「わたしを未来に連れてって。」バイヤー寺町 今月はゴールディー、シザを推薦

【第14回】わたしを未来に連れてって。

90年代UKアンダーグラウンドからメインストリームに飛び出し、時代を席巻した“ドラムンベース”の存在を長らく忘れていた人は多いのではないでしょうか。親戚筋にあたる“ジャングル”とともに90年代カルチャーを象徴するムーヴメントとしてひとつの大きなウネリを起こしたものの、00年代を迎える頃には元の地下世界へ潜んでいってこのまま失速するのかと思っていましたが、遂にあの男が本気で動き出したじゃないっすか…。

そう、キング・オブ・ドラムンベース=ゴールディーがギラギラ闘志を燃やし、自身の名義では19年ぶりとなる新作を本拠地 Metalheadz からリリース。ちょっと感動せずにいられないですね。時空を超えてドラムンベースの真ん中を鋭さマシマシに突っ走っていて、ますます血気盛んなゴールディーのアティテュードに激しく胸を打たれました。当時シーンの決定打となった金字塔『Timeless』と地続きにあるコズミック・スピリチュアルなフューチャー・ソウル路線を深化させながら、隙のない強靭な高速リズムで果敢に攻めています。

今月のもう1枚は、ケンドリック・ラマーのレーベル TDE からのリリースとなる SZA＝シザのデビュー・アルバム『Ctrl』。シザはさそり座の女。個人的にミニー・リパートン（シザと同じ誕生日）やジョニ・ミッチェルを筆頭にさそり座の女シンガーにすごく惹かれるのですが（ちなみに美川憲一はさそり座ではなく牡牛座）、なぜかというと、さそり座の女特有の情念の強さでしか表現できないブルース・フィーリングやセンチメンタリズムがあるから。ここではインディ・ソウル/R&B ラインをモダン・ポップスに落とし込んだEP『Z』から飛躍して、さそり座の女ならではのブルース・フィーリングをひっさげ、ブラック・ミュージックの強さとしなやかさを存分に備え、逞しくなったシザをたっぷり味わえます。控えめに挿しこまれたエレクトロニカ/ソフト・サイケデリック風味もエエ塩梅。非の打ち所ないっす。

それではまた来月お会いしましょう。