ボリショイのグリゴローヴィチ振付の作品といえば、80年代末ごろに一斉に映像化されたものがあり、
「くるみ割り」もアルヒーポワ&ムハメドフという強力なキャストによる素晴らしい公演が残されている。
今回はカプツォーワとオフチェレンコというフレッシュな組み合わせ。
グリゴローヴィチ版では、マリーが金平糖のパートも通しで踊るのだが、カプツォーワは可憐さと卓越した技術・音楽性で
このプロダクションでの理想のマリー役といえるだろう。
パートナーのオフチェレンコは、この時23歳の若さ。すらりとした長身で、長い手足を優雅にコントロールして、
若々しく美しい王子を演じている。 細かいところで雑な部分も目に付くが、今後に期待したいダンス・ノーブルである。
サーヴィンのドロッセルマイヤーも、芝居巧者で大活躍、ドミトリチェンコのネズミの王様もダイナミックで見応え充分。
グリゴローヴィチの振付はマイムが非常に少なく、この「くるみ割り」でもガンガン踊りまくるのが印象的で、
雪のワルツや花のワルツも豪華、ヴィルサラーゼの美術も幻想的で美しい。
ブルーレイで発売された「くるみ割り」の映像では、このボリショイとロイヤルが双璧ではなかろうか。
映像は他レーベルに比べると、最高とは言えないのが惜しいが、願わくばグリゴローヴィチのレパートリーを
一つでも多くハイビジョンの美しい映像で残してもらいたい。