しなやかで力強く、そして薫り高いチェンバロの音色
クオリティの高い録音でファンを集めているワオンレコード最新盤は、チェンバロのソロ・アルバム。チェンバロの魅力がぎゅぎゅっと詰まった宝箱のような魅力的な一枚です。
「私がチェンバロの音色を初めて耳にしたのは、幼いころ自宅にあった「子と母の名曲アルバム」という一枚のLPレコードでした。チェロのカザルスやヴァイオリンのティボーなど、有名な演奏家達の演奏が収められていた中で、ランドフスカ女史がヘンデルの「調子のよい鍛冶屋」をチェンバロで演奏していました。それまで聴いたことのない不思議な音色がすっかり気に入った私は、その曲の始めにレコードの針を戻しては、何度も繰返し聴いていたのを覚えています。
その後十数年間ピアノを学んでいた時も、バロック時代のバッハやヘンデルの作品が大好きでした。音楽大学に進んで実際に古楽器の世界を知り、何のためらいもなくチェンバロの道に進みましたが、振り返ると既にピアノを弾いていたよりも長い年月が過ぎようとしています。
今回ソロCD録音という機会を得て、大バッハの名曲をはじめ、情緒豊かなクープランのプレリュード、衝撃的なエマヌエルのソナタ・・・など、長い間ずっとあたためてきたお気に入りの作品を選び、一枚のCDにぎゅっと詰め込みました。これらの作品は、演奏者として向き合う度に毎回異なったチェンバロとのかかわり方を教えてくれる、私にとって大切な曲ばかりです。5年後10年後、色や香りや味わいが、時間の経過とともに変化していくワインに似ているかもしれません。
チェンバロという楽器のもつ「しなやかさ」や「力強さ」が、輝きのある音色とともに皆様に届きますように。」(野口詩歩梨)
【収録情報】
・C.P.E.バッハ:ソナタ ニ短調 Wq/51-4
・L.クープラン:組曲イ短調
・ダングルベール:ドゥ・シャンボニエール氏のトンボー
・J.S.バッハ:フランス組曲第6番ホ長調 BWV 817
・J.S.バッハ:プレリュード、フーガとアレグロ変ホ長調 BWV 998
野口詩歩梨(チェンバロ)
録音時期:2010年6月1-3日
録音場所:神奈川県立相模湖交流センター
録音方式:デジタル 192kHz/24bit recording(セッション)
CDは国内プレスとなります。
【野口詩歩梨(のぐち・しほり) プロフィール】
福井県・敦賀市の生まれ。幼少の頃から母の手ほどきでピアノを弾きはじめる。仁愛女子高等学校音楽科卒業。桐朋学園短期大学進学後にチェンバロを中心としたバロック音楽と出会い、同校ピアノ科を経て翌年 東方学園大学古楽器科へ入学。桐朋学園大学音楽学部子楽器科(チェンバロ専攻)卒業。同大学研究科修了。ピアノを伊原道代、雨田信子、チェンバロを故・鍋島元子、アンサンブルを有田正広、本間正史、中野哲也の各氏に師事。さらにクイケン兄弟、L.U.モルテンセン氏などのレッスンを受ける。これまでにM.ラリュー、F.アーヨ、中野哲也、本間正史など数々の音楽家や室内オーケストラと共演。また「音の輝きをもとめて」と題したリサイタルシリーズや、アンサンブル「ブラヴォー!バロック」のコンサートは、各方面より高い評価を得る。NHK教育「ふえはうたう」のほか、古楽情報誌「アントレ」制作ビデオに出演。近年は、アンサンブル山手バロッコ主催「山手西洋館シリーズ」へ出演するなど、ソリスト、通奏低音奏者として幅広く活動している。(WAON RECORDS)
野口詩歩梨のデビュー・アルバム。桐朋学園大の古楽科卒業で、豊富な室内楽経験がある。これが彼女の表現の豊かさにつながっているんだろう。リズムが立って、表情が生き生きとしている。音色にも細心の配慮をしていて、ダイナミズムも利かせている。久保田氏製作のチェンバロもいい音で鳴っている。(T)(CDジャーナル データベースより)