[HMV インタビュー] 安藤裕子

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2010年9月8日 (水)

interview

安藤裕子

安藤裕子が『Chronicle』以来、2年4ヶ月ぶりのオリジナルアルバムをリリースした。2年4ヶ月。その年月、月日を音楽と向き合いながら過ごしてきた安藤裕子の13篇の物語。前回BEST盤取材時には「はじまりが終わりで、終わりが始まり」と言っていた安藤裕子。どうやら新しいPhaseに入った安藤裕子にメールインタビュー。

--- 2年4ヶ月ぶりのアルバム発売おめでとうございます。実際、制作は前作『chronicle.』発売後の9月から始まっていたとの事なので、2年間という長い期間をかけて完成したものですよね?その2年間と言うものは安藤裕子さんにとって、どのようなものでしたか?

長くはないんだよ。作っている方は本当にただただ生活の中で生まれる曲を紡いでいるようなもんで。たまたま発売するといった形があるんだな、といった感じです。

--- 前回BEST盤で取材させて頂いた時に、『chronicle.』以降、「はじまりが終わりで、終わりが始まり」という事を意識されているというお話がありました。今回のアルバムは、BEST盤リリースで一つ区切りが付いた後、まさに「新しいはじまり」を感じさせるもののような気がします。その辺り、本人の意識としてはいかがでしょうか?

「chronicle.」を出し終えた私の心は本当に停止してしまっていたと思う。
終わりというのはお別れを意味していて、色々な物が自分の手からこぼれ落ちてしまったような感覚でいた。
「はじまりの唄」を歌って立ち上がらなければいけないと思っていたけれど、私にはそんな力はありゃしないといった状態だったと思う。
だけどベニーシングスとの出会いが一つの契機だった。
音楽を作るという作業をもう一度楽しむための最良の出会いになったと思います。
彼とやる事が決まって、改めて宮川弾や山本隆二との音作りが鬼のように楽しい物になった。
自分の生活は相変わらず先が見えなくても、音楽が私を助けてくれたなって思います。

--- タイトルは『JAPANESE POP』と言うことですが、そこに込められた意味を教えてください。

先にも答えたけど、音楽ってすごいなと思うようになった。
私ずっと音楽を疑っていたんですよ。そもそも衣食住に関係ないじゃないですか。
ずっと私にとって音楽は作るもので聴く物じゃなかった。
だけど、自分の人生が停止しそうになっていた時、私の心の穴っぽこを埋めてくれたのはみんなとの楽曲制作だったり、ライブだったり、そして出来上がった音楽を聴くという事だったの。
ようやく音楽というものが人類の社会生活に何故必要とされてきたのかがわかった気がした。
神々の時代からね。
今の乾いた世界では人は一人では生きていけないと思うんだよ。アホみたいな話だと思われるかもしれないけれど、みんなが笑顔の裏にでっかい心の穴っぽこを抱えている。 音楽はそれを埋めてくれる。
私は相変わらず自分に自信は持てない。だけど私の周りにいる素晴らしきミュージシャンやエンジニア、愛されて育まれた楽器達をスタンダードと世の中の人たちに自慢したい。
市場の真ん中からどんなに離れても、私はこうやって愛した音楽をすげえだろ、と言ってみたかった。
だからタイトルもでっかくね。してみました。

--- ジャケット写真も、今までの印象とは違うものになっていますが、どのようなコンセプトだったのでしょうか?

これは単純。友達がラフマベティのジャケットを見て、『何で裕子はロリ売りなわけ?』って言ってきて、悔しかったから大人になろうと思ったのです。

--- 複数のアレンジャーの起用によって、音楽的な広がりが大きく感じられる作品になっていると思います。このアルバムを制作するにあたって、その広がりは当初から意識していたのでしょうか?

全然。どちらかというと、いつもの方が一人とやっている分色んな毛色の曲をやらなきゃって考えてた。後からポップな曲足したり、なんたり。

--- アレンジャーとしてオランダのシンガー・ソングライター、ベニー・シングスを迎えていますが、彼との出会いはどのようなものだったのでしょうか?

新しいアレンジャーの起用は常々やってみないとな、とは思っていた。
だけどもっさん(山本)以外とやることにどうしても踏ん切りがつかなかった。
どんなに有名な人でもね。多分前向きになれなかった。
でもある日ディレクターが私にベニーの曲を聴かせてくれて、かわいい!ってなったの。
素直にこんな人とやってみたいよね!って。
無理も承知でディレクターがベニーのマネージメントに連絡を取ってみたら意外とあっさり「いいですよ。」ってなって。いい出会いでした。

--- ベニー・シングスとの制作はどのようなものでしたか?

最初は彼が日本に来た時に挨拶して、また次来た時にスタジオで「New World」のプリプロダクションをやってみたりして。「ああ、大丈夫。音で繋がれる。」ってすぐわかった。
一曲目が非常によかったからもう一曲やりたくて「Dreams in the dark」をアカペラでICレコーダーに録ってベニーに送った。
この曲は私にとって諦めの曲だった。シニカルな意味での夢を歌っていた。
みんなが笑えりゃそりゃいいだろうよ、でも無理だよって。
でも彼のアレンジが答えを変えてくれた。
私に夢を見てもいいのかな?って思わせてくれた。だから私はこの曲を聴くと泣く。

--- 実際、ベニー・シングスがアレンジを担当した楽曲(「NEW WORLD」「Dreams in the dark」)は特に、音の重なり方がこれまでとは違い、曲の印象が幻想的で、今までにはなかったものになっていると思います。完成したものを始めて聴いたときは、どのように感じましたか?

わあ、ベニーの音だって思いました。日本で録る上で永遠のテーマみたいになってる録り音もね。ベニーとは関係ないけど「健忘症」はわりかし目指すところの録り音に近い。
話をベニーに戻すと、アレンジャーという生き物が非常に強い個性を持ってる事を発見しました。それと同時に誰が一緒に作業しても私の曲は私の曲だという事もわかった。

--- 「アネモネ」に関して、これを歌っているのは安藤裕子だろうか?と思うほど、発声自体が、今までにないものだと思います。これはどのような意図なのでしょうか?

ふふ。玉置浩二。女版。あの玉置さんの(80年代)の粘着質な感じを出してみたかった。
弾君が非常にすてきなアレンジをしてくれたから、曲が女の人の怖いところだけじゃなくて、たゆたう美しさとか幻想感を増したと思うのね。惚けた美しさというのかな?
それを再現するために酸欠になりながらがんばった。
これが録音芸術の楽しいところ。

--- 「問うてる」「歩く」からは特に、生きるという事に対するこだわりのようなものを感じますが、いかがでしょうか?

そうですね。現状の私よりずっと力強い。
このアルバム全てに言える事だけど、私を優しく明日にひっぱってくれた。やっぱりどうにかやっていかなきゃいけないし、自分に負けたくもないし。でも現状はダメ。
でも曲は力強い。助かった。

--- 既に配布されているフライヤーに書かれた文章「歌うということ。」や7/17のブログ「牙の行方」など、安藤裕子さん自身の内にある想い、メッセージをこれまで以上に積極的に発信しているように思います。発信するように心がける、きっかけのようなものはあったのでしょうか?

クロニクル後。生き方を変えた。このまま生きる事は許されてない事もわかっていたし、逃げ回っててもどうにもならないから。

--- 最後にHMV ONLINEをご覧の皆様に、メッセージをお願いします。

健康が一番!何より一番!自分を愛する事が異様に面倒くさい。でも明日もう一度立ち上がる時に、身体が整っていればいつでも走れる。ひとまず身体!!!!
音楽と共に。

新譜『JAPANESE POP』 / 安藤裕子
本人出演で話題沸騰のサッポロ飲料GEROLSTEINER(ゲロルシュタイナー)CMソング「問うてる」を始め、オランダの鬼才ベニー・シングスや、宮川弾など多彩なアレンジャーが参加した2年4か月ぶりのアルバム待望のアルバム、いよいよリリース。ジャケット&ブックレットは、世界的カメラマン、レスリー・キーによって撮り下ろされた、大人の安藤裕子が満載の豪華仕様!
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profile

1977年生まれ。
2003年ミニ・アルバム『サリー』でデビュー。
2006年に発表した2ndアルバム『Merry Andrew』に収録された「のうぜんかつら(リプライズ)」が日本酒のTVCMで起用されたが名前がクレジットされていなかった為、メーカーに問い合わせが殺到。15万枚のヒットを記録。オリコン初登場10位。

2007年2月発表の3rdアルバム『shabon songs』は、ノンタイアップにも関わらず、オリコンデイリー初登場3位を記録。
同年10月には、映画「自虐の詩」(主演:中谷美紀)主題歌として、堤幸彦監督からの直々の依頼により、『海原の月』を書き下ろし、話題に。

2008年5月に発表された4枚目のアルバム『chronicle.』は、オリコンweeklyアルバムチャート初登場11位。

2009年1月から14ヵ所を回るアコースティックツアーは、全国のほとんどの会場で即日完売。
12000人を動員。

同年4月26日には、6年目にして初めてのBEST盤『THE BEST '03〜'09』をリリースし、オリコンweeklyアルバムチャート初登場5位(4/27付)
BEST盤発売のツアーでは自身最も大きな会場となる東京国際フォーラムAをSOLD OUT。
全国で約25000人を動員。

キュートで清涼感あふれる容姿とは裏腹に、高い熱量と甘やかな歌声を絶妙なバランスで混在させ、心の内側を揺らす、近年類を見ないシンガー・ソングライターの彼女は、ジャケットデザインからスタイリング、ヘアメイク、MUSIC VIDEOの監督まで全てをこなし、他アーティストへの楽曲提供などマルチな活動で、最も注目度の高いアーティストの一人である。