ピアノ作品集　ミロシュ・マギン、レーヌ・ジャノリ

コルトーも真っ青の新鮮なよろめき具合！？
幻のピアニスト、ミロシュ・マギンのユニークなショパン
ショパン　ポートレート / マギン、ジャノリ
〜ピアノ協奏曲第2番、ピアノ作品集
レーヌ・ジャノリ（P)、ジョルジュ・セバスチャン（指）南西ドイツ放送交響楽団の演奏によるピアノ協奏曲第2番が1965年のステレオ録音。ミロシュ・マギンによるソナタの第2番ほかが1965年〜1979年のステレオ、「華麗なる円舞曲」第1番が1984年のデジタル録音。
　まずは、フランスの名女流ジャノリの演奏の復刻が嬉しいところで、タッチと抒情の類を見ない美しい表現と、単なる耽溺に終わることのない音楽の恰幅の広さやバランスの良さを示した名演。この名ピアニストの評価再考を迫るものと言えます。
　メインの小品集はマギンの演奏。ポーランド生まれでフランスで活躍したミロシュ・マギン（1929〜1999）によるアプローチは、コルトーも真っ青の新鮮なよろめき具合（？）の中に、ショパン作品群特有のリズムの冴えを生かしたというユニークなもの。
　ポーランド出身の作曲家で優れた技巧の持ち主でもあるマギンの演奏は、コンポーザー＝ピアニストならではの楽曲構造への踏み込みの鋭さを感じさせ、特に、ポーランドの民族舞踊リズムへのこだわりと表現力には素晴らしいものがあると言えるでしょう。


ミロシュ・マギン
1929年、ポーランドの生まれ。幼い頃から音楽的才能が目立った彼は、ワルシャワのショパン・アカデミー在学中から演奏活動を開始。
　1957年に優秀賞を得て同校を卒業するまでの間、ピアノをマルグリト・トロンビーニ・カズロに、作曲をヤン・マクラキェヴィチ、カジミェシュ・シコルスキらに師事、卒業後ただちに各国への演奏会ツアーに出かけます。
　ポーランドを出国した彼は、イギリス、ドイツ、ポルトガルを経て、最終的にフランスを第２の祖国として選択、家族とともに1960年からパリに永住することになります。
　３年後、交通事故に遭遇、長期にわたる治療期間中に、かつて夢中になっていた作曲に再び取り組むようになり、以後、生涯に渡って、ヴィルトゥオーゾ的な４つのピアノ・ソナタや２つの交響曲、バレエ、オーケストラ作品、歌曲、ピアノ、ヴァイオリン、チェロなどの協奏曲を書き上げることとなります。
　持ち前の強い意志と努力によって怪我を完治させたマギンは、1968年にショパンの全作品のレコーディングをスタートします（デッカ）。ポーランドの多種多様な民族舞踊のリズムに精通したマギンの演奏と解釈は、現在は、フランス・ユニヴァーサルからの2枚組5巻からなるシリーズでその全貌に触れることが可能です。
　1999年、マギンは演奏旅行中のタヒチ島で亡くなります。遺体はパリのショパンの墓のすぐそばに埋葬されました。
　マギンの名は、現在ではその名前を冠した“ミロシュ・マギン国際ピアノ・コンクール”により知られていますが、「20世紀のショパン」ともいうべき、その生きざまやユニークで味わい深い演奏は、もっと知られて良いと思います。素晴らしいピアニストです。


収録作品
ショパン
ピアノ協奏曲第２番ヘ短調作品２１
　レーヌ・ジャノリ（ピアノ）
　ジョルジュ・セバスチャン 指揮 南西ドイツ放送交響楽団
　録音：１９６５年ステレオ録音

ピアノ・ソナタ第２番変ロ短調作品３５
ワルツ第１番
ワルツ第９番
バラード第４番
マズルカ第３３番
マズルカ第３４番
マズルカ第３５番
スケルツォ第２番
夜想曲第７番
夜想曲第８番
子守歌
練習曲第１番
練習曲第３番《別れの歌》
練習曲第１９番
練習曲第２４番
前奏曲第４番
前奏曲第６番
前奏曲第７番
前奏曲第８番
前奏曲第１２番
前奏曲第１６番
前奏曲第１８番
前奏曲第２０番
前奏曲第２２番
前奏曲第２４番
幻想即興曲
ポロネーズ第６番《英雄ポロネーズ》
　ミロシュ・マギン（ピアノ）
　録音：１９６５年〜１９８４年ステレオ＆デジタル録音