1617年ドレスデンにおける宗教改革ミサ
ウィルソン&ムジカ・フィアータ、ラ・シャペル・ドゥカーレ
プレトリウス、シュッツの作品
毎回凝った趣向でリスナーを楽しませる古楽アーティスト、ローランド・ウィルソンがまた興味深いアルバムを制作しました。
内容は、2013年発売の「ルター・カンタータ集」に続くルター関連アルバムで、今回は、1617年にドレスデン宮廷の教会でおこなわれたという宗教改革100年記念礼拝に使用されたとされる音楽を集めたものとなっています。
【宗教改革100周年記念行事】
マルティン・ルター[1483-1546]が、教会の贖宥状(免罪符)販売に抗議し「95ヶ条の論題」の書簡を送ったのは1517年のこと。人は信仰によってのみ救われ、聖書こそ信仰のよりどころであると説いたその書簡がきっかけとなって、宗教改革が始まったと言われており、今回のアルバムでとりあげる行事はその100周年を記念したものということになります。
100周年記念行事の当日は、若きザクセン選帝侯、ヨハン・ゲオルク1世[1585-1656]によって盛大に祝うようお達しが出たということで、朝の祝砲鳴に始まる特別な日に、礼拝堂などではプレトリウスとシュッツの作品などが演奏されたと考えられています。
【プレトリウスとシュッツ】
ミヒャエル・プレトリウス[1571-1621]は、ガブリエリなどヴェネツィア楽派の複合唱様式による当時最新のイタリア音楽を取り入れた作曲家で、1613年から1616年にかけてザクセン宮廷に仕えていました。
ハインリヒ・シュッツ[1585-1672]は、1615年からザクセン宮廷に仕え、1617年からは宮廷礼拝堂付きの作曲家となっていました。プレトリウスと同じくガブリエリに師事して腕を磨いた経歴の持ち主でもあります。
1617年の記念行事の中、宮廷礼拝堂では、彼らのミサ曲やコンチェルト、詩篇などが演奏されたと記録に残っているということです。
【演奏者】
指揮者のローランド・ウィルソンは、アメリカ出身で、ロンドンの王立音楽院で学び、ドイツを拠点に活躍中。ツィンクの名手としても有名で、またさまざまなピッチの楽器製作までおこなうほどのこだわりの人でもあります。
ウィルソンがドイツで1976年に設立した古楽器アンサンブル「ムジカ・フィアタ(フィアータ)」は、すでに設立36年という実績を持つ団体で、1992年には、声楽アンサンブル「ラ・カペラ・ドゥカーレ」を併設して拡張、現在に至っています。(HMV)
【収録情報】
● シュッツ:神はわがやぐら
● シュッツ:主に向かいて新しき歌を歌えSWV.35
● シュッツ:今ぞわが魂よ、主をたたえよ SWV 41
● シュッツ:われらにではなく主よ、御名にのみ栄光あれ SWV.43
● シュッツ:予言者イザヤにそれは起こったSWV.496
● シュッツ:どうか私たちに平和をくださいSWV.372
● シュッツ:主に感謝せよ、主は恵み深ければSWV.45
● プレトリウス:ミサ・ガンツ・トイチュ〜キリエとグローリア
● プレトリウス:われらみな唯一なる神を信ず
● プレトリウス:キリスト、汝、神の小羊
● プレトリウス:ああ神よ、御空にみそなわせ
ラ・カペラ・ドゥカーレ(声楽アンサンブル)
ムジカ・フィアタ(ピリオド楽器アンサンブル)
ローランド・ウィルソン(指揮)
録音時期:2013年10月
録音場所:ドイツ、フュルト、ミヒャエル教会
録音方式:デジタル(セッション)