TOP > Movie DVD・BD > News > Japanese Movies > 冨永昌敬×山本タカアキ 対談! 【2】 

冨永昌敬×山本タカアキ 対談! 【2】 

Friday, July 16th 2010

interview
冨永昌敬×山本タカアキ


冨永昌敬監督が手掛けるシャーリーシリーズ、『シャーリーの好色人生と転落人生』がいよいよDVDに!個人的にも大好きな作品なのでリリースが至極たのしみなのですが・・・念願叶った興奮のまま、『パンドラの匣』(←こちらもまもなくDVDに!)公開時に続き、冨永監督に再び、ご登場頂きました。そして、その冨永作品には欠かせない録音技師の山本タカアキ氏が音仕事をした作品の映画祭・・・前代未聞!録音映画祭 feat. 山本タカアキがまもなく開催!を記念して、お2人の対談が実現しました。日大芸術学部時代に知り合い、今では15年ほどのお付き合いになるそうなのですが、その仲のよさやお互いを信頼し、一緒に作品を生み出し続けているこのつながりなども感じて頂ける対談内容になりました。当日はいつもお世話になっている、直井卓俊氏率いるSPOTTED PRODUCTIONS事務所にお邪魔し、お話を伺ってきました。ちなみにこの日撮影した上のお写真はこの事務所近くにあった“ときわ荘”(あの!ではなく・・・)前です。録音映画祭では冨永監督の初期作品や入江悠監督『SR サイタマノラッパー』&『SR サイタマノラッパー2 女子ラッパー☆傷だらけのライム』、松江哲明監督『ライブテープ』などの上映に加え、連日、山本氏を含めてのゲストありトークショー&プレ録音映画祭なども行われますので、ぜひ、この新たな試みに遊びに行かれてはいかがでしょう?INTERVIEW and TEXT and PHOTO: 長澤玲美

普段は考えてないですけど、きっかけがあったらそれを「シャーリー」にするっていう。何かぽんって出て来たら「あ、これはじゃあ、シャーリーだな」って。「勝手にシャーリーって名前付けないで下さい」って怒られるかもしれないですけど(笑)。


--- ここからは『シャーリーの好色人生と転落人生』について伺います。2005年に制作された『シャーリー・テンプル・ジャポン Part1&Part2』の続編といいますか、シリーズものとして制作されましたが、シャーリーはそもそもどういうところからスタートした作品だったんですか?

山本 元々、水戸短編映像祭の曽我部恵一さんのライブの後ろに流す映像として作ったのが『シャーリー・テンプル・ジャポン Part1』の音なしのバージョンなんですね。それが一番初めなんですけど、そこから早稲田の学生の子達が「冨永監督作品の上映をやりたいです」ってイベントをやってくれて。で、その時に「曽我部さんのライブのバックで流れてた映像も上映したい」と。だけど「あれ、無音だよね?音付けてあげないとかわいそうだよね」って話になって、効果音だけ入れて形にしたのが『シャーリー・テンプル・ジャポン Part1』 ですね。元々、一番初めは音は何もなかったので、後から録りに行ったんですよね、背景音だけ。

冨永 うん。だから、そういう意味ではタカアキが映画にしたようなもんですね(笑)。それまでは音がなかった。映画じゃなかったものを無理やり映画の体で進めるにはどうするかって言って、現場での音はビデオカメラ回したから入ってはいたんですけど、1.5倍速にしてあるんで音自体が使えない音にしかなってなかった。だから、ない状態で1.5倍速の世界の音っていう考えでこの人は奥多摩に音ロケに行って(笑)。

山本 奥多摩行きましたねえ。

冨永 だから、あれはアニメの音響と同じかもしれないですね、極端な話。アニメも初めは同録の音ってないじゃないですか?ゼロから作る。ただ、人物の足音とか物音とか「あれに全部付けれたらどうなってただろう」っていうのはちょっと思うよね。

山本 でも全部やるのは嫌だったから、階段のところだけ足音付けたりとかして、「ちょっとはやっとこう」みたいな(笑)。あれを全部音付けたら、逆に違和感あったんじゃないかな?だって、声は全然聞こえないわけだから。車のドアとかそんな程度しか聞こえてないから。一応その形でPart1を作って、で、Part2を作った動機は何だったっけ?

冨永 Part2はシネマロサの支配人の勝村(俊之)さんがPart1を気に入ってくれたから・・・。

山本 何であれを気に入るんだ・・・(笑)。


シャーリーの好色人生と転落人生


直井卓俊(以下、直井) 最初は確か、「『VICUNAS/ビクーニャ』と『シャーリー・テンプル・ジャポン Part1』の2本立てで興行をやろうか」みたいな話になったんですけど、冨永さんが「『VICUNAS/ビクーニャ』はまだイジリたい、音楽の関係もあるから」と。

冨永 ああ、そうだ!あの時は音楽のことを気にしてたんだ。一部ちょっとね、許諾の得られてない曲があったので。

直井 自主映画ゆえの、自主映画的なものなんですけどね。

冨永 今はもうそんなことも忘れちゃってますけど、その時はまだちょっと行儀がよかったというか(笑)。って、まあ、ちょっと二の足を踏むところがあったから、これ自体を「もうちょっと膨らますような形で何かなるといいんじゃないか」って方向になって、劇場としては1時間あれば1本の興行になるというので、直井くんがお金を集めて来てくれて。

直井 そんなに集めたほどのあれじゃないですけどね(笑)。

冨永 で、ロサからもお金を出してもらって、軽井沢に行って。だから、極端な話、Part1を劇場で上映するためにPart2を撮ったっていう。だから、どっかでそういう横着な気持ちがあったから同じ台本でやったんですよ。

山本 言っちゃったよ(笑)。

冨永 でも、それも「ひょっとしたらおもしろいかもしれない」って一瞬思えたからやったんですけど。だから、あの同じような1.5倍速の世界で何かを撮るっていうのは1回やっちゃったことだから「何かなあ」っていうのはあったんですよ。だったら、コマ数・・・コマ数で言ってもしょうがないかもしれないですけど(笑)、普通の24コマの実時間の映画なんですけど、「セルフリメイク」っていう1本の中で2度繰り返されるっていうことをたのしみつつ作る方向にしたっていう。だから、作ってる時が一番おもしろかったですね。出来たものを観てもおもしろいかどうかよくわかんなかったけど。

山本 (笑)。まあ、でも『シャーリー・テンプル・ジャポン』はPart1とPart2の2本で1組だよね。

冨永 だから、あの映画に対して否定的な意見も聞きますけど、それはもう納得がいくっていうか(笑)。いや、それがその後またね、シャーリーの何たらって感じでやる動機にもなってると思うんですよ。「あれはヒドイ」って言われて当然だよなっていうのが多少は自分にもあるんで。

--- 結構、いろんな声があったんですか?

冨永 そんなに調べてはないですけど(笑)。「すごいいい」って言ってくれる人と知り合いなのに「観られたもんじゃない」っていう人がいたんで、「ああ、両方いるな」って思って(笑)。

山本 「すごいいい」とかも僕にはよくわからない。「そこまでいいか?」みたいな。

--- タカアキさんは『シャーリー・テンプル・ジャポン Part1』の時と比べて、Part2での実際の作業というのは?

山本 Part2は一番ガチですね。現場も録音に行ってますし、一番普通の映画の作り方を。もちろん観てもらってもわかりますけど、Part1であんまり映画の体をなしてなかったものが「Part2はちゃんと作るところから一応映画の体をなして作ってみました」っていうリメイクではあるかもしれないですね。

--- そこから『シャーリーの好色人生と転落人生』の制作に至った経緯というのは?

冨永 Part1、Part2ってやりましたけど、「Part3、Part4をすぐやろう」って言う風に言ってたわけではなくて、何か冗談でずっと続くといいかなって。

直井 ずっと同じ(台)本でやるくらいの。

山本  「エクス・ポ」の連載はその間の時期じゃないの?

直井 そうですよ。Part3、Part4とPart5、Part6をやって、「Part7はエクス・ポで」ってなって、実際、「エクス・ポ」には連載小説「シャーリー・テンプル・ジャポン・パート7」ってなってるんですよ。

冨永 だから、Part3、Part4、Part5、Part6をやるつもりだったんですけど、Part3、Part4にしかなんなかった・・・番号が2つ分足りなかったんだ。本当はもっと細かく分けるつもりだったんですよ。今直井くんに言ってもらって思い出したんですけど、「Part1がサイレント映画でPart2がトーキーで、Part3はもう映画じゃないかもしれない」っていう。それは舞台になってるかもしれないし、歌になってるかもしれないしって。

直井 影絵じゃないけどだんだん原始化していくみたいな(笑)。

冨永 そうそうそうそう。だんだん技法的に原始の方に。最終的にはもう影絵の方に・・・人形劇とか(笑)。

直井 壁画になってるかもしれないし(笑)。

冨永 だからもう、半分ふざけて「映画じゃなくなった方がいいかもしれないね」って。「どうせネタが適当なんだから」って(笑)。だから、そういうことも考えてたんですけど、結局、仙台短篇映画祭ってあるんですけど、そこの実行委員をやってる仙台メディアテーク職員の小川(直人)さんに「仙台県内で自主映画を作ってみないか」って言われて。「制作費はこっちで募るから、最低いくらあればなんとかなる?」って話になったので、「100万」って適当に答えたら、本当に宮城の人達から1口10万で制作費募って下さって、10人ですよ。実は全員友達だったりするんですけど(笑)、それで本当にやることになった時に「シャーリーシリーズとしてまた出て来たらおもしろいかな」っていう話になったんですけど、ただ、前と同じようなノリではもう作れないので「ちゃんと映画にしよう」と。ちゃんと映画にするんだけど、前回はPart1、Part2っていう2本で1組。で、今回は当初はPart3、Part4、Part5、Part6って4つに分けてくっつけるつもりだったんですけど、結局、Part3、Part4として、裏表の関係になるようにしようと思って。で、今度は片方は自分で撮る、もう片方はどう撮ろうかって思った時に「人に監督をやらせよう」と思って。で、話ちょっと飛び過ぎましたけど(笑)・・・友達の佐藤(央)くんに『シャーリーの好色人生』の監督をやらせて。

山本 あんたの判断っていつも、若干楽な方、楽な方に行ってるよね(笑)。

冨永 まあ、半々?前半こんなで後半こんなとか(笑)。何か、考え方がそういう風になりがちなので、たいがいそうなっちゃうんですけど。

山本 「作る」って話を聞いてから、ずいぶん準備もかかったじゃん、完成まで含めたら。Part3だかPart4だかPart5だかPart6だかっていう数字が目まぐるしく変わってて、「どれが何なの?」みたいな感じで結構動いたような気がしますね。

直井 最初は島だけでしたもんね。

冨永 島で完結のはずだった。

直井 島合宿で終わりで、「これでどうなるんだろう」って思いながら気が付いたら・・・(笑)。

冨永 多少撮りこぼしがあったんで、「じゃあ、それは静岡の杉山ん家で」って。杉山の実家は静岡なんですけどそこは島の風景と似てるから「あそこでやろうか」って言って撮り始めたら、シーンもちょっと増えちゃって(笑)。だから、後から書いた追撮したシーンが現実の時間になって、島で撮ったオリジナル脚本の部分が回想シーンになったんですよね。

山本 (しみじみと)島よかったんですよ。宮城県の塩釜ってとこだったんですけど、船でどのくらいだっけ?

冨永 船で35分。塩釜にはまぐろ漁港があるから港自体が大きいんですけど、そこから仙台湾っていう・・・松島よりもちょっと南の方にあって、浦戸諸島っていうのがあるんですけど、そこに小さいフェリーが行ってるのでそれで行ったんですけど、実際に行く時にはカメラ回しながら行ったりして。


シャーリーの好色人生と転落人生


--- その島にしようと思ったのには理由があったんですか?

山本 教えてもらったんだよね?

冨永 その小川さんに「何を用意すればいいですか?」って言われたので、「海の近くで一軒家を確保して欲しい」って頼んでいろいろ探してもらったりしてたんですけど、「すごくいい家がある。でも、島なんですけどいいですか?」って言われて(笑)。だから、船で行かないといけない。でも、「その方がおもしろいな」って思って、で、一度見に行ったんですけど、そこは塩釜市役所で働いてる鈴木さんって方のご実家だったんですよ。ご実家なんですけど、ご両親がもう高齢で老人ホームか何かに入ってるので「今は誰も住んでいなくて10年くらいそのままになってるんですけど、家具はあります」と。だから、簡単に掃除だけして。

--- 島の大きさ的には?

冨永 小っちゃいですよ。

山本 人口200人とかって言ってたかな?

冨永 1個の島で正反対に集落が2つあって。でも、200人とかだよね?

山本 で、お金を使う場所が1個もないんですよ。自販機もない。郵便局が1個ある。

冨永 いや、自販機はね、船着場にあったと思うよ、1個。ただ、お店はない。お店は向かい側の島に雑貨店みたいなのがあって、ちょっとした食べ物とかが売ってるんですけど、その島に行く時は船着場に町営のボートがあってこっち側から旗を揚げて・・・。

山本 電話があったよ?(笑)。

冨永 旗も揚げつつ(笑)・・・電話すると向こう側の船着場で「はい」っておじちゃんが出て、「迎えに来て下さい」って言うと「はいよ」って言ってモーターボートが来て(笑)、まあ、無料のタクシーですよね。何でそうなってるかっていうと本当はその距離だと自治体は橋をかけなきゃいけないらしいんですけど、橋をかける予算がないから無料でボートを。だから、あれは橋ってことになってる。

山本 あのボートが?おじさんが橋なんだ(笑)。

冨永 うん、あれは橋なんだよ。で、行き来してるみたいですけど。

山本 朝とかも月永と僕は音とかを録りに行ってたんですけど、朝イチの船に新聞が乗ってたりするんで、島のおじいちゃんとかおばあちゃんとかがみんな来るんですよ。だから、3日目くらいに僕とか月永が「おはようございます」とかって言ってちょっと馴染みつつ(笑)、「まだいるの?」とかって言われたりして。で、僕らはあの時、おばあちゃんとかに「NHKが来てる」とかって言われてたんですけど、めんどくさいから「そうです」って言ってて、僕らはあの時、NHKってことになってましたね(笑)。


シャーリーの好色人生と転落人生


冨永 まあ、だいぶ脱線はしましたが(笑)、映画らしいことを言うと、撮影する前、その島に行ったのが2007年の9月下旬だったんですけど、その3〜4ヶ月前に『コンナオトナノオンナノコ』の撮影が終わって、「疲れたな、8日間大変だったな。さっそく人の映画観に行こう」って思って(笑)、ちょうどその頃、僕はエスクァイアでレビューを書かせてもらってたんで、デイヴィッド・リンチの『インランド・エンパイア』のマスコミ試写に行ったんですよ。で、観たら、4時間もあるんですけど、まあ、ひっどい映画で。「どうせ思い付きで撮ったんだろうな」としか思えないような映画でプレスとか見ると、案の定、元々はリンチのホームページで流してた短い映像だったものをリンチがどんどんどんどん撮り足して、撮り足して、あんな風になったっていう。でもそれは「自主映画としてすごく全うな作り方だな。むしろ全うだな」って言う感じがしたわけですよね。だから、関わる人間にとっては絶対大変なことだし、望まれる映画の作り方ではないと思うんですけど、そうなってもいいぐらいのつもりでやろうと思ったんですよね。で、そういうことをやってみたいなって思ってた時にその仙台の小川さんからお誘いがあったと。で、さらに刺激になったのは『インランド・エンパイア』の撮影で使ってたカメラはPD150っていう我々が『亀虫』とかを撮ってたカメラと同じだったんですよ。

--- それ、どこかに書かれてましたよね?

冨永 僕もどこかに書いた覚えがある・・・エスクァイアかな。その『インランド・エンパイア』のレビュー書く時にショックだったのは自分の持ってるカメラと同じだったんですよ(笑)。しかも、「僕より撮影下手だ、デイヴィッド・リンチ」って(笑)。で、あの映画はしかも、途中で舞台がポーランドになるでしょ?途中でお金がなくなったんでしょうね。だから、ポーランド人のパトロン捕まえてポーランドで撮ることになったっていう、おそらくそういうことだったんじゃないかなって思うんですけど、「何てひどい映画の作り方なんだ。でも、これが自主映画なんだろうな」っていう(笑)。まあ、ちょっとね、自主映画っていうものをある種、カギ括弧に入れて考えた場合、それは自分が商業映画を撮るようになったからそういう風な見方も出来るようになったと思うんですよね。ずっと自主映画だけをやってたら、「ああ、あれは自主映画だ」なんて思わなかったと思うんですよ。もっともっと、自主映画なんだけどプロっぽくやるんだっていう、そういう風に頭が回ってたと思うんですけど。だから、そういう風に考えて作ってみても、『シャーリーの転落人生』はそこそこ上手く撮れちゃったりしたから(笑)。

--- その時の音は現場からタカアキさんが担当されているんですよね?

山本 島は行けたんで。合宿は5日くらいだったっけ?

冨永 6泊だったと思う。

山本 だから、そこは固定でずっと付いてって、その後の静岡は急にスケジュールが決まったんで、そこは行けないから「お願いします」っていう感じで。だから、半々まではいかないけど、6割くらいですね。

--- 『シャーリーの好色人生と転落人生』の今回は女性(夏生さち宮田亜紀中川安奈平沢里菜子笠木泉瀬戸夏実)がたくさん出て来ますね。

冨永 そうですね。そこまで女の人をたくさん出すっていうことを先に目的化してたわけではないんですけど、何しろ、主人公のシャーリーは女にモテるって設定を先に決めちゃったんで、常に最低3人くらいはシャーリーの周辺に女がいるようにしようと。で、あれくらい登場するようになったんですけどね。


シャーリーの好色人生と転落人生


--- 福津屋兼蔵さんと杉山彦々さんのシャーリーと中内コンビがまた元気に戻って来た感じがすごく微笑ましくもあり(笑)、拝見していました。

山本 元気も何もないですよ(笑)。

--- 現場でのお2人はどういう感じなんですか?

山本 福ちゃん(福津屋兼蔵)は『VICUNAS/ビクーニャ』とかの時と比べるとやっぱり、ここ数年ですっかり舞台役者になっちゃったので声デカイんですよね(笑)。で、結構、冨永も演出的に好き勝手というか、福ちゃんに対しては特に「まずやらせてみたい」ってところがあるじゃない?福ちゃんは普段は芝居で慣れてるから声も動きもデカイし・・・おもしろかったですけどね。

冨永 福ちゃんはちょっとね、変な人で(笑)。変な人っていうか、人にすごく愛されるみたいな部分があるんで、あいつが現場にいるとおもしろくなるんですよ。あと、それ以前に我々の場合は映画作る時は基本的に同級生みたいなつながりが中心になってて、要するに新しく参加してくれたスタッフに外様意識を感じさせてるんじゃないかと心配になるんですけど、福ちゃんがいるとそうならなくてみんながすっと入って来れる。彼が無意識に中心になってくれるんですごく楽なんですよね。で、杉山はいいとこ好きする男だから、福ちゃんが現場でモテモテになると上手く近くにいていい相方になるわけですよ(笑)。そうなってくると僕は映画を撮ることだけに集中出来る。だから、福ちゃんがいなくて杉山だけだったら・・・まあ、それが普通って言ったら普通なんですけど、妙な距離の探り合いか何かで人間関係が出来てくる。だけど、福ちゃんみたいなああいうおもしろさがわかりやすい性格の人がいると(笑)、今回来てもらった人をほぐしてくれる感じもあって、彼をそういうところでも意識的に利用はしてますね。

山本 いいムードメーカーだし、いい感じでぶち壊してくれるからね。

--- 現場にいると明らかにそうなんですね。

山本 福ちゃんは本当に楽だし、自由なんですよね。でも、演技はわりに真面目で反省したりもするんですけど(笑)。(杉山)彦々なんかは気遣いし過ぎるんですよね。

--- 今後のシャーリーの動きは今のところないですか?

冨永 普段は考えてないですけど、何かきっかけがあったらそれを「シャーリー」にするっていう(笑)。

山本 「これはシャーリーでいいか」みたいな感じで?(笑)。何かぽんって出て来たら「あ、これはじゃあ、シャーリーだな」って。

冨永 つなげていくのが許される身だったらそうするかもね。「勝手にシャーリーって名前付けないで下さい」って怒られるかもしれないですけど(笑)。

山本 「ちょっとあのラインとは違うんで」みたいな(笑)。

--- シャーリー・テンプルっていう名前は、元は子役女優の名前からなんですよね?

冨永 元々はそうですね。でもね、理由とかはないんですよね。最初は多少あったんですけど、シャーリー・テンプルっていう子役の名前を使って、登場人物の1人がシャーリーと名乗り始めたんで、「同じ名前でシャーリーって名前で生きてることにしよう」と。で、まあ、こっちではあだ名だってことにしたんですけど、本名はあるっていう設定で。

山本 Part1の時にテンプルはお寺のテンプルともかけてたよね?舞台がお寺だったから。

冨永 杉山の実家がお寺なんですよ。で、タイトルを何とかテンプルにしようと思ったんですね。それでシャーリー・テンプルしか思い付かなかったからそうなったっていう(笑)。だから、継続すればするほど意味を失ってくるんですけど。

山本 だからせめて、シャーリーだけ引き継いでね。

冨永 うん。シリーズものっぽく、姿形だけでもそういう風にという・・・って、これは大丈夫なのか(笑)。

--- 個人的にはこの先もそんな感じでずっと続いて欲しいなあと思ってます(笑)。DVDになりますが、特典映像などは決定されていますか?

冨永 まだ作ってないので(笑)、相談中なんですよ。ただ、何かしらの特典映像は入れると思いますけど、本編が長いのであんまり尺を入れられないんですよね。

--- 前回のオーディオコメンタリーは・・・。

冨永 ああいうことを本当はしたくないので今相談してるんですよ(笑)。

直井 あれをやらないであんな感じのことをどうやるのかと(笑)。

冨永 そう、あれをやらずにもうちょっとちゃんと映画の解説になるようなことを真面目に考えてやろうじゃないかと。本当にあれはだらだらしゃべってるだけなんで。それが「変におもしろかった」って言われることはあるんですけど、変にじゃなくてちゃんとおもしろいことをね(笑)。



シャーリーの好色人生と転落人生


直井 でも、『亀虫』のコメンタリーは伝説ですよね。

冨永 「『亀虫』は本編よりコメンタリーの方がおもしろい」って言われたりね(笑)。

直井 それはひどい(笑)。中原昌也さんが当時すごいどん底に落ちてる時だったんですよね。愚痴しか言ってないっていう(笑)。タカアキさんのところで録りましたよね?

山本 うん、あれはひどかった。酒飲みながらね。

直井 中原さんはその時ちょうど家出中だったんですよね。中目黒の駅前でコインランドリーを探してて(笑)。

冨永 直井くんが中目黒の酒屋でお金出して、焼酎とお菓子を買って来て、それまでは中原さん、すっごいどんよりしてたんだけど、お菓子の中からわさビーフ見つけただけでちょっと明るくなってさ(笑)。

直井 「わさビーフ、わさビーフ」って言ってましたね(笑)。

冨永  「わさビーフじゃーん!」って(笑)。



(次の頁へつづきます)



スポポリリズムvol.12 プレ録音映画祭 7月21日(水) 開催!


日程:7月21日(水) 会場:ライブインロサ
料金:予約2,500+drink 当日3,000+drink

【SOUND PAINTING】
シャーリー・テンプル・ノーリターン』(『シャーリー・テンプル・ジャポン』リミックス)
池永正二(あらかじめ決められた恋人たちへ)×山本タカアキ

【LIVE ACT】
P.O.P ORCHeSTRA (『SR サイタマノラッパー』シリーズ 音楽クルー)
前野健太とDAVID BOWIEたち (『ライブテープ』出演)


録音映画祭 feat. 山本タカアキ 7/24(土)〜30(金) 開催!


7月24日(土) 冨永昌敬監督作品『VICUNAS/ビクーニャ』『亀虫』『出来心ひとひら』(最新短編)
ゲスト:冨永昌敬、山本タカアキ(予定:杉山彦々、月永雄太)
テーマ:「劇場公開できるインディーズ映画の作り方」

25日(日) 冨永昌敬監督作品『コンナオトナノオンナノコ』『テトラポッド・レポート』『京マチ子の夜』『KEEP IT A SECRET
ゲスト:冨永昌敬、山本タカアキ
テーマ:「冨永映画の音作り〜旧作から最新作まで〜」

26日(月) 沖田修一監督作品 『後楽園の母』『進め!』『鷹匠
ゲスト:沖田修一、山本タカアキ
テーマ:「映画の音のリアリティ」

27日(火) 入江悠監督作品 『SR サイタマノラッパー
ゲスト:入江悠、SHO-GUNG、山本タカアキ
テーマ:「台詞を書く、話す、録る」

28日(水) 入江悠監督作品 『SR サイタマノラッパー2 女子ラッパー☆傷だらけのライム
ゲスト:岩崎太整、上鈴木崇浩、上鈴木伯周、山本タカアキ
テーマ:「映画の中の音楽〜SRクルーと語る〜」

29日(木) 松江哲明監督作品 『ライブテープ
ゲスト:松江哲明、菊池信之、山本タカアキ
テーマ:「ドキュメンタリー映画と録音/録音技師対談」

30日(金) 松江哲明監督作品 『ライブテープ』(インターナショナルバージョン)
ゲスト:前野健太、磯部涼、山本タカアキ
テーマ:「映画と音楽と〜『ライブテープ』を通じて〜」


冨永昌敬監督作! 『パンドラの匣』 8/4 リリース!


結核のため出兵することもかなわず太平洋戦争終結を迎えた少年ひばりは、「健康道場」と称する風変わりな結核療養所に入所。気まぐれで明るい看護士のマア坊や、美人看護士長の竹さん、個性的な療養患者たちとの日々を通して、次第に生きる活力を取り戻していく。

『パンドラの匣』 公開記念! 冨永昌敬監督 インタビュー
川上未映子×仲里依紗 『パンドラの匣』
パンドラの匣

監督・脚本・編集:冨永昌敬(『亀虫』『パビリオン山椒魚』『シャーリーの転落人生』)

原作:太宰治パンドラの匣」 (新潮文庫刊)
音楽:菊地成孔

染谷将太川上未映子仲里依紗窪塚洋介ふかわりょう洞口依子ミッキー・カーチス

© 2009 「パンドラの匣」 製作委員会


さすらう男”シャーリー”と6人の美女たち 『シャーリーの好色人生と転落人生』 9/4 リリース!


佐藤央監督の『シャーリーの好色人生』と冨永昌敬監督の『シャーリーの転落人生』。欲望に忠実で、周りの混乱をよそに飄々と生きる愛すべきキャラクター・シャーリーとくされ縁の親友・中内、そして彼らが訪れる場所で巻き起こる美女たちとの愛憎と陰謀のドラマがそれぞれを補完し合う2つのアナザー・ストーリーとして描かれる。奇妙な方言に導かれ、紡がれてゆく2つの人生。”平成の車寅次郎”ことシャーリーの新たな全国行脚がここに始まる!

シャーリーの好色人生と転落人生

監督:佐藤央冨永昌敬

福津屋兼蔵杉山彦々夏生さち宮田亜紀小田豊中川安奈平沢里菜子笠木泉瀬戸夏実守屋文雄戸田昌宏

profile

冨永昌敬(とみながまさのり)

75年10月31日、愛媛県生まれ。

99年、日本大学芸術学部映画学科を卒業。卒業制作の『ドルメン』が00年オーバーハウゼン国際短編映画祭にて審査員奨励賞を、続く『ビクーニャ』が02年水戸短編映像祭にてグランプリを受賞。以降、短編シリーズ『亀虫』(03)、『テトラポッド・レポート』(03)、『オリエンテ・リング』(04/オムニバス『be found dead』第4話)、『シャーリー・テンプル・ジャポン・パート2』(05)など短編作品が相次いで劇場公開され、06年には『パビリオン山椒魚』で待望の劇場用長編映画に進出する。また、菊地成孔「京マチ子の夜」(05)、SOIL & “PIMP” SESSIONS「マシロケ」(07)、相対性理論「地獄先生」(08)、やくしまるえつこ「おやすみパラドックス」(09)など多数のPV作品を手がける。長編劇映画は、安彦麻理絵の同名マンガを原作とした『コンナオトナノオンナノコ』(07)に続き、『パンドラの匣』(08)が3作目。また、『シャーリー・テンプル・ジャポン』のシャーリーシリーズとして『シャーリーの好色人生と転落人生』(08)がまもなくDVDリリース。公開待機作としては、テアトル新宿他で10月上旬より公開予定の『乱暴と待機』やミュージシャン 倉地久美夫氏のドキュメンタリー『庭にお願い』、音響デザイナー 大野松雄氏の人物と思想に迫るドキュメンタリーも制作中。


山本タカアキ(やまもとたかあき)

77年3月17日、静岡県生まれ。

日本大学芸術学部映画学科録音コース卒業。テレビドラマ/映画等の録音助手/スタジオアシスタントを経て、現在はスタジオエンジニア/サウンドデザイナーとして活動。多種多様の音声を扱う。冨永昌敬の作品をはじめ、多くの映像作家の作品に多数参加。今後は冨永監督の『乱暴と待機』と『庭にお願い』に参加。他、前田弘二監督『喜劇 婚前特急』が控える。 

Japanese MoviesLatest Items / Tickets Information