HMVインタビュー: Mathew Jonson
2010年6月9日 (水)
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先日Cobblestone Jazzとして新作を発表したばかりのカナダ人テクノ・プロデューサー、Mathew Jonson。自らのレーベルWagon Repairの運営、実の弟HrdvsionとのユニットであるMidnight Operatorとしての活動など多忙を極める彼が、なんとまた新たなアルバムを完成させた。キャリア10年目にして初のソロアルバムである。満を持して発表する『Agents of Time』について、彼の活動拠点であるベルリンで話を聞いた。
Interview: 浅沼優子
アルバム全体の印象は、僕のベルリンのスタジオの音や雰囲気が反映されていると思う。どこでプロデュースするかによって、僕の音楽は少し違った雰囲気になるんだ。
- --- あなたがItiswhatisisから最初の12インチを出してから10年が経とうとしています。ソロ・アルバムを出すのを今まで待ったのは何か理由があるんですか、それとももっと前から出そうと思っていたんですか?
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Mathew Jonson: 出そうと考えたことは何度もあったけれど、今までどうもしっくり来なかったんだ。シングルを出すことはとても楽しい。なぜなら、曲が出来上がったらすぐにDJやその他のリスナーに届けることが出来るから。時差なく周りの人たちに聴いてもらえるのは気分がいいもの。でもアルバムに関してはこのタイミングまで待って良かったと思う。今がまさに出すときだと確信しているよ。
- --- 先日Cobblestone Jazzの2枚目のアルバム、『The Modern Deep Left Quartet』を発表したばかりですし、複数のプロジェクトを同時進行していて忙しそうですが、どうやってこの作品を作り上げたんですか?制作にはいつから着手したんですか?
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Mathew Jonson: ああ、実際ものすごく忙しかった。スタジオでアルバムを作り上げ、その後プロモーションをしてツアーをするというのは本当に想像を超える大変さだ。でも楽しいし、これが僕のやりたいことだから、自分の中で時間のバランスさえ取れれば可能なんだ。アルバムに収録されている曲は過去2年間に作り溜めたトラックが中心で、「Marionette (the beginning)」だけが例外で8年前に作ったものだよ。制作はベルリンのスタジオで行った。テンポが遅めの曲は『ファウスト』という古い無声映画のサウンドトラックとして、Cobblestone Jazzのメンバー、Hrdvsionらと一緒に作った。だからかなり幅広い感情を表現した曲が盛り込まれているよ。
- --- どのようなアルバムを作ろうと考えていましたか?考えていた通りのものが出来上がりましたか、それとも当初の予定とは違うものになりましたか?
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Mathew Jonson: あまりこういうものを作ろうと先に考えなかったな。始めから終わりまで通して聴ける、何らかの一貫性があるいい流れがあるもの、ということ以外にコンセプトはなかった。アルバム全体の印象は、僕のベルリンのスタジオの音や雰囲気が反映されていると思う。どこでプロデュースするかによって、僕の音楽は少し違った雰囲気になるんだ。例えばヴァンクーヴァーやヴィクトリアは自然を感じるのに対して、ベルリンは工業的な都市という感じがする。僕自身は自然を感じる方が好きなんだけど、ヴァンクーヴァーからでは今のツアースケジュールがこなせないんだ。
- --- タイトルの『Agents of Time』もそうですが、サウンドもSF映画のサウンドトラックを思わせます。何かSF的なコンセプトがあったんですか?
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Mathew Jonson: 僕は未来について想いを巡らせることが好きだし、その点で実は日本が大きなインスピレーションになっている。僕は日本のテクノロジーと自然の共存の仕方がとても好きで、とてもバランスがとれているように感じるんだ。さっき触れたように、いくつかの曲は映画のために制作したものだから、実際に聴いてそう感じてもらえるなら嬉しいね。
- --- テクノは未来の音楽として作り出されました。あなたも(いまだに)共感しますか?あなたにとってテクノは未来の音楽でしょうか、それとも現在の音楽という感覚を持っていますか?
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Mathew Jonson: 僕にとってのテクノはどのアーティストが作ったものかによってだいぶ変わるね。例えばジェフ・ミルズは、常に宇宙や未来の音楽という感じがする。彼がずっと前に作った曲でさえも、未来的な音に聴こえる。でも、例えばダニエル・ベルのようなアーティストを聴くと、現在の音楽に聴こえる。僕は現在の立場から曲を作るけれど、そこで表現されているのは時間の存在しない世界なんだ。その世界の空間とエネルギーを表現しているつもり。
- --- あなたが5年前に発表した「Marionette」という曲を今回のアルバムに収録していますね。とても美しい曲ですが、なぜ改めてアルバムに入れようと思ったんですか?
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Mathew Jonson: アルバムに収録したのは、アナログでリリースしたものよりもさらに古いヴァージョンなんだ。これはいつかいいタイミングが来たときにリリースしようと思って、長い間手元に持っていた。それで今回、現在の自分とこれまでの自分を繋ぐ接点として、発表するに相応しいと感じた。この曲を作った当初は、曲単体で発表するには動きや展開が乏しいように感じたんだけど、今はリメイクしたバージョンよりも、このバージョンの方が気に入っているんだ。シンプルな曲だけど、こっちの方が僕がこの曲を作った際のエネルギーがこもっているような気がする。
- --- 特にテンポの遅い曲を楽しんで聴かせてもらいました。いわゆるフロア向けのテクノ(125-130BPM)よりもずっとゆっくりな曲が多かったですね。やはりアルバムだからこそこういう曲を入れる自由が感じられたのでしょうか。
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Mathew Jonson: ゆっくりな曲はずっと前から作り続けていたんだけど、あまりリリースされることがなかった。「The Girl From LBC」や「Twin Cobras」のような変わり種の曲がシングルのB面に収録されたことはあったけど、DJにプレイされないから忘れられがちだ。だから、アルバムを作るにあたり、この機会に僕が作ってきた遅めの曲を聴いてもらおうと思ったんだ。
- --- タイトル曲「Agents of Time」からはダブステップの影響も聴き取れますが、このスタイルには興味を持っていますか、あるいはインスパイアされるものがありますか?
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Mathew Jonson: ダブステップで踊ることは嫌いじゃないけど、自分の曲を作る上でインスピレーションにはならないな。でも、逆に90年代のドラムンベースやジャングルからはとてもインスパイアされるんだ。「Twin Cobra」のような曲を聴いて、僕がダブステップを作ろうとしていると勘違いする人がいるけど、そうじゃないんだよ。ダブステップを作ろうとしたことはないし、作りたいという興味もほとんどない。
- --- 実際の曲作りはどのように行っているんですか?先に曲のアイディアがあって、それを音にしていくのか、それとも試行錯誤を重ねるうちに曲が出来上がっていくんでしょうか?
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Mathew Jonson: ほとんどの曲は僕の頭の中で聴こえたものを、シーケンスして演奏するという流れで作ってる。でも、ときどきは例えばメロディやベースラインだけを思いついて、それを聴きいて音の中に入り込むことによって他のパートが思いつくということもある。また、何の制限もなくジャムをしているうちに何かを思いついて、それがかたちになっていく場合もあるね。
- --- では最後に、近々日本に来る予定があれば教えて下さい。
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Mathew Jonson: あるよ、7月と9月に日本に行く予定だ。7月は2日に札幌のPrecious Hallで、9日に名古屋のRadix、10日に東京のelevenでプレイするよ。9月には10周年を迎えるLabyrinthフェスティバルに、19日に出演することになってる。この際に3週間休みをとって日本国内を旅行するつもりなんだ。僕は日本が大好きだから、早く行きたいよ!
- 新譜Agents Of Time / Mathew Jonson
- ジャズとテクノの融合ユニット Cobblestone Jazzのメンバーとして、また世界のテクノ/クラブ・シーンをリードする先鋭レーベル Wagon Repairのオーナーとしてお馴染みのカナダ人プロデューサーが待望のソロ・アルバムを遂に完成! 実に10年近くものキャリアを持ちながら、意外にもソロとしては初となる今回のアルバムには、全10曲中4曲を新録、さらに2004年のヒット・シングル「Marionette」の未発表ヴァージョンも収録するなど新旧のファンにとって嬉しい内容に!

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- Agents Of Time
Mathew Jonson - 2010年6月発売
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