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【特稿】 アフロビート解放戦線

Tuesday, March 23rd 2010







 アフロビートの偉大な創始者にして、黒人解放運動家、“BLACK PRESIDENT (黒い大統領)”の呼び名で知られるフェラ・クティ。アフリカン・グルーヴ / アフロビート人気が高まる中、満を持して、その作品の数々が紙ジャケ国内盤仕様にてリリース決定。

 3/24にリリースされる第1弾は、初期の6タイトル。”音の匠” 菊地功氏(ワーナーミュージック・マスタリング)による24ビット・デジタル・リマスタリングが施され、また、1980年代から幾度もアフリカを訪れフェラ・クティと交流を深め、その生涯を綴った『武器なき祈り』の著者としてもおなじみの板垣真理子氏による日本語解説が付く。完全初回限定の紙ジャケ仕様。  



Koola Lobitos 64-68 / The '69 La Sessions    ナイジェリア70結成以前にフェラが在籍したバンド、クーラ・ロビトス1964〜1968年のレコーディング音源に、1969年米国ツアー中に行われたLAでのセッションを追加収録。アフロ・ビート確立以前の貴重な初期音源。
Live With Ginger Baker    クリームのドラマー、ジンジャー・ベイカーを迎えて行われてた1971年のセッション音源。トニー・アレンとのツイン・ドラムが冴え渡る歴史的傑作ライヴ盤。
London Scene / Shakara    アフロビート・ソルジャーとして音楽、そして政治的活動に邁進したフェラがアフロ・ビート確立後の1971年にリリースした『London Scene』、そして1972年の『Shakara』の2作を1枚のCDにカップリング。

Roforofo Fight+2 Singles    1972年発表の傑作アルバム『Roforofo Fight』に貴重なシングル音源を追加。既存のアフリカ音楽からの脱却、自らが推し進めるパンアフリカニズムをサウンドにぶつけたアフロビート確立後の凄まじいほどのグルーヴが詰まっている。
Open & Close / Afrodisiac    留学先のロンドンからナイジェリアに戻ったフェラ・クティが、いよいよアフロビートの黄金期を築き上げようとしていた1971年の名作『Open & Close』に、1973年の『Afrodisiac』をカップリング。
Confusion / Gentleman    ピアノ、そして印象的なベースラインとともに徐々にヒートアップしていく30分にも及ぶ長編作、1973年発表の『Confusion』、1973年の『Gentleman』の2作をカップリング。






フェラ・クティ フェラ・アニクラポ・クティ (Fela Anikulapo Kuti)

 1938年10月15日 - 1997年8月2日 / ナイジェリア出身。 トランペット、ピアノをはじめ多様な楽器、そして心の奥底から湧き出た魂の叫ぴを込めたヴォーカルを操ったアフロビートの創始者。政治的 / 音楽的パワーをぶつけた力強いりズムと強烈なサウンドで以後のアフリカの音楽シーンに多大なる影響を与えた伝説のミュージシャンにして、当局や軍隊すらをも恐れず精力的な活動を展開、「Black President (黒い大統領)」とさえも呼ぱれた黒人解放運動家としても知られるフェラ・クティ。

 今なおジゃンルを問わない世界中のミュージックマン、リスナーからも絶大な信頼を得るフェラ・クティの偉大な作品の数々が紙ジャケ仕様のライセンス国内盤で一挙リリース決定。フェラ・クティ、アフリカン・グルーヴ / アフロビート、そしてアフリカ文化への注目、関心はさらに高まること必至。2010年、母なる大地アフリカはさらにアツく燃え上がる!


www.felaproject.net
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何故いまフェラ・クティ? アフリカ?


4年に一度のサッカーの祭典、FIFAワールドカップが2010年に南アフリカで開催。テレビや雑誌メディアもこぞって開催国、そしてアフリカを特集予定。もちろん、音楽もフックアップされアフリカン・グルーヴ、アフロビートを耳にする機会が急増。その原点ともいえるのがフェラ・クティなんです。
http://www.fifa.com/worldcup/



ソウル、ファンク、ジャズ、ヒップホップを中心に貴重な写真やインタビューなど満載、内容充実でコアなファンをも唸らせる全ブラック・ミュージック・ファンの教科書、Wax Poeticsが2010年一発目の発売号(海外版)でフェラ・クティを特集。いずれ日本版での特集もあるかも?
※ 2010年3月現在、HMV ONLINEでのWaxpoetics海外版のお取扱はございません。
http://www.waxpoetics.com/



トニー賞受賞のビル・T・ジョーンズが監督・振付を手掛けた偉大なフェラ・クティの生涯を、アフロビートとダンスで表現したミュージカル。NYのオフブロードウェイで公演されていた『FELA!』が、JAY-Z、そしてウィル・スミス夫妻の全面バックアップを受けブロードウェイ公開中。ビヨンセ、アリシア・キーズ、ルー・リード、フィオナ・アップルなど大物 / セレブも大絶賛し話題騒然。ここ日本への招致・公演の動きもあるとか。
FELA! The Most Original New Musical On Broadway




商品ページへSTONES THROW傘下のEgon主宰NOW AGAINから、フェラ・クティ・トリビュートのネクスト・スタンダード盤『Black Man's Cry: The Inspiration Of Fela Kuti』がリリース。ダクタリス、ホワイトフィールド・ブラザーズ、カール・ヘクターといった現行ディープ・ファンク/アフロ・バンドによる名曲のリメイク、またはインスパイア曲、さらにはナイジェリア、ガーナ、そしてトリニダード産のレア&未発表の本邦初公開お宝音源などを厳選収録したキラー・コンピ。


商品ページへ1982年に仏映画監督ステファーヌ・チェルガジェフと音楽監督を務めたジャン・ジャック・フローリによって制作された『Misic is The Weapon』は、同年ナイジェリア南西部の港町ロゴスで撮影された、フェラの人生とアフリカン・ミュージックの歴史が収められたドキュメンタリー・フィルム。フェラのコミュニティ「Kalukuta Republic」や、ナイトクラブ「Shrine」の映像を交えながら、フェラは政治、汎アフリカ主義、音楽、宗教について語る。未発表映像「ITT」、「Amy Arrangement」、「Power Show」、「Authority Staling」を収録。







 フェラ・クティの紙ジャケ・リリースに限らず、ここ最近、再びアフリカン・ミュージックの再発が活発化しているようです。ロンドンのSOUNDWAY、ドイツのANALOG AFRICAといったヨーロッパの2大再発専門レーベルを中心に、スペインのVAMPISOUL、フランスのBUDA MUSIQUE、ORIKI MUSIC、ロンドンのHONEST JONS、RETRO AFRICなども加わり、まだまだ陽の目を見ずにいるアフリカン・グルーヴの発掘作業は、この1〜2年でさらに加速度を増してきている、そんな印象を抱く”値千金”のリイシュー・ラッシュが昨年から続いています。

 特にアフロビート・ファンにとって決定的だったのは、 2009年9月のパックス・ニコラス&ネッティ・ファミリー、そして、11月のムラトゥ・アスタトゥケオルケストル・ポリリズモ・ド・コトヌタラ・アンドレ・マリー、それら4タイトルのリリースだったのではないでしょうか。中でも、新旧ディープ・ファンク系のカタログに定評のあるイギリスDAPTONEによる、フェラ・クティ&アフリカ70の屋台骨を支えた伝説のパーカッショニスト&シンガー、パックス・ニコラスの世界初CD化は、全世界のアフロビート・マニアにとって「ビートルズ・リマスター以上の大偉業!」と言わしめた大仕事として、これ以上ないインパクトを残しました。また、そうしたヴィンテージ・リイシューと並行して、トニー・アレンムラトゥ・アスタトゥケといったアフリカン・ミュージックの”生き字引”の興味深い新録アルバムも各シーンで話題を呼んでいます。フェラ・クティ・バンドのドラマーとして長年活躍し、現在も精力的な作品リリースを続けるトニー、エチオピアン・ファンクの始祖ムラトゥ共に、自身のリーダー作『Secret Agent』『Mulatu Steps Ahead』の発表に加えて、フィンランドの鬼才ジミ・テナーと、マルコム・カットー率いるエクスペリメンタル・ファンク・バンド、ヘリオセントリックスと、それぞれ『Inspiration Information』というコラボ企画シリーズでいい湯加減の共演を果たしています。

 だだっ広いアフリカ大陸。東西南北に中部、さらにはインド洋諸島において、多様なスタイルを持つアフリカ音楽を、十把一絡に扱うのは当然困難を極め、様々な誤解を生みそうな懸念もありますが、こちらのページでは、(アフリカン・ポップス然とした作品は割愛させていただき)ざっくりとアフロ・ビート〜アフロ・ファンク/ソウル系のサウンドを身上とするアーティスト、そこから派生した諸外国の新旧アフロ〜アフロ・ロック・バンド、さらには、ジャズ、レゲエ、クラブ・ミュージックなどと融合しながらもアフリカ慕情に溢れる作品や、ポスト・アフリカ的アプローチを聴かせるものまでを可能なかぎりご紹介。つまりは、フェラの紙ジャケはもちろん、この半年の間にリリースされた下掲10枚のアルバムにピンときたら是非芋づる式に聴いていただきたい、という作品をかなりの力技で集中掲載しています。  



Mulatu Steps Ahead    純粋なリーダー作品としては実に約20年ぶりとなる最新アルバム。60〜70年代の代表作「I Faram Gami I Faram」、「Boogaloo」を現代版に昇華させたセルフ・リメイク楽曲も収録。ちなみにソウルフラワーユニオン、中川氏も魂花神社でヘヴィ・ローテションなう。
 

『Timeless』コンサートがDVD化
 『Keepintime』、『Brasilintime』などジャンル・世代を超えたアーティストの繋がりを掘り下げた映像作品を発表してきた映像作家B+とエリック・コールマンによる“Mochilla”。彼らが2009年にLAで主催したコンサート「TIMELESS」がDVDで登場。ムラトゥのステージに加え、ビルド・アン・アークカルロス・ニーニョらを中心としたオーケストラによるJ Dilla 追悼ライヴ、そして、Ubiquity傘下Luv N Haightからの再発で一躍脚光を浴びたブラジルの伝説的コンポーザー=アーサー・ヴェロカイ。いまや伝説として語り次がれる3つの奇跡的コンサート映像を収録。



Anthology: The UFO Has Landed    16歳の時に移り住んだ60年代ロンドン留学時代のレコーディング音源をはじめ、バークリー音楽院を経て活動の拠点としたニューヨーク在住時代に吹き込んだWorthyレーベル音源、さらには70年代にアディスに戻ってからAmha、Phillips、Axumなどに残した歴史的にも重要な音源の中から選りすぐった全21曲。
 

哀愁度満点のエチオピア歌謡
 アラブ文化が交わるエチオピアの音階は、アフリカ音楽の中でも群を抜いて個性的。中近東的なメロディが妖しく絡む楽曲は、歌モノになると、ほぼ演歌かムード歌謡に近い薫りを匂い立たせます。マハムード・アハメッドトラフン・ゲセセアレマイユ・エシェテなど名歌手も多く存在。「エチオピアのJB」だろうが、「アディスアベバのエルヴィス」だろうが、ボクら日本人からすると、どう聴いても「エチオピアの宮史郎」、あるいは「アディスアベバのバーブ佐竹」。この手の昭和歌謡ファンも心奪われること必至です。 「Ethiopiques」シリーズはこちら



Anthology: The UFO Has Landed    トニー・アレンと、マルチに楽器を操り唯一無二なサウンドでリスナーを翻弄し続けるヘルシンキの鬼才ジミ・テナーとのサイケデリック・アフロビート・ジョイント。
 

『Inspiration Information』シリーズ
 2008年にスタートした、英Strutレーベルによる「レジェンド×ニュージェネ」のコラボレーション・シリーズ。記念すべき第1弾は、世界最強リディム・ツイン、スライ&ロビーとデトロイト出身のキーボーディスト/ヴォーカリスト、アンプ・フィドラー第2弾は、レゲエ・レジェンズ・シンガー、ホレス・アンディとX-Press 2のメンバーとして知られるアシュリー・ビードル第3弾は、本ページでも紹介しているムラトゥ・アスタトゥケヘリオセントリック、そして、左掲の第4弾に続きます。



Echos Hypnotiques 2    オルケストル・ポリリトゥモ・ド・コトヌのレア音源セレクションの第2集。ベニン最大のレーベルであったAlbarika Store(アルバリカ・ストア)の音源を中心に収録。JB、フェラ・クティからの影響濃いものはモチのロンで、本領はラテンから、コンゴ(ザイール)音楽、サイケ/ガレージ・パンクに至るまでの混沌とした色彩のエッセンス。Analog Africa主宰サミー・ベン・レジェブによるパッケージングは今回も◎! ヴォリューム満点のブックレットには貴重な写真が満載。
 

独・新興ア再発レーベル=ANALOG AFRICA
 オルケストル・ポリリトゥモ・ド・コトヌの再発を中心にアフリカン・ファンクの秘宝を掘り出し続ける、ドイツはフランクフルト在住のアフリカ音楽マニア、サミー・ベン・レジェブが2004年にスタートさせた新興アフリカ専門再発レーベル、ANALOG AFRICA。イギリスのSOUNDWAYと並び、アフリカ音楽ファンから信頼される数少ない専門レーベルのひとつと言えるでしょう。ちなみに再発第1弾は、グリーン・アロウズ、第2弾は、ハレルヤ・チキン・ラン・バンドのコレクション。貴重な写真やライナーがたっぷり掲載された豪華ブックレット付属も人気の理由。



Move In The Right Direction    ナイジェリアのサイケデリック・アフロ・ファンク・ユニット、SJOB ムーヴメントの激レア音源。オリジナル盤は、ナイジェリアEMIから1970年にリリースされた、一部の好事家以外はほとんど目にすることができなかったブツ。ヘヴィーなビートに、ファンキーなギターのカッティング、鋭く切れ込むキーボード、狂ったようにシャウトしまくるヴォーカルなどなど、この時期のナイジェリアの混沌を象徴するかのようなトラックが並ぶ。
 

アフリカのサイケデリック・ロック その1
 70年代前半のサイケデリック・ロック・ムーヴメントは、アフリカ諸国にも例外なく押し寄せました。ザンビアのウィッチアマナズ、ケニヤのクエスチョン・マークなど、CD化されても少数プレスのためにあっという間に市場から姿を消す、SHADOKSレーベルからのリイシューは特に人気。その他のレーベルからも、アブストラクト・トゥルース、ピース、オフェジクリッシー・ゼビー・テンボ&ンゴジ・ファミリーといった、ファズ満載のアフロ・サイケデリア盤が多く世に出回っています。



Blood Brothers    73年にカナダのアフロ系名門レーベル「アフロディジア」からリリースされるも、こちらも一部のディガー以外はほとんど目にすることができずにいた超稀少盤。「Son Of Mr Bulldog」をはじめ多彩なホーン・セクション、静と動を使い分けるヴォーカル・ワークなど、サイケデリックな世界観と爆発するようなファンクネスが炸裂。その一方で精緻に組み立てられた楽曲の素晴らしさからは、ファンクネスの対極にある冷静さと独特の知性が感じられる。
 

アフリカのサイケデリック・ロック その2
 1948年から半世紀近くに渡り、世界中から「人類への犯罪」と非難された人種隔離政策(アパルトヘイト)を法制化した南アフリカ共和国(ミリアム・マケバレディスミス・ブラック・マンバーゾらの出身地)では、白人アクトによるブリティッシュ・ロックの影響下にあるサイケ・シーンが70年代前半に興隆期を迎えました。現在、フリーダムズ・チルドレンマコーリー・ワークショップカナミィホークといったプログレ〜シンフォニック・ロック志向の幻の逸品が続々CD化されております。



Bend Skin Beats    カメルーンが生んだ盲目のファンキー大統領、タラ・アンドレ・マリーの本人選曲によるベスト盤。72年の1stアルバムのタイトル・トラック「Koki」は、あのジェイムス・ブラウンに「Hustle」としてカヴァーされ一躍国内外で注目を浴びた。80年代になると「Tchamassi(チャマッシ)」という独自のリズムを開発。さらにそれを進化させ、タイトルにある「Bend Skin」というジャンルを確立し、現在も不動の人気を誇っている。
 

カメルーンといえば・・・
 「不屈のライオン」でおなじみのサッカー王国として名を馳せるカメルーン。音楽シーンにおいての有名人は、やはりサックス奏者のマヌ・ディバンゴをおいて他にはいないでしょう。とはいえ、このマヌ、地元密着型がほとんどだった70年代当時のアフリカン・ミュージシャンとは正反対。早くからパリに渡り西欧市場に向けてファンキーなダンス・ジャズ〜ラテン・ジャズ系作品を連発していた、ある種のアウトロー。代表曲「Soul Makossa」は、1973年、折からのディスコ・ブームにも乗り世界中を駆け抜けました。 70を過ぎた今もバリバリの現役!



Nigeria Afrobeat Special: New Explosive    アフロビートの聖地ナイジェリアのディープ・ディグ釣果の最新報告盤。フェラ・クティ『London Scene』収録の「Who're You」の完全未再発となるオリジナル・ヴァージョンをはじめ、信頼と実績のSOUNDWAYレーベルならではの充実のラインナップ。LPは3枚組仕様でCDより5曲収録曲が多いので要注意です。
 

アフリカ再発市場を牽引する英SOUNDWAY
 アフリカのみならず中南米モノの再発にも定評があり、世界最強のディープ・ディギン&編纂ぶりを見せつけるロンドンの再発専門レーベル、SOUNDWAY。主宰は、世界有数のアフロビート・コレクターとして著名なマイルス・クラレット。60〜80年代ガーナのモダン・ハイライフ〜ガーナ・ブルース集『Ghana Special: Modern Highlife Afro-sounds』、激レア・ヴィンテージのパナマ・ラテン選第3弾『Panama! 3』、60〜70年代のフレンチ・カリビアンをチョイスした『Tumbele!』もお忘れなく。



Nigeria Special 2: Modern Highlife 1970-6    こちらもSOUNDWAYの最新釣果となる、エレクトリック・モダン・ハイライフ、アフロ・ブルースを中心にセレクトした『Nigeria Special』の第2弾。アフロビート形成〜熟成とほぼ同時期となる1970〜76年の音源だけあって、ファンク、ルンバ・ロック、サイケなどのモダンなエッセンスがあちこちに見え隠れしている。
 

その他の「ハイライフ」 コンピレーション
 1920年代の発祥以降、60年代半ばに「ルンバ・コンゴレーズ」が登場するまで、ハイライフは、ガーナ、ナイジェリアを中心に西アフリカのポピュラー音楽シーンで絶大な影響力を持っており、その後確立されるアフロビートの礎ともなりました。そんなハイライフの真髄を知る上で絶好なコンピをいくつか。先ず入門編としては『Kings Of Highlife』『Rough Guide To Highlife』『Ghana -Highlife And Other Popular〜』が比較的入手しやすくオススメ。70年代のより混沌としたハイライフに耽溺されたい方は『Nigeria Special』や、『Ghana Special』をどうぞ。



Lagos Disco Inferno    70〜80年代のナイジェリアに、知られざる音源産物として残されたディスコ&ブギー・サウンドの珍品を、DJ フランコ aka ソウルパッシャーとして活躍するフランク・ゴスナー氏が入魂セレクト。氏のブログには、本作リリースにおける活動の模様が写真付で掲載されており、そこにはどう見てもゴミの山にしか写らない7インチの巣窟に向かい、ガスマスクを付けて掘る氏の姿が映し出されている!まさにディガー生命をかけた究極のセレクト。
 

ナイジェリアの中心都市ラゴス
 音楽・ファッション・映画などアフリカ有数の大衆文化の中心地であるラゴス(レゴス)は、同じく同国最大の港湾都市でもあります。アメリカからソウル、ファンク、ディスコなどのレコードが大量に輸入され、現地のナイトクラブやディスコでは夜毎、JBクール&ザ・ギャングオハイオ・プレイヤーズらの曲がかかっていたそうです。すなわち、アフロビート然り、ジュジュ然り、米国産のソウル、ロック、ラテン、ジャズなど様々なジャンルの音楽と交配した独自のクロスオーヴァー・アフリカン・ミュージックを生み出す格好の土壌でもあったわけなのです。




     
     








トニー・アレン
 「アフリカン・ファンク」、または、「アフロ・ファンク」と聞いて誰もが思い浮かべるのが、やはり帝王フェラ・クティのあの勇姿であり、ジェイムス・ブラウンをはじめとするアメリカのソウル、ファンクの要素を色濃く反映したあの延々と続く反復性の強いビートとフレーズであることは大方の意見の一致をみるところでしょう。1969年のアメリカ・ツアーからナイジェリアに帰国したフェラが、自身のバンドを「フェラ&ナイジェリア70」、「フェラ&アフリカ70」と名乗り、それまでのハイライフ・ジャズを進化させた形で独自のアフリカン・ファンクである「アフロビート」を確立したのが1970年。「Black President」の名を欲しいままにしたフェラの快進撃はここから始まることとなります。そして、フェラのバンドの音楽監督を務め、ドラマーとしてもアフロビートの骨格を形成する強靭且つ柔軟なビートを叩き出していたのがご存知トニー・アレン。音楽一家であった父親の影響で幼い頃から様々な楽器に興味を持つも、アート・ブレイキーフィリー・ジョー・ジョーンズマックス・ローチらアメリカのモダン・ジャズ・ドラマーのレコードをラジオで耳にし、ドラマーになることを決意。地元ナイジェリア、ラゴスのローカル・バンドでドラマーとして活躍した後、1964年にラジオDJとしてジャズ・レコードをかけていたフェラと出会い意気投合。クーラ・ロビトスという名でフェラとバンドを組んだ当初は、ナイジェリアの隣国ガーナで発展した民族音楽とジャズを組み合わせた先述のハイライフ(・ジャズ)やストレート・アヘッドなモダン・ジャズを主にプレイしていました。この当時の音源は、『Lagos Baby 1963-1969』『Koola Lobitos 64-68 / The '69 La Sessions』で聴くことができます。その後のアメリカ・ツアーでのジェイムス・ブラウン及びJB'sとの交流により「アフロ・ビート」が確立されたというのは通説ですが、むしろ、JBからの精神面におけるインスパイア(さらには、ブラック・パンサー党員たちとの交流による黒人解放、パン・アフリカニズム思想への傾倒)はあったものの、ドラム・スタイルやリズム・パターンにおいてはすでに「オレだけのビートを生み出していた」と後のインタビューでトニー本人も語っており、また、JBとバンドの面々が、1970年のナイジェリア・ツアーで訪れた、現地のとあるクラブで目にしたトニーの壮絶なドラミングに皆度肝を抜かれた(特にクライド・スタブルフィールドブーツィー・コリンズが!)という逸話も付け加えています。欧米的なファンクというよりは、モダン・ジャズ的とも言える複合的なリズムのアクセントをクールに重ね合わせるスタイルで、直線的なものになりがちなアフロビート・サウンドに深みや奥行きを与える重要なファクターとして、フェラ・クティ・サウンドの肝要を担っていたことは間違いありません。

 1960年のナイジェリア独立以降、長きに渡って繰り返された軍事クーデター、内戦、政治腐敗によって、アフロビートを楯に「闘争」を余儀なくされたフェラとトニーですが、ことさらトニーにおいては攻撃型のファンクでアジテーションするというよりは、技巧的にも精神的にも革新性に長けていた当時のモダン・ジャズのエッセンスを、新しいアフリカン・ミュージック=アフロビートの核に据えて、世界に飛び出すことを目論んでいたのではないでしょうか。そんなクレバーなブレインによって、フェラの快進撃は1979年まで支えられていました。1979年にアフリカ70を脱退し、ソロ・アルバム2枚を残した後、活動の拠点をヨーロッパに移し、現在に至るまでに、ロイ・エアーズデーモン・アルバーン(ex-ブラー)ワレイカ・ヒル・サウンズシャルロット・ゲンズブールなど多岐にわたるアーティストたちとの共演を行っています。




オルケストル・ポリリトゥモ・ド・コトヌ(1976年頃)
 そんなナイジェリアとガーナに挟まれた形で南北に細長く位置する小国ベナン(英語表記はベニン)は、1960年までフランスの植民地であったことから、公用語はフランス語が主に使用され、音楽シーンにおいては、隣国ガーナのハイライフ、ナイジェリアのアフロ・ビート、さらにはフランスのキャバレー・ミュージック(ナイトクラブのショー音楽)、同じフランス語圏のコンゴのアフリカン・ルンバ、そしてもちろん、欧米のソウル、ファンクなどとが結び付いて、ナイジェリアのシーン以上にモダンで急進的な変化を遂げていったと言われています。今では世界的なシンガーとなったアンジェリーク・キジョーの出身国として有名なベナンですが、70年代の同地には国民的な人気を誇り、何百枚ものLP、7インチを発表していたモンスター・グループが存在していました。首都コトヌの名を冠した大所帯バンド、オルケストル・ポリリトゥモ・ド・コトヌ(T.P.オルケストル・ポリリトゥモ)です。1966年の結成当初は3人でスタートしたバンドですが、ナイトクラブで定期的に演奏を重ねるうちにメンバーも増員。70年代中頃には、16名のオーケストラを編成するまでになりました。ベナンがナイジェリア最大の都市ラゴスに程近いところに位置するという地理的メリットから、彼らは西アフリカ隋一のレコーディング・スタジオ/機材を不自由なく使うことができ、ラゴスのEMIスタジオで大量のEP盤を制作・発表することができました。このことがベナンの音楽シーンを飛躍的に発展させた最大要素と言っても大袈裟ではないでしょう。同時代に活躍していたフェラ・クティなどのナイジェリア産アフロ・ビートと較べると、ポリリトゥモの音楽性は先述したとおり、よりごった煮感が強く、リズム・パターンやそのスタイルにおいてもかなりバラエティに富んでいるという印象を強く受けることでしょう。ヴォドゥン(ヴードゥー教)発祥の地としても知られるベナンには、このヴォドゥンの伝統から派生した土着リズムとして、「サト」と「サクパト」という太鼓による激しいリズムが存在しており、死者や神を祀る儀式で演奏されてきています。こうしたアフリカ固有の文化が今も色濃く残る一方で培われた、英語圏文化、フランス語圏文化が折衷された独自のサウンドには、同じく過去欧州統治下にあったキューバやジャマイカの音楽が持つ独自のバイタリティやアクの強さなどとの共通項を見出すこともできそうです。




ムラトゥ・アスタトゥケ
 アディスアベバを首都とするエチオピア連邦民主共和国は、アフリカ北東部に位置する、サハラ以南ではナイジェリアに次いで人口の多い国であり、アラブ系、非アラブ系の黒人など、80以上の異なった民族集団が、異なる言語・文化・伝統などを維持しながら共存する多民族国家となります。旧称の「アビシニア」はアラビア語で「混血」を意味するとおり、音楽においてもアラブ文化をはじめとする多様な文化が混ざり合う独特な旋律を聴くことができます。実際、ムラトゥ・アスタトゥケの楽曲を耳にすると、ほんのりと漂うオリエンタルな、さらに言うと、昭和歌謡が持つ卑猥で場末的なムードにも似た雰囲気に掴心されることもしばしば・・・・。「エチオ・ジャズ」の始祖として近年再評価の機運が高まるムラトゥは、フェラ・クティ同様、60年代に音楽留学でロンドン、ニューヨーク、ボストンを訪れ(バークリー音楽院初のアフリカ人学生となったそうです)、アメリカ人ジャズ・ミュージシャンで同じヴァイヴ奏者でもあるデイヴ・パイクとの交流や、そこで目の当たりにしたジャズ、ソウル、ロック、ラテンの要素をエチオピアの音楽にしっかりと投影させていきます。1971年にエチオピア公演のために同地を訪れたデューク・エリントン楽団と共演を果たし、精力的に活動を続ける現在もベニー・モーピンフィル・ラネリンといった米国ジャズ・ミュージシャンらと積極的にステージ共演を行っています。プロデューサー、コンポーザーとしても数多くの楽曲を手掛けたムラトゥですが、リーダー作品となると途端に枚数が少なくなります。ジャマイカのラスタファリ思想に大きな影響を与えたエチオピア帝国最後の皇帝ハイレ・セラシエ1世が失脚する1974年までにエチオピア音楽は黄金期を迎えましたが、それ以降の軍事政権下においては、西洋音楽を締め出す規制を強め、78年にはレコード生産が禁止(カセットが主)され、自国の伝統音楽の再評価を進める動きが出てきました。こうした史実も、当時、欧州・欧米の音楽に魅せられていたにも関わらず極端にリーダー作品が少ないということやそのCD化の遅れと無縁ではないのでは、と考えることができます。オルケストル・ポリリトゥモ・ド・コトヌの諸作品同様、これからの発掘→CD化の動きに大きな期待を寄せたいものですが・・・いやいや何より、新録アルバム『Mulatu Steps Ahead』が素晴らしすぎます。





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Secret Agent    WORLD CIRCUITレーベル移籍第1弾品。近年、クラブ・サウンドに接近した活動が続いていただけに、この生々しいグルーヴにはあらためてハッとさせられる。
Lagos No Shaking    現地ラゴスでのオールナイト・セッションの模様をレコーディングし、ベーシック・チャンネルのモーリッツ・フォン・オズワルドがミックスした2006年盤。
Lagos Shake    カール・クレイグ、ディプロ、ワレイカ・ヒル・サウンズらによるリミックス(&ダブ)音源を纏めたアルバム。

Home Cooking    ブラーのデーモン・アルバーン、UK地下ヒップホップの雄BIG DADAのMC、TYが参加するなど、次世代ミュージシャンとの積極的な交流が生んだ2003年盤。 。
Psycho On Da Bus    1999年の『Black Voices』をプロデュースしたパリ在住のヒップホップ・アーティスト、ドクター・Lが2001年に仕掛けたトニー・アレン・プロジェクト。
Exclusively Tony (Tony Allen Works) -Compiled By Kaoru Inoue    トニー・アレンの最近ワークを、CHARI CHARIこと井上薫氏が監修・選曲したベスト盤。

Afro Disco Beat    VAMPISOUL発の2枚組ベスト。『Jealousy』から『No Discrimination』まで、初期4枚のオリジナル・アルバム収録曲を全て網羅。
Jealousy / Progress    フェラを含めたアフリカ70全面バックアップのソロ1st『Jealousy』と、2nd『Progress』をカップリング収録した、1999年のPヴァイン・リイシュー盤。
No Accomodation For Lagos / No Discrimination    アフリカ70参加のソロ3rdと、同グループ脱退直後に制作された4thアルバムのカップリング盤。前2作に比べ、楽曲アレンジなど随所で大きな音楽的前進が見られる意欲作。

The Good The Bad And The Queen    ブラーのデーモン・アルバーン主導の新プロジェクト。元クラッシュのポール・シムノン(b)、元ヴァーヴのサイモン・トング(g)に、トニー・アレンという布陣。
Allenko Brotherhood Ensemble    フランスのアフロ推奨レーベルCOMETから2001年にリリースされた、トニー・アレンのドラムビート・サンプリング・プロジェクトによる企画盤。ヒップホップ、ブレイク、ダブ好きに特にオススメ。
Afro Beats    同じくCOMETのトニー・アレン・ワークス。おなじみのソロ曲や別働プロジェクト曲から、オフ・ワールド・アンサンブルへの参加曲などバラエティに富んだ選曲。



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Vodoun Effect: Funk & Sato From Benins Obscure Labels 1973-1975    70年代のベナンを代表する怪物バンド、オルケストル・ポリリトゥモ・ド・コトヌの1972〜75年にかけての作品集。ファンク、ソウル、サイケ・グルーヴ、ラテン等を雑多に煮込んだ闇鍋的グルーヴは、西アフリカ随一。
Kings Of Benin: Urban Groove 1972-80    残念ながらCD(SOUNDWAY盤)は廃盤につきLPのみの取り扱いになってしまうのですが・・・T.P.オルケストル名義での1972年から80年までの素晴らしくグルーヴィな作品集。「Kokoriko」のアンサンブルにタジタジ。
Reminiscin' In Tempo: African Dancefloor Classis    グループのラテン・サイドに焦点を当てたようなアフリカン・ルンバ、アフロ・キューバン、スークース(70年代に英米のジャーナリズムが呼称していた所謂リンガラ音楽。現地では主にルンバを指す)楽曲で占められた編集盤。

African Scream Contest    60年代末頃〜70年代初頭にかけてベニン、トーゴに人知れず残されたマニアックなアフロ・サイケ音源を集めた、ANALOG AFRICAからリリースの名コンピ。ポリリトゥモ楽曲を2曲収録。
Legends Of Benin    こちらもANALOG AFRICAから。1969〜81年の間に、ベナン(ベニン)の首都コトヌの伝説的な4人の作曲家によって録音された楽曲を厳選。「サト」や「サクパタ」といった土着リズムとロックやファンクが結び付いた、テンションの高い演奏が目白押し。ポリリトゥモ楽曲は2曲収録。
 



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Inspiration Information 3  Mulatu Astatke / Heliocentrics    ”レジェンズ×ニュー・ジェネレーション”のコラボ・シリーズ「Inspiration Information」の第3弾。実際に両者がスタジオに5日間こもり、レコーディング〜セッション終了から3ヶ月以内にリリース・・・という本シリーズのコンセプトに従って制作された。
Mulatu Of Ethiopia    ヒップホップ大ネタ「Kasalefkut-Hulu」を収録していることでも知られる、1972年にN.Y.のカルト・レーベル、WORTHYから極少量プレスでリリースされた本丸盤。エチオピア・ジャズ・ファンク・マスターのキャリア金字塔。
Afro Latin Soul    自身のエチオピアン・クインテットを率いて、1966年に録音されたラテン、ラテン・ラウンジ色の濃い1枚。独特のエキゾティシズムに酔う「I Faram Gami I Faram」を収録。

Ethio Jazz    フランスの再発名門L'AROMEからリリースされた、60年代後期〜70年代前半までの音源を纏めたLP。同郷のサックス奏者、フェカデ・アムデ・マスカルを迎え、ムラトゥは、おなじみのヴァイブに替わり、フェンダー・ローズやオルガンなど鍵盤全般をプレイしている。
Ethio Jazz -Ethiopiques 4    フランスのBUDA MUSIQUE発「エチオピアン・グルーヴ・クラシックス名音源集」の第4弾は、1969〜74年におけるムラトゥのベスト+レア音源集。
Psych Funk 101    トルコ、イラン、ギリシャ、エジプト、エチオピア、ナイジェリア、韓国、ロシア・・・様々な国に遺された60年代後期〜70年代のサイケ・ファンクをかき集めたコンピ。ムラトゥ楽曲は「Alemiye」が収録されている。


     
     

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