「チャラくてもいい、イケてれば」バイヤー寺町 今月はリル・ヨッティー、ジョーイ・バッドアスを推薦

【第13回】チャラくてもいい、イケてれば。

酒もドラッグもタバコもやらない（おまけにクラブも嫌い）というからストレート・エッジ（※1）と思いきや、色恋大好き&下ネタ満載なライムでゆるふわに全米ティーンのハートを鷲掴みにする、アトランタの赤毛三つ編みの無邪気なチャラ男、リル・ヨッティーが名作ミックステープを挟んで、デビュー・アルバムをドロップ。

アトランタと言えば、スカート姿がインパクト大のヤング・サグがいますが、同じトラップ（※2）をやらせてもヨッティーはなんせライトでキャッチー。陽気だし。下手なラップ&歌でもヴォコーダーとセンス一発で乗りきり、とにかく直感が冴えまくり。2パックやビギーくらい聴けやとか外野にブーブー言われても、「ヒップホップの教科書には聴かなきゃ恥ずかしいリストがあるの？」とスルっとかわすスマートな現代っ子ですが、今回のジャケットアートには、皮膚病でもゲイでも何でも自分を愛し、ポジティブであること」というメッセージが込められていて、チャラいだけでなくピースでジャスティスな一面も持っていて、ポップ・アイコンとしての磁力も十分。

※1 マイナー・スレットのイアン・マッケイが提唱したハードコア・パンクの禁欲的思想/ライフスタイル
※2 ヤング・サグや2チェインズに代表されるベース/重低音、スネアドラムや電子音が強調された、アトランタ産ヒップホップのジャンル

今月のもう1枚はリル・ヨッティーとは逆に2パックに影響を受けた、ブロンクスの若頭ジョーイ・バッドアスの2枚目『ALL-AMERIKKKAN BADA$$』。時勢を受けてメラメラと憤ってます。落ち着いたトーンで幕開け、冷静にアメリカを客観しつつ、クロニックス、J.コールをはじめ完璧な客演陣を配した後半がハイライトで、スクールボーイQをフィーチャーした「Rockabye Baby」、「Ring The Alarm」〜「Babylon」で怒りを伴うマイクが絡みあい、一気にブチ上がります。今のアメリカでは当然ですが、否が応でもエモーショナルになりますね。

それではまた来月お会いしましょう。