Vol.1 HIBIYA COTTAGEをつくる人々

  • ◆プロフィール◆
    1979年東京都生まれ。日本大学芸術学部卒。 2003年ヴィレッジヴァンガードコーポレーション (株)入社。東京、神奈川、宇都宮、京都で「ヴィレッジヴァンガード」の店⻑を務めるほか、新業態の 立ち上げや新店の書籍MDなども手掛ける。
  • 2015年(株)CCCデザインカンパニーに入社、「二子玉川 蔦屋家電」にてブックコンシェルジュを務める。2016年、東京・日暮里の個人書店「パン屋の本屋」に転職、店⻑を務める。同じく2016年、架空の本屋を20人以上の書店員が執筆する「まだまだ知らない 夢の本屋ガイド」を企画・編集し、朝日出版社より刊行(北田博充・綾女欣伸との共編著)。2018年1月より、(株)ローソンHMVエンタテイメントに入社し、HMV&BOOKS HIBIYA COTTAGE店長に就任。また、実体験を綴った私小説『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』を2018年4月に河出書房新社より刊行予定。

多様で、軽やかで、寛容で、 今の時代をいきいきと駆けるための 女性向けの新しい本屋をつくりたい

新しく生まれ変わる日比谷の街に、女性に向けた新しい本屋「HIBIYA COTTAGE」がオープン。女性向けというだけあって、多くの女性たちが「HIBIYA COTTAGE」を魅力的な本屋にすべく力を注いでいます。ここでは「HIBIYA COTTAGEをつくる人々」と題して、彼女たちがこの本屋に込めた思いをシリーズで紹介していきます。 その第1回目は、店長・花田菜々子の思いをお届けします。


―― 「HIBIYA COTTAGE」という店名の由来を教えてください。

花田:女性が忙しい日々の中でくつろぎ、休むことのできる都会の中の小さな別荘、という意味を込めてつけました。コテージというのは、もともとは「山小屋」という意味なんです。高級な別荘というよりは居心地のいい「自然の中の小屋」のイメージですね。
そこで物思いにふけってもいいし、何も考えずにのんびりしてもいいし、自分の好きな本や音楽・演劇といった趣味の世界に没頭してテンションを上げまくってもいい。立ち寄った後には、心が軽くなっていたり、元気が出たり、また頑張ろうと思える、そういう場所を目指したいと思っています。


―― 「女性のための」本屋と謳っているのはなぜでしょうか?

花田:もともと日比谷は、映画や舞台など文化の発信地であり、女性と親和性の高いエリアです。ミッドタウンのオープンでますます活気づく日比谷で、新しい本屋の形を考えた時に「女性のための」というキーワードが生まれました。 女性にとって、幸せとは、誰かに植え付けられた共通の基準をクリアすることではなくて、「何が幸せか」という価値観は人それぞれです。仕事を頑張ってたくさんお金を稼ぎたい人も、趣味の時間がいちばんの生きがいという人も、家庭を大事にしたいという人もいて、それぞれが自分の軸で幸せを追求することができる。しかも前時代的な「仕事か、家庭か」という問いが無効になってきていて、複数回答やその他の答えがいっぱいある。そんな多様化の時代が来ていると日々感じます。


だから自分で自分を幸せにできる術はたくさんあったほうがよくて。まだまだ既存の価値観にとらわれがちな男性に比べ、あらゆる生き方が「アリ」になってきているのが女性。いろんなものにアクセスして、自分の幸せを実現していける可能性がある。ただ、道は平坦ではなく、これでいいのかと悩んだり、自分の理想を実現するために苦しむ場面も多いでしょう。また、大きな人生の苦しみをやわらげ、救ってくれるのは、問題を根本から解決することばかりではなく、友人とのささやかなおしゃべりだったり、ふと手にして読んだ何でもないような本、日々の小さなよろこびであることも多々あるかと思います。そんなあれこれを本屋っていう場所で体現させてみようと、試行錯誤しています。 元々どこの書店も女性客が多いと言われていますが、「女性のための」って宣言している書店はほぼなくて、しっかり宣言をして、そういう品揃えや店作りをすることで、また新しい価値の発信ができるんじゃないだろうかって考えています。


―― 品揃えやお店の雰囲気は、どういうものになりますか?

花田:そうですね。実際、本を読む時に「わたし女性だからこの本買おう」ってことは、あんまりないですよね。ともすれば女性蔑視のような「どうせ女性はこういうのを置いておけばよろこぶでしょ」というような、恋愛とか猫の本ばかりが置いてある店には絶対にしません。

 HIBIYA COTTAGEが発信したいこととして、「どんな生き方をしている人も応援したい」というのがあります。たとえば「出産」ひとつでも、「自然に生むことがいい」って人もいれば「無痛分娩がいい」って人もいて。どちらかが正しい、もう一方は間違っていると分断するのではなくて、何を選んでもいいし、どの方法もそれぞれ素敵だよって言いたい。それぞれの視野を広げるためにやさしい立場をとるというか、本屋を通じて応援するというか。そんなお店にしていきたいと思っています。

 女性ってほんとうにいろんな気持ちを持っていて。憧れる気持ちがあちこちに飛びませんか?
私は本当に影響されやすくて、たとえば、地方に移住して自然とともに暮らす人の記事を見ては「いいなあ」、おしゃれな都会のバーで格好よく飲んでいる女性を見ても「いいなあ」。独身の貧乏暮らしで、着飾りもせず、自分の好きなものを見つけて打ち込んでいる女性を見ても「いいなあ」、家族でディズニーランドに行った友人の話を聞いても「いいなあ」……と。憧れる対象に一貫性がまったくありません(笑)。でも、どれかひとつしか選べないわけでもなく、あれも素敵、これも好きっていうのもひとつの「女子っぽさ」ですよね。でも、「あれもだめ、これもだめ」ではなく、「あれもいい、これもいい」の方が生きやすいと思うんです。だから、多様で、軽やかで、寛容で、何より楽しくて……、そんな本屋ができたらいいですね。
女性向けと言ってはいますが、きっと男の人にも楽しんでもらえるラインナップだと思います。女性しか入れません、っていう品揃えではないですよ。


―― 特に注目の企画を教えてください。

花田:「コテージ・セレクト」というキュレーション・コーナーに力を入れています。
自由に強く生きる女性の魅力、こうありたいと思える姿を打ち出したいと思っているので、ぜひ見にきてほしいです。

それから、HIBIYA COTTAGEの大切なテーマである「花」にも注目していただきたいです。
オープニング期間は生花を販売する企画もありますし、人気のハーバリウムと本を組み合わせて展開するコーナーもつくります。そして、なんといっても店内装飾の一部を利光春華さんがやってくださって。まさに花に溢れる素敵な空間でお客さまをお迎えします。本を見ないでも(笑)、売り場に足を運んでいただくだけでも気持ちが上がるような空間になりそうですよ。

さらにオープニング期間はスペシャルなイベントを続々準備中ですので、告知を楽しみにしていただけたらと思います。





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