さくら 小学館文庫

西加奈子

基本情報

ジャンル
ISBN/カタログNo
ISBN 13 : 9784094082272
ISBN 10 : 4094082271
フォーマット
出版社
発行年月
2007年12月
日本
追加情報
:
16cm,413p

内容詳細

ヒーローだった兄ちゃんは、二十歳四か月で死んだ。超美形の妹・美貴は、内に篭もった。母は肥満化し、酒に溺れた。僕も実家を離れ、東京の大学に入った。あとは、見つけてきたときに尻尾にピンク色の花びらをつけていたことから「サクラ」と名付けられた十二歳の老犬が一匹だけ。そんな一家の灯火が消えてしまいそうな、ある年の暮れのこと。僕は、実家に帰った。「年末、家に帰ります。おとうさん」。僕の手には、スーパーのチラシの裏に薄い鉛筆文字で書かれた家出した父からの手紙が握られていた―。二十六万部突破のロングセラー、待望の文庫化。

【著者紹介】
西加奈子 : 1977年、イラン・テヘラン市生まれ。大阪育ち。関西大学法学部卒業後、フリーライターなどを経て、2004年に『あおい』でデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

(「BOOK」データベースより)

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読書メーターレビュー

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  • ヴェネツィア さん

    本書は西加奈子さんの第2作目にあたるらしい。文体は、まだ多分にアマチュアっぽいところがあるのだが、おそらくはそれをカヴァーするためもあって、22歳の「僕」の一人称語りになっている。万事に華やかなお兄ちゃんと、超絶美人の妹にはさまれた地味で目立たない「僕」の設定はなかなかに巧みだ。当時、西加奈子さんは弱冠28歳だったのだが、男性の生理をよくわかっていることにも驚く。また、「いつか、いつか、お父さんとお母さんに、嘘をつくときがくる」というサキコさんのセリフも、唸るくらい見事に的を射ているのである。

  • ちょこまーぶる さん

    まずは全くの勘違いをしていた。「さくら」という本題から勝手に桜だと思っていて、春になったら読むためにずっと積読本にしてしまっていた。背表紙に老犬の名前である事が書かれていた。家族の明と暗を描いた作品であるが、暗があるから家族は明になる事が出来るし、そしてお互いに認め合いながら前に進んで行くことの大切さを改めて教えさせられる思いがした作品でした。それにしても、文章が素晴らしくて、柔らかく、そして比喩表現の情景が眼前に浮かび上がるような文章でした。で、もっとも好きな文章は老犬サクラのしゃべり文に癒されました。

  • 風眠 さん

    ひとつの物語にいろいろな要素を詰め込みすぎていて、浅く広くという印象なのが残念。事故、死、愛、嘘、広汎性発達障害、摂食障害、アルコール依存、性、暴力・・・どれかひとつを柱として描き、物語に深みをもたせてもよかったのかもしれないな、と思った。弱者を安易に扱うかんじも、私は好きじゃない。救いは、家族が当たり前のように幸せだった頃のことが長く丁寧に書かれていたこと。ふんわりと温かい。そして兄の死後、妹の美貴がずっとため込んでいた感情を爆発させるシーンへと続くクライマックスに胸がつまる。幸せの描写が心に響く物語。

  • 鉄之助 さん

    妙に心に響く、フレーズがたまらない。「この世にあるものは、全部誰かのもので、全部誰かのものでもない」。キリン公園で出会ったおじいさんの言葉だ。目が見えなくて、「星の形は見えんでも、光は感じることができる」と言う。「わしのこの目ぇはな、わしのもんやけど、わしのもんや無い。神様に返すんや」とも。この物語を読むと、つくづく「永遠なんてものは無い」と感じた。しかし、家族の愛は、確かにそこに在った。

  • hit4papa さん

    美男・美女の両親、兄、妹。背だけは高い次男の主人公を入れた五人家族+犬のさくらの日々が描かれた作品です。主人公が帰省すると、家庭は、居心地が悪そうな父、美女のおもかげがななくなった母、死んでしまった兄、冷めきった妹、具合の悪いさくらで不穏な雰囲気。物語は、そこから家族とその周辺の過去を反芻し、現在へと繋がります。あまりに残酷な出来事に乱れる家族の絆。終盤に語られるエピソードに胸が締めつけられることでしょう。ラストは、ホロリときてしまいます。著者の初期の作品ですが、言い回しがちょっとくどいかもしれませんね。

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人物・団体紹介

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西加奈子

1977年イラン・テヘラン生まれ。エジプト・カイロ、大阪府で育つ。2004年に『あおい』でデビュー。07年『通天閣』で織田作之助賞、13年『ふくわらい』で河合隼雄物語賞、15年に『サラバ!』で直木賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

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