ずっとCD化されて来なかった、グレースの80年代のソロ・アルバム２枚が2in1で登場。重厚なサウンドで相棒のスコット・ジトーと共に元祖・ロック姐御の貫禄を見せ付けつつ、レゲエへのアプローチも見せる”Welcome To The Wrecking Ball!(戦慄)”、ロン・ネヴィソン及びピーター＆イーナ・ウルフ夫妻と組んで、ハードロック色を抜いたスターシップという感じのエレポップを聴かせる”Software”と、歌手・グレースの多彩さを堪能できる。その一方で、往年の”ホワイト・ラビット”を彷彿とさせる”Bikini Atoll(ビキニ環礁)”のような曲も。

｢グレース・スリックは、もう歌わない…。｣ファンにはショッキングとも取れる言葉がブックレットに踊る、グレース自身の選曲によるベスト盤。お馴染みのエアプレイン〜80'sスターシップナンバーが並ぶが、中盤以降にジェファーソン・スターシップ時代に並行して出ていたソロ・アルバムの曲が、ポンポンポンと一曲づつ入っているのが嬉しい。一方｢フープラ｣セッションの時の未発表曲Ｍ17はバーブラ・ストライツァンド張りのバラードで、この人の素の音楽性を垣間見させてくれる。ともあれ、過去にいちいち拘泥しない彼女ならではの豪快なセレクトを楽しむべし。