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『グーグーだって猫である』 犬童一心監督インタビュー 2

Tuesday, January 20th 2009

グーグーだって猫である



 
犬童一心監督 INTERVIEW


グーグーだって猫である



最新作『グーグーだって猫である』が2月6日にDVDリリースされるタイミングで、犬童一心監督にお話しを伺いました。
先日発表された、"第82回キネマ旬報ベストテン"では、本作に主演した小泉今日子氏が主演女優賞を受賞!

そして、DVD購入者限定!で"犬童監督のサイン入りポスターを抽選でプレゼント!という施策も決定!
詳細は、こちらをご覧下さい。

インタビュー終了後の写真撮影時には、"グーグー"が別室でスタンバイしていて・・・監督と一緒にポウズ、してくれました。

大島弓子氏原作の漫画を細野晴臣氏が音楽、小泉今日子氏が主演で、犬童一心監督が描いた本作。
こちらの目を強くまっすぐ見てお話しして下さった、監督のお話しを・・・。


INTERVIEW and TEXT and PHOT: 長澤玲美




   
小泉今日子さんは・・・"変わってる"って
言っていいくらいの人ですよね(笑)。




---  (笑)。特に今回、主演が小泉今日子さんで、彼女は大島弓子さんの原作を前から読んでいて、「大ファンだった」ということもあったそうですが・・・小泉(今日子)さんが多くの媒体で、「"中年"っていうことをかっこつけずにそのままでいこう」みたいな発言をされていましたよね?今作の主人公、"麻子"という人物も、"死を受け入れて、生を、今を精一杯生きる"という意味ですごく、"等身大"というか、ありのままに描かれているところがこの作品の強さなのかなあという風に思ったんですが・・・。


犬童  小泉(今日子)さんは、この映画の宣伝でちょっとね、尋常じゃないくらい、雑誌とかTVに出たんですよね(笑)。だからね、聞かれる話しがそうなるんで、小泉(今日子)さんはそう答えざるを得ないっていう(笑)。


でも、その逆もありますよね・・・逆に言うと、小泉(今日子)さんはたぶん、聞かれるまでそんなに深く、40代ってことを考えてなかった人だと思うんだけど、逆に40代っていうよりもやっぱりその・・・結婚した後に、1回1人になって時間を過ごした中で考えたことっていうことを今感じて話してると思うんだけど。「この映画を作ろう」って最初に話してた時は、30代だったんで、まだ。


で、作ったら、たまたま42歳だったんで・・・それで何か、そういう風に話さざるを得なくなったっていうところがあると思うんですけど。ただね、小泉(今日子)さんみたいに出来る人は、なかなかいないと思いますけど、彼女は・・・"変わってる"って言っていいくらい・・・の人ですよね(笑)。


---  "変わってる"?(笑)。


犬童  ええ(笑)。彼女はスターなんだけど、普通にずっといられて、で、ストレスになりそうなことを上手に回避出来る人ですよね。例えばその・・・映画撮ってる最中とかも取材してる最中とかも、めんどうなこととかひどいこととかって起きるんですよ。そういう時に、それを受け取って、やたらテンション高く返さざるを得なくなっちゃう・・・みたいな人もいっぱいいるんだけど、彼女は上手に身を交わすっていうか・・・上手にそういうものから、真に受けない上手さがあるっていうんですかね。だから、ストレスをあまり溜めずに、ああいう風にいられるんだと思うんですけど。


逆に言うと、"人のことを信じてる"っていうのもあるかもしれないですよね、信じ方が上手っていうか。自分のその・・・映画とか音楽とかテレビとか、いっぱいやってるわけじゃないですか?その・・・お客さんのことを上手に信じてて、でも、それを作ったり、観たりしてる人達から来るストレスって、いっぱいあると思うんだけど、それを上手に交わせるっていうか。だからああやって、上手にいられると思うんですけど。何か普通、「キー!」とかってなっちゃうんじゃないかな?(笑)。


---  (笑)。普通だったら、そうなっちゃいますかね?(笑)。


犬童  うん、そういう人って多いですよ(笑)。だけどね、あの人はならないの、絶対に。上手に1人になるし、いつも。


---  そうですか・・・上手に(笑)。


犬童  うん(笑)。大勢のところでも、すごく上手に1人になるんですよね。ベテランだからですかね。もうこの世界、16くらいの時から・・・もっと前からかな?やってるわけだから。


---  今まで監督が一緒にお仕事された中でも特に、小泉(今日子)さんは違う・・・と?


犬童  うん・・・ちょっと違いますよね。何かちょっと・・・"違う場所"にいるみたいな感じの人、離れてるっていうか・・・。必要な時だけ来るけど、すぐ戻る・・・みたいな、そういうことが上手に出来てるっていうか。


---  そういう、その・・・ちょっと変わっている?小泉(今日子)さんに対して、今作では、他の方と違った演出方法などをされているんですか?   


犬童  そうですね。「あんまり目立たないようにしてくれ」っていうことだけ頼んで。言ってしまうと、「あんまり何もしなくていい」・・・みたいな。


---  "そこにいる"・・・というか・・・。


犬童  うん。それを上手にやってくれれば、この"麻子"って役は、いいんじゃないのかなっていう。


 
"少女漫画全般"の影響かもしれないけど、特にまあ、
大島弓子さんの影響を受けてるんで(笑)。






---  本作は、大島弓子さんの原作がもとになりますが、『赤すいか黄すいか』『金髪の草原』以来、3度目の彼女の原作の映画化になりますよね?


犬童  そうですね。


---  「大島弓子さんの世界の魅力は?」という質問に監督は、「彼女の漫画がおもしろいのは、現実と現実でないことの境目が曖昧になる感じ。そして、現実と非現実、どっちもリアルなんだ、と思って描いているところ」とありましたが、今まで監督が撮られて来た作品、『金髪の草原』は彼女の原作ですし、『ジョゼ(と虎と魚たち)』や『メゾン・ド・ヒミコ』など、現実と非現実が混ざっているような感じというのを"ファンタジー性"として捉えるとすると、監督の作品は、その"ファンタジー色"が強いような気がするんですね?そのあたりをあえて意識されて、強調して撮られているようなところはありますか?


犬童  うーん、特にその3本は、そうかもしれないですけどね。


大島(弓子)さんの考え方は、基本的には、あの・・・作品を読んでるとだんだんわかってくるんですけど、"起こってることとその時に考えてることは、同時に存在している"っていうことを書くんですよ。思ってることとか考えてることっていうのは、目に見えないからないんじゃなくて、そこにあるから、そのことと、実際の目に見えて起こってることっていうのは、実は両方で、リアルなことであって、どっちかだけだとリアルじゃないっていう感覚が、大島(弓子)さんには何か、あるんですよ。


例えばここにいて、こう、3人が話してるこの状況を撮ったからって、リアルじゃないっていう。その時に、こうやって、ぼおーっと聞いてる、この人が考えてることも、その中に見えてきた時に、この場所がリアルに見える・・・本当のリアルだっていうところに立って漫画を書いてるんで、その考え方を映画に利用した映画は、そういう影響を受けてるってところがちょっとあるんだけど、そういうことをする必要がない映画の時には、別にしないんで。


でも、『ジョゼ(と虎と魚たち)』とか『(メゾン・ド・)ヒミコ』とか『金髪の草原』とか『グーグー(だって猫である。)』は、"少女漫画全般"の影響かもしれないけど、特にまあ、大島(弓子)さんの影響を受けてるんで(笑)。


でもまあ・・・『黄泉がえり』の脚本も実は、大島(弓子)さんの影響があると思うし、だからそれは・・・まあ、そうね。その数が多いっちゃあ多いっていう、うん(笑)。


---  今作の映画の中には、猫の"サバ"が死んでしまって、その"サバ役"の大後寿々花ちゃんが人間の姿で、"麻子"に会いに来たシーンがありましたよね?生きている人間が亡くなってしまった人、ペットも含めてですが、その人や動物の生前を想っているシーンを描くのは、映像でも撮りやすいとは思うんですが、あのシーンでは、死んでしまった猫の魂が人間の姿に変わって現われますよね?これを撮るのは難しかったんじゃないかなと思うのですが・・・あのシーンは、どういう思いで撮られたんですか?こだわりといいますか・・・。


犬童  こだわってることはあんまりないけど、あれですね・・・"当たり前だと思って撮る"っていうことかな。


不思議なことを撮る時っていうのは、いろんな撮り方があると思うんですけど・・・例えば、同じ視点でこう見てる世界の中で、不思議なことが起こるっていう風に撮ると、それが怖かったりとか、怖ろしかったりするけど、このずらした視点から見ると、それが見えてることが当たり前だってなると、それを特に、特殊な表現をしなくていいっていうか。


だから、そういう風に見えてるものなんだって思って撮るから、逆に、普通に撮ってるだけなんですよね。でも、それは、人によってみんな、視点が違ってて・・・。例えば、中田秀夫さんが幽霊を出す時は、何かここに・・・中田(秀夫)さんの視点があるんですよ。で、そこの視点から見ると、幽霊はああいう風に見えてて、それがああいう風に怖いとかね。清水崇さんが『呪怨』を撮る時は・・・清水(崇)さんはたぶん、一番変わってると思うんだけど(笑)、やっぱり、彼の視点があるんですよ。


それと同じで、僕の視点で、当たり前なんだって思ってる視点から見ると、ああいう風に見えてるってことなんで。逆に言うと、それがはっきりしてるとね、怖がらそうとかっていうことがなければ、難しくないんですよね。怖がらそうっていうことがエンターテインメントとして必要になると、違う映画のいろんな操作が必要になるんで、そうなると、笑わせようとかと一緒で、難しいことがいろいろ起きてくるんで。


でも、"ただいる"っていうことになると、視点がはっきりすれば、そんなに難しくないんですよ、僕の場合はね。あれを他の人がやろうとすると難しいかもしれないけど、それは今お話ししたように、みんな視点が違うから。


---  監督がそれをされるのは、"普通"・・・という?


犬童  うん、あれはあんまり難しくない、当たり前な感じなんで。だから、特に何かこう・・・どう撮ろうかとかって悩むとか、そういうのはあんまりないんですよね。


ただ何かこう・・・自分の中に「"死んだ世界"と"生きてる世界"の"間の世界"は、きっとこうだろう」っていう感覚が何かあるんですよ。"通過点"がある・・・「人が死んで、完全に死んでしまう間に、"通過点"っていうのがきっとあって、それはきっと、こんな感じなんじゃないかな」っていうのが体にあって、それを作ろうとしてる感じなんですよ、あのシーンは。


「死ぬ時はきっと、みんなここを通過するぞ」っていうところっていうんですか。その場所ってそんなに、怖かったりとか、辛かったりとかしないんじゃないのかなと思って。案外、すごく冷静な場所を1回通って、人は死ぬんじゃないかっていう。さびしいとかも思わないし、辛いとか怖いとか思わないところを通った後にきっと、死ぬんだろう・・・って、何かあるんですよ、その感じが。だからあのシーンでは、自分の持ってる、その途中の感じを再現したんですよね。でも、あれをそういう風に思って撮ってるのって、僕だけなんで・・・(笑)。


---  そうですかね?(笑)。


犬童  うん、たぶん・・・(笑)。


---  そろそろお時間のようですので・・・。本日は、いろいろなお話しをお聞かせ頂き、ありがとうございました。


犬童  ありがとうございました。


おわり


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グーグーだって猫である 『グーグーだって猫である』【初回限定特別版】』

大島弓子原作の漫画を細野晴臣が音楽、小泉今日子が主演。特典映像には、テーマソング「good good」のPVやスペシャル対談&音楽メイキングなどを収録予定!

   





眉山 『眉山』

さだまさしのベストセラー小説を原作に、母の恋と娘の恋がつむぎ出す奇跡を映像化。松嶋菜々子、大沢たかお、10年ぶりの映画出演となる宮本信子らが出演。第31回日本アカデミー賞優秀作品賞、優秀監督賞受賞。

   





黄色い涙 黄色い涙

永島慎二による青春漫画の名作が原作。"嵐"のメンバー全員が出演!1963年の高度経済成長期に沸く東京を舞台に、夢をもって生きようとする若者たちの希望と挫折を映す。音楽は、SAKEROCKが担当。

   





タッチ 『タッチ』

あだち充の大人気コミックを映画化!南役に長澤まさみ、双子の兄弟、達也と和也役には斉藤祥太・慶太。今でも多くの人々から愛され続けている作品がキラキラと輝くピュア・ラブストーリーとして誕生。

   





メゾン・ド・ヒミコ 『メゾン・ド・ヒミコ』

『ジョゼと虎と魚たち』でコンビを組んだ犬童監督×渡辺あや脚本での第2弾!オダギリ ジョー×柴咲コウ主演!音楽は細野晴臣、衣装は北村道子が手掛けた。舞踏家の田中泯が出演したことでも話題に。

   


いぬのえいが 『いぬのえいが』

"犬のいる生活"を描いたエピソードがリレー形式につながった作品。犬童一心監督、佐藤信介監督、黒田昌郎監督らやCMディレクターなど、さまざまな分野で活躍中のクリエイターたちが温かなまなざしを注いだ。

   



『死に花』 『死に花』

掘って掘って掘りまくれ!17億円の大強奪の破天荒・奇想天外ストーリー!笑って泣いて元気になる、痛快エンタテインメント。山崎努、谷啓、青島幸男、宇津井健など、豪華俳優が出演!

   





ジョゼと虎と魚たち 『ジョゼと虎と魚たち』

妻夫木聡×池脇千鶴主演!共演は上野樹里、新井浩文、Sabu、荒川良々、大倉孝二、板尾創路ら。サントラをくるりが初挑戦したことも話題になった作品。リアルで切ないラブストーリー。

   





金髪の草原 『金髪の草原』

人気漫画家・大島弓子の原作を映画化。池脇千鶴と伊勢谷友介が共演したファンタジー。心は20歳、体は心臓病を患う80歳という男とホームヘルパーの女性との奇妙な恋模様を描く。

   





二人が喋ってる。金魚の一生 『二人が喋ってる。 / 金魚の一生』

漫才コンビ"トゥナイト"を起用して、女性の心理を見事に描写した『二人が喋ってる。』と実写+山村浩二によるアニメーションアニメで綴るユーモラスな『金魚の一生』は、犬童監督の原点とも言える2篇。