新しいファゴット協奏曲を求めて
書き下ろしの編曲とオリジナル作品による
ファゴットとオーケストラのための作品集
細長い形状が特徴的な低音木管楽器、ファゴット。ファゴットは、あまりに他の楽器の音色に溶け込みやすいことから、オーケストラでは必要不可欠な楽器として使用される一方、オーケストラにソリストとして対峙する協奏曲はあまり書かれてきませんでした。そんなファゴット協奏曲の少なさから、ファゴット奏者ハンノ・ドネヴェーグ氏によりレパートリー拡大への試みが始まり、このCDが生まれました。
このCD収録曲の中で、元から作曲者によるスコアがあったものはウェーバーの『アンダンテとハンガリー風ロンド』のみ。それ以外は全てこのCDのために作曲家アンドレアス・N・タルクマンによって、別の楽器のための原曲からファゴット協奏曲に書き直され、ファゴットとピアノのための作品から協奏曲へとオーケストレーションされたものです。
チェロやヴィオラによる演奏で有名なシューベルトの『アルペジョーネ・ソナタ』に続いて、元々はヴィオラのために書かれたものを作曲者本人がファゴット用に書き直したウェーバーの『アンダンテとハンガリー風ロンド』がファゴットの軽妙さを繰り広げます。ヒンデミットの『ソナタ』の原曲はピアノとファゴット、『求婚に出かけた蛙』の原曲はチェロとピアノによるもの。ピアノ・パートから多彩な音色を聴き取り室内オーケストラで描いた編曲者タルクマンの腕が光ります。シュルホフの『ホット・ソナタ』はピアノとアルト・サキソフォーンのために書かれた曲で、当時のワイマール共和国に入ってきたばかりのジャズの影響をふんだんに受けた作品。3楽章で多用される音のスライドは、ファゴットにとっては特殊な奏法ですが、ファゴットの新しい可能性、魅力を聴くことができます。
ファゴットならではの諧謔さから、歌いこむ美しさ、さらには今まで聴いたこともないようなファゴットまで、この楽器の多種多様な表情が詰まった一枚です。(キングインターナショナル)
【収録情報】
1. シューベルト:アルペジョーネ・ソナタ D.821による弦楽合奏とファゴットのための協奏曲ト短調
2. ウェーバー:ファゴットとオーケストラのためのアンダンテとハンガリー風ロンド op.35 (J.158)
3. ヒンデミット:ファゴットと室内オーケストラのためのソナタ
4. ヒンデミット:イギリス童謡『求婚に出かけた蛙』による変奏曲
5. シュルホフ:ホット・ソナタ
編曲:アンドレアス・N・タルクマン(1,3,4,5)
ハンノ・ドネヴェーグ(ファゴット)
シュトゥットガルト放送交響楽団
グレゴール・ブール(指揮)
録音時期:2014年7月(1-3,5)、2015年3月(4)
録音方式:ステレオ(デジタル/セッション)