『あんにょん由美香』 公開記念! 「TAO」 番外編 :ゲスト→松江哲明監督 4
Wednesday, July 29th 2009
直井:HMVさんの記事だから音楽のお話しも・・・音楽、大きかったですよね、今回。松江:そうですね。
直井:豊田(道倫)さんとの作り方がすごく・・・。
松江:2時間半くらいまで編集して、ボリュームがありすぎて切れなかったんですよ。それで、豊田さんに映画を観て頂いて、音楽をお願いして。そしたら、豊田さんの唄がどストレートじゃないですか?
直井:テーマ曲(「さよならと言えなかった」)とかね。
松江:そうそう。でね、あんな言葉(歌詞)はテロップで打つとすごい・・・ちょっと痛い言葉になってしまうんですよ。でも、「そこまで言えよ」ってたぶん、豊田さんは僕にふっかけてきたというか。豊田さんとは今まで、PV撮らせて頂いたり、AVの音楽やって頂いたりっていうことがあったんで、7〜8本ぐらいは一緒にやってるんですよ。それでね、球の投げ方がすっごいところをついてくるので(笑)、より短く出来たんですよね。その唄があったから、「もうここで十分伝わってるから、僕がくどくど自分のテロップを入れる必要はない」って思って、短く出来たんですよね。
川本真琴さんの唄も、あんなに早く入れる予定はなかったんですよ。中野(貴雄)さんの「林由美香は2度死ぬ」っていう言葉の後に、由美香さんの育った家の風景っていう構成は作ってたんですけど、あそこで唄はね・・・豊田さんの意見ですね。「男ばっか出てきてむさくるしいから、ここで女性を入れた方がいいよ」って。それで、豊田さんが唄を聞いて、「これを女性だったら・・・」っていうので、川本さんって名前が出てきて、あそこにあの唄が入って、もうばっちりというか。ど頭のピアニカの音とか、(“あらかじめ決められた恋人たちへ“の)池永(正二)さんの音楽とかも全部がね、僕の予想外でしたね。豊田さん自身もタナダ(ユキ)さんの映画音楽とかやられたり、ご自身の曲が映画に使われたりしてるのがあったから、映画を観る前の人が豊田さんが音楽をやってるって聞いて、ギター1本で「センチメンタルな曲なんじゃないか」とかっていう予想を覆したかったんですよね。
2人でよく、ビール飲みながら打ち合わせをしてたんですよ、歌舞伎町とかでお昼とかに。「ここに1曲欲しいんです」とか「ここにこういう感じの曲を」って言うことを伝えるんですけど、僕は音楽についての言葉がものすごく乏しいので、擬音でしか言えないんですよ。「もっとばーんと」とか(笑)。だから、豊田さんに「松江くん、もっと勉強しろよ」って言われたりして(笑)、豊田さん、あきれちゃってましたね。今回、何曲かは演奏して頂いたんですけど、「音楽監督がいいな」みたいなことを豊田さんはおっしゃってて、それでやっぱりね、ピアニカとか意表ついたの出てくると、「あ、使わなきゃな」って思うんですよ。それが合ってる、合ってないじゃなくて、「もう、松江、これでいけ」って、豊田さんから言われてるような。
あと今回、音楽の収録を間近で見させて頂いたんですよ。池永さんのご自宅に行って、池永さんが吹くのを間近で見させて頂いたり、川本さんの唄も、川本さんのご自宅で録ったんですよ。川本さんは、どんな映画かも全然分かってなかったんですけど、僕がその日の前に由美香さんの写真を送っていたので、「こういうシーンで流れるんです」っていうことを川本さんのお家に行く途中に自転車引っ張りながら説明をして(笑)。豊田さんの手書きで書いた歌詞を見せて、川本さんが唄って。AZUMIさんも前の日にライブがあって、どっかのビジネスホテルか何かに泊まったそのまんまで来て、「さっき食べたカツ丼が死ぬほどまずかった」とか言いながら(笑)。AZUMIさんも事前に音を聴いてたわけじゃなかったので、その場で豊田さんが「AZUMIさん風に演ってよ」とかって言って弾いた音がまたすごい音で(笑)。あのテイクは居間で録ったんですよ。エンジニアの方が来て、マイクをチェックして。お茶を出して頂いて、みんなでこたつ入ったりとかして、もう、本当すごい雰囲気だったんですよ。ものすごいプロの人達が本当にふらっと集まって、最高にリラックスした状態で音を出すっていう。豊田さんは「何で松江くん、これ撮ってないの?」とかって言うんですけど、撮れるわけないんですよ、あんなすごいところを(笑)。撮るのももったいないって感じだったんですよ。
--- 目に焼き付けておきたいというか・・・。
松江:そうそうそう(笑)。撮るとね、やっぱりそっちに意識がいっちゃって、「こっちの画も」ってやっちゃうので。じゃなくて、この目でもう・・・「僕の脳内ハードディスクでいいや」っていうような気持ちになって。(強調してしみじみと)贅沢な時間でしたねえ、あれはすごい、川本さんのご自宅で録ったのは。いやあ、本当にすごいものを見させてもらいましたね。
直井:クライマックスとか本当に、音楽がすごいですよね。
松江:あの音楽があったから、クライマックス変えたっていうのがありましたね。
直井:編集をね。
松江:編集を変えましたね、全部。リズムを変えたんですよ。1回、2時間40分で作ったラストをあの音楽・・・豊田さんから「CD出来たよ」って渡されて、最初にAZUMIさんのギターのタララーン♪って入るあの音を聴いた時に、「あ、ここでエンドクレジットだ」って思ったんですよ。そこに至るまで、ちょっとばーっと由美香さんを見せて、それで最後、「このタイミングでローリングさせようって思って」。そうするとね、全体のリズムがやっぱり変わってきちゃうんで、音楽の力でもう1回、尺のタイミングとか、音のインとか使う予定がなかったところに足したいとか。むしろ、使おうと思ってたところを外したりとかってことが出来ましたね。
--- 音楽で変わったんですね。
松江:変わりましたね。でも、本来は僕、そうじゃなきゃいけないような気がするんですけどね。本当だったら、現場で撮ってる時から、「この音はここで使う」ってことをある種考えて撮らなきゃいけないけど、ドキュメンタリーはやっぱり、性質上難しいじゃないですか。僕いつも作業とかやってて、音を早くにお願いして、音でもう1回編集が変わるというか、変えなきゃいけないと思ってて。あまりにもね、観てて分かるのがすごい嫌なんですよ。「最初からこの音楽考えてないな」とかすごい安易に唄が中途半端に終わるのとか、すごい失礼だと思うんですよね。だから、僕は今までの作品でもそうなんですけど、音楽を使って途中でフェードアウトはしたことはないですね。やっぱり、曲を作ってもらう方に「ここからここまでです」っていう風に指示を出して、曲が短くなったり、長くなったり、それは曲のベストでいいんですよ。そうなったら、「僕が編集変えます」っていう風にお伝えするので。曲の要因とかで画を変えるとか、説明しなくていい部分っていうのは出てくるはずなんですよ、音楽が出来た時に。だから、それはすごい意識しますね。で、そうじゃない映画とか観ると、すごい腹立ちますね。「もうちょっと音楽のこと考えろ」って(笑)。
--- 川本真琴さんはすごく久しぶりに唄われてますよね?豊田さんのご紹介があって・・・。
松江:そうですね。豊田さんの紹介があったからですね。たぶん、僕からだけではお願い出来ないので(笑)。僕、川本さんの唄でアルバムには入ってないんですけど、「ブロッサム」っていう唄がすっごい好きなんですよ。あれは(カンパニー)松尾さんがクリップを撮ってて。すっごい静かな曲なんですよね。何かね、赤ちゃんが唄ってるような声なんですよ。川本さんの声自体がすごい、そういう声じゃないですか?でも、その声らしさが一番出てるような曲で。
「川本さんが歌うと何を歌っても川本さんになるよ」ってことは、豊田さんも言ってたんですよね。でもむしろ、そのくらい強い方がいいし、「ほんとうのはなし」は、男の歌詞なんですよね。あれを川本さんに唄ってもらうっていうことが何か・・・この映画は男達が気持ちを出してる映画じゃないですか?男の過剰なセンチメンタルを女性に壊して欲しいっていうのもあるんですよ。「それじゃダメよ、男なんて」っていう視点もやっぱり必要で。由美香さんもそういう人なんですよね、べったべたな男のセンチメンタルを壊すような人なので(笑)。平野(勝之)さんの『由美香』って映画がそうなんですよ。平野さんが「お前どう変わった?どう変わった?」って言っても、「わたしは変わらないわよ」って言って、ラーメン食べてるような人なので。だから、あの唄の使い方というか在り方自体が由美香さんらしいなって思ったんですよね。男の思い入れをひょいって超えてるような。
サントラに関しては、映画で流れた尺のままになってますね。やっぱり、作って頂いた尺は支持しないといけないし、映画でどう使うのかっていうことを考えなきゃいけないから、映画では一部しか使われなかったけど、「サントラでは全部聴けます」っていうのは、僕は嫌いなんですよね。もちろん、オリジナルで別だったらいいんですけど。
--- 順番も・・・。
直井:ほぼ時系列で、おまけを1曲豊田さん本人が歌ってる「ほんとうのはなし」のLIVE版が入ってたりとか。構成まで豊田さんがいろいろ考えて下さって。アルバムですよ、作品になってますね(笑)。30分強なんですけど、まさに映画の一部を持ち帰ってもらえる。
松江:そうですね。まんま、映画の尺なんで。観た人も・・・。
直井:まさに最後、みんなで作る時の音楽があって、出来上がった音楽・・・『純子』に付く音楽があって、エンドロール・・・エンディング曲、全部順番通りなので(笑)、そこはもう1回反芻出来るんじゃないかなって思いますね。
--- 映画を観終わった方がこのサントラを聴いて、また映画を観て・・・。
松江:そうですね。
直井:でも、昔のサントラって本当、まさにそういう感じじゃないですか?
松江:ね。本当昔は、そういうサントラだったんですけどね。
直井:今回思いましたね。映画の一部をお土産で持って帰れる。今、すぐにDVDになっちゃいますけど、昔はサントラしかなかったわけだし。
松江:サントラらしいサントラだと思いますよ、これは本当に。
『あんにょん由美香』 予告編はこちらから!
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