深い経験と瑞々しい感性に裏打ちされた、15世紀音楽の高雅なる解釈
ルネサンス期の多声音楽は15世紀末から16世紀、すなわちジョスカン・デ・プレ以降パレストリーナを経てジェズアルドやビクトリアの時代がホットゾーンですが、その大発展を準備した「上の世代」つまり15世紀の作曲家たちは、中世とルネサンスの双方に立脚した注目すべき人物が少なくありません。英仏百年戦争やビザンティン帝国滅亡など欧州社会も大きく動いた当時、美術や音楽など芸術諸分野では先進的なフランドル地方から多くの天才が現れ、芸術愛好の為政者や知識人が多かったイタリア半島でも活躍をみせました。ここではそんな時代のイタリア芸術を象徴する、メディチ家の庇護下で建築や美術の黄金時代を迎えた都フィレンツェが舞台。この都に集ったフランドル楽派の作曲家たちの作品とともに、百年戦争の係争地フランドル地方を征したブルゴーニュ公の宮廷にも仕えていた巨匠ギヨーム・デュファイの作品を多く取り上げ、フランドル楽派初期の栄光がイタリアでいかに花開いていたかを実力派たちの名演で伝えてくれます。
「LINN」に名盤の多いゴシック・ヴォイシズは今回も少数精鋭の重唱編成で声部の交錯をクリアに伝え、折々に名手ローレンス=キングのハープが時に独奏で、あるいは頼れる伴奏として歌を彩り、遠く中世に遡る宮廷恋愛歌の伝統からの流れを浮き彫りにします。教会音楽と恋愛歌という、聖俗両面にまたがる美の双貌をじっくりお楽しみください。(輸入元情報)
【収録情報】
1. 作者不詳:畏怖すべきこの場所よ
2. ギヨーム・デュファイ[c.1397-1474]:フィレンツェの都には誉むべき娘たちが
3. フィルミヌス・カロン(生歿年不詳、1460〜1475年頃活躍):喜ばしくも薫り高きバラ
4. ヨハネス・オケゲム[c.1410-1497]:他の婦人を愛しながらも
5. オケゲム:贖罪主の母なる方よ
6. ロワゼ・コンペール[c.1445-1518]:おっしゃってください、あなたの思いを隅々まで
7. アントワーヌ・ビュノワ[c.1430-1492]:これがわたしの唯一の思い出
8. オケゲム:欠けたるところのない、美の女神の化身
9. デュファイ:コンスタンティノープル聖母教会の嘆き
10. 作者不詳:王はあなたに美しくあれと願ったのです
11. デュファイ:わたしは何もかも失った(ハープ独奏による演奏)
12. エーヌ・ヴァン・ヒゼヘム[c.1445-1497]:あらゆる美徳に満ちた彼女
13. デュファイ:わたしは気高くも善き幸運に恵まれ
14. アレクサンデル・アグリコーラ[c.1445/6-1506]:わたしは欲望に身を焦がす
15. 作者不詳:畏怖すべきこの場所よ(朗読と応唱)
16. ヨハネス・ティンクトーリス[c.1435-1511]:神の玉座に相応しき乙女よ
17. ビュノワ:酷い運命に(あなたの心がわたしをお忘れとは)(ハープ独奏による演奏)
18. 作者不詳:栄光あれ、父と子と/畏怖すべきこの場所よ(栄唱と応唱)
19. デュファイ:つい先頃、バラが次々と花開き/畏怖すべきこの場所よ
ゴシック・ヴォイシズ
キャサリン・キング(メゾ・ソプラノ)
スティーヴン・ハロルド、ジュリアン・ポッジャー(テノール)
サイモン・ホワイトリー(バス・バリトン)
エリザベス・ポール(メゾ・ソプラノ)
スティーヴン・チャールズワース(バリトン)
アンドルー・ローレンス=キング(各種ハープ)
録音時期:2022年1月12-15日
録音場所:イングランド南東部サセックス地方チチェスター、ボクスグローヴ小修道院
録音方式:ステレオ(デジタル/セッション)