--- ではさっそくですが・・・本日は、よろしくお願い致します。
犬童一心(以下: 犬童) はい、よろしくお願いします。
--- 『グーグーだって猫である。』が現在劇場公開中で、DVDが2月6日にリリースされるタイミングでの本日のインタビューになりますが、HMV ONLINEでも予約がたくさん入っている状況です。
犬童 そうですか(笑)。
--- ええ(笑)。こちらのDVDは、"ニャンダフル・ディスク付き"のアイテムになるようなのですが・・・。
犬童 それ、あんまりくわしくないんですよね、編集の洲ア(智恵子)さんにおまかせしちゃってるんで・・・(笑)。
--- では・・・音楽のお話しを・・・(笑)。『メゾン・ド・ヒミコ』以来2回目となる細野晴臣さんがサウンドトラックを担当されていますが、本編ディスクには、その細野(晴臣)さんと小泉今日子さんがデュエットされたテーマソング「good good」のPVも収録されていますね。このデュエットというアイデアは、監督からのものですか?
犬童 デュエットのことはね・・・
小泉(今日子)さんが歌うとね、(映画に)出演してるんで、「難しいかもしれないな」と思ってたんで、
細野(晴臣)さんに歌ってもらうつもりで脚本に(歌)詞を書いてたんです。でも
細野(晴臣)さんが、「やっぱり、
小泉(今日子)さんが歌った方がいい」っていう風におっしゃったんで、「じゃあ、それだったら、デュエットがいいんじゃないかな」って。それで、2人で歌ってもらう形になったんですけど・・・。
主題歌 「good good」
毎日がgood good そんなはずも ないけど 昨日の夢はgood good 明日(あした)から 届く手紙
去ってゆく 風に ささやいて みたけど 街に散る good good 誰かに 届くかしら
あの人の瞳 覚えている あなたの言葉 忘れもしない good good good good
うたいながらgood good 街にたどりつけたかしら 旅人のgood good 雨の日も 風の日も
あの人の瞳 覚えている あなたの言葉 忘れもしない good good good good
--- 監督も、細野(晴臣)さんと一緒に、作詞をされていますよね。監督の作品では・・・。
犬童 『
二人が喋ってる。』って映画のテーマ曲でも作詞はしているんで、これが2回目になりますね。
--- 今作は、2度目の細野(晴臣)さん起用ですし、『ジョゼと虎と魚たち』ではくるり、『黄色い涙』ではSAKEROCKがサントラを手掛けられていますよね?こういった人選のセレクトから、監督ご自身も音楽がお好きな方なのかなあと思うのですが、普段から、「次の映画の時には、この方に音楽をお願いしたい」というようなイメージが湧くくらい、音楽をいろいろ聴かれているんですか?
犬童 いや、僕はほとんど、音楽聴かないんで・・・映画を作る時にしか聴かないですね。
--- それはちょっと、意外ですね・・・(笑)。
犬童 そうですか?(笑)。家でCD聴くとかってないかな・・・車でも、あんまり聴かないですね。ただ何となく、「次の映画の時は誰」っていうのは、「こんな感じがいいな・・・この人がいいな」っていうのは、考えてますね。その脚本が・・・やるテーマが決まったらっていう感じですかね。
--- "映画における音楽の役割り"というのをどのようにお考えですか?
犬童 うーん、僕はね、映画によって分けてはいますけど・・・映画のストーリーをわかりやすく、音楽で助けてもらいたいなっていう場合と、音楽自身が映画の世界を表して欲しい場合と、その2種類に何か、わけて考えるっていうか。まあ結局、世界を表して欲しいが故に、ストーリーのサポートもして欲しいんですけど、音が鳴った瞬間に、その映画の世界観がわかる人にやって欲しい時と基本的にストーリーをサポートして欲しいっていう、その・・・"劇版"としてやって欲しいっていう2種類があって。
細野(晴臣)さんとか岸田(繁)さんとかに頼むのは、音楽が鳴った瞬間にもう、映画の世界がわかるような音楽ですよね。もちろん、"劇版"としてのおもしろさもあるんですけど、まあ何か、音楽が映画の世界と一致してるっていうか。
--- サントラを手掛けているそのミュージシャンのファンの方が、「彼らが音楽をやってるんだったら、映画を観に行こうかな」って思う方もたくさんいらっしゃるような人選ですよね。
犬童 そういう種類の映画の時は、そうしてるところもあるかもしれないですね。『
黄色い涙』の
SAKEROCKっていうのも、映画の時代とかその中身と・・・音が合ってるんで、彼らにお願いしたし。"映画音楽"に対して、あんまり経験がない人にそういう場合は頼んで。
でも何か・・・やってる音楽を聴くと、"映画音楽"が出来そうか出来なさそうかっていうのが何となくわかるっていうか。アレンジをまず、自分達でちゃんとやってるかどうかっていうことと、その能力がすごい高いかどうかっていうので何となく、"映画音楽"が出来るかどうかっていうのは、音楽を聴いて判断するっていうか。
くるりの時もそうですけど。
細野(晴臣)さんは前にね、「
銀河鉄道の夜」っていう、すごい素晴らしいサントラを手掛けてらっしゃったので、それがきっかけで、『
メゾン・ド・ヒミコ』をやって欲しかったんですけど。
やってる音楽を聴くと、"映画音楽"が出来そうか
出来なさそうかっていうのが、何となくわかるんですよね。
--- 以前、『死に花』が公開されたタイミングで監督が、"葬祭研究所【葬礼談義】"の中西通さんという方と対談されていたものを拝見させて頂いたのですが・・・。
犬童 はいはい(笑)。
--- そこで監督が"小津安二郎好き"と発言されておりまして・・・。
犬童 そうですね(笑)。
小津安二郎(作品)は、全部観てますね。
--- 彼の作品で好きなところは、「普通の日常を描いているけれど、それを当たり前に思ってしまうのではなくて、それこそが尊いもの、かけがいのないものであり、そんなささいなことがとても満たされた大切なものであるというメッセージがある」というところなんですよね?
犬童 そうですね。まあね、あの『
死に花』がそういう映画だったっていうこともありますけど、それとはまた別に、"映画作家"として彼はすごく"前衛的"なんで、そういう魅力と両方が
小津安二郎にはあるっていうか・・・それって、かけ離れてることなんだけど、それが一緒にあるのがすごいっていうか・・・。
--- あそこでお話しされていた、その小津安二郎の作品で好きというところがそのまま、監督が"映画"という形にする際に目指しているものであったり、大切にされていることなのかなあとも思ったのでお話しさせて頂いたんですが・・・他には、"ミドルエイジクライシス"(中年の危機)が世界的にも広まっている・・・ということにも触れられていましたよね?40代は肉体的、精神的な衰えを実感し、漠然とした不安を抱き始める。またはじめて死を意識する年代という"定義"があるようですが・・・。
犬童 それはもう、映画の"ジャンル"としてすでにあるんで・・・。でも、この『
グーグー(だって猫である)』を作る時に、
何をテーマにした映画なのかが、自分の中でよくわからなかったんで、難しかったんですよね。そういう中で、"ジャンル"で言ったら、「どの"ジャンル"に入れればいいのかな」っていう時に唯一、それくらいしかはまらない題材っていうか(笑)。
だからまあ、"ミドルエイジクライシス"っていう、今までにみんな、いろんなテイストで描くから・・・例えば、『
Shall we dance?』だってそうだし、『
アメリカン ビューティー』だってそうだし・・・。『
アメリカン ビューティー』は、あんな悲惨な映画になるけどたぶん、美しくて伝わらない・・・『
Shall we dance?』はああいうね、ハートフル・コメディみたいな感じじゃないですか?
それを『
グーグー(だって猫である)』だったら、「どういうテイストの"ミドルエイジクライシス"の映画にすればいいか」みたいな考え方で作った・・・っていう感じですかね。そこしかはまんないっていうか、うん(笑)。
次のページに続く・・・