ロバート・マンの芸術〜ひたむきな音楽への愛と情熱
ロバート・マン指揮サイトウ・キネン・オーケストラCDデビュー
このアルバムには、ロバート・マン(1920−)がサイトウ・キネン・オーケストラを指揮したモーツァルト、バルトーク、ベートーヴェンの3作品が収められています。
1961年、ジュリアード弦楽四重奏団の一員として齋藤秀雄から桐朋学園のマスター・クラスの指導に招かれたロバート・マンは、桐朋学園オーケストラの演奏するシェーンベルクの「浄夜」を聴き驚嘆、以来、齋藤秀雄と親密になったロバート・マンの指導を、渡辺實和子(vn)、今井信子(va)そして東京クァルテット等が受けるようになり、彼らは世界に大きく羽ばたいて行きます。
そんな背景があり、ジュリアード弦楽四重奏団がサイトウ・キネン・フェスティバル松本に1993年に招かれます。その後、ロバート・マンが、1946年以来50年にわたり在籍したジュリアード弦楽四重奏団を1997年に引退すると、1999年からは室内楽や自作の演奏、次世代の教育のために、ロバート・マンは毎年のようにサイトウ・キネン・フェスティバルを訪れるようになり、2003年には指揮者としてもデビュー、このCDには彼のサイトウ・キネン・フェスティバル松本における指揮者としての演奏の記録が生き生きと収録されています。
ロバート・マンの指揮するサイトウ・キネン・オーケストラには、かつての教え子も加わっており、バルトークの弦楽のためのディヴェルティメントでは、渡辺實和子(Vn2)、今井信子(va)、原田禎夫(vc)がソロも担当し、深い味わいのある感動的な演奏を繰り広げています。
今年(2009年)のサイトウ・キネン・フェスティバルには、オーケストラAプログラムを89歳となるロバート・マンが指揮することになっており、期待と注目を集めています。(fineNF)
齋藤秀雄とロバート・マン
『1961年、桐朋学園の指導に訪れたロバート・マンは、桐朋学園オーケストラの演奏するシェーンベルクの「浄夜」を聴き驚嘆。以来、齋藤秀雄と親密になったロバート・マンの指導を、渡辺實和子(vn)、今井信子(va)、東京クァルテット等が受けるようになり、彼らは世界に羽ばたいていった。』
ライナーノーツ「ロバート・マンと日本、桐朋、サイトウ・キネン」より(執筆:中村ひろ子)
【収録情報】
・モーツァルト:交響曲第40番ト短調 K.550
・バルトーク:弦楽のためのディヴェルティメント
・ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第16番(弦楽合奏版)〜第3楽章
サイトウ・キネン・オーケストラ
指揮:ロバート・マン
録音時期:2003年8月24日、2005年8月20日(ベートーヴェン)
録音場所:松本市、ザ・ハーモニー・ホール
録音方式:デジタル(ライヴ)
ロバート・マン
1920年、オレゴン州ポートランドに生まれる。9歳でヴァイオリンを始める。1938年ジュリアード音楽院に入学、ヴァイオリンと作曲および指揮を学ぶ。1941年、ナウンバーグ・コンクール優勝、同年ニューヨークでデビュー。ジュリアード音楽院を卒業後、兵役に就く。1946年、ジュリアード音楽院校長ウィリアム・シューマンの勧めでジュリアード弦楽四重奏団を結成。以来、1996−97年のシーズンに引退するまで、50年にわたって第1ヴァイオリン奏者を務める。それまでに同弦楽四重奏団は約5000回のコンサートを行い、60曲以上の新作初演を含む500曲近い作品を演奏、100曲以上を録音した。バルトークの弦楽四重奏曲をアメリカで初めて全曲演奏したのも、ジュリアード弦楽四重奏団である。
クァルテットの活動から引退して以降、マンはソリスト、作曲家、指揮者としての活動にエネルギーをふりむけている。ソロCDには、ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ全曲、ブロンフマンと録音したモーツァルトのヴァイオリン・ソナタのほか、バルトーク、カーターがある。作曲家としては、妻で女優のルーシー・ローワンの語りとさまざまな楽器による作品40曲のほか、オーケストラや室内楽のための作品がミトロプーロス指揮ニューヨーク・フィルハーモニック、イツァーク・パールマン、ジョエル・クロスニック等によって初演されている。指揮者としては、1988−89年のシーズンにシアトル交響楽団を指揮してデビューした。また、教師としては、母校ジュリアード音楽院のほか世界各地のマスタークラスで数千人にのぼる学生を指導、日本人の弟子も数多い。東京クヮルテット、エマーソン弦楽四重奏団をはじめ、弦楽四重奏団の育成にも力を尽くしてきた。サイトウ・キネン・フェスティバルには、1999年以来毎年のように室内楽と指揮で出演している。(fineNF)
サイトウ・キネン・オーケストラ
桐朋学園の創設者の一人、齋藤秀雄の没後10年にあたる1984年に、彼の弟子である指揮者の小澤征爾と秋山和慶の呼びかけで、斎藤の教えを受け世界各地で活躍していた音楽家達が日本に集まり、コンサートを行ったのがサイトウ・キネン・オーケストラのはじまり。その後、ヨーロッパ・ツアーや世界一周楽旅を行い、各地で絶賛を博す。そして齋藤秀雄の生誕90年の1992年、本拠地を長野県松本市に定め、小澤征爾とサイトウ・キネン・オーケストラが母体となったサイトウ・キネン・フェスティバル松本がスタート。毎年8月中旬から約1か月間にわたり、サイトウ・キネン・オーケストラのコンサートをはじめ、オペラ、室内楽コンサート、子供ためのコンサートなど、さまざまなコンサートと関連イベントが行われている。(fineNF)