HMVインタビュー:Daniel Merriweather
Friday, May 29th 2009
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ボーイズUメンの『クーリーハイハーモニー』が、10歳の僕にとっては、地球上で最高の音楽に思えたよ。
- --- こんにちは。調子はどうですか?
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いい感じだよ。今ミュンヘンにいるんだけど天気も最高だし。君は日本にいるの?
- --- ええ。東京からかけています。
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そうなんだ! 今すごく東京に行きたい気分なんだよ。こないだあの映画を観に行ったばかりで……ほら、ミッシェル・ゴンドリー監督の『TOKYO!』って観たかい? 素晴らしい作品だったんだ。おかげですごく東京に行きたくなっちゃったよ。
- --- あなたは今はアメリカ在住なんでしたっけ?
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ああ。ニューヨークに住んでいる。もう3年になるかな。すごく気に入っているよ。
- --- 音楽活動するにあたってオーストラリアは狭すぎると思った?
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そういうわけじゃないんだ。音楽的には状況は素晴らしいんだけど、やっぱりどこに行くにも遠すぎるんだよね。ニューヨークやロンドンの間を身軽に行き来したいし、ヨーロッパにも近い場所にいたい。オーストラリアを愛しているから、すごくホームシックになる。メルボルンも大好きだよ。でも世界の端っこに住んでいるのは、単に不便なんだ。どこに行くにも23時間も飛行機に乗らなきゃならないのは辛すぎる(笑)。
- --- 確かにそうですね。で、そのメルボルンで過ごした子供時代にバイオリンを弾き始めたのが音楽に関わるきっかけだったんですよね。
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うん。僕は当時まだ4歳で、家でぶっ壊れたバイオリンを見つけたんだ。弦も切れちゃっていたし、なんでわざわざ置いてあったのか知らないけど、母が持っていたんだよ。僕はそれがいったい何なのかもわからないまま、いつもそのバイオリンで遊んでいた。そんな僕を見ていて、母がバイオリンを習わせようと思いついたらしい。というのも彼女は日本のスズキ・メソードのことをどこかで聞いていたんだよ。日本人の鈴木博士が考案した、楽譜を読むのではなく耳でバイオリンを学ぶ子供向けのメソードなんだけど、僕は幼すぎたからどっちみち楽譜は読めなかったし、ちょうどよかった。このメソードでバイオリンのレッスンを始めて、13歳くらいまで弾いていたよ。だからスズキ・メソードが僕と日本のコネクションなんだ(笑)。
- --- では歌という才能はあとになって発見したんですね。
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うん。僕は10歳くらいだったかな。エルヴィス・プレスリーの『ブルー・スエード・シューズ』を聴いて、すっかり夢中になってしまって、いつも歌っていたよ。学校のクラスで友達の前で歌ったりね(笑)。10歳の子供がエルヴィスの真似をしているんだから、そうとうおかしな光景だったんだと思うよ。歌の内容の意味も分かっていなかったし。その後、多分同じ10歳の時だと思うけど、初めて自分でアルバムを買ったんだ。それがボーイズUメンの『クーリーハイハーモニー』。知っているかい?
- --- もちろん。大ヒットしましたから。
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そうなんだよね。10歳の僕にとっては、地球上で最高の音楽に思えたよ。僕の家族はあまり裕福ではなくて、CDとかを買うような余裕はなかったから、あのアルバムが1年半くらいステレオの中に居座っていたんじゃないかな。ほかには何も聴かなかった。その後もう少し大きくなると、スティーヴィー・ワンダーを筆頭に60年代後半から70年代初期にかけて活動した偉大なソウル・シンガーたちの作品を聴くようになった。その一方でディアンジェロにも多大な影響を受けているし、いろんな異なるジャンルの音楽に接してきたよ。ジェフ・バックリィも大好きだし、ビートルズも何もかも。つまり僕の音楽嗜好は常にランダムで折衷的だったのさ。好きなものがあちこちに点在していた。で、14歳くらいの時にギターを手にして、自分でベーシックなコードを練習して覚えて、ぽつぽつと曲作りを始めたんだ。以来ずっと音楽を志して、歌と曲作りを磨いてきたんだよ。
- --- そういう幅広い嗜好に何らかの共通項はあると思う?
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共通項は多分、感情表現に長けた偉大なシンガーなんだと思うよ。例えばオーティス・レディングの歌を聴くと、声を通して音符のひとつひとつ、言葉のひとつひとつがリアルに感じられて、彼が歌うことすべてを心から信じることができる。そういう歌は僕にとっていつだって大きなインスピレーションを与えてくれるんだ。そういう素晴らしいシンガーたちを僕は若い頃から崇拝してきたし、自分もそうなりたいと目標にしてきた。あんな風にエモーションを伝えられたらなって願っているよ。だから、歌を通して何らかの形で心を動かしてくれる人――ってことかな。ほら、レディオヘッドだってそうだよ。僕は長年レディオヘッドのファンで、トム・ヨークがエモーションを表現する方法だったり、彼の作詞のスタイルが大好きなんだ。ああいう表現ができるのは彼だけだからね。そんなわけで、本当に雑多な音楽を聴いているよ。ようは、素晴らしくソウルフルなシンガーたちというのが共通項で、ジャンルとしてそれがソウルなのか否かは関係ないんだ。
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- Love & War
Daniel Merriweather - 2009年06月24日発売
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- Love & War (輸入盤)
Daniel Merriweather - 2006年06月02日発売
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- Version
Mark Ronson - 2007年06月20日発売

1982 年生まれ、オーストラリア出身の26 歳。マーク・ロンソンの秘蔵っ子としてAllido Records/J Records からデビューする新人シンガーソングライター。ダニエル・ポール・メリウェザーはメルボルンの田舎町で教師の両親のもと、決して裕福とはいえない控えめなライフスタイルを送る家庭で育った。4 歳の時にバイオリンを習い始めるが楽譜を読むことが苦手で、 13 歳まで耳の記憶力だけで全ての楽曲を演奏し、遂にはヴィヴァルディのコンチェルトまで弾いていたという。とにかく歌うことが好きで
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