人がどんな反応をするか、どのように受け止めるのかまだ分からない。作品が理解されるのにすごく時間がかかる場合もあるし、すぐに理解される時もある。今のところ、完成されたアルバムを聴くのが楽しみという人が多いし、僕達がリスペクトする人達からは非常に良い評価をもらっている。だから今は良い気分だよ。

--- どういう経緯で、スティーヴ・スペイセックとユニットを組む事になったのでしょうか?

マーク・プリチャード: 僕たちは二人ともロス・アレンが経営する<アイランドブルー>というレーベルと契約していた。ロスはラジオDJで、GLR (Greater London Radio)というラジオ局で番組をやっていて、僕の曲をそこで流してくれていた。彼とは長い付き合いがあった。レーベル関連のイベントか何かがきっかけでスティーブと出会ったんだが、それ以前にロスがスティーヴの「Eve」という曲を聞かせてくれた。「Eve」にはとても驚かされたよ。90年後半から2000年頃の話かな。また、僕達には共通の友人がいた。当時はちょうど同じようなバイブスのアーティスト達が同じようなヴィジョンを携えながら、それぞれの音楽活動をするという、良い時期だった。僕がトラブルマンとしてのアルバムを制作していた時に、スティーヴにゲストヴォーカルとして歌ってくれないかと頼んでみたんだ。そして偶然にも同じ時期にお互いシドニーに移住することになった。6年前のことだ。今ではお互い10分しか離れていないところに住んでいる。マッドな話だよ。似たようなヴィジョンを持っている人と一緒に仕事ができるというのは、本当に素晴らしいことだ。

--- スティーヴ・スペイセックとは、どのように作業をしていたのですか?

マーク・プリチャード: 主に、90%くらいはスタジオで一緒に作業していたかな。もちろんアイデアは各自で書きとめているけど、スタジオで一緒に作業をすることが多い。スタジオにスティーヴがアイデアを持ち寄ったり、僕が途中まで作った部分をスティーヴに聞かせたりして一緒に作業する。僕が作り始めたトラックに合わせてスティーヴが歌ったり、スティーヴが持ち寄ったアイデアに僕が何かを加えたりする。色々なアプローチでやっているよ。普段は、アイデアは各自で見つけて、それを二人で発展させてトラックにしたりアレンジしたりしていく感じだね。

--- 彼(スティーヴ・スペイセック)から影響を受けたことはありますか?

マーク・プリチャード: 音楽制作には様々な面があって、お互い色々な作業をしている。それは素晴らしいことだ。もちろん、スティーヴから学ぶことは沢山ある。みんな各自の強み、というか個人のアイデアや技術を持っている。似たようなヴィジョンを持つ人と仕事をすると、自分が本来持っていた要素をより高めてくれたりもする。自分の強みを忘れてしまっていたりしたことが、その人のおかげでその強みを再確認できたりする。ダンスミュージックやリズムのある音楽全般において僕たちが大事にしているのはビートがのる感じや、プログラミングの感覚、ドラムとベースの音楽における関係など。スティーヴはそれを自然に表現するから、彼のプログラミングからは彼の性格が出ていると思う。僕は90年代の時からそれらの要素を強く意識していて、追求してきた。それは機材による時もあるし、機材を扱う人による時もある。これは90年代の時期に僕自身が模索し、気づいたことなんだ。僕が音楽において好きな要素はそのようなこと(ビートがのる感じ…etc)で、僕はそれを表現していきたいと思っている。スティーヴはそれをある意味自然にやり、それが自然に出てくる。だから素晴らしいんだよ。

--- 2人はどんな雰囲気で作業をしていたんですか?

スティーヴ・スペイセック: リラックスしていてチルな雰囲気だよ。ドラマチックなことは特になにもないよ。(笑)

--- ユニットを組むにあたり、もともとコンセプトはありましたか?

スティーヴ・スペイセック: Africa Hitechにコンセプトはないんだ。常に変化する進化系のプロジェクトだね。俺達が愛する音楽、つまりUKのベースラインサウンドが自然に発展していったプロジェクトだ。そして、様々なジャンルの音楽がアフリカとリンクを持っているということを主に表現したかった。例えばアフリカのドラムの音などを聞いても分かると思う。音楽は遡っていくとアフリカというルーツに辿り着くというのが俺達の考えだ。この概念を主に伝えたかった。そして、今まで関わってきた様々なジャンルやスタイル、そしてUKダンスミュージックに対して感じている愛情を表わしたかった。

--- アルバムタイトルの『93 Million Miles』にはどんな意味が込められているのですか?

マーク・プリチャード: 僕はペンギン出版社の科学についての本を持っているんだが、その本には科学についての定義や専門用語などが沢山載っているんだ。本の表紙がヤバかったから買ったんだけど、裏面にはチャートがあって、惑星の太陽からの距離が書いてあった。アイデアとして生まれたのはそこからだ。それから僕達は、光がどのようなスピードで進むのかなどを調べていった。その時に何か良いヴァイブスを感じた。それがきっかけかな。93 Million Miles(9300万マイル)は太陽と地球の距離だよ。

スティーヴ・スペイセック: 俺は、昔の科学の先生のおかげでそれを覚えている。良い先生が教えることは、きちんと頭の中に残っているものだ。だから光の速さなども知っていたよ。そこに、マークの持っていた本があって、同じ情報が載っていたから、それを取って俺達のプロジェクトのオープニングタイトルにしたんだ。タイトルにとても良いヴァイブスを感じたんだ。最近、アルバムのタイトルを決めることになった時、マークが、アルバムのタイトルも『93 Million Miles』にしようと提案した。『93 Million Miles』には包括的な意味合いがあってアルバムのタイトルとして良いと思ったよ。

マーク・プリチャード: それに、アルバムに入っている他の曲も『93 Million Miles』に関連するタイトルのものがいくつかあった。サン・ラをサンプリングしている「Light the Way」にあるリリック、「When there is no sun to light the way, there is no day, there is only darkness」もアルバムタイトルとリンクしていた。その他に「Cyclic Sun」というトラックもある。テーマがあるということは良いことだと思う。テーマとは時間をかけて作られるものもあるし、アイデアが生まれてすぐにできる場合もある。アルバムに全体としてのヴァイブスを与えるというのは素敵なことだと思う。『93 Million Miles』はその役割を果たしてくれるのにぴったりのタイトルだった。

--- 前作ハーモニック313名義での『When Machines Exceed Human Intelligence』では「時の流れと共に自然とできたアルバム」とおっしゃっていましたが (前作のHMVインタビューより引用)今作 『93 Million Miles』はどのように出来上がったのでしょうか?

マーク・プリチャード: 同じ感じだね。僕やスティーブにとっては、音楽はいつも同じような形でできる。自然に生まれてくるんだ。

スティーヴ・スペイセック: そう、自分から自然に出てくるんだ。

マーク・プリチャード: プロジェクトとしてもそういうやり方が合っているんだ。

--- 今回の収録曲の中で、最も気に入っている曲は?その理由も教えてください。

マーク・プリチャード: そうだね。。。「93 million miles」と「Our Luv」。もし1つだけ選ぶんだったら「Our Luv」だね。僕自身が誇りに思える曲というか、自信を持ってリリースできる曲だ。自分がリスペクトしている人から反応をもらうことで曲に対しての出来具合を再確認できる。だがそれまで時間がかかる時がある。また、どの曲が好きかというのも時間が経つにつれて変わってくることもある。自分で音楽を作っていると、どの曲が一番良いか、などと考えるのは難しいことなんだが、この2曲には、僕が音楽に求めているものが含まれているという確信があった。だから、曲を聞いた人がすぐに理解してくれなくても、あまり良いと思わなくても、僕には曲に対する自信があった。この2曲は時の流れに堪えうる作品だからだ。

--- これからチャレンジしてみたい事、その他今後のプラン等あれば教えて下さい。

スティーヴ・スペイセック: 今後のプランとしては、世界を征服したいね(笑)。それは冗談で、とにかく素晴らしい音楽を作り続けるだけだよ。

マーク・プリチャード: その通りだ。今までやってきたようにこれからも活動を続けていく。良いレーベルと契約しているし、リスナーの皆も僕達の音楽を気に入ってくれて、良い反応をもらっている。だから今やっていることを続けていくことだね。あとは、あまり忙しくなりすぎないように上手いやり方を見つけることだね。それが葛藤のもとで、僕たちはこのプロジェクトの他にも色々なプロジェクトを抱えている。頭の中では、それらを全てできると思っているんだが、実質不可能だ。自分のクローンができない限りはね。(笑)僕達のクローンを何人か作れば、なんとかやれると思うんだが、それは物理的に不可能だ。ここ数年は本当に忙しかったし、今年も忙しくなる。仕事と時間とのバランスを取るのが大切だ。常に締切に追われるという状況に自分を追い込みたくはないからね。スタジオに入って、作りたいものを作って、それが自然にできる。それが理想だ。ある作品を来週までに仕上げないといけないからスタジオにいかないといけない、というのはなるべくなら避けたい。だがこういった葛藤は20年間ずっと経験していることだよ。だが音楽作りに力を入れていき、作品をどんどん発表していくと色々なプロジェクトに関わることになる。自分の音楽を世の中に出していき、勢いに乗ろうと頑張るんだが、それが上手くいくに連れて、反対に、気を散らすものが増えてくる。

--- このインタビューを読んでいるファンへメッセージをお願いします。

マーク・プリチャード: 僕たちの音楽を楽しんでもらえて嬉しいよ。どこかのタイミングで皆のところでプレイし、多くの人達と出会えることを期待しているよ。マッドな音楽をかけてみんなでパーティできる日を楽しみにしているよ。

スティーヴ・スペイセック: Africa Hitechがこれからくるという事を広めてくれ。

マーク・プリチャード: Africa Hitechはもう誕生したぜ!


新譜Africa Hitech / 93 Million Miles
マーク・プリチャード(グローバル・コミュニケーション、ハーモニック313)とスティーヴ・スペイセックとの新ユニット Africa Hitechによる1stアルバムが<WARP>から登場!様々な要素を呑み込んだヘヴィーなベースライン・サウンドを鳴らす、テクノ〜ビート・ミュージック〜ダブステップ好きまで必聴の一枚!



profile

Mark Pritchard + Steve Spacek = Africa Hitech

UKエレクトロニック・ミュージックの巨匠としてグローバル・コミュニケーション、リロード、ジェダイ・ナイツ、ハーモニック313等の名義で知られるマーク・プリチャード。一方のスティーヴ・スペイセックは、Jディラとのコラボレート・シングル「Dollar」をリリース後、幅広いシーンから高い評価を受けて一躍注目の的となった。世界を股にかけて活躍する2人の野心家が出会い、お互いの得意分野である、ダブ、アシッド、グライム、テクノ、ハウス、ソウルそしてジャマイカン・ダンスホールといった、様々な音楽の要素を取り入れ生み出した楽曲は、新たなベース・ミュージックと言うべきサウンドとなっている。あらゆる音の本質を理解し、ミニマリズムと実験精神を持ち合わせた本作は、彼ら2人の並はずれた能力と経験があるからこそできたアルバムといえる。

ハウス/クラブミュージック最新商品・チケット情報