アーノンクール/宗教作品ボックス(CD9枚組)
ドイツ・ハルモニア・ムンディ・デジタル録音集
モーツァルト:レクィエムの手稿譜閲覧機能も!
アーノンクールがドイツ・ハルモニア・ムンディ・レーベルにウィーン・コンツェントゥス・ムジクスと録音した宗教大作を収録。これらの作品はアーノンクールにとって2度目の録音となり、年月とともに深まった解釈と自在な表現、実演ならではの迫真の音楽が、信頼篤いメンバーならではの細部まで究め尽くされたオーケストラ・サウンドと共に、決定盤と呼ぶにふさわしい内容に仕上がっています。
CD1&2
ハイドン:『天地創造』
アーノンクールは、1986年にウィーン交響楽団とアルノルト・シェーンベルク合唱団を指揮してこの作品をテルデック・レーベルにすでに録音しているため、この『天地創造』は17年ぶり、2度目の録音ということなります。前回の演奏は、モダン楽器を使用しながらピリオド楽的演奏様式を取り入れた独自の刺激的な解釈が印象的なものでしたが、今回は、ドロテア・レシュマン、ミヒャエル・シャーデ、そして日本でも人気急上昇中のクリスティアン・ゲルハーヘルという実力派歌手を揃え、気心の知れた仲間たちからなる緻密なアンサンブルを指揮して、鋭角的な表現はそのままながら、より深く作品の核心に迫る円熟の解釈を示しています。ピリオド楽器による『天地創造』の中でも、第一に指折られるべき名盤の誕生と言えるでしょう。
【収録情報】
・ハイドン:オラトリオ『天地創造』全曲
ドロテア・レシュマン(ソプラノ:天使ガブリエル、イヴ)
ミヒャエル・シャーデ(テノール:天使ウリエル)
クリスティアン・ゲルハーヘル(バリトン:天使ラファエル)
アルノルト・シェーンベルク合唱団
ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス
ニコラウス・アーノンクール(指揮)
録音時期:2003年3月26日〜30日
録音場所:ウィーン、ムジークフェラインザール
録音方式:デジタル(ライヴ)
ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス創立50周年記念演奏会におけるライヴ・レコーディング
CD3&4
ハイドン:オラトリオ『四季』
近代的ハイドン研究の創始者であるカール・フェルディナント・ポールの「ハイドンの全創作の頂点はまさに
『天地創造』と
『四季』である」という言葉は、現在も研究者のあいだでは当然のことのように認識されています。
比喩的に分類すると『天地創造』は厳粛なオペラ・セリア、『四季』は生き生きとしたオペラ・ブッファといったところで、実際に、『四季』はハイドンの時代には衣装を着けてオペラハウスで上演されたこともあったといいますから、その楽しさはまさにオラトリオ離れしたものといえるのではないでしょうか。
畑仕事の場面での『驚愕』交響曲のユーモラスな引用から、ホルンに導かれた勇壮な合唱による狩の場面、推進力に富むフーガ、賑やかに盛り上がるワイン祭りの場面にいたるまで、どこをとっても退屈さとは無縁の旺盛な活力が感じられ、オーストリアの自然の中で逞しく前向きに生きる農民の姿を通して、ハイドンが神に自然に感謝するさまがダイレクトに伝わってきます。
アグレッシヴで劇的な演奏により、ハイドン『四季』の旧来の荘重なイメージを塗り替えた
アーノンクールの1度目の録音は、ウィーン交響楽団を指揮して1987年にテルデック・レーベルがセッション・レコーディングしたものでした。
今回の2度目の録音は、それから20年を経て、さまざまな経験や研究成果を膨大に蓄積したアーノンクールが、長年の手兵であるピリオド楽器オーケストラ「ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス」と、前回と同じアルノルト・シェーンベルク合唱団を起用し、万全のソリストを揃えて臨んだコンサートをライヴ・レコーディングしたものです。
基本的な解釈は同じながら、オーケストラ・サウンドの大きな変貌や、年月とともに幾重にも深まったアーノンクールの解釈がもたらす、さらに多彩になった表現の自在さ、細部の練り上げの見事さ、実演ならではの迫真の音楽がどこから見ても完全無欠、まさに決定盤と呼ぶにふさわしい仕上がりを見せています。
ソリストは、重要な小作人シモン役に、大人気のドイツのバリトン、クリスティアン・ゲルハーヘル。若い農夫のルーカス役には、ドイツの生んだ当代最高の美声テノールで、
ヤーコプスの『四季』でも同役を歌っていたヴェルナー・ギューラ、シモンの娘、ハンネ役には、クリスティの『天地創造』でも歌っていたオーストリアのソプラノ、ゲニア・キューマイヤーというキャスティングです。
【収録情報】
・
ハイドン:オラトリオ『四季』全曲
ゲニア・キューマイヤー(ソプラノ、ハンネ)
ヴェルナー・ギューラ(テノール、ルーカス)
クリスティアン・ゲルハーヘル(バリトン、ジーモン)
アルノルト・シェーンベルク合唱団
エルヴィン・オルトナー(合唱指揮)
ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス(オリジナル楽器使用)
ニコラウス・アーノンクール(指揮)
録音時期:2007年6月28日〜7月2日
録音場所:グラーツ、シュテファニエンザール
録音方式:デジタル(ライヴ)
CD5&6
バッハ:『クリスマス・オラトリオ』
『クリスマス・オラトリオ』は、6部からなる連作カンタータ集で、クリスマスから顕現節(1月6日)にかけての日曜祝日に1部ずつ分けて聖ニコライ教会と聖トーマス教会で演奏されるべく、1734年から1735年にかけて作曲されました。福音書家(エヴァンゲリスト)の語る聖書の出来事を中心に、合唱、アリア、コラール等をちりばめた作品で、『マタイ』『ヨハネ』の両受難曲、ロ短調ミサ曲と並び、バッハの大作宗教曲としては高い人気を誇っています。
アーノンクールは、1972年から73年にかけてテレフンケン(現テルデック)・レーベルに、同じウィーン・コンツェントゥス・ムジクスと
『クリスマス・オラトリオ』の初録音を行っており、それ以前に発表してきた『ヨハネ』(1965年)、
ロ短調ミサ(1968年)、
『マタイ』(1971年)に続く4大宗教大作録音を締めくくる、オリジナル楽器を使用した最初期の試みとして大きな注目を浴びました。作曲当時の演奏様式を再現するべく合唱および独唱のソプラノとアルト・パートにはウィーン少年合唱団を起用するなど、その斬新な響きが、20世紀におけるバッハの新たな演奏様式であることを強く認識させることとなりました。その約10年後、1981年にはテルツ少年合唱団を起用し、オーストリアのヴァルトハウゼンにあるバロック教会での演奏が、
ユニテルによって映像用に収録されています。
それからさらに20有余年の歳月を経て果たしたこの再録音では、シェーファー、フィンク、ギューラ、ゲルハーヘルなど、アーノンクールが好んで共演する若手名歌手を揃えるのみならず、合唱も、これまでの少年合唱に代えて、これまたアーノンクールと一心同体の存在であるアルノルト・シェーンベルク合唱団を起用。テルデックに残された
『マタイ』『ヨハネ』『ロ短調ミサ』の再録音同様に、この四半世紀におけるアーノンクールの解釈の進化(深化)を反映し、まさに決定盤にふさわしい名演に仕上がっています。
【収録情報】
・J.S.バッハ:『クリスマス・オラトリオ』 BWV.248 全曲
クリスティーネ・シェーファー(ソプラノ)
ベルナルダ・フィンク(アルト)
ヴェルナー・ギューラ(テノール)
クリスティアン・ゲルハーヘル(バリトン)
ジェラルド・フィンレイ(バリトン)
アルノルト・シェーンベルク合唱団
ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス
ニコラウス・アーノンクール(指揮)
録音時期:2006年12月8日〜10日、2007年1月13日&14日
録音場所:ウィーン、ムジークフェラインザール
録音方式:デジタル(ライヴ)
CD7&8
ヘンデル:『メサイア』
ヘンデルの最もポピュラーな作品である『メサイア』は、1982年にストックホルムでエリック・エリクソン指揮するストックホルム室内合唱団との共演でTELDECにライヴ録音しており、名演として高い評価を得ています。
今回はそれ以来22年を経ての再録音となるもので、2003年録音のモーツァルト『レクィエム』でも証明されたように、同一作品の再録音をほとんど行なわないアーノンクールが再録音を世に問う際には、再録音を行うだけの必然的な理由があります。
録音は、テルデック時代からアーノンクールの録音を手がけてきたテルデックス・スタジオのチームによるもので、ウィーンのムジークフェラインザールの美しい音響と演奏の広大なダイナミックレンジを完璧に収録しています。ブルックナー『第9』『第5』、モーツァルト『レクイエム』、ヴェルディ『レクイエム』に続く、SACDハイブリッド仕様によるリリース。オリジナル楽器特有の個性的な響きや、4人の独唱と混声合唱の明晰な立体感を絶妙に表出した名録音。
【収録情報】
・ヘンデル:オラトリオ『メサイア』HWV56 全曲
クリスティーネ・シェーファー(ソプラノ)
アンナ・ラーソン(アルト)
ミヒャエル・シャーデ(テノール)
ジェラルド・フィンレイ(バリトン)
アルノルト・シェーンベルク合唱団
ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス
ニコラウス・アーノンクール(指揮)
録音時期:2004年12月17日〜21日
録音場所:ウィーン、ムジークフェラインザール
録音方式:デジタル(ライヴ)
CD9
モーツァルト:レクィエム
1981年の革命的なテルデック録音から20有余年を経て、モーツァルトを現代に鮮烈に蘇らせてきた巨匠アーノンクールが再び世に問う「レクィエム」の決定的解釈。ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス創立50周年記念演奏会での驚嘆すべきライヴ録音の登場です。
「この作品には、普段は日常の感情や経験を作品へ投影することのないモーツァルトとしては、異様なほど個人的・内面的な感情の高まりが、死への畏怖として渦巻いているのです」と、作曲者の強い個人的なメッセージを読み取るアーノンクールによるモーツァルト:レクィエムのテルデック盤は、同時に、アーノンクールが単なるオリジナル楽器演奏家であることを超越して、現在世界で最も刺激的な音楽家へと成長していく上での原点となった重要な録音でもありました。
当アルバムはそれから20数年を経ての待望の再録音。アーノンクール自身は、
「1981年の録音は、初めて自分の持っていたコンセプトでモーツァルトの音楽を演奏・録音できたものです。オリジナル楽器によってこの作品があのように演奏されたのは20世紀では初めての試みであって、誰もオーケストラの中で鳴るバセットホルンを聴いたことがなかったし、どのように響くかは誰も知らなかったのです。当時はまったく新しいことでした」
と振り返り、今回の新録音については、
「それ以後私のコンセプトは年月を経るにつれて自然により熟してきたので、今こそ録音し直す意味があると決心したのです」と語ります。
ある作品を再録音することについては非常に慎重であるアーノンクールが、再度その作品に対峙した時、どれほど進歩し作品の深みへと到達するかは、先頃発売されたハイドン「天地創造」再録音への各誌紙における賛辞に端的に現われています。
「この作品では、典礼文の歌詞が、強烈な実在的意味合いを持って迫ってくるのです」と語るアーノンクールらしく、歌詞と音楽の連関性へのこだわりは尋常ではありません。今回の録音では、アーノンクールとはもはや一心同体の存在といえるアーノルト・シェーンベルク合唱団を合唱に、その表現主義的なまでの歌唱でヨーロッパで最も注目されているソプラノ、クリスティーナ・シェーファーなど、アーノンクールの語法を完全に理解した独唱陣を配して、歌詞の内容を歌の言葉として徹底的に血肉化させています。
コンツェントゥス・ムジクス自体も一層作品の核心へと迫る求心的な演奏でアーノンクールの指揮に応え、ウィーンのムジークフェラインザールの美しい響きが、アーノンクールの信頼する録音スタッフによって理想的な形で収録されている点も見逃せません。
「レクィエム」はモーツァルトの弟子であるジュスマイヤーらによって補筆・完成された形で出版されたのですが、音楽的な面で誤りも多かったため、それらを是正し、より作曲者の意図に近づけるべく、音楽学者のフランツ・バイヤーが新たにオーケストレーションを見直したバイヤー版(1972年出版)が出版されました。
「作曲家としては二流の作品しか残さなかったジュスマイヤーのような音楽家が、あのような「ラクリモーサ」や「サンクトゥス」「ベネディクトゥス」を完成させられたはずがない」と、作品全体の構想はモーツァルト自身のもの、と強く確信するアーノンクールは、ジュスマイヤー版を使わず、「バイヤーはモーツァルトをよく知り、素晴らしい演奏家であると同時に音楽理論家でもあります。彼がとても立派な仕事をしているので、われわれは彼の版を使うのです」と語るとおり、1981年盤同様アーノンクールはバイヤー版を採用し、さらにバイヤーの了承を得て一部にさらに独自の修正を施しています。
※エンハンスト・データについて
モーツァルト:「レクィエム」のオリジナル手稿譜・ファクシミリを、パソコンにて閲覧することができます。(未完の作品なので、全てではありませんが)
この手稿譜・ファクシミリは、当アルバムとアーノンクールのために、特別にオーストリア国立図書館から収録許可が得られたというものです。
また、このエンハンスト・データには、演奏に合わせてスコアが自動スクロールするという機能も含まれており、視覚と聴覚の両方に訴求して作品理解を深めるというコンセプトが嬉しいところです。
【収録情報】
・モーツァルト:レクィエム ニ短調K.622(バイヤー版)
クリスティーネ・シェーファー(ソプラノ)
ベルナルダ・フィンク(アルト)
クルト・シュトライト(テノール)
ジェラルド・フィンレイ(バリトン)
アルノルト・シェーンベルク合唱団
ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス
ニコラウス・アーノンクール(指揮)
録音時期:2003年11月29日&30日
録音場所:ウィーン、ムジークフェラインザール
録音方式:デジタル(ライヴ)
ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス創立50周年記念演奏会におけるライヴ・レコーディング