OKI インタビュー 【2】
Tuesday, July 27th 2010
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ユジノサハリンスクのレコーディング・スタジオで “サハリン ロック” とか絶対歌ってたような
気がするんだよね。 」
- --- サハリンで体験したことや感じたことは、アルバム『サハリン ロック』にも大きな影響を与えていくことになるんですよね。
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今回の旅では、歴史的な時間や距離感が縮まったり、ダイナミックにサハリンを見れたということ、サハリンアイヌではないのにサウダーヂな気分にさせられてしまったこと、いろんな感情に対処できなくて。「俺は本当にアイヌなのかな?」と思ったりね。昔の人たちの呼吸とあまりにもかけ離れてるから。
トンコリを弾いてるということが重いな、ヤバイことやってるんだなって感じたりもしたし。ある程度影響力もあるからヘタなこと出来ないじゃないですか。
だから、どう作品に反映させていくかとなるとこれがまた大変で。
まずはトンコリで昔の好きなフレーズを録音して、そこにリズムあてはめて、リズムトラック作って。
そこから歌詞も何も決まってないのに、ヴォーカルマイクの前で出来たトラックで歌うんですよ。その時に思わず口に出たのが「サハリン ロック」! そこからはなぜかスラスラと。「サハリン ロック」(M-1)はファーストテイクなんですよ。この言葉が出るまでは悶々としちゃって大変だったんだけど、「サハリン ロック」って叫んだ瞬間に旅の印象がはっきりした。
サハリンってロックな印象があるんだよね。廃墟の感じとか。
第二次大戦前後の王子製紙の工場とかがそのまま残ってて、屋根もないし窓ガラスもない、壁だけなの。煙突から煙だけ出てて。もうアンコールワットよりひどい(笑)。ノテカリマの本拠地と言われているシララオイは今でも蟹を取ってる小さい漁村なんだけど、そこの雪で真っ白な丘にはぽつんと鳥居が立ってたりする。車走らせれば真っ赤な文字で「1942」って書いてあったり。ソ連時代のモニュメントだね。レーニン像もそこらじゅうに立ってる。
だから、イマジネーションを研ぎ澄ませばアイヌ時代の面影がどんどん広がってくのよ。日本時代、ソ連時代、そして今のサハリン・・・ちょっと島を走っただけでヴィジュアル的に全部歴史がわかるんだ。アジアなんだけどヨーロッパだし、北海道の網走みたいなところもある。景色は戦前の北海道に近いと言われてるけど、整備しないからやっぱり昔の感じに近いんだよね。極東にはみ出ているヨーロッパの盲腸みたいだよね、サハリンって。
もしも今でもサハリンアイヌがサハリンに残っていたら、彼らは彼らで自分の文化を盛り上げようとしてたと思うんです。アイヌのバンドが、ユジノサハリンスクのレコーディング・スタジオで、トンコリとか使って録音してたはず。「サハリン ロック」とか絶対歌ってたような気がするんだよね。「もしもサハリンに今でもアイヌがいたら、こんな音楽作ってる奴がひとりくらいいただろうな」なんて。ちょっと危険な音楽。
サハリンアイヌだけがサハリンから姿を消して、故郷を捨てた。
でも僕のスタンスはそれを恨んでどうこうじゃなく、むしろそれを受け入れて次に何ができるかってとこだと思ってる。そこはポジティヴだと思うし、みんなが僕の音楽を楽しみにしてくれてるのはそういうスタンスだと思うんですよ。押し付けないから。あくまで音楽っていうスタンスでやりたいのね。
- --- レコーディングにはいつもよりも時間をかけたんですか?
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かかったね。かなり磨き込んだし、かなり破壊したし。出来る限りのことはやった。 前作『OKI DUB AINU BAND』の録音はスタジオライヴだけど、今回はまた全然違う。参加メンバーはほぼ同じだけど「バンド」とかいいながらほとんど自分でやっちゃってるんですよ。
- --- バンド・サウンド的な勢いが凄くあるので驚きました。
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ちゃんと作ってるからね。今回は曲作りと自分でやれる楽器は全部やった。ベースは全曲、曲によってはギターやドラムもやってる。前作以上に主導権は自分に置いてます。自分で全部コントロールしたかったんで。あとは自分でできないものをメンバーにやってもらった。マルコス・スザーノもそうだね。スザーノはカンドンブレ[14]をやってくれた。
- --- スザーノとの出会いはどのようなものだったんですか。
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以前、スザーノが東京に遊びに来てる時にジャムセッションやったんだけど、その時に「You’re immediately invited!」て言われて。そうしたら本当にPERCPAN[15]に招待してくれて、去年の9月にブラジルに行って出演してきました。その時に録ったのが「TONKORI MONIMAHPO」(M-3)です。
PERCPANでは僕はアイアート・モレイラと対バンだったんですけど、ライヴ終わってから舞台の袖で小突かれて「なかなか良かったぞ」って言ってくれた!あと、ミルトン・ナシメントがお客さんとして来てた。 -
--- ミルトンがお客さん?!すごいですね・・・
OKI DUB AINU BANDとして、前作から4年のあいだにいろんな国に行かれてるんですよね。 -
そうだね。海外も、日本のフェスも出まくった。バンドマナーなんかも含めてワールド・スタンダードを試行錯誤しながら、ライヴ中心でどう成り立っていけるかっていうことに集中した4年間だったね。ワールドミュージックの人たちって凄い人だらけじゃないですか?彼らに負けないサウンドを作らないといけないし。
この4年間の経験は今回のアルバムにも反映されてると思います。今年はCDリリースがあるのでフェスは出ないけど、来年あたりまた。
- --- プライベートではどんな音楽を聴かれるんですか。
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レゲエ、ナイジェリア、アフリカ、ブラジル、南米、コロンビア、地中海・・・。でもいちばんよく聴くのはアフリカとジャマイカ、ブラジルかな。
- --- ワールドミュージック。幅広いですね。特に誰がお好きなんですか?
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僕ダニエラ・メルクリの大ファンなんですよ!共演はしたことないけど。素敵なお姉さん、最高っす(笑)。
ワールドミュージックって日本ではあまり話題にならないけど、ヨーロッパじゃ普通にヒットチャートに入っちゃうよね。アマドゥ&マリアムもパリで大ブレイクして今じゃVIPですよ。ライヴは凄く良かった。
ティナリウェンなんかもそうだけど、今、アフリカのアーティストをヨーロッパ人がプロデュースやサポートをするってのはスタンダードだよね。本人たちだけだと視点がルーツに行っちゃって、それもピュアでいいんだけどね。広く聴いてもらうために、間口を広げるためにフォーマットを変換するみたいな感じだね。 - --- ティナリウェンいいですね。去年のアルバム『Imidiwan』も良かったです。
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彼らからは何度も連絡をもらってて、共演の話も出てたのにまだ実現してないんだよね・・・。ぼそぼそ力なく歌うけどいいよね(笑)。ブルースって言われてるけどブルースでもないような、T・レックスみたいにも聴こえる。最初に出た青いジャケの(『Radio Tisdas Sessions』)がいちばんいいよ。彼ら自身もそれが一番好きだって言ってた。ジャスティン・アダムズがプロデュースした2作目『Amassakoul』はロックっぽい仕上がりで、それはそれでカッコよかった。去年のも良かったね。
- --- OKIさんと世界中の様々な国のアーティストの共演、今後ますます楽しみです。
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僕は海外のアーティストたちともどんどん繋がっていきたい。スザーノなんかもそうだけど、みんなエレキ使ったりして西洋音楽じゃん。だけどみんなちゃんと根っこ、ルーツを持ってて。それは僕も同じ立場で、ルーツをきちんと持ってるからこそ超凄い人たちと一緒にプレイ出来て、音楽で会話できる。まったくご先祖様に感謝な話なんですけど。心を引き締めて頑張っていくしかないですね。
僕の音楽は、アイヌだから、民族音楽だからこの程度でいいだろう、と色眼鏡つけて見られてしまうこともある。いつもそれは巧妙にはぐらかしてやってるんだけど・・・でも民族っていうのはあくまでエクスキューズ。そういう前提となる言葉を隠したとしても「いいね」と言われるようにきちんと音楽を作っていかないとな、と思っています。 - --- 本日は貴重なお話をたくさんありがとうございました。
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こちらこそありがとうございました。 でも、その「貴重な話」が「あたりまえ」になるといいよね。そのためにこういう活動をしているようなところもあるから。
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OKI DUB AINU BAND 新作
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- サハリン ロック
OKI DUB AINU BAND - 2010年07月14日発売
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OKI 最新プロデュース作品
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- マレウレウ
マレウレウ - 2010年07月14日発売

OKI:
アサンカラ(旭川)アイヌの血を引く、カラフト・アイヌの伝統弦楽器「トンコリ」の奏者。アイヌの伝統を軸足に斬新なサウンド作りで独自の音楽スタイルを切り拓き、知られざるアイヌ音楽の魅力を国内外に知らしめてきた稀有なミュージシャン/プロデューサー。
オキの演奏するトンコリは樺太アイヌに親しまれていた5弦の琴。いわゆる日本の琴との共通点は全くない。トンコリのルーツをたどるのであれば、それは中央アジア、さらに遡ると遠くアフリカの赤道直下「イトゥリの森」であるとオキは主張する。
五弦、つまり五つの音階しかないという意味においてトンコリは現代の、例えばピアノなどと比較すると明らかに劣勢に立たされる。ではトンコリに限界があるかといえばそうとも言い切れない。トンコリの伝統曲「ケント ハッカ トゥセ」はたった5つの音でピアノでは到底表現できない完璧なリズムとメロディを構築している。トンコリをメロディ楽器として認識してしまうと限界はあるが、リズム楽器としてとらえれば可能性は広がる。
オキはトンコリの限界と可能性の中で試行錯誤を繰り返し,これまで1995年に発表したアルバム「カムイ コル ヌプルペ」から2007年の「ダブ アイヌ バンド ライブ イン ジャパン」まで12作品を発表。2005年には伝統曲と正面から向き合い、トンコリだけで録音、制作されたアルバム、その名も「トンコリ」を発表、また、アイヌの天才的歌手・安東ウメ子の2枚のアルバムでは演奏とプロデュースを手がけ、現代に息づくアイヌ音楽として高い評価を受ける。
そしてここ数年オキが取り組んでいるプロジェクトの一つに「ダブ アイヌ バンド」がある。海外のフェスティバル出演の経験から、今日的なマナーであるドラムとベースを導入たダブアイヌバンドは、2005年以降アジア、アメリカ、ヨーロッパなど世界各地をツアーし、また世界最大規模のワールドミュージック・フェスとして知られるWOMADへの参戦(04年オーストラリア、06年イギリス、07年シンガポール)や、日本国内でも数多くの夏フェスに出演(FUJI ROCK、朝霧JAM、RISING SUN ROCK FES、渚音楽祭、SUNSET等)。2010年には待望のニューアルバムのリリースも予定されている。OKI DUB AINU BAND:
(以上全てオフィシャルサイトより)
カラフト・アイヌの伝統弦楽器『トンコリ』を現代に復活させたOKIが率いる日本 / 世界唯一のAINU ROOTSバンド。
いにしえの楽器トンコリを大胆にもオール電化し、ベースとドラムで強靭に補強したヘヴィなライブサウンド に、アイヌに歌い継がれるウポポ(歌) の伝承曲やリムセ(踊り)、アフログルーヴ、レゲエ、ロック等が入り混じった越境DUBサウンドで人気を集める。
これまで主に海外フェスでライブ実績を重ね熱狂的に迎えられたサウンドが、アルバム 『OKI DUB AINU BAND』 (06年)のリリースを機に日本上陸。今作 『サハリン ロック』 が4年ぶりの作品となる。
現在のメンバーはTonkori、Guitar、Vocalの“OKI”、Tonkori/Chorusと勇壮なリムセで脚光を浴びる北海道出身アイヌ“居壁 太”、説明不要の日本が誇るグルーヴメイカー Drums“沼澤 尚”とDry&Heavy,Little Tempo Flying Rhythms等でも活躍する”天下一品の働くラスタ”ことDUBエンジニア “内田直之”。
これまで世界最大規模のワールドミュージック・フェスとして知られるWOMADへの参戦 (04年オーストラリア、06年イギリス、07年シンガポール) をはじめアジア、アメリカ、ヨーロッパなど世界各地をツアーし、また日本国内でも数多くのフェスに出演 (FUJI ROCK、朝霧JAM、RISING SUN ROCK FES、渚音楽祭、SUNSET等)。2009年にはRISING SUN ROCK FES初日ヘッドライナーを努めた他、ブラジルで開催されたPERCPANに出演し喝采を浴びる。
2009年11月から2010 年2月までクラブクアトロマンスリー企画を実施。多種多様なゲスト陣(MO'SOME TONEBENDER,サカキマンゴー&リンバ・トレイン・サウンド・システム、OOIOO、OGRE YOU ASSHOLE)との競演も話題となる。
OKI (tonkori/vo/g/b/drs/key/mukkuri)
居壁太 (chorus)
沼澤尚 (drums)
内田直之 (engineer)



















