トラエッタ:オラトリオ『ソロモン王』
1727年イタリア南東部の町ビトントに生まれたトンマーゾ・トラエッタは、ナポリでニコラ・ポルポラらに師事し、オペラ作曲家として名を成した後にパルマ宮廷の楽長となっています。当地ではラモーらフランスの作曲家たちの音楽悲劇(トラジェディ・リリク)の様式を取り入れ大成功を収めました。この成功により、ロシアのエカテリーナ2世から招かれて宮廷楽長として厚遇を受け、オペラ・セリアや宗教音楽を数多く作曲。しかしロシアで体調を崩し、その後ロンドンを経てイタリアに戻り、ヴェネツィアで没しています。
オラトリオ『ソロモン王』は旧約聖書の「列王記」第1章をベースに、ソロモン王とモーゼの十戒の石板が収められた「契約の箱」を題材とした作品で、1766年にヴェネツィアのデレリッティ慈善院(通称:オスペダレット)の合唱指揮者に就任したトラエッタにとって当地でのデビュー作となったものでした。ソロモン王のほか、シバの女王、アビアタル、司祭ツァドク、アモン人のアドンといった登場人物は、オスペダレットの優れた女性歌手のためにすべて女声の音域で書かれています。このオラトリオは大成功を収め、初演以降何度も上演されたことが記録に残っています。1776年の上演に当たっては音楽と台本に変更が加えられましたが、この演奏はこの時の版を基にしています。壮麗さと優美さを兼ね備えたアリアが各場面に1曲ずつ各役柄に与えられ、特に主役であるソロモンのアリアには力が入っており、作品の聴きどころとなっています。少ないながらも効果的に加えられる合唱(女声三部)も注目点でしょう。
この録音は、2023年のインスブルック古楽音楽祭においてクリストフ・ルセの指揮で行われた公演を収録したもの。サリエーリやグルックといったバロック以降の18世紀の作曲家たちの貴重な劇作品を演奏・録音してきたルセの卓越した指揮の下、古楽作品やバロック・オペラを得意とする若手実力派女性歌手たちが素晴らしい歌唱を披露しています。テレジアは「女帝」マリア・テレジアの名を冠して2012年に結成されたピリオド楽器オーケストラで、世界約40か国から集められた若手奏者から成り、古典派時代の作品を主要レパートリーとしています。現在ではヨーロッパ全域に活動の幅を広げ、「CPO」レーベルから気鋭の指揮者たちと18世紀の貴重な作品の録音をリリースしています。(輸入元情報)
【収録情報】
● トラエッタ:オラトリオ『ソロモン王』
ズザンネ・イェロスメ(ソプラノ/ソロモン)
エレオノーラ・ベロッチ(ソプラノ/アビアタル)
マリー=イヴ・ミュンジェ(ソプラノ/シバの女王)
グレイス・ダーハム(メゾ・ソプラノ/司祭ツァドク)
マグダレーナ・プルータ(コントラルト/アドン)
テレジア(古楽器オーケストラ)
ノヴァ・カント(声楽アンサンブル)
クリストフ・ルセ(指揮)
録音場所:2023年8月16-18日
録音場所:インスブルック古楽音楽祭
録音方式:ステレオ(デジタル/ライヴ)
ジャケット絵画:ジャンバティスタ・ティエポロ派「ソロモン王の前のシバの女王」1760年(輸入元情報)