人それを情死と呼ぶ 鬼貫警部事件簿 鮎川哲也コレクション 光文社文庫

鮎川哲也

基本情報

ジャンル
ISBN/カタログNo
ISBN 13 : 9784334731793
ISBN 10 : 4334731791
フォーマット
出版社
発行年月
2001年07月
日本
追加情報
:
16cm,359p

内容詳細

人は皆、警察までもが、河辺遼吉は浮気の果てに心中したと断定した。…しかし、ある点に注目した妻と妹だけは、偽装心中との疑念を抱いたのだった!貝沼産業の販売部長だった遼吉は、A省の汚職事件に関与していたという。彼は口を封じられたのではないか?そして、彼が死んでほくそ笑んだ人物ならば二人いる。―調べるほどに強固さを増すアリバイ。驚嘆のドンデン返し。美しい余韻を残す長編。

【著者紹介】
鮎川哲也 : 一貫して本格推理を描く。一九六〇年、『憎悪の化石』『黒い白鳥』により日本探偵作家クラブ賞を受賞。翌年、『人それを情死と呼ぶ』を刊行(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

(「BOOK」データベースより)

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読書メーターレビュー

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  • W-G さん

    『死のある風景』とともに好きな作品。容疑者が新たに浮かび上がる時の、視界が反転するような意外性の演出の仕方や、ラストの寂しい余韻など、コンパクトな物語ながら、A級作品の風格が備わる。トリックに関しては、特に寒参りのものなど、人工的に過ぎるというか、クイズの出題、もっとストレートに悪くいってしまえばゲームチックで実現性に乏しい。にもかかわらず、社会派な匂いすら感じさせるのは、調理の腕が良いということでもある。改めて、何作か再読していくと、氏はトリックメーカーとしてカーへ通じる部分も意外に強いのだと感じる。

  • 🐾Yoko Omoto🐾 さん

    鬼貫警部と言えば、火サスで大地康雄さんが演じていたシリーズがとても印象に残っている。調べてみて驚いたのは、この「人それを情死と呼ぶ」が、このシリーズ含め6回もドラマ化されているということだ。“情死”という、どこか淫靡で哀切を漂わせるモチーフ所以であろうか。練られた偽装工作やアリバイトリックを、僅かな綻びから手繰っていく精妙なプロセスは見事。50年以上も前の作品であるため、現在の科学捜査ではまず通用しない点はあるが、罪に罪を重ねなければならなくなる悲しき悪循環が、人の罪に纏わる不変を感じさせる名作である。

  • へくとぱすかる さん

    読み始めてたちまち、ぐいぐいと作品世界に引きこまれた。恐ろしいほどの文章力とリーダビリティ。全く傾向は異なるが、傑作『黒いトランク』と比べても遜色がないほどトリッキーな作品である。汚職事件と情死とくれば、発表当時隆盛をきわめていた社会派ミステリの軍門に下ったかと考えてしまうが、そこは本格ミステリの驍将である作者のこと、むしろ徹底的に本格派を貫くのである。アリバイトリックの見事さに脱帽するだけではなく、逆転また逆転で、読んでいて目が離せなくなる。そしてタイトル。これはやられた! そうだったのか。溜息が出る。

  • 森オサム さん

    贈収賄事件に関与していた人物が愛人と失踪する。後に山中で二人の死体が発見され、先を悲観しての心中で有ったと思われたのだが、些細な事をきっかけに偽装では無いか、との疑問を持たれる事となる。1961年の作品なので、時代の違いを感じる違和感は仕方の無い所でしょう。さて、トリックはやはり大したことは無い。しかし小説としてとても美しく、登場人物の全てが息づいている事に感動した。本格作家のイメージだけで単純に測れない、叙情や余韻、心理描写の巧みさが有る。タイトルが素晴らしい、と思う感性をお持ち方は読んで損は無いです。

  • goro@the_booby さん

    収賄事件を苦に愛人との無理心中事件と思われたが、割り切れない妻と妹の由美が事件を追う。鬼貫警部物だけど由美の推理が犯人を追い詰めて行く姿が一途で良い。これは本格推理の度合いは低いが最後の哀愁感は心に残る。アリバイは崩すよりも作るほうが難しいわ。崩せなかったら推理小説じゃなくなるし、カタルシス得られないものねぇ〜。

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人物・団体紹介

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鮎川哲也

1919年東京生まれ。南満洲鉄道勤務の父に伴い少年時代を大連で過ごす。’43年「婦人画報」の朗読文学募集に佐々木淳子の筆名で書いた掌編「ポロさん」が入選。’49年「宝石」百万円懸賞コンクールに本名(中川透)で応募した『ペトロフ事件』が一等入選。’56年には講談社の「書下し長篇探偵小説全集」の13巻募

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