《LSO Live》
超優秀録音
深く悲痛な祈りにみちた『イゾベル・ゴーディの告白』
初演者ペンドリルのソロが絶品! LSO委嘱作『世界の贖罪』
巨匠デイヴィス&LSOによるマクミラン作品集
スタートから通算50番目の記念すべき節目にあたる「LSO Live」最新アルバムは、LSOとデイヴィスにとって、ともに度重なる実演を通じて長いつながりのあるマクミランの作品集。
2007年3月にLSOが本拠とするバービカン・センター開設25周年記念コンサートでも取り上げられた『イゾベル・ゴーディの告白』。1990年プロムス初演の際に一大センセーショナルを巻き起こし、マクミランの国際的評価を決定づけた出世作であり、いまなお彼の一番人気の作品といわれています。作曲の動機は17世紀、宗教改革以後のスコットランドで吹き荒れた魔女狩りによって、おびただしい数の女性が犠牲となった史実に深くインスパイアされたこと。全曲は曲想の異なるブロックに分かれていますが切れ目なく演奏されます。暴力的なリズムと不協和音が支配する中間部では、集団ヒステリー下での吊るし首と火あぶりを表現しているのでしょうか。ここぞとばかりにLSOのパワフルなブラスと打楽器が気を吐き、まさにこの世の地獄のような大音響。作曲者が『イゾベル・ゴーディのために決して歌われることの無かったレクイエム』と述べるように、なるほど途方もない悲しみの感覚を描くことに腐心したあとが窺えるのが冒頭と結尾で、陶酔さえ漂う弦楽の美しさ。真摯なデイヴィスのつくる音楽は痛切な祈りとなって閉じられます。
1959年生まれのマクミランは、カトリックへの信仰、社会主義とスコットランドへの愛国心に深く根ざした作風がその特徴で、これまでにメッセージ性の強い作品を発表してきました。1662年に魔女のかどで残忍な拷問の末に処刑されたうら若き女性を題材にしながら、そのじつは近年ヨーロッパでのファシズムの新しい高まりに対する、自身の懸念を表明する意図が込められているともいわれます。
カップリングの『世界の贖罪』はLSOによる1996年の委嘱作。聖木曜日の典礼にインスパイアされた曲は三部作『聖なる三日間』の第1部にあたり、基本的にはコール・アングレのためのコンチェルトという趣きになっています。1997年の初演時と同じく当ライヴでもソロを務めるのはLSO首席の名手ペンドリル。ときに物悲しく、豊かな表情はさすがに初演者の自負の顕れにも似て絶大な説得力。演奏について、サンデー・テレグラフ紙、デイリー・テレグラフ紙、タイムズ紙とも挙って手放しの賛辞を贈っています。
2007年9月25日に80歳の誕生日を迎えたLSOプレジデント、コリン・デイヴィス。自らの傘寿を祝う新たな作品を委嘱する作曲家として、ここで巨匠により指名されたのがマクミランでした。このあと当コンビは2008年4月27日に新作『聖ヨハネ受難曲』の世界初演を控えており、さらにこの模様は「LSO Live」でのリリースが予定されています。(キングインターナショナル)
マクミラン:
・世界の贖罪
クリスティン・ペンドリル(コール・アングレ)
ロンドン交響楽団
コリン・デイヴィス(指揮)
録音時期:2003年9月(ライヴ)
・イゾベル・ゴーディの告白
ロンドン交響楽団
コリン・デイヴィス(指揮)
録音時期:2007年2月21日(ライヴ)
録音場所:ロンドン、バービカン・センター
プロデューサー:ジェイムズ・マリンソン
バランス・エンジニア:ジョナサン・ストークス