基本情報
内容詳細
本書は、デジタルファブリケーションとメディアを支える技術や概念、応用分野を「離散的設計」「コンピュテーショナルデザイン」「インタフェースとファブリケーション」「パーソナルファブリケーション」といった4つに分け、それぞれを独立した章で解説します。
第1章では、「デジタル」本来の意味に立ち返り、離散的設計によるものづくりの本質を追求します。広義のデジタルファブリケーションから、デジタルマテリアル、アーキテクティッドマテリアル、セルフアセンブリシステムと言った狭義の離散的ものづくりまでを網羅し、最先端の幅広い実例とともに、その意味と意義について議論します。そして、デジタルファブリケーションが地球環境問題に立ち向かうことができる技術でもある可能性を示します。
第2章では、コンピュテーショナルデザインを主題とし、従来は属人的であった設計のプロセスを数理的な最適化問題としてモデル化する手法、および数理技術と計算機を駆使することによって、人間の思考力の限界を超えた高度な設計、あるいは効率的な設計プロセスを達成しようとする試みを紹介します。設計を最適化問題の視点から捉えるという姿勢を徹底し、機能性に着目したものづくりを実現するためのアプローチを手描きイラストとともに解説します。
第3章では、インタフェース技術やインタラクションデザインの観点からデジタルファブリケーション領域を概観し、その事例や展望を整理して紹介します。そのなかでは、ものの造形だけではなく、センサやアクチュエータと一体化して、形状を動的に制御しインタラクションに用いる研究を複数取り上げます。さらに、形状ディスプレイあるいは形状変化インタフェースと呼ばれる研究領域の兆しや課題について議論し、デジタルファブリケーションおよびメディアアートの未来像を示します。
第4章では、ユーザー視点からのデジタルファブリケーションを取り上げ、一般市民が手軽にものづくりに関わることができる社会づくりへの取り組みを紹介します。大量生産された商品の中から自分の欲しいものを選択するのではなく、欲しいものを自分でデザインして使うことが当たり前の世の中になったとき、私たちが自分の欲しいものを設計・制作するために必要な支援ツールのあるべき姿を模索します。
それぞれの章は、各分野の第一線で活躍する著名な研究者が執筆しています。デジタルファブリケーションとメディアという共通のテーマを掲げながらも、それらをどのような視点から捉え、考察するか、そしてどのように整理しまとめるかは執筆者ごとに大いに異なるものとなっています。本書では、このような執筆者ごとの独特なスタイルを統一することをせずに敢えて残すことで、それぞれが長年にわたり取り組んできた研究に基づく深い知識と情熱を感じられるものとなっています。本書を手に取った読者の皆様が、各章を読み進めることで、デジタルファブリケーションの幅広い領域に触れることができることでしょう。
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