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ハバードの実況音源蔵出しに託けて

2011年4月22日 (金)


Freddie Hubbard




フレディ・ハバードの1980年未発表ライヴ音源、日本先行発売


 CTIからコロムビアへレーベルを移籍し、ソウル・ジャズ/ジャズ・ファンク路線をさらに推し進める一方で、ハービー・ハンコックウェイン・ショーターらとのV.S.O.P.興行にて古きよき「バップ」「モード」の熱狂を現代に蘇らせた、1980年のフレディ・ハバード。自身のリーダー・コンボにて出演したサンフランシスコの名門ジャズ・クラブ「キーストーン・コーナー」公演が、30年以上の時を経てついに陽の目をみます!

 ハバードのキーストーン公演ソースと言えば、ジョー・ヘンダーソンボビー・ハッチャーソンらを従えた1981年11月の実況録『Keystone Bop:Sunday Night』、あるいは後年にリリースされた『Keystone Bop Vol.2:Friday & Saturday』が古くから有名ですが、このたびリリースされる『Pinnacle:Live & Unreleased From Keystone Korner』は、正規完全未発表となる1980年6月+10月の同地公演を収録したシロモノなのです。

 60年代ブルーノート在籍期の華麗さに、70年代CTI作品で鎌首をもたげていたブラックネスを折衷。クラシックの素養を持ちながらもモーダルにスピリチュアルにピアノ、ローズを操るビリー・チャイルズ、80年代以降ジョニ・ミッチェルとのパートナーシップで知られるベース奏者ラリー・クラインといったこの時期のハバード・グループのレギュラー陣に加え、デトロイト Tribeレーベルのリーダー諸作が、昨今のクラブ・ジャズ界隈で高い需要を極めるトロンボーン奏者フィル・ラネリンサンタナグレイトフル・デッドとの共演でロック方面にもファンの多いテナー奏者ハドリー・カリマン、Baystate盤『ブラック・ルネッサンス』への参加でよく知られるテナー奏者デイヴ・シュニッターといったご当地在住の名士が駆けつけ、カリの夜空にアフロ・アメリカンとしての祝砲を盛大に打ち上げております。

 ハバードの代名詞ともなった『Red Clay』所収の「Intrepid Fox」や、「First Light」といったCTIチューンにおけるアンサンブルは、まさに上述の「折衷」を絵に描いたような狂おしきモーダル美とトグロ巻く漆黒のマルチミックス。当時のぴっかぴかの新曲「Happiness is Now」におけるファンク・グルーヴもドロくさ過ぎず、洗練され過ぎずのほどよい塩梅。V.S.O.P.のレパートリーとしてもおなじみの「One of Another Kind」では、ハバード、ラネリン、カリマンの勇ましき三管が闇夜を切り裂き、ミシェル・ルグランの有名曲「Summer Knows」では、はんなりとしたハバードのプレイに耽溺することをお約束。オーラス「Giant Steps」では、こちらもハバード、ラネリン、カリマンの三管が抜群のコンビネーションでテーマをユニゾンした後、ハバードの息をも付かせぬハードなプレイがたっぷりと!

 US本国では、6月以降のリリースが予定されていますが、なんと本盤は日本先行流通。また、Resonance Recordsは今後こうした歴史的発掘音源のリリースを積極的に行なっていくとのことです。そちらもお見逃しなく!   



【極論】 この時期のハバードは、あの伝説の左腕に酷似していた。



Freddie Hubbard


 「江夏か!?」と騒ぎ立てたくなるような恐ろしい風貌でラッパをくわえるのは、ご存知フレディ・ハバード。おそらく70年代の後半から80年代初頭にかけた時期に撮られたひとコマだろう。『Open Sesame』『Hub Cap』などで覗かせる、オバサマたちをきゅんきゅんさせたあのベイビー・スマイルはどこへやら。集金袋をトランペットに持ち替えただけで、完全に取り立てに訪れた闇金業者と化しているではないか。

 容姿における ”江夏化” が如実となったのは、70年代半ばあたりからだろうか。『Backlash』『High Blues Pressure』、つまりアトランティック時代のポートレートを眺めるかぎりは、齢30、「而立」ならではの逞しさも感じられるが、まだまだ「やんちゃなかわいらしさ」というものがキープされている。ちなみにこれは、”江夏暦”における虎から鷹へと衣替えを行なった季節にあたると言えそうだ。

 ここからは、ハバードの経歴を簡単におさらいしながら、容姿だけでなくその歩みにおいてもなんとなく江夏豊との類似性があるのではないか、という話を恐縮ながら進めていきたい。容姿だけならば、「金網デスマッチの鬼」と恐れられていた頃のラッシャー木村との酷似ぶりも無視できないレベルにあるため、ここでは「歩み」という部分にも焦点を当てながらハバード、江夏、両者の近似ぶりを追っていきたいと思う。

Freddie Hubbard
 少年時代からインディアナの同郷人ウェスバディといったモンゴメリー・ファミリーらと交流を持ち、そこでの教授や薫陶を糧としながら1958年にニューヨークに上京。当時ハタチの頃にはすでに、オーネット・コールマンエリック・ドルフィーJ.J. ジョンソンクインシー・ジョーンズソニー・ロリンズといった錚々たる大家たちと共演を行なっていたハバード。1960年に先述の『Open Sesame』を初のリーダー・アルバムとして吹き込んでからはトントン拍子。5年間で9枚のリーダー作(『Here to Stay』のみ後年発表)と、28枚のサイドマン参加作をブルーノートに残した。リー・モーガンとのWトランペット体制で吹きまくったセプテット・ライヴ盤『Night of the Cookers』に顕著な、フリー要素も含んだ当時の熱病のようなステージなど、この頃をハバードの最盛期に挙げるジャズ・ファンも多く、「ハバードと言えばブルーノート」という図式が確立されるほど、デビューからの強烈な5年間の活躍を印象付けた。これはまさに”江夏史”における、「シーズン401奪三振」、「オールスター9連続奪三振」などを成し遂げた若虎時代の5年間に重ね合わせられると言えそうだ。 

 ところが60年代も半ばに入るとハバードはあっさりとブルーノートを離れ、当時押し寄せていたジャズ・ロック/ソウル・ジャズの潮流に身体を預るがごとくアトランティックに移籍。そこで吹き込まれた「Little Sunflower」、「Can't Let Her Go」、「South Street Stroll」、「Gittin' Down」といった楽曲にはまさにその手のテイストが惜しげもなく詰め込まれた。今でこそ若い世代のレコード・ディガーを中心に人気を集めているハバードのアトランティック期の作品だが、当時はおそらく”ジャズの異分子”として、ストレート・アヘッド派のジャズ・ファンにケチョンケチョンにコキ下ろされたであろうことも悠々想像できる。「ロック・ビートに魂を売っちまったか!」と。この「転機」は、”江夏史”における鷹軍移籍後の「リリーフ転向」に値。また、当時のリリーフ投手に対する極めて低かった評価や地位が、現在において180度ひっくり返るという事象についても、両者のイメージをダブらせる大きな要因になっているのではないだろうか。

Freddie Hubbard
 「ハバードよお前もか!」 そんなガヤの声を尻目に、70年代に入るとハバードの志向はさらにジャズ・ロック路線を深化させたフュージョナルな方位へと向く。クリード・テイラーのCTIレーベルに赴き、いきなりの全国区ヒット『Red Clay』をかっ飛ばし、続けざまの『Straight Life』『First Light』『Sky Dive』・・・と、アトランティック期同様にハバードのCTI作品は、昨今のクラブ・ジャズ的評価軸において軒並みのハイスコアを叩き出す。若年層にとってのハバートと言えばまっさきに「CTIだぜ、チェケラ!」と声を荒げる、そんな状況を作り上げた。一方のジプシー左腕も再びの移籍を決意。球史に残る名リリーバーぶりをいかんなく発揮し、「CTI」ならぬ「赤ヘル」の黄金時代を築き上げた。つまりハバードの『Red Clay』は、今や若年世代にも語り継がれる「江夏と言えば”21球”だぜ、チェケラ!」という再評価風となんら違わないのである。
 1974年、『Polar AC』の発表を最後にコロムビアへ移籍すると、スティーヴィ・ワンダーの「Too High」スタイリスティックスの「Betcha By Golly Wow」マリア・マルダーの「Midnight at the Oasis」といったファンキーでソウルフルなカヴァー・レパートリーを交えながら、グルグルと首尾よく回転するミラーボール・サウンドへと足を踏み込んでいったハバード。「Rock Me Arms」、「Liquid Love」、アル・ジャロウの歌唱を伴った「Little Sunflower」の再演ヴァージョンといったガラージ/ディスコ好きウケするダンサー曲が生まれているのもこの時期だ。また、その2年ほど前には、スタンリー・タレンタインとの双頭2管セクステットで行なわれたライヴ・ステージがレコード化されているのだが、その扉絵にはまだソフトではあるものの紛れもなく”江夏化”したハバードの姿が転写されている。スーツ(当然ダブル)のラペル幅もぐんと広がり、オラオラ度が相当増しているではないか。

 ここで重要なツールとなるのが、キナくさいパンチパーマにたしかな彩りを添える「タレサン」。つまり当時大流行したティアドロップ型のサングラスなわけだが、ハバードの宣材スチールにこの「タレサン」が初登場するのが1975、6年頃と推測されるため、折りしものブームに迷うことなく乗っかった柔軟さが見てとれる。レンズは、グラディエント加工の濃淡差が大きいほど相手に与える緊張感というものは増すと、そのスジ界隈では有名であり、ハバード所有のタイプはおそらくそれ。ただし、当時の成り上がり系アイコンのほとんどが「タレサン」+「金のネックレス」×「パンチパーマ」に落ち着いていたことを考えると、これを「お洒落」と呼ぶには当然差し障りのある未熟なムードが漂っていることも確かだ。その逆の例が、同時期隠居するかしないかの三途の川にいたマイルス・デイヴィス。マイルスは、花粉対策かのごときバカでかいゴーグル・タイプのサングラスを着用することによってジャズ・ファッションのエッジのきわを歩み続けることに成功。これにより、音楽創造、服飾センスどちらの分野においてもケタ違いのレベル差をはっきりと見せつけた。

 ”江夏化”が確実に沸点に達しようとしていた一方で、1977年からは、かつてのレーベル・メイトでもあり、「新主流派」としてブイブイ言わせた盟友ハービー・ハンコックウェイン・ショーターらとV.S.O.P.を結成し、古きよきバップ、モード、フリーへの「回帰」を宣言するかのようなコンサート興行を行なっている。「一匹狼」のイメージが強い江夏だが、奇しくもこの時期、生涯において無二の親友と呼べるただひとりの男、衣笠祥雄との出逢いを果たしている。「この時期は、嫁さんといるよりサチ(衣笠)といる時間の方が長かった」。この発言を、ハバードとハンコックの関係に置き換えてもあまり違和感はないのである。

 江夏の70年代末〜80年代初頭の在り様といえば、まさに「伝説の21球」から「優勝請負人」へと至る神格化がほぼ完了し、と同時に鯉やハム太郎の着ぐるみから最もピリピリとしたオーラが発せられていた最凶期だ。球場を一歩出るや否やハバードと区別がつかないほどの風体をあらわにし、「仁義なき戦い」の舞台ともなった流川のネオン街、あるいはカタギ御免の高レートの雀荘へと消えてゆく。画像を引っ張り出すことは自粛させてもらったが、目を合わすことさえ憚れる圧倒的な20世紀の恐怖にして、21世紀の萌え。とあるブログの一節を見るにつけ、「移動の新幹線から東京駅に降り立った鯉軍団。パンチ+タレサンの江夏、山本浩二に続いて、金色のネックレスを光らせながら鋭い眼光を飛ばす衣笠が降り立った時は、俺はもう東京は終わったと思った・・・」とあったのだが、それが決して大袈裟な描写でないことは心得ている。  

江夏豊「俺の詩」
 閑話休題。80年代前半、ニューウェイビーな時代の到来は、残酷にも「時代錯誤」的なモノを徐々に篩いにかけはじめる。1983年、ひとしきり所沢の獅子と戯れた江夏は残念ながら一線から退くことを余儀なくされる。方や、ハバードにおいてもコロムビアを離れ、その都度レコード会社を流浪しながらコンスタントにアルバムをリリースするも、ブルーノートあるいはCTI時代に匹敵するほどのヒットや称賛とはまったくと言っていいほど無縁なところにいた。なんと、容姿だけでなくその歩みにもなんとなく類似性がでてきたのだ。翌々年、江夏が無謀とも思えた大リーグ挑戦を敢行すれば、ハバードは古巣ブルーノートへの返り咲きを果たす。ここからの「明暗」がくっきり分かれることもあり、かなり強引と思われるかもしれないが、両者の「英断」の時期は実に見事に重なり合い、何がしかの因果関係をにおわせる・・・

 キリがないのでそろそろシメに入らせてもらうが、因果ついでにもうひとつ。このたび発掘音源としてリリースされる『Pinnacle:Live & Unreleased From Keystone Korner』が収録された1980年には、江夏の歌手デビュー・シングル「俺の詩」(藤田まこと作詞、吉田正作曲による、けっこうなディープ・ソウル!)がビクターより発売され、実に7万枚のセールスを記録したそうだ。現在調査を進めているところなのだが、同年にリリースされているハバードのアルバム『Skagly』の初回出荷枚数がもし仮に7万枚だとしたら、これはひょっとすると、ひょっとするぞ・・・



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