「TAO」 第6回:ゲスト→村上賢司 【1】
Wednesday, April 7th 2010
根本的に猥雑なもの、エロティックなものに惹かれてるんですよね、自分の人生は。
--- わたしが村上さんの作品を拝見するきっかけは、『伊勢エロスの館: 元祖国際秘宝館』と『性愛の里 北海道秘宝館: その耽美な世界』の秘宝館DVD2作品だったんですが、秘宝館を撮られるきっかけというのは?
村上賢司(以下:村上):飲み会ですね。その時、初対面だったんですけど、 ローランズ・フィルム(その2作品の発売元)の(プロデューサー)熊谷さんに「何か企画ないですか?」っていうことでいろいろ話してたんですよ。偶然なんですけど、以前から知っているアルゴ・ピクチャーズの細谷さん(・・・ここからは村上さん談としてお読み下さい→”タコ社長”って呼ばれてて、中野武蔵野ホールの元おもしろ支配人。邦画界の有名人なんですけど、細谷さんのような方が生きていけるのは、偉そうな言い方かもしれないけれど、日本映画の豊かさを象徴してるんじゃないですかね。この前、誰かが言っててちょっと感動しちゃったんですけど、「細谷さんはいつもいつもいい加減なことばかりを言ってるけど、権力とか強いものに対する怒りが根底にあるから信用出来るんだ」って。その言葉にはグッときましたね)と熊谷さんと僕は同じ大学で、 僕が一番年下なんですけど、そういう関係というか因果もあって。その頃、ネットのニュースで「元祖国際秘宝館が閉館する」って知ったんですよね。だから、「あの秘宝館が閉館するから記録しませんか?」って、確信はなかったんですけど、僕が提案したんですよ。そしたら、ほぼ即決で「撮りに行こう!」と。熊谷さんが「僕が話しつけるから」って言ってくれて。で、「大阪のキャメラマンを僕が手配しますんで」って話をして、1週間くらいだったかな?そのくらいの期間で撮ることが決まりましたね。
--- 熊谷さん発信ではなかったんですね。
村上:村上提案(笑)。熊谷さんを僕がそっちの世界に引き込んだっていう感じかな。元々お笑いの上島竜兵さんとかおぎやはぎさんのすごいおもしろいビデオとかを作ってる方だったので、最初はそっちのバラエティー系で考えてたんですけど、秘宝館が自分の趣味にすごく近かったということもあって。
--- 閉館のタイミングと秘宝館が趣味に近いということがちょうどぴったりあったということで。
村上: そうですね。僕、『デコチャリ野郎』って作品を撮ったんですけど・・・。
--- 拝見させて頂きました。
村上:ありがとうございます。あれって、観た方は結構笑っちゃうんですけど、彼らは真剣にトラックの愛を表現してるんですよね。でも18歳になるまで免許が取れないから、彼らはそのたまらない愛をね(笑)、デコチャリにぶつけてるんです。おもしろい現象だなって思うのは、18歳になって免許が取れるとデコチャリを壊すんですよね。中には偶然残るものもあるんだけれど、基本的には壊してしまって、あそこに付いてたパーツを「トラックにいつか付けるんだ」っていうのが彼らの夢なんです。その”儚い芸術”っていうものを「これ、記録しないとヤバイじゃん」って思って必死に記録した。写真で撮る方はいらっしゃるけれど、あの光の点滅だとかは映像で撮っておかないとって思ってね。
でね、そんな風に目の前でなくなる運命のすごい芸術があるのに映像に携わってる者として、「記録しない」っていうのは、将来の人間達に怒られるんじゃないかっていう強迫観念みたいなものが自分にはありましてね(笑)。例えば、法隆寺だとか清水寺とかは放っておいても残るけれど、こういうものはまず残らない。自分も以前そういうものに対してアクセスしようとしても何にも記録が残ってないものが多々あって、それで地団駄を踏んだ経験も何度もあるから、残したいっていう強い思いがあって、熊谷さんに提案したっていうのはありますね。だから、もし熊谷さんがダメだったとしたら、自分が自力で行って撮ってたかもしれないし・・・って、すいません。僕、話が長い&横道にそれるのがすごいんですよ(笑)。
--- 横道にそれたインタビューの方がおもしろいって思っているので・・・。
村上:あ、あれすごかったね、都築(響一)さんのインタビュー(笑)。
--- 読んで下さったんですか?(笑)。ありがとうございます。
村上:都築さんは本当、パワーのある方だよねえ。
--- 先ほど、村上さんのお話にあった「なくなってしまうから記録しよう」という精神といいますか、その思いは都築さん、とても強く持たれていますよね?後ほど、都築さんとの関係についても伺いたいと思っているんですが、秘宝館はご自身の趣味というところでは何かありますか?
村上:やっぱり、それについてはずっと考えてるんですけど、根本的にああいう猥雑なもの、エロティックなものに惹かれてるんですよね、自分の人生は。これは自分の出生の問題にかかわると思うんです。群馬県高崎市に生まれたんですけど、県庁は前橋があるんですけど、街としては高崎が一番大きくて、そこの中心部に育ってたんですね。近所に映画館が8つくらいあって、繁華街っていうよりも、歓楽街。自宅の隣がキャバレーでトップレスの女の子が踊ってるようなところで、ちょっと近所に行くと、ストリップ小屋だとかピンク映画館があった。今じゃ考えられないんですけど、もう30年以上前、自分がガキの頃にはピンク映画の裸の女の人のポスターが電柱にいっぱい張ってあった。そういうところに住んでたんですよ。だから、ある種のエロティックなものが氾濫しているような街に育ってて、子供って街中を探検しますよね?そうすると”大人の事情”みたいなものも何度も垣間見たっていうような経験があるっていうことと・・・ 。
もう1つ自分の中で重要だと思ってるのは、自分の実家が新興宗教の支部をやっていたっていうことですね。今は完全に脱会してるんですけど、子供の頃は信仰していて、いつも100人ぐらいの信者さんが祭壇に向かってお経をあげていたのを見ていた。そんな、ある種の宗教的な空間とその周辺にある猥雑な空間が重なり合ってるようなところ、混ざり合ってるようなところ、混濁しているようなところで生きていたっていうのがまずあって。あと当時、とにかくテレビが大好きだったんですよね。特にテレビ東京の裸丸出しの俗悪番組とか(笑)、日テレの「11PM」とかああいうものを観てたわけですよ、耳どしまだったんで。でもゼロ年代ぐらいから気付いたらほとんどなくなってるっていうのがあって。だから、自分の中のエルドラドみたいなものを探してるんじゃないですかね(笑)。
--- 秘宝館に行かれたことはもちろん?
村上:あります、あります。ただ、元祖国際秘宝館は中に入ったことがなかったんですよ。これは本当に反省すべきことなんですけど、伊勢には・・・あの近くまでは行ってるし、あの看板も見てるんですけど、「また来ればいいや」って思って、別の用事もあるから通り過ぎてた…。でも、それがよくないんです よね(笑)。(強調して)「ああ、見れないで終わっちゃった」っていう経験、何回もありますよ。秘宝館に限らず、人間とかもそうですよね。人間だっていつか死ぬわけだから、「ああ、あの時会っておけばよかった」って悔しい気持ちになったことが何度もある。だから、「ああ、行きたかったんだよなあ」っていうのはもうやめようっていう思いがずっとあって、提案したのもありますね。
--- 村上さんが撮られた秘宝館の2作品は、本当に淡々と記録として残されているという印象が強かったんですが、熊谷さんもそのことについてお話されていました。「秘宝館の入り口から出口までカットすることなく、館内を全部、細部まで記録したい」と。その提案については、熊谷さんとご相談されたんですよね?
村上:そうですね。カットする理由がないですからね、全てが愛おしいから。もう本当にね、展示物の横にある折り紙の鶴だって愛おしいくらいですよ。それをカットする理由っていうのは全くないし、これを言うとすごく誤解を生む話かもしれないんですけど、早送りしてもらっても全然いいんですよ。観た方が自分のおもしろいものを探してくれればいい。だからね、いわゆる「作品」じゃないんですよ。監督って名乗ってるから作品だっていう風に言われちゃうかもしれないし、他の仕事ではキチンと編集で取捨選択しているけど・・・あれはもう、撮ったものは全てが正解だから。あとはもう順番に並べていって、「こういうものがありました」っていうものをパッケージしていくのがやっぱりいいんじゃないかなって。これはDVDオンリーのものだから。本当にバカみたいなことを言うけれど、将来、未来人がバーチャルリアリティでこれを再現出来るくらい撮っておいた方がいいんじゃないのかなっていうことで す。「あっち観たかったのに」「こっち観たかったのに」っていうことにならないためにも、映像はいっぱいあった方がいいじゃないですか。
--- 1作目を撮られた後に「北海道秘宝館を撮ろう」と思われたのは、あそこも「もうすぐ閉館してしまうから」という理由で?
村上:あれはね、情報が入ったんですよ、「北海道秘宝館が危ない!」って(笑)。
--- 「北海道秘宝館が危ない!」(笑)。
村上:すごい言い方ですけどね(笑)。
--- その北海道秘宝館の後、村上さんが撮られたものではないですが、『石和秘宝館 ロマンの館 〜十年の眠りから目覚める異形の芸術たち〜』と『韓国済州島 秘宝館 / 三館』がローランズ・フィルムさんから2作品出ましたし、熊谷さんはすっかり秘宝館に魅了されてしまったんですね(笑)。
村上:魅了されてるよね(笑)。韓国のもそうですけど、記録しておかないと「もったいないなあ」って思うんですよね。だって、元祖国際秘宝館なんて、民俗学的な貴重な資料になり得るものだから。まあね、あれが事業仕分されたら、蓮舫(議員)に一発で仕切られちゃうと思うんですけど(笑)。でも、ちょっと言い過ぎかもしれないけれど、将来の人に「日本人ってこういうものだったんだよ」っていうことを知らしめる最高の資料と思うんですけどね。あそこには創立者の性的な妄想だけでなく、当時の日本人の集団的な性意識も多分に表現されているはず。本当に「こんな素晴らしい芸術的資料ないじゃん!」って思うんですけどね。
--- わたし、秘宝館の何かのオブジェを部屋に飾りたいくらいです。
村上:あれ、全部捨てちゃったんだよ!壊しちゃったんだよ!もったいないよね。一部買った人もいるって話は聞いてるんですけど、でもやっぱりもったいない。国際秘宝館は行かれたことはあるんですか?
--- 国際秘宝館はないんです。熱海秘宝館と珍宝館には行きましたけど・・・。
村上:もしかして違ってたらごめんなさいなんですけど、「熱海(秘宝館)と別府(秘宝館)は大丈夫だ」ってよく言われてはいますけどね。熱海も別府も「お客さん、来ない、来ない」って言ってはいてもそれなりに人は来てて、経営的に成り立ってるから大丈夫だけど、北海道(秘宝館)はもうなくなる・・・で、鬼怒川秘宝殿と嬉野武雄観光秘宝館はもうヤバイ。特に嬉野はヤバイですね。
--- 次に映像として残す場合は嬉野・・・?
村上:嬉野しかないですね。本当かどうかわかんないですけど、情報によると、秘宝館というよりは併営しているアダルトショップで何とか食いつないでるっていう。でも、規模的には嬉野は大きいし、撮らないといけないなとは思ってますけどね。
--- 閉まる前に行きたいとは思ってるんですけど、佐賀ってなかなか行かないので(笑)。
村上:まあ、行かないよね(笑)。だってさ、北海道秘宝館はまだ気軽に行けますよ。実は札幌から結構近いんですよ、あれは車で1時間ぐらいの定山渓温泉にあるから。佐賀って・・・ちょっとありえないよね(笑)。
--- ええ。他に何があるのかもいまいち・・・(笑)。
村上:がばいばあちゃんぐらいじゃない?(笑)。でも、僕は取材とかで「何だこれ!?」っていうものがあるところに行くんですけど、ロードサイドのそういう何とも言えない、よくわからないところにぽんっと放り出されるのって、 本当にたのしいですね。
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