【松村禎三追悼盤】
松村禎三作品選集 V
一音一音そのものに生命の根源に達するものを求めて。
本CDは、2007年8月にこの世を去った作曲家、松村禎三が生前から希望していたカップリングに基づき企画されていましたが、松村の急逝により図らずも追悼盤となってしまったアルバムです。
1968年に〈管弦楽のための前奏曲〉を完成させて以来約5年ぶりのオーケストラ作品となり、しかも初めての〈協奏曲〉ということで、新たな音楽世界を展開させた意欲的作品として注目を浴びた〈ピアノ協奏曲第1番〉。1972年初めより73年6月にかけて作曲された協奏曲です。創作するにあたり松村は、「天地から立ち昇る自然なうたでありたい」と念願し、「近来喪われてしまった、音楽の本来的な豊饒さを、再び回復できることを願って」とのコメントを残しています。
一方、1983年に作曲された〈チェロ協奏曲〉は、1981年の日本フィル25周年記念事業の一つとして初演されるべく委嘱されたものです。松村はこの作品において、チェロという楽器をオーケストラの発言の生理とは異なるものとしてとらえ、オーケストラと独奏チェロとが夫々十分に自らの生理で主張し、しかも互いに殺し合うことなく渾然とした一つの世界を作っていくことを試みています。
ブックレットには、生前の松村と交流があった西耕一氏の協力による「松村禎三作品一覧」、「レコード芸術」誌より弊社プロデューサー井阪紘と松村の対談記事(抜粋)を掲載。音楽を通じ常に“生命”を見つめ続けた作曲家の軌跡をお聴きください。(カメラータ)
松村禎三:
・ピアノ協奏曲 第1番(1973)
野平一郎(ピアノ)
下野竜也(指揮)/東京都交響楽団
・チェロ協奏曲(1983)
上村昇(チェロ)
外山雄三(指揮)/NHK交響楽団
録音:2007年1月 ほか/東京(ライヴ録音)
JVC K2レーザー・カッティングによる高音質
2007年に逝去した松村禎三追悼ともいうべきアルバム。音を細かく動かしながらじわり情動を積み重ねていくことで、人間の根源的な生命力を突き動かすこの作曲家の音の生理が端的に現れる協奏曲2作。細部に耳を澄ますよりも響きの全体をカラダで受け止めるべし。(中)(CDジャーナル データベースより)