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「TAO」 第6回:ゲスト→村上賢司 【2】

Wednesday, April 7th 2010

性的なものも含めて、雑多であって矛盾してるものが人間だから、それが排除されるような法律なんて、本当になくなってしまえばいいのになって思いますけどね。



---  撮りたい欲求が沸くというか・・・。


村上:そうですね。秘宝館とかに関しては、仕事というか意地だね。


---  秘宝館サイドは撮影されることに対して、協力的なんですか?


村上: それは熊谷さんが詳しいんですけど、基本的には協力的ですよ。ラブホテルもそうなんですけど、やっぱりね、撮って欲しいんですよ。自分が携わってるものが「すごいものだ」っていうことはみなさんもうわかってるので、本当に協力的ですね。


--- ちなみに北海道秘宝館はどのくらいの時間で撮影されてるんですか?


村上:2日間丸々ですね。


--- その2日間は営業せずに?


村上:いや、営業しながら。あれを撮った時は開けたままやってたんですけど、それだけお客が来ないってことですよね(笑)。


--- 館長の川野准子さんのインタビューがすごかったですよね(笑)。


村上:壮絶ですよね(笑)。あれね、本当にもう帰る寸前で、熊谷さんも「村上、やばいぞ。フライトに間に合うまであと○分しかないぞ」とかって言われたんですけど、「いや、あと30分何とかして下さい」って言って。「空港で丼とか食べる時間なんかもういいじゃないですか!」みたいな話をしながら撮ったんですけど。長澤さん、書いて下さいましたけど、滲み出る何かがありますよね(笑)。


大人のための”性地”→ラブスポット ”秘宝館”


--- ええ(笑)。村上さんの作品はインタビューが入っているところがいいですよね。秘宝館に関わって一緒に生きてきた方の生の言葉が入ることによって、そのものに対する深みが生まれるといいますか。


村上:言葉にならない滲み出る何かってありますよね(笑)。北海道秘宝館のあの館長さん、本当にいいですよね。でもあそこ、2階部分は全部廃墟だから、初めて見た時、「どうしたらいいんだろう」って思った。毎回ね、秘宝館にはレンタカー借りて行くわけですよ。「そろそろだ、そろそろだ」って、僕は1回行ってるから知ってるわけなんですけど、熊谷さんは初めてだったから何も知らなくて、「きますよ、きますよ」って着いた瞬間、熊谷さんはもう唖然としてましたもんね(笑)。「何だこれ!?すげえなあ」って。普通の人だったらあそこは近寄らない。でも、僕らが撮影してる時、駐車場に車が置いてあるから「営業してるんだ」って思ってお客さんが安心して何人も来たんですよ。あの外観は、先客がいないと怖くて入れない。で、あの観音様でしょ?昔はライトアップしてきれいだったんですけどね。


--- 入り口にいた象の定子は、大竹伸朗さんの「I LOVE 湯」にもらわれたんですよね?(笑)。


村上:そうそう。彼女だけでもね、本当に素晴らしいところに連れてってもらえて、僕、本当にうれしかったですよ。知った時は泣きそうになった!だって、大竹さんの芸術、本当に素晴らしいじゃないですか?あの風呂場の浴場に彼女が鎮座してるっていうのは、本当「ああ、よかった」って思うよね。今まで野ざらしだったからね。


--- 北海道の寒いところで。


村上:そうそうそう。あの横にね、もう1匹ゴリラがいるんだけど(笑)、「あいつ、どうするんだろう」って。都築(響一)さんもね、1つ秘宝館持っちゃってるからね。


---  埼玉にそのために倉庫を借りられてるんですもんね(笑)。


村上:ね、本当どうすんだよっていうさ(笑)。維持費とか大変だと思いますけどね。


---  わたしはまだ、その「I LOVE 湯」には浸かりに行ってないんですけど、行った時には象の定子がいる様子をちゃんと見てこようって思ってます。


村上:いやあ、僕、泣くと思う。


---  ドラマチックですよね。


村上:ドラマチックですよ。「いやあ、お前、よいところにもらわれてよかったなあ」って。本当に報われたよね。戦時中、上野動物園の象が毒入りりんごを食べなかった話以上に泣けますね、僕には。


---  先ほどから都築さんのお話もして頂いてますが、村上さんが撮られた秘宝館DVD2作に都築さんがコメントを書かれていますよね?出会いというのは?


村上:「I LOVE 秘宝館」 を編集した方の紹介で熊谷さんと都築さんに会いに行って、「こういうことをやっているんですがコメントを頂けますでしょうか?」っていう感じでお会いしたんですよね。


---  そこからのつながりで今度はラブホテルシリーズでお仕事を?


村上:そうですね。


---  「ラブホテルを撮ろう」というのも秘宝館からの流れだと思うんですが「なくなってしまうかもしれない素晴らしい芸術を記録しよう」ということで映像に?


村上:秘宝館以上にラブホテルは自分にとっては身近なものなんですよね。さっきも言ったけれど、「11PM」とか「トゥナイト」だとか、あとは「金曜スペシャル」とか「土曜ワイド」だとかああいうものを観てるとラブホテルが出てくるわけですよ、回転ベッドとかが。で、子供ながらに「大人になったらいつか、ああいうところに行くんだ!」って思ったんですよね。でも、自分が大人になったらもうないんですよ。その理由の1つが金益見(きむいっきょん)さんの「ラブホテル進化論」とかにも書かれてる通り、新風営法の影響であろうことを知って。逆境というか、ある種の法律の問題でなくなっているっていうことを知った時に「ああ、これはもう撮らなきゃいけないな」って思いました。これはすごく真面目な話なんですけど、特にラブホテルに関して言うと、新風営法は完全な悪法だと思ってますから、公言しますけど(笑)。だから、その悪法によってああいう素晴らしいものがなくなっていくのは本当にバカバカしいし、怒りとは言わないですけど、「情けないなあ、この国は」っていうような気持ちは本当にありますね。

だって、以前からある、ああいう素晴らしいものが誰にも迷惑もかけてないのに壊される状況に追い込まれてるっていうのはおかしいですよね。法律を適用したり、運動して排除しようとしてる人達に「人間っていうものをどういう風に考えてるんですか?」って聞きたい、本当に。それに、ああいうものが排除されると僕の子供時代を否定されてるような・・・ああいうものが「学校の周りにあっちゃいけない」だとか、「家の近所に出来るのが嫌だ」とかって言いますけど、まさに僕なんか、そういうものに囲まれて生きてたんで(笑)、「じゃあ、僕は一体何なんですか?」っていう、すごく個人的な思いもありますけど。性的なものも含めて、雑多であって矛盾してるものが人間だから、それを否定するような法律なんて、本当になくなってしまえばいいのになって思いますけどね。


---  わたし、ラブホテルコレクションに収録されているホテルはどこにも行ったことなかったんですけど、すごく行きたくなりました。


村上:ぜひ、行って下さいよ(笑)。あ、これ・・・実名挙げちゃっていいのかわからないし、HMVの方に言うとあれかもしれないですけど、今僕ね、一番おもしろいと思う人というか物事って・・・新宿のジュンク堂の6階にある”ふるさとの棚”って知ってます?


---  ものすごく濃い・・・(笑)。


村上:そう。あの棚を一人であんなすごいことにしちゃってるのがあそこの書店員の満薗さんっていう女性の方なの(笑)。「散歩の達人」(巻頭特集:本屋さんが面白い!)でも特集されてますよ。彼女、本当にすごくて、地方にある出版物とかも自費で買って、売れなかったら自分で買い取ってるんだよね、たぶん。で、満薗さんも秘宝館だとかラブホテルとかそういうのがすごく好きな人なの。


---  あの棚のざわめきはその満薗さんの仕業だったんですね(笑)。


村上:そう(笑)、彼女の仕業です。秘宝館も行くし、ラブホテルも行くし、確か石和の廃墟の秘宝館行ってますよ。満薗さんはヤバイ!あの人マジヤバイ(笑)。


---  あの人マジヤバイ!(笑)。


村上:ヤバイ!(笑)。来年は満薗が・・・あの棚がくる!(笑)。よく「ネタがない」とか「企画がない」とかっていう人がいるんですけど、あそこに行って1時間立ち読みすればネタなんかもう本当に100個くらいありますよ(笑)。だからあんまり言いたくないんですけど、ネタの宝庫ですよね、あそこは。


---  彼女はどこから情報を得てるんでしょうね?


村上:口コミだと思う。例えば、彼女もいわゆる性に根差した文化みたいなものに興味があって、地方の自費出版とかでそういう繁華街の思い出みたいなものを書いてるおじさんとかがいるわけですよ。僕の家の実家周辺は柳川町ってところなんですけど、その近所が昔の”赤線”なんですね。で、その”赤線”の思い出を本にしているたばこ屋のおやじがいるんですよ。その話を満薗さんにしたら、その本、速攻で入れてましたもん。雑談中にメモ取って、調べて、ぱって置いておくみたいなスタンスですよ。だからやっぱり、書店の○○本棚大賞じゃないですけど、自分の趣味丸出し?(笑)みたいなそういうのがあるのはいいなあって思いますよね。ああいう何かタコシェ的と言おうか、模索舎的なスタンスのお店じゃないと面白くない・・・。

だから本当ごめんなさい・・・また脱線するようだけど、僕は東京に出てきてもう20年で「ノスタルジーを語らせて下さい」みたいな歳になっちゃったんですけど(笑)、90年代初期の頃の東京っておもしろかったんですよ。まだネットがなくて、オウム(真理教)の問題もなかったから結構めちゃめちゃで、そういう変な店がいっぱいあって、街を歩くのがすごくたのしかった時代だったんですけど、今は資本の論理でそういうものがどんどんどんどんなくなっている。地方のロードサイドはもっとすごいですよね。北海道ですら仕事で国道を走ってると、今どこを走ってるのかがわからなくなる。洋服の青山があって、松屋があって、ブックオフがある。いや、その風景を実はね、僕は美しいと思う瞬間はあるんだけれど、どこに行っても同じならば、あそこまでコアに出していかないとダメなんじゃないかなって思いますよね、ソフト作りの方もね。


---  「DVDが売れなくなっている」というこの状況はこれからもどんどん進みそうですよね。


村上:やっぱり、Youtubeがあるからね。あれってやっぱり、おもしろいじゃない?子供の時に見てたCMを集めてたものを観ていると「大人帝国なんてここにあるじゃん!」って思うよね。大人帝国は壊滅してないんですよ。もうみんながみんなそれぞれのデスクトップのモニターに構築しているんですよね(笑)。で、あれはタダじゃないですか?今の映像制作は大量の無料アーカイブとの戦いなんですよ。僕は映画も作ってますけど、昔の映画とは真っ当に戦えないですよ。やっぱり、大資本をかけて、今じゃ考えられないくらいの労力で芸術的なものをやっている。

とは言いながら、例えば、黒澤明監督の『七人の侍』だとか、溝口健二監督の作品みたいなものがいいから「昔の映画はよかった」って簡単に言う人がいるけど、それは違って、昔の映画だって、本当につまんなくってクソみたいな映画っていっぱいありますよね。で、そのクソみたいな何百本の映画の山に咲いた一輪の花なんですよね、名作映画は。今ももしかしたら割合は一緒ですよ。でも、昔の風景が全編に広がってるから、ストーリーがつまらなかったとしても面白く観れちゃうんですよね。だから、それらと同列で戦うのって本当に大変なんですよ。

で、ちょっと話を戻すと、「”コレクターズアイテム”になるようなソフト作りがこれからは必要なんじゃないかな」っていうのが熊谷さんと僕の中では合ったんです。要するにレンタルしてもいいんだけれど、そうではなくて、買って手元に置いて欲しい、時々観て欲しいっていうことですね。僕の中では『工場萌えな日々』からそういう感じがあるんですよね。






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