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Review List of つよしくん 

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  • 3 people agree with this review
     2010/10/16

    若きラトルによる素晴らしい名演だ。シンフォニエッタやタラス・ブリーバは、ヤナーチェクの管弦楽曲の二大傑作であり、特に、近年においては、とある小説の影響もあるとは思うが、数々の名演が生み出されるに至っている。ところが、本盤が録音された1982年当時は、これらの両曲は、せいぜいチェコ出身指揮者が指揮するローカルな作品の域を脱していなかったのではないかと考える。その後は、アバドやマッケラスなど、チェコ出身の指揮者以外の国際的な大指揮者による名演が数々生み出されるようになったが、それだけに、若きラトルが、両曲に挑戦したというのは、前述のような背景を考えると、並々ならぬ意欲があったものと拝察される。本盤の演奏に見られる切れば血が吹き出てくるような圧倒的な生命力や、切れ味鋭いテンポ設定などには、現在の偉大なラトルを彷彿とさせるような豊かな才能を感じさせる。タラス・ブリーバの第1曲のオルガンがいかにも弱過ぎるのが一つだけ残念な気はするが、全体の演奏の評価を下げるほどではなく、当時30代という若さを考慮すれば、むしろそうした強弱を思い切って行うという表現を褒めるべきであると考える。フィルハーモニア管弦楽団を使用したのも成功しており、シンフォニエッタの冒頭のファンファーレなど実に輝かしくて巧い。HQCD化によって、音質により鮮明さを増したのも大いに評価できる。

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  • 8 people agree with this review
     2010/10/16

    これは、ショスタコーヴィチの第4の最高の名演であるだけでなく、ラトルのあらゆる録音の中でも、現時点においては最高の超名演であると高く評価したい。ショスタコーヴィチの第4は、実に複雑怪奇な作品である、冒頭の主題が、終結部などで再現される以外は、様々な異なる主題が長大な貨物列車のように数珠つなぎに連なっており、不協和音や霧のような静寂など、曲想もめまぐるしく変化するなど、とても一筋縄ではいかない。しかしながら、聴けば聴くほど味わいが出てくるという内容の深さにおいては、間違いなくショスタコーヴィチの交響曲の中でも上位を占める傑作であり、そうしたこともあって、特に、近年においては、数々の名演が生み出されるに至っている。本盤のラトル以外にも、チョン・ミュンフンやゲルギエフの名演などが掲げられるが、その中でもやはり、ラトル盤こそ最高峰の名演と言える。ラトルは、切れば血が出るような激しい情念の迸りや思い切ったテンポの激変、ダイナミックレンジの極端な幅広さなどを駆使しており、それでいて、第2楽章や終楽章の終結部の霧のような静寂の表現も完璧である。切れ味鋭いリズム感も、殆ど神業のレベルに達している。バーミンガム市響も、ラトルの抜群の統率の下、最高のパフォーマンスを示しており、一流とは決して言えなかったバーミンガム市響をこれだけのレベルに引き上げた才能にも大いに驚かされる。併録に、ショスタコーヴィチと親交のあったブリテンのロシアの葬送をカプリングしたセンスの良さも、ラトルならではのものであるが、同曲も素晴らしい名演だ。

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  • 1 people agree with this review
     2010/10/16

    アシュケナージはマーラーを好んで指揮しているようであり、これまでもチェコ・フィルなどとのCDが既に発売されている。今後、シドニー交響楽団との全集の録音を考えているようであり、本盤は、その第1弾ということになる。演奏の評価は、可もなく不可もなくと言ったところではないかと思う。要するに、凡演ではないが、かといって、名演とか佳演といった評価をするのには大いに躊躇する。なぜ、そういう評価をするかと言えば、本盤の演奏には、アシュケナージならではの個性が感じられないのだ。マーラーの第1には、古くはワルターの古典的な名演があり、バーンスタインやテンシュテット、さらには小澤(ボストン交響楽団との旧盤(DG))、最近ではホーネックなど、海千山千の指揮者による名演が目白押しであり、こうした名演の中で存在意義を見出すのは容易ではない。アシュケナージというのは、個性を売りにする指揮者ではないと言われれば、もはや何も言えないが、それはショパンやラフマニノフに通用しても、マーラーには必ずしも通用しまい。アシュケナージは、本盤を皮切りとしてマーラーの交響曲全集を録音していくとのことであるが、今後に大きな課題を残したとも言える。

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  • 8 people agree with this review
     2010/10/15

    ブラームスはオペラを除いて、多岐にわたる分野において様々な傑作を遺したが、どちらかと言うと、管弦楽曲よりも室内楽曲の方が得意と言えるのではないかと思う。そうした得意の室内楽曲の分野においても、ブラームスは様々なジャンルの数々の傑作を遺した。本盤におさめられたピアノ三重奏曲もその例外ではなく、作曲時期は第1番のように初期のものもあるが、第1番にしても晩年に改訂を施しており、その意味ではいずれも円熟の傑作と評価されるべきものである。本盤のスーク・トリオによる演奏も、そうしたブラームスの室内楽曲の傑作の魅力を聴き手にダイレクトに伝えてくれる名演であると言える。スーク・トリオの演奏は、いつものように、何か特異な解釈をすることによって聴き手を驚かすというものではなく、あくまでも自然体のアプローチだ。こうした真摯で誠実な自然体のアプローチが、作品そのものの魅力を最大限に発揮させることに繋がるものであると考える。併録のホルン三重奏曲も同様のアプローチによる名演。何よりも、チェコが誇る名ホルン奏者のティルシャルのチェコの土の香りが漂うような野太い音色が魅力的であり、これを聴けるだけでも素晴らしい。Blu-spec-CD化によって、音質はさらに鮮明さを増した点も高く評価したい。

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  • 7 people agree with this review
     2010/10/14

    ザンデルリングのブラームスの交響曲と言えば、本盤の後に録音したベルリン交響楽団との全集(カプリッチョレーベル)が名演の誉れ高く、その中でも第4がダントツの名演であった。本盤も、それに勝るとも劣らない名演と高く評価したい。何よりも、オーケストラの力量から言えば、本盤の方が断然上であり、その意味では、新盤とは違った意味での魅力ある名演と言うことができよう。それにしても、東ドイツという国が存在していた時代のシュターツカペレ・ドレスデンの音色には独特のものがあった。重心の低い、それでいていぶし銀の輝きのある美しいジャーマン・サウンドは、特に、ドイツ音楽を演奏する際に、他では味わうことができない深遠さを醸し出すことになる。本盤で言えば、特に、第2楽章の深沈たる抒情は感動的だ。ザンデルリングの指揮は、奇を衒うことのない正統派のアプローチ。全体の造型をしっかりと構築した上で、オーソドックスに曲想を描き出していく。こうした自然体とも言うべきアプローチが、シュターツカペレ・ドレスデンの素晴らしい合奏とその音色の魅力、そしてブラームスの第4という楽曲の魅力をダイレクトに聴き手に伝えることに成功したと言える。Blu-spec-CD化によって、音質にさらに鮮明さが加わったことも大いに歓迎したい。

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  • 1 people agree with this review
     2010/10/13

    スイトナー&シュターツカペレ・ベルリンは、現在ではすっかりと失われてしまったジャーマンサウンドを奏でている。国際的にも奏者の技量が最重要視され、各オーケストラの音色が均質化されている今日からすれば、正に隔世の感がある。スイトナーは、それほど個性的なアプローチをする指揮者ではなかったので、これは、シュターツカペレ・ベルリンの力量によるところも大きいのではないかと考える。このような重厚なジャーマンサウンドをベースとしたシューマンの交響曲は何と言う味わい深いものであることか。特に、第1番は、1841年の自筆譜をベースとしているだけに、シューマンの素朴とも言うべきオーケストレーションの魅力が、聴き手にダイレクトに伝わってくる。全体に静けささえ漂っているようで、シューマンはオーケストレーションが下手だったとの定説を覆すのに十分な魅力を湛えていると言える。第3番も、外面的な華々しさとは皆無。シューマンの幾分くすんだいぶし銀のオーケストレーションを、奇を衒うことなく自然体で表現することによって、楽曲本来の根源的な魅力を見事に引き出している点を高く評価したい。Blu-spec-CD化によって、音質は一段と鮮明で、なおかつ重心の低いものに生まれ変わった点も素晴らしい。

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  • 1 people agree with this review
     2010/10/12

    チェコを代表する名手によって構成されるスーク・トリオによる円熟の名演である。スーク・トリオのアプローチは、何か個性的な解釈によって聴き手を驚かすような奇作を用いることはいささかもなく、どこまでも自然体のアプローチによって、チャイコフスキーの傑作ピアノ三重奏曲の魅力をダイレクトに聴き手に伝えてくれる点を高く評価したい。もちろん、自然体と言っても、決して生ぬるいものではなく、各奏者の圧倒的な技量をベースとして、息の合った絶妙なアンサンブルの下、硬軟併せ持つ、いい意味でのバランスのとれた演奏を繰り広げていると言える。第1楽章の哀切の音楽についても、チープなセンチメンタルには決して陥ることなく、高踏的な美しさを湛えている点が素晴らしい。第2楽章の終結部の劇的で、力強い表現は、作曲者の心底を抉り出すような鋭さが支配している。いずれにしても、本盤は、スーク・トリオを代表する名演であるとともに、チャイコフスキーの傑作ピアノ三重奏曲の数々の名演の中でも、上位に位置づけられる名演と評価したい。音質は、従来盤でも十分に満足し得る音質ではあったが、今般のBlu-spec-CD化によって、さらに素晴らしい音質になったことも併せて評価したい。

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  • 2 people agree with this review
     2010/10/11

    両曲ともに素晴らしい名演だ。何よりもカントロフ&ルヴィエというフランス人コンビが、いかにもフランス風のエスプリに満ち溢れた瀟洒な味わいを見せてくれるのが素晴らしい。フランクのヴァイオリン・ソナタの第1楽章の冒頭を聴いただけで、このセンス満点の情感の豊かな世界に惹き込まれてしまう。しかも、陳腐なセンチメンタルさは皆無であり、抒情的でありながら、常に高踏的な透徹した音楽が全体を貫いていると言える。もちろん、瀟洒な味わいだけが持ち味ではなく、例えば第2楽章の圧倒的な技量をベースとした力感のある迫力は、演奏全体にいい意味でのメリハリを与える結果となっている点も見過ごしてはならない。終楽章は、第1楽章と同様の演奏傾向であり、このセンス満点の硬軟併せ持つ美演を終えるのにふさわしい締めくくりとなっている。ラヴェルのヴァイオリン・ソナタは、フランクのそれと比較すると、必ずしも有名曲ではないが、この両者の手にかかると、フランクのヴァイオリン・ソナタに匹敵する傑作に聴こえるのだから、いかに演奏が優れているかをあらわしていると言える。情感豊かさと抜群のテクニックをベースとした力強さが持ち味であるが、全体から漂ってくる瀟洒な味わいは、さすがはフランス人コンビの真骨頂と言える。Blu-spec-CD化によって、音質がより鮮明になったのも素晴らしい。

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  • 14 people agree with this review
     2010/10/11

    カラヤンはスタジオ録音やライブ録音等を含め、数々のベートーヴェンの第9の録音を遺してきているが、本盤こそ、その最高峰に位置づけられる至高の超名演と高く評価したい。カラヤンはライブでこそ本領を発揮する指揮者であった。この2年後の1979年の来日時のライブ録音が数年前に発売されているが、これはオーケストラの状態もなぜか良くなく(エキストラが数多くいたとされる。)、カラヤンとしてはイマイチの浅薄な演奏に成り下がっており、問題外。本盤に匹敵できるのは、同じ頃にスタジオ録音された全集中の一枚ということになるだろう。テンポはカラヤンならではの早めのテンポであるが、ただ単に早いのではなく、ここでは畳み掛けてくるような力強い生命力に満ち溢れている。特に何もしていないと思われるのに、音楽の奥底から湧きあがってくる力感は、聴き手を圧倒するのに十分な迫力に満ち溢れている。抒情的な箇所の歌い方も、カラヤン&ベルリン・フィルはこれ以上は求め得ないような清澄かつ美しい調べを奏でていると言える。第3楽章のホルンのこの世のものとは思えない何と言う美しさ。終楽章の圧倒的な迫力も、カラヤンも激賞したという合唱団の優秀さも相まって、最高の盛り上がりを見せている。独唱が入る直前の主要主題のアッチェレランドなど、ライブならではのカラヤンの最高のパフォーマンスと言えるのではないか。ライナーノーツによると、アンプの故障によって、特に終楽章の音のバランスが悪いとのことであるが、確かにそういった感じはしたが、気になるほどではなかった。いずれにしても、現時点でCD化されたカラヤンのベートーヴェンチクルスの最高傑作のトリを飾るのに十分な素晴らしい超名演だ。今般のチクルスのうち、第3は、1982年のベルリン・フィル創立100周年記念ライブ(ソニークラシカルのDVD作品)、第7は、同時期のベルリンでのライブ盤(パレクサレーベル)に一歩譲るが、それ以外は、カラヤン自身にとって最高の名演で構成されているのが素晴らしいと言える。

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  • 10 people agree with this review
     2010/10/11

    両曲ともに、カラヤン&ベルリン・フィルの全盛期ならではの素晴らしい名演と高く評価したい。まずは、第4であるが、リチャード・オズボーンによる偉大な伝記を紐解くと、カラヤンはこの第4の指揮に相当てこずったとの記述がある。確かに、遺されたスタジオ録音を聴く限りにおいては、凡演ではないものの、どこか食い足りないというか、カラヤンならばもう一段上の演奏ができるのではないかと思ったりしたものである。しかしながら、一昨年発売された1985年のロンドン・ラスコンサート盤が素晴らしい名演であったこともあり、カラヤンも最晩年に至って漸く理想の第4の演奏を実現できたのではないか。そういう観点から、1985年盤こそがカラヤンの第4の決定盤と考えていた。しかしながら、本盤の登場によって、トップの座は完全に入れ替わり、本盤を持ってカラヤンの第4の最高演奏の座を獲得したと言えるのではないかと考える。やや早めのテンポをとってはいるが、ダイナミックレンジの幅広さや抒情豊かな箇所の情感溢れる歌い方など、いい意味でのバランスのとれた至高の演奏に仕上がっている。第7は、ほぼ同時期にベルリンでのライブ盤(パレクサレーベル)が既に発売されており、本盤はそれに次ぐ名演と評価したい。冒頭のオーボエのミスは残念であるが、それ以後はカラヤンサウンド満載。カラヤンの流麗な指揮と、ベルリン・フィルの凄まじいまでの重量感溢れる合奏が、最高のコラボーレーションを見せ、終結部の猛烈なアッチェレランドなど、凄まじいまでの迫力を示している。両曲ともに、音質は普門館でのライブ録音とは思えないような鮮明さだ。

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  • 8 people agree with this review
     2010/10/11

    ブルックナーの第8の初稿については、昨年のレコード・アカデミー賞を受賞したシモーネ・ヤングによる名演が記憶に新しいが、本盤も、それに勝るとも劣らない名演と高く評価したい。インバルの旧盤(フランクフルト放送交響楽団との全集)が登場した頃は、初稿は、学者の学究対象のような位置づけであったが、近年の数々の名演の登場にかんがみると、立派な芸術作品として、初稿ならではの魅力が漸く認知されたものと言える。本盤の録音は、本年3月25日。何と、ほぼ同時に発売されたスクロヴァチェフスキの超名演の録音日と同日であり、我が国において、初稿とハース&ノヴァークの折衷版の至高の名演が同時に行われたのは奇跡というほかはないと言える。それにしても、本盤のインバルの指揮は見事である。かつてのフランクフルト放送交響楽団との旧盤も名演であったが、本盤の前では、もはや太陽の前の星のような存在である。全体の厳しい造型の構築力には力強いものがあるし、初稿ならではの抒情豊かな旋律の歌い方(特に第3楽章)も実に感動的である。終楽章などには、猛烈なアッチェレランドや思い切ったトゥッティなどの連発なども散見されるが、それが決していやではないのは、インバルの初稿に対する深い理解の証左と言えるだろう。東京都交響楽団も、インバルの統率の下、最高のパフォーマンスを示している。録音もSACDによる極上の鮮明な高音質であり、本盤の価値を高めることに大きく貢献している。

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  • 5 people agree with this review
     2010/10/10

    エデルマンは、今をときめく名ピアニストだ。リストやショパン、シューマン、そしてバッハのピアノ作品集などがトリトーンから発売されているが、いずれも素晴らしい名演に仕上がっている。本盤は、そうしたエデルマンによる満を持してのベートーヴェンのピアノソナタ集ということになるであろう。そして、その期待を決して裏切ることのない名演と高く評価したい。名演と言うよりも、凄演と言った評価の方が正しいのかもしれない。まず、選曲に注目したい。ベートーヴェンのピアノ作品集と言えば、悲愴、月光、熱情が通例であるが、エデルマンは悲愴のかわりに第4番を録音した。その理由は定かではないが、エデルマンのベートーヴェンのピアノソナタに対する強い拘りを感じさせるのは事実だ。その第4番は、エデルマンの手にかかるととても初期の作品とは思えないようなスケール雄大な演奏に仕上がっている。緩急自在のテンポ設定と力強さが持ち味であるが、繊細な抒情にもいささかも不足はない。月光も熱情も凄い。特に、両曲の終楽章の重厚にして力強い打鍵は圧倒的であり、とりわけ熱情の終楽章は、あたかもベートーヴェンの心底に潜む暗い情念のようなものが描出されて感動的だ。SACDによる極上の高音質録音も名演に大いなる華を添える結果となっている。

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  • 18 people agree with this review
     2010/10/10

    これは凄い超名演だ。カラヤンは、ライブでこそ実力を発揮する指揮者であるが、本盤はそうしたカラヤンの面目躍如たる至高の超名演に仕上がっている。カラヤンは、スタジオ録音や映像作品を中心として、第5と第6の数多くの録音を遺しているが、両曲ともに、本盤こそカラヤンの最高の超名演と高く評価したい。まず第6であるが、ベートーヴェンの全交響曲中で、カラヤンがあまり名演を遺していないのが同曲であると考えている。その理由は、カラヤンが、他の指揮者ならば必ず反復をする第3楽章を含め、すべての反復を省略するなど、快速のテンポで全曲を演奏するが、スタジオ録音というハンディもあって、全体として聴き手に、平板で、せかせかとした浅薄な印象を与えがちなことが掲げられる。しかしながら、本盤は、ライブにおけるカラヤン、そしてベルリン・フィルの圧倒的な高揚感と、録音の鮮明さによって、いつものように快速のテンポでありながら、全盛期のカラヤン&ベルリン・フィルでないと成し得ないような重厚にして、しかも流麗な至高・至純の音楽を構築することに成功している。もしかしたら、本盤こそ、カラヤンが田園という楽曲について、聴き手に伝えたかったことの全てが込められているのかもしれない。私も、カラヤンの田園で感動したのは、本盤がはじめてである。第5も凄い。第1楽章の中間部以降のたたみかけるような進行と、ものすごい緊張感は、カラヤンのスタジオ録音ではとても聴かれなかったものだ。第2楽章の悪魔的とも言うべき鋭いトランペットの音色と、これまた正反対の清澄な木管楽器の思い切った対比は、ベルリン・フィルの圧倒的な技量も相まって正に圧巻だ。第3楽章の低弦のうなるような重量感も凄まじい迫力であるし、終楽章に至っては、ねばったようなテンポの駆使やダイナミックレンジの幅も広く、乗りに乗ったカラヤン、そしてベルリン・フィルの最高のパフォーマンスがここにあると言える。これは、まちがいなくカラヤンの第5の最高の超名演であるし、古今東西の同曲の名演の中でもトップの座を争うものと高く評価したい。両曲について、音楽のいわゆる精神的な内容の深さを追及した名演も、フルトヴェングラーなど多々成し遂げられているが、本盤の超名演は、それらを一喝するだけの凄まじい音のドラマの構築に成功していると言える。録音も普門館でのライブとは思えないような鮮明さだ。

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  • 6 people agree with this review
     2010/10/10

    素晴らしい名演だ。小澤は、かつての手兵のボストン交響楽団とともにマーラーの交響曲全集を録音しているが問題にならない。小澤のマーラーの最高の演奏は、サイトウ・キネン・オーケストラとの第2及び第9であり、これら両曲については、古今東西の様々な名演の中でも十分に存在価値のある名演と高く評価したい。両曲ともにアプローチはいわゆる純音楽的なもの。バーンスタインやテンシュテットの劇的で主観的なアプローチとはあらゆる意味において対照的であるが、だからと言って物足りなさは皆無。小澤の、楽曲の深みに切り込んでいこうとする鋭角的な指揮ぶりが、演奏に緊張感といい意味でのメリハリを加味することに繋がり、切れば血が出るような熱き魂が込められた入魂の仕上がりとなっている。サイトウ・キネン・オーケストラも、小澤の確かな統率の下、最高のパフォーマンスを示していると言える。録音は、両曲ともに通常盤でも高音質であったが、特に、第9については今回はじめてSACD化され、更に鮮明さを増した点が素晴らしい。他方、第2については、かつてSACDのシングルレイヤーディスクとして発売されており、今回のハイブリッドディスクはわずかであるが音質は落ちる。今回の発売にあたっての不満点は正にこの点であり、なぜ、第9だけの単独発売にしなかったのか、メーカー側の邪な金儲け思想に、この場を借りて大いに疑問を呈しておきたい。

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  • 5 people agree with this review
     2010/10/09

    凄い演奏ではある。アファナシエフと言えば、例えばブラームスの後期のピアノ作品集とか、バッハの平均律クラーヴィア曲集などの、いかにも鬼才ならではの個性的な名演が思い浮かぶが、このシューベルトの最後の3つソナタも、鬼才の面目躍如たる超個性的な演奏に仕上がっている。ただ、この演奏、私見ではあるが名演と評価するのにはどうしても躊躇してしまう。シューベルトの最後の3つのソナタは、シューベルト最晩年の清澄な至高・至純の傑作。その内容の深さは他にも類例を見ないが、同時に、ウィーンを舞台に作曲を続けた歌曲王ならではの優美な歌謡性も持ち味だ。ここでのアファナシエフの極端なスローテンポは信じられないほどだ。特に各曲の第1楽章の超スローテンポ、時折見られる大胆なゲネラルパウゼは、作品の内容を深く掘り下げていこうという大いなる意欲が感じられるが、それぞれの緩徐楽章になると、旋律はボキボキと途切れ、音楽が殆ど流れないという欠点だけが際立つことになる。これでは、作品の内容の掘り下げ以前の問題として、聴き手としてもいささかもたれると言わざるを得ない。もっとも、ポリーニの無機的な演奏に比べると、十分に感動的な箇所も散見されるところであり、凡演というわけではないと考える。Blu-spec-CD化によって、音質は相当に鮮明になった点は高く評価したい。

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